エグジット前の成長期におけるVCの役割とは? 

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VCの進化論~日本発の“破壊的”イノベーションを生み出すために~[2]

仮屋薗:続いてエグジットの前の成長期についても伺ってみよう。そこで「こういうことを心掛けている」といったお話が何かあれば、事例とともに伺いたい。

渡辺:成長期とはなんぞやという議論はあると思うけれども、我々は、シードやアーリーの段階を経て会社として少し落ち着いてきたとき、ビジネスモデルを一旦すべて見直すようにしている。KPIを再構築または整理するとともに、PDCAをつくってぐるぐる回す。それを半分ほどの会社でやっている。こういうプロセスも重要だ。投資家も含めて、他のメンバーが社長の考えや細かい数字を分かっていなかったりすることが、実はよくあるので。そこで意思統一をするというか共通認識をつくるうえで、なるべくそうした作業をするようにしている。

で、そうした仮説モデルをつくってトライを繰り返し、当たるまでとりあえず回すわけだけれども、「半分ぐらいの会社で」と言った通り、それを必要としない経営者もいる。去年エグジットしたiemoの村田マリは、そんなのぜんぜんお構いなし。「KPIつくろうよ」なんて言おうものなら、「あんたに私のKPIつくれないでしょ」ぐらいの勢いで返されるから「そうだよね」って(会場笑)。「自由にやってくれ」と(笑)。あと、最初からそうしたPDCAが完全にできていて、「とにかくぐるぐる回したいから黙って見ていて欲しい」という方も当然いる。この辺は業種にもよると思う。だから、そこで僕が心掛けているのは経営と経営者の邪魔をしないこと。そのうえで、足りない部分があれば補う。それが初期の部分ではKPI設定だったりするのかなと思う。これはグロウスのもっと前、入り口の段階の話だけれども。

で、それが過ぎて、ある程度仮説も検証されたしうまく回りはじめたら、実は我々がやることはあまりないと思っている。むしろ、そこで「経営会議やるぞ」なんて言ってなんやかんや口を出すのは邪魔でしかない。だから、そこは経営者の求めに応じて、たとえばアライアンスを組みたいと言われたら誰か紹介するような、そんなサポートが中心になると思う。ある程度回ってきて信頼関係も醸成された段階では、とにかく経営者の側にきちんといて相談相手になることが重要ではないか。だから、求められたら何らかの形で必ずサポートできるような形にはしている。

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松山:相手によると思う。たとえばベテランとは普通にディスカッションをする。まあ、お茶をしながらフランクに話す感じだ。ただ、若い人の場合は逆。「いろいろやってあげないと」という感じになりやすいけれども、僕の場合、あえて若い人にはあまり言わないようにしている。今は僕の半分ぐらいの歳の人に投資するケースもある。その関係で僕が意見を言ってしまうと、それに影響されてしまうというか、話を聞いてしまうときある。でも、あまり聞いてしまうべきではないのかな、と。一般的な会社運営に関する話ならいいけれども、たとえばプロダクトのことは、ぶっちゃけ、本人がめちゃくちゃ考えたほうがうまくいく。芽のあるアイディアに一般的なアドバイスをすることで平準化しちゃうリスクみたいなものを感じているので。

だから、何か見ていて、「あ、これはコケるな」と分かっても口に出さなかったりするときがある。結局、自転車の乗り方だって自分でコケてみないと分からないわけで。別に意地悪をするわけじゃないけれど、ミーティングにもあまり顔を出さないようにしたりして、とにかく本人の意思で進めてもらう。それで試行錯誤を経て成長してきたら、普通にディスカッション相手として話をするのもいいのかなという感じだ。

川田:今、太河の話を聞いて僕は反省した。僕とか、会場にいるスギさん(杉山全功氏)もそうだと思うけど、見ていると地雷がぜんぶ分かっちゃう。「あ、その先で右に曲がらないと死ぬよ?」みたいな。で、それを知らせちゃう。そういうのはあまり良くないんじゃないかな、と。やっぱり1回は踏ませないと痛みも分からないし。ただ、DeNAが赤字だった頃は皆本当に辛い思いをしていて、なんだか地雷を見ると吐き気がしちゃって指摘せざるを得ない感覚もある。だから成長期は邪魔をしないようにしつつ、かつ最速で走れるよう地雷を指摘したりしていた。でも、それはもしかしたら、太河が言うように若いベンチャーにとっては良くないのかなという気がちょっとしている。

あと、成長期の支援というと、“大人プレイ”。たとえば、アライアンスですごく有力な投資先を紹介したりしている。スマートニュースが海外に出たときもそうだ。「海外に出よう」という志は社内にあったけれども、実際のアクションが何も取られていなかった。それであるとき、僕の知り合いのWilliam Lohseという、たとえば「Pinterest」に初期段階で投資していた投資家に引き合わせた。彼が日本に来ていたとき、スマートニュースに連れていって鈴木健(同社代表取締役会長共同CEO)に会わせた。(同社代表取締役社長共同CEOの浜本)階生さんもそこにいたかな。

でも、そこでどんな話になったかというと、アプリをちょこっと見せたあとは哲学の話ばかり。William Lohseも鈴木健も哲学が好きで、1時間のうち48分ぐらいがその話だった(笑)、「これ、流れたな」と、そのときは思ったけど、蓋を開けたら彼が投資することになった。で、彼のメディアに対するリレーションもあったし、彼と一緒にエンジェル投資をしていたチームでリクルーティングのヘッドをしていた人も入ってきたりした。あと、「Wall Street Journal」のRich JaroslovskyもWilliam Lohseのコネクションで入ってくれて、アメリカでの立ち上げにはすごく効いた。そんな風に、人を紹介してあげたりつないだりする大人プレイが多い。

ただ、僕はどちらかというと大人プレイよりは現場プレイが好き。夜の飲みの席で仕事が決まるみたいなことを毎晩やっているとだんだん辛くなってくる。それで、たまに「ランディングページ貸せ」とか言って、僕自身がレイアウトを直したりして「クリック数が10%上がった。よーし」みたいなことをして、最近は逃避したりしている(笑)。

仮屋薗:特に海外へ出る際、最も苦労するのはローカルのハイスペック人材採用だとおっしゃる方が多い。その部分のサポートは今後大きな鍵になると感じる。

川田:まったくその通り。海外で日本と同じようにサービスを立ち上げようとしても絶対に無理。基本的に、向こうでは向こうのチームを立ち上げる必要がある。そのために何が必要かと言えば採用。スマートニュースもアメリカでの立ち上げ準備期間はひたすら面接をしていた。そこが大きな鍵だし、それができるような人を最初に巻き込んでおくことが大切になる。で、それは、たとえばシリコンバレーならシリコンバレーのエコシステムのなかにきちんと入っている投資家とか、グローバルで存在感があるようなVCでないといけない。

そういうところはリクルーティングに加えてPRのバックアップも強い。スマートニュースはそれでAtomicoに入ってもらったけれども、そのときも僕は裏で同社CEOのNiklas Zennströmに結構営業していた。AtomicoにもリクルートとPRのスペシャリストがいて、非常に協力的だった。特に海外へ出ていくときはその2点が重要になるので、そこはすごく良かったと思う。

赤浦:僕は投資先のほぼ全社と、要件がなくても毎週定例ミーティングを行って、各社の社長とお会いしている。そこで自分が最近考えている新規事業のネタなんかについて相談してみたりする。で、「いや、こっちほうが面白いよ」といった話が返ってきたりして、いろいろディスカッションをしながら勉強をさせてもらう感じだ。つまり最初の話にもつながるけれども、できるだけ長い時間を経営者の方と過ごし、信頼関係を積みあげていくことを、成長期にも立ち上げ期にも一番大事にしている。

そこで印象に残っている事例というと、たとえば寺田親弘さんとは会社をつくる前から一緒にやっていて、創業時に出資する話になった。これは一番早かったと思う。ある方の紹介で初めてお会いして名刺交換をしたとき、「彼、起業するそうですよ」と言われた僕は、寺田さんの目を見て「じゃあ、出資します」と言った。それで本当に出資をさせていただいた。

ただ、1年半ほど前だったと思うけれども、創業して5~6年経ったとき、定例ミーティングで寺田さんが、「こんな筈じゃなかった。なんで俺はこんなに小さいんだ」と言ってすごく落ち込んでいる。会社は月次ベースで増収を続けているのに、「いや、小さい。こんなつもりで会社をつくったんじゃない」と言う。それで、「じゃあ、もう勝負かけようか」という話をした。具体的にはテレビCMを打つことにした。当時は、DeNA以外はまだそれほどテレビCMを打っていなかった頃だったけれども。

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仮屋薗:未公開企業で、しかもBtoBでテレビCMを打つのは初だったと思う。

赤浦:そこで議論していたのは、「なぜOBCはテレビCMを打ち続けるのか」。それで寺田さんは人づてに辿ってOBCの方に会って理由を聞いてきた。答えは「ライフタイムバリューが高いから獲得が数件でも大丈夫」というもの。そう考えるとSansanのCMでも200件獲得できたらおおいにペイする。これ、どこまで話していいのか分からないけれども(会場笑)、それで計画的にやっていった。ただ、それで「さあやろう」となったときにキャッシュがなかった。だから、「それは大丈夫。僕が集めてくる」とコミットをしつつ、うちはシード段階でしかお金を出していないから他のVCにもお願いをした。それで最終的にはたしか5億円を1発で出していただいた。当時としては結構大きいほうだ。それで一か八かでテレビCMを打ってみたというのが、成長期、定例ミーティングで生まれたエピソードとしてある。

最近のエグジットの傾向とは?

仮屋薗:続いて、出口の段階についても伺ってみたい。ある時期まで、日本のベンチャーにとってはIPOだけがエグジットで、それ以外はビングデッドというのが常識だった。でも、特に渡辺さんや太河さんや赤浦さんは、M&Aというエグジットの歴史をつくってきたと思う。どのようにして、そうした事例をつくってきたのだろう。

渡辺:投資家にとっても経営者にとっても、出口はIPOかM&Aかのどちらかしかない。で、実は投資家として本当にがっつりやれるところはM&Aだったりするし、逆に言うとそれが投資家の役割なのだと思う。そこがほとんどじゃないかな、と。おかげさまでうちの場合、1号ファンドでも2号ファンドでもいい形のエグジットが増えてきた。ただ、なんとなく投資をしてなんとなく成長した流れで「エグジットできたよね」というのは、本当のエグジットじゃないと僕は思っている。結局、会社をどう成長させていくかというのは、どんな出口を目指しているかという話と一緒だと思うので。

逆に言うと、そこの考えやビジョンがない限り、経営や投資する意味はあまりないと思う。たとえばIPOでなくM&Aというのなら、「どんなM&Aにしたいか」「どんな会社に買われたいのか」と、最初の段階から経営者が投資家も交えて頻繁に議論しないといけない。僕は投資の際、そこも強く意識している。逆に言うと、「こういう分野でこういうサービスやコンテンツをつくらないと、イメージしたM&Aにならないよね」といったことを意識して、投資をしたり事業モデルを一緒につくったりしている。

仮屋薗:10年前なら、M&Aによるエグジットの具体的シナリオというのは、特に投資前は経営者に話しにくかったと思う。最近は環境が変わった?

渡辺:変わった。特に、ここ1年ぐらいで投資の依頼で来てくださる方々は、半分以上が「一緒にM&Aをやってくれませんか?」と言う。すごいメンバーが揃っていて、いい事業ができていて、他からもお声かかっているけれども、「バリュエーションを下げてでも一緒にやりたいです」という方が増えてきている。その意味では、業界全体として、ある程度成熟・成長してきたなという印象を受ける。

松山:僕がやっているところは、なんとなくのご縁で行われることが多い。ただ、M&Aは買われる側の小さい会社に相当なストレスを与える。その話がご破産になろうものなら、それこそ会社が大きく影響を受けてしまうので。

ただ、我々の場合、日本の、それこそ買い手側となるDeNAさんやグリーさんやミクシィさんのような、インターネット系の先輩大企業からLPでファンディングしていることが多い。それで、たとえば「MERY」のときは、買い手側が我々のLPでもあったので、向こうのお話も聞ききつつ、中川綾太郎さんの意思を聞いていた。そうして何か揉めたら、「ここは譲れますか? 譲れないですか?」という風に少しだけ仲介していた感じだ。とにかく、そこで対立構造になってしまうときつい。買い手、あるいは100%株主になる場合は株主と、買われる側で大きな対立構造にせず、ユーザーに目線を向けることができるようにしないといけない。サービスを伸ばすことが大前提なので、株主との軋轢みたいなものを生まないように注意している。

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仮屋薗:「MERY」のときは太河さんが双方に翻訳してあげる形だった?

松山:いや、僕自身はなるべく買われる側のサイドに座る気持ちでいる。そのときはたまたま買い手側が我々のLPだったから比較的助成しやすい状況だった。

赤浦:僕の場合、金額ベースで過去最大の事例はポケラボのM&Aだったけれども、これは我々がファンド100%でつくった会社。つくったあと、ゲームをはじめて社長を引っ張ってきた。それをグリーに138億ぐらいで買っていただいたけれども、僕は結局そこで何もしていなくて(笑)。当時は「モバイルゲームでは日本が中心になりましょう」といった戦略を立て、伊佐山(元氏:現Wil LLC.Co-Founder&CEO)さんを巻き込んだ。で、伊佐山さんにはDCM時代に出資してもらって、その後、たしかセガさんに入っていただいてつくっていった。たぶん、バーベキューか何かで伊佐山さんと誰かが話をして決まったことで、僕らは何もしていないのだけれども。

仮屋薗:一方、IPOでVCができることややるべきことは何になるだろう。

渡辺:IPOの頃になるとステークホルダーも増えているし、会社もきっちりできてきている。だから、やることは数多くあるけれども、重要なのは「本当にIPOを今のタイミングでするのか」といった大きな意思決定を一緒に行うことだと思う。細かくは話せないけれども、GunosyにもIPO段階で大きな局面があった。それで、「こちらを選んだから今上場できている」といった話がいくつかある。エグジットの話と同様、本当に重要な部分を経営者と一緒に考え、ともに意思決定していくことが不可欠だと思う。もちろん各種資料づくり等、テクニカルな部分でもお手伝いをする。でも、一番重要なのは会社を何年もやってきた最後の最後、出口となるIPOという重要な儀式で…、スタートでもあるけれど、おこがましく言えば最良の答えを経営者と一緒に探してあげること。そのための信頼関係をつくる必要があるのだと思う。

赤浦:具体的に何かしたというのはほとんどないけれども、IPO自体は一つのお祭りだと思っている。そこで、とことん一緒に楽しむ感じだろうか。創業から一緒にやってきたなか、やっぱり一つの区切りというか目標として、IPOは大事にしているところではある。そこを成し遂げる段階だから、それは一緒に思い切って盛り上がって楽しむということをさせていただいている。

仮屋薗:特にIPOというのは、経営者も管理部門もその経験がないのでよく分からないイベントだと思う。だから、グロービスではそこで主幹事証券会社の選定や管理部門の採用、あるいはIRやエクイティストリーに関する資料等々の準備から東証さんとのコミュニケーションまで、フルサービスで支援している。IPOは経験がすべて。本では学べない点が多い。でも、経営者は公募価格を理解して、IPO後にどんなイベントが待っているから今は何をすべきかといったプランニングも行う必要がある。だから、経営者がそれらを理解しながらIPOを迎えるようにすることが大事だと思う。

渡辺:そう思う。地雷もあると思うので。今回はgumiのトラブルもあって、各種審査も厳しくなって株価も下がっていた。この前後にIPOの承認をもらったところにはいろいろと悩みがあったと思う。そこで、市場ともしっかりキャッチボールをしながら判断しなければいけないけれども、そこはすごく難しいと思うので。

仮屋薗:そこで私たちが納得形成を行うというか、翻訳や橋渡しをしなければいけないのかなと感じた。

→ベンチャー・キャピタルの進化論~日本発の“破壊的”イノベーションを生み出すために~[3]は8月27日公開予定

※開催日:2015年4月29日

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