ユニコーンベンチャーはどうすれば作れるか? 

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VCの進化論~日本発の“破壊的”イノベーションを生み出すために~[3]

仮屋薗:では、そろそろ質疑応答に入ろう。

会場(今野穣氏:株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズパートナー):端的に、本セッションのタイトルそのものを質問したい。破壊的イノベーションを日本から生み出すため、VCとして進化すべきポイントは何になるとお考えだろうか。

渡辺:破壊的イノベーションとは何かという話を事前に皆でしていた。で、これはいろいろ回答があると思うけれども、流行りの言葉で表現すると「ユニコーンベンチャーをどうつくるか」という命題だと思う。時価総額1000億円、でしたっけ? 上場未上場に関わらず、そういう企業をつくっていくために何をすべきか。今、時価総額1000億円に届くベンチャーは皆さんがぱっと思い浮かぶ程度。我々VCはあまりつくれていない。たまたま1発というのはあったりするけれども。

では、それをつくるために何をするべきか。まず日本市場だけを見ていては確率も低いままだと思う。それで今はスマ―トニュースやメルカリがチャレンジしている。ああいう形で日本でもがっちりNo. 1となって、そのうえで世界に飛び出すべきなのだと思う。そこで時価総額も1000億と言わず、何千億あるいは1兆に持っていくための施策を、僕らがもっと押し込んでいかないといけない。

そのために僕らがどう変わるべきか。そもそも日本のVCはプライベートエクイティのなかでまだまだ、あらゆる意味でマイナーな存在だ。業界メンバー同士はよく分かっているものの、投資家としてのパフォーマンスをきちんと外の世界に発信していないからだと思う。だから、どのベンチャーキャピタリストさんがどれだけのパフォーマンスを出しているか、分からなかったりする。それを明確に出して今より大きな資金調達を行い、現在の数十億でなく200億や300億のファンドを皆がつくれるようにする。

そのうえで、ベンチャーキャピタリストの人員自体がまだまだ少ないと思うので、もっともっと増やしていくべきだと思う。そのためにも社会的にアピールして、優秀で、かつベンチャーが好きだという人間を集めていく必要がある。そうしてお金とノウハウを日本のスタートアップに注ぎ込む。そうして海外をどんどん狙っていくということを、何より僕ら自身がやらないと回っていかないのかなと思う。

松山:重要なのはアントレプレナーシップの発露だと思う。今の日本はユニコーン企業と言われるベンチャーが数多く出る環境になっていない。ただ、1960~1990年頃までのおよそ30年で、ホンダやトヨタや旧松下電器産業のような時価総額数兆円クラスの企業が勢い良く伸びていた。しかも、そうした企業にそれほど大きな資本が付いていたわけでもなく、当時とGDPも今とあまり変わっていない。むしろ使える資本は大きくなっている。人材だって日本人という意味では変わっていない。

では、当時はどんな環境だったかというと、やっぱり松下幸之助や本田宗一郎や豊田喜一郎がいた。銀行家にも、それこそ安田善次郎や渋沢栄一のような日本最高峰の人たちがいて、力強いアントレプレナーシップで会社をつくろうとしていた。だから今の日本でも、最も優秀な人たちがもっとアントレプレナー化すべきだと思う。銀行家や金融家の方々があまり保守的にならず、「日本を引っ張っていくような産業に大きく張っていくんだ」という気持ちを持つことで、ユニコーン企業を数多くつくることも可能だと僕は思う。過去にしてきたことだから。

だから、僕は比較的楽観的だ。若い世代には本当に優秀な人がいる。しかも、そこで起業する彼らにドロップアウトの感覚はない。「これが真のエリートコースだ」ということで、それこそ大学を一時休学しても起業するような人たちが出てきた。その辺はちょっと新しい動きなのかなと思うし、そういう流れがより大きくなればいいと思っている。日本が弱いとも思わない。環境は絶対につくることができる。エクイティではなく銀行ファイナンスでここまで来た国なので。そこでさらにエクイティファイナンスも使っていけば、より大きくて強い会社をつくることができるのではないか。

川田:たぶん、ご質問の答えはまだまったく出ていないし、そこは自分が今投資している会社を1000億のメガベンチャーにすることで5年以内に答えを出したい。ただ、結構意識していることはある。ある程度モデルができて成長フェーズに入った投資先には、僕は経営会議や週1のミーティングで、「ある程度俺が触った案件はぜんぶワンミリオンにしたいんだ」みたいな話をする。それを相当早いタイミングから刷り込みのように言う感じだ。「それは川田さん個人のテーマじゃないですか」と、ほかの株主に突っ込まれたりするけれども(笑)、「まあ、いいか」ということで言い続けている。すると、半年もするとその会社全体が「ワンミリオンを目指そう」といった状態になって、その目標から逆算して経営計画やビジョンをセットする感じになる。やっぱり本人たちがそういう風に思い込まないと無理だと思う。

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ちょっと爆弾発言をすると、実はスマートニュースをリリースして3ヵ月ほど立ったとき、100億円で買いたいという買収提案が、ある上場大企業から僕のところにあった。それでチームのメンバーに、「100億で買いたいって言うんだけど、どうする?」と聞いてみると、ほぼ即答で「そんなもん蹴ります」と言う。ただ、僕はそこでちょっと親心スイッチ入って、「いやちょっと待て」と。「100億だよ? 首を縦に振った瞬間、君たちの個人資産は数十億になる。なかなか稼げないよ?」みたいな話をした。

それで僕は失言をしちゃった。「もしかしたらこの会社は1000億になるかもしれないけど、ここで100億というのはもう少し慎重に考えたほうがいいんじゃない?」と。その「もしかしたら1000億」という言葉を聞いた瞬間、鈴木健が僕を睨みつけて、「川田さん何言ってるんですか! 1000億なんて当たり前なんですよ!」みたいなことを言ってきた。1000億なんて通過点だ、と。ちなみに、先ほどの「俺が触った会社は1000億」的な話を、僕はあの会社では一度もしたことがない。あの人たちは最初から目線がワンミリオンのさらにその上にあったから。だから軸も一切ぶれないし、あらゆる戦略がめちゃめちゃ長期的だ。そんなこともあって、あのチームに関しては投資家側もすごく長期的な視野で見ている。いわゆるユニコーンの生き方をしていると思う。

結局、経営メンバーがそれほどの思いで「1000億は通過点。絶対にグローバルNo. 1になる」と信じきっていることが一番大事なんだと思う。で、その先のタクティカルな領域で何が出てくるかはまだよく分からない。今のところ、「やっぱりリクルーティングがめちゃめちゃ重要だ」と。あと、政府に対するロビイングのような大人プレイもいろいろ必要になってくると思う。まだ分からないけれども。

赤浦:川田さんのおっしゃる通りで、「思い」が一番大事だと思う。100億とか上場といったレベルでなく、「今世紀を代表する会社になるんだ」と。サイバーエージェントはそれを理念に挙げているけれども、そういう思いを持つこと。そのうえでビジョンと、それに共鳴するチームが重要になるのだと思う。僕も鈴木健さんとは2005~2006年頃から一緒にやっていたけれども、彼はその頃から本当に思いが深かった。それこそノーベル賞を取るんじゃないかと僕は思っていたぐらいだ。やっぱり最初から高いところを目指してやっていくことが大事だと思う。

僕は1997年3月、自分の人生におけるミッションとして「21世紀のソニーや松下、あるいはトヨタやホンダが生まれるきっかけをつくろう」を決めた。それで独立してVCをはじめて、その結果として200数十社に投資したけれども、1000億超えの会社ですら、いまだ2社に過ぎない。なかなかスケールしない。でも、今はDeNAやグリーのような数千億の会社も身近に出てきた。そういう潮流のなかで、さらにまた新しい流れとして、今はメルカリとスマートニュースが出てきている。この2社に関しては、明らかに今までの会社と違うところに行っていると感じている。

一番の違いは何かと言えば、川田さんがおっしゃった通り。目指す場所の高さや思い。山田進太郎にしてもそうだと思うけれども、「絶対に会社は売りません」と最初から言い続けている。だから、今までヒットの延長でなんとか成功を目指す形でやってきたけれども、最初からホームランを狙う体制が必要なのだと思う。我々VCもその思いに共鳴する必要があるのだろう。

あと、アメリカでは最後のほうのステージで数百億のファイナンスができたりする。だから…、僕は壇上の皆さまとはそれぞれ一緒に出資をしているけれども、VC業界も「彼がやるなら一緒にやろう」という風にシンジケーションしていく必要もあると思う。まずは「思い」一番大事で、そしてシンジケーションしていくこと。また、ハイスペックな人材をきちんと供給していく仕組みも持っておく必要があるのかなと思う。

投資家に向いている人は?どうやって人材を確保する?

会場(木下慶彦氏:Skyland Ventures株式会社代表パートナー):最近はファンドが大型化しているので、皆さん、チームビルディングをなさっていると思う。そこで投資ができる方々を皆さんはどこから連れてきているのだろう。現在のメンバーや将来パートナーになってもらえる方がどんな業界から来る人たちなのかということを、「たとえばこんな人がいい」といったお話も併せて教えていただきたい。

渡辺:なかなか難しい。投資をする人材はちょっと特殊だから。VC投資となるとさらに特殊で、「事業家として成功したからいい」とか「何かの事業をうまくやっていたからいい」というわけでもないと考えている。だから実は大変悩みながらやっている。ただ、スタンダードな人材としては、VC出身でファイナンスが分かり、事業のことも分かる人間なら潰しも効きやすいというか、最も過不足なくできると思う。

一方、最近はアメリカでもVCのなかで投資部隊やイベント部隊という風にいろいろ分かれたりしている。Andreessen Horowitzなんてまさにそれだ。今後、VCはそうした方向に変わるのではないか。投資だけすればいいとか、ハンズオンでだけ頑張っていればいいといった話ではなくなり、複合的にサポートする体制をつくらなければいけない。で、その意味で言うと太河さんのところは人数が多い。昨日East Venturesを訪れると、「太河チーム」みたいな方々がわしゃわしゃわしゃーっといらした。30人ぐらい? それで昨日はすごく驚いた。だからむしろ太河さんの話を私も聞きたい。

松山:うちの場合、実際の投資判断をするのは私とバタラのパートナー2名だけれども、アソシエイトという形で若い人たちもいて、投資先の支援をしたりしている。それで投資先にフルコミットして転籍させるぐらいの感じでやっている。その意味では実際に投資する人をどう育てるかというのは僕にとっても今後の課題だ。

ただ、最近思うのが、実際にはうちの投資先ポートフォリオにも投資判断をする人がいるということ。何人か、たとえばメルカリの山田進太郎やフリークアウトの本田謙(同社表取締役CEO)のような人がいる。そうした、僕が投資して実際に成果を出してくれていて、さらにエンジェルのステージにまでいっている人たちの推奨を、僕はほぼ100%飲んでいる。その意味で彼らは外部投資担当者というか(笑)、彼らに投資バジェットを渡している感覚に近い。そうした動きで投資先ネットワークがどんどん大きくなっていって、それでパートナーになってくれたらいいと思う。で、あとはVC内でも投資権限を少しずつ付与して成長させていく。その両面があればいいと思う。

川田:僕は最近、先ほどお話ししたおじさんエンジェルネットワークの4人でよく投資しているけれども、この人たちは皆怖い。現場の仕事がばりばりにできるから。浩介さんは週次ミーティングの議事録まで自分で取るし、スギさんは事業計画書を超細かくチェックするし、海老根さんは当然のごとく営業に同行したりする。やっぱり自分で、しかもゼロから起業したことのある人は強い。スマートニュースの藤村(厚夫氏:同社事業開発担当執行役員)さんなんてアットマーク・アイティをゼロから興した人だ。今は60歳ぐらいだけれども、上場企業の会長をつい最近までやっていたその藤村さんが、スマートニュースに転籍した日から普通に引越しの不動産交渉をしたりしている。当然、事務も自分でやるしコピーも自分で取るし。とにかくフットワークが軽い。

赤浦:投資家に向いているのは「起業したい」と思っている人。僕自身も投資家というよりは自分で起業したいと思いながら、いつもビジネスを考えている。起業家精神があって、「自分で事業をつくるぞ」という思いのある人が向いていると思う。

仮屋薗:今日はVC経験合計50年の4名様とともに、本当に濃い議論ができたと思う。改めてパネリストの皆さまに拍手をお願いします(会場拍手)。

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※開催日:2015年4月29日

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