ビットコインの課題と可能性、今後の展開は? 

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インターネットが変える決済と貨幣の未来[3]

高宮:では、会場の皆さまからご質問を受けたい。

会場:今日のお話は、むしろ金融システムが仕上がっていない国や地域のほうで大きくなっていくと感じる。そうした地域にはどんな期待をかけているだろうか。

加納:まさに「リープフロッグ」と言われる、インフラが発展途上だからこそ最新のものが一気に広がっていくという話だと思う。携帯電話が良い例だけれども、決済や貨幣についても同様のことが起きると僕は考えている。アフリカや東南アジアではバンキングシステム自体が未成熟で、誰もが銀行口座を持っている世界じゃない。だから我々としても海外送金に関するサービスを近日中に発表する予定だけれども、そうした地域には大きなオポチュニティがあると思っている。

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舛田:まったく同じだ。銀行がないどころか、路上で、みかん箱みたいなものの上で換金をしているような地域もある。「これ、大丈夫なの?」と。また、たとえばLINE Payのスタンプは世界中で売れているけれども、ある国ではクレジットカードでしか購入できなかった。すると、1枚のクレジットカードを200人ぐらいで使ったりする(会場笑)。「クレジットカードを使わせてあげます」という時間制のビジネス(会場笑)。そういう地域にクレジットカードや銀行のような既存の金融システムをそのまま持っていくのは難しいし、その意味ではビットコインのようなもののほうがいいと思う。また、そこでたとえばLINE Payとビットコインがつながったりすれば、エクスチェンジをするにも既存インフラに頼らなくて済む。だから新しい技術や新しい貨幣というか、ビットコインのようなものが流行りやすいし、必要にもなるのだと思う。

会場(坂野尚子氏:株式会社ノンストレス代表取締役):新しい決済や貨幣を広げていくにあたり、どういったことが最大のハードルになり得るとお考えだろう。技術的な壁なのか、法的な規制なのか。あるいは他に何かハードルはあるだろうか。

鶴岡:ハードルというと、まあ、法だろうなと思う。やっぱりお金の話だし、誰が誰に使ったかという個人情報もすごくセンシティブなので。テクノロジー自体は先を行っていると思うし、やろうと思えばすごく先進的な決済が現時点でもできると思う。

舛田:テクノロジーはなんとかなるけれども、セキュリティに関しては日々戦いだ。アタックを仕掛けてくる人間は山ほどいるから、それとどのように戦っていくかがポイントになる。また、それを社会が許容していけるかということがあると思う。あとは、特に日本の現金至上主義というか、「現金が一番安全なんだ」という、ちょっとよく分からない雰囲気。現金こそ無くしたら戻ってこないし、ログが残らないのに、「基本は現金で」という思想がある。キャッシュレスのほうが本当は安全だしログも残る。ビットコインだって通常はログがあるから無くしても取り返せる筈だ。資金管理という視点で見ても、現金だけで何かをやっている人はお金の管理があまりうまくない。自分で家計簿を付けないといけないから。その点、すべてが電子化されたら、どこでいくら、何に使ったかが分かる。でも、現時点ではお店での支払いもお金の貸し借りも現金。そういう現金至上主義みたいなものはハードルだと思う。

会場(関口和一氏:株式会社日本経済新聞社論説委員兼産業部編集委員):ビットコインが世の中を変えていく可能性はあると私も思っている。ただ、トランザクション手段には、ある程度のスケーラビリティも必要だ。そこで、ブロックチェーンもマイニングコストもどんどん大きくなっていく一方、発行上限が決まっているというビットコインは本当に実体経済を支える手段となり得るのだろうか。あと、海外ではかなり使われはじめているが、日本でまったく普及しないのはなぜなのだろう。ウォレットも非常に使いにくいし、「なんとかならないですか?」という話と併せて質問したい。

加納:今日お話ししたビットコインというのは既存法定通貨で言うところのベースマネーだと思っている。ただ、実際は流通させるために信用創造をさせてその何倍もの通貨をつくる、ということは可能だと考えている。その意味では、ビットコインのレンディングがはじまって、オフブロックチェーンと言われるブロックチェーン外の取引も含めると、上限はさほど問題にならないのではないか。実際には2100万枚と言われている発行上限の何倍も流通することが可能だと思う。

あと、普及しない理由については推測になるけれども、やっぱり日本ではマウントゴック事件でネガティブな報道が最初の頃にされていた。それが影響しているのではないか。あとは国民性の違いもあるし、そもそも円が安定しているのでさほど困っていない。従って、通貨に対する信任が低い国のほうで先に広がると思う。それと、ウォレットが使いにくいというのはまさに業者の課題で、使いやすいウォレットを作成する必要がある。我々もその辺は考えていて、最終的にはブロックチェーンも、そもそもビットコインも意識せず送ることができるようにしたい。SMTPやTCP/IPを意識しながらメールを書く人はいないと思うので。その辺はすべてブラックボックスにして、表面上で何かが送れていればそれでいいのかなと思う。

会場:ビットコインについて一つ分からないのが、法人あるいは金融取引の巨大市場にどんなインパクトがあるかという点だ。たとえば、たしか日本では日本公認会計士協会の指針があって、円ベース以外では会計の記載ができない。そういう環境でビットコインはどのように使われていくのか。あるいは法人取引でどのように導入されていくものなのか。いろいろできるかもしれないけれども、巨大市場をつくろうと思うと法人取引の領域は外せないと思うので、その辺のお考えを伺いたい。

加納:弊社では法人サイドに円でお渡しするサービスがある。法人サイドは別にビットコインでいらないと思っているので、「1000円のものなら1000円を売上として入金していただけたらそれでいいです」と。そのうえで、我々がゲートウェイとなってビットコインで受けて、それを転嫁して、バッファとなって法人さまにお支払いする。我々がリスクのバッファとなってあらゆるフローを吸収すれば問題ないと思っている。あと、会計に関して言うと、我々の会計上ではモノと一緒でインタンジブルなアセットになる。それで、時価会計にしたかったけれどもそれができないということで簿価会計をさせていただいている。その辺はまだ議論をしているところだけれども、現状では「単なるモノの仕入れであって、在庫です」という感じになっている。

会場(続き):若干矛盾があるような気がする。時価が取れないものを通貨として利用できるのかな、と。当然、通貨は時価があるから交換ができて、トランザクションも成立するのだと考えているので、その部分がつながらないと感じた。

加納:会計上の話と実際の価格は別なので、後者は売り手と買値があれば好きな値段で成立するし、それが時価になる。で、銀行さんであれば時価会計になると思うので、どこかでリファレンスを取って「これが時価で」という話にすればいいと思う。ただ、会計上どう評価するかという話と流通の話を僕は切り離して考えている。

会場(西野伸一郎氏:株式会社富士山マガジンサービス代表取締役社長):今日はどうも大人の議論が続いて、「なんだかなあ」と。僕はビットコインに代表される「発行体がない」ということに圧倒的な可能性を感じている。インターネットが出てきたとき以上のインパクトだ。でも、今日はどうもネガティブな側面の話が多かった。もっと目が覚めるような話というか、なにかこう…、想像もできないような、「こんなことやあんなことが起こっちゃってどうしよう」みたいな(会場笑)、そんな話を聞きたい。

加納:法定通貨がなくなるといった話をしている人はいる(笑)。「中央銀行もなくなって、すべての通貨がビットコインに統合される」と。で、通貨を中央銀行や政府、あるいは民意のどちらがコントロールすべきかという議論は何百年も続いていると思うけれども、どちらも一長一短だと僕は思う。で、実を言うと、個人的には仮想通貨がそれほど大きくなって既存通貨をひっくり返すというところまでは考えられない。

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舛田:私もビットコインを初めて知ったときは、「まさにインターネットだ」と思った。「中央集権じゃなく分散だ」と。やっぱり、これからの時代は分散型だ。インターネットはそれを実現できるし、「個」が立ってくるので。ただ、ビットコイン業界の人たちは、なんというか、経験を積み過ぎてだいぶ大人になっている(会場笑)。10~20年前に出てきていたら、たぶん「機軸通貨にするんだ」なんて言っていたと思う。でも、今はかなり現実的なステップを踏んでいらっしゃる。まあ、国によっては規制がかかっているというのもあるけれども、とにかく真面目に普及をさせようとしている。それで、各方面に配慮しながら進んで、(加納氏のほうを向いて)いるんですよね? きっと。

加納:金融機関に14年間在籍していた僕はサラリーマンとして飼い慣らされてしまった(会場笑)。だからあまりムチャな発想ができないという。

高宮:最後にすごく刺激的な“ぶっこみ”があったけれども、ぜひ、御三方とはこのあともオフラインで個別にお話を聞いていただけたらと思う。今一度、パネリストの皆さまに拍手をお願い致します。どうもありがとうございました(会場拍手)。

※開催日:2015年4月29日

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