年金や社会保障など「本丸の議論」のために必要なこととは 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プライマリーバランス 2020年度黒字化に向けたロードマップ[3]

竹中: ここまでの議論で出てきた「本丸の議論が必要では?」という指摘に対しては、可能であれば会場にいらっしゃる平さんと柴山さんにも何かコメントをいただけたらと思う。

会場(平将明氏:内閣府副大臣[以下、敬称略]): 消費税率引き上げを先送りしていることでもあるし、やはり2020年の“絵”をしっかり描かないとどうにもならない。それで党のほうでも歳出削減ということで、柴山さんや河野(太郎氏:自民党副幹事長)さんのような原理主義者が(会場笑)、正面から向き合っているところだ。私としては、問題の本質は、現状がどれだけ深刻かが国民の皆さまにきちんと伝わっていないことだと考えている。一方、政治家からすると財務省に対する信頼感がない状態だ。だから財務省にも信頼を回復してもらわなければいけないと思うし、我々政治家も、国民の皆さまの信頼を得ないと、厳しい改革にはなかなか進めないと思う。

会場(柴山昌彦氏:衆議院議員[以下、敬称略]): 平先生がお話しした通り、実はこれ、政治的なハードルが非常に高い。なぜか。小泉-竹中時代の、…これはカッコ書きということで言うけれども、「(強引な)歳出改革が格差を生んでデフレを招いた」と。そうした厳しい批判が、今は党内でも多数派であることはご存知だと思う。それで、「景気回復を下支えするためにも政府が支出しなくちゃ」というわけだ。日銀が国債を買って、国土強靭化の財政出動を行って経済の下支えを行い、「それでGDPを押し上げれば対GDP比の債務残高も小さくなるからいいじゃないか」という考え方が多数派になっている。「だから、むしろ歳出の枠を緩めるべきじゃないか」と、一部の学者先生も、自民党の…、ある種の人たちも思っている(会場笑)。だから河野さんと私は少数派だけれども、そこで今我々がどういった作業を行っているかについては、また後ほど発言の機会があればご紹介させていただきたい。

竹中: 今の状況はよく理解している。ちなみに、2003年時点で28兆円だったPB赤字は2007年に6兆円まで縮小した。消費税増税なしでGDP比6%から1%に縮小している。だから、「小泉さんがあと1年半やっていたらPBは黒字になっていましたね」と私はよく言うのだけれども、ではその間、歳出は削減したのかというと、していない。一般会計は2001~07年頃まで一貫して82兆~83兆円前後だった。それが今は100兆円近くになった。国民の財布の中身が増えなかった間、政府の財布は20%大きくなったというのが、ここ7年ほどの話だ。もちろん当時とは諸々の状況が違ってはいるけれども。いずれにせよ、先ほどの本丸という話も含めてしっかり議論をして、今夏にきちんとロードマップを出してもらいたい。で、そのためには、経済財政諮問会議や財政審が今行っているような議論の延長線上から、何か1つ2つ飛び越えないといけない。でないと、また先送りというような話に絶対なってしまう。

02011ae7866add8117f7d203c452b57a

では、具体的に何をすべきか。すべての面で思い切ったことができればいいが、総理といえどもそれはできないから何かを突破口にしていく。そこで皆さんが指摘したもののなかで何か1つ2つ、エポックメイキングなことをやろう、と。まずは、やはり資産売却を本気でやる。実は地方自治体には大きな資産をあるし、東京都は巨大な不動産屋さんと言えるほどだ。それを売却すれば民間経済も資産市場も活性化する。それで資産売却の一部として、コンセッションというものを成長戦略の一環としてやっているわけだ。この資産売却をどんな風にやっていくのかが第1のポイントになる。

で、第2のポイントは徴収をきちんとやること。社会保険料払っていない人がたくさんいて、どうも税金だって本当に払っているのかどうか分からない。そもそもルール通りに税金を払うというのは基本だ。これに関しては、浅野さんが国会で10兆円という数字を挙げて面白い質問している。「10兆円の取りっぱぐれがあるのでは?」と。たしか、財務省はその質問にきちんと答えることができていなかった。しかし、仮にそれが半分だの5兆円だったとしても、徴収できたら法人税を半分にできる。法人税2%引き下げるのでなく、香港並みの17%前後にできるわけだ。そうした、なにかこう、今までの延長線上にない議論もあり得る。

そして社会保障改革。私は来年から年金をもらえるが(会場笑)、「それ、要りますか?」と。本当に困っている高齢者の方々がいるわけだし、そういう人たちには手厚く給付しなければいけない。でも、もらわなくていい人がこの会場にだっていらっしゃるかもしれない。それでも受け取っている。「そういうことも含めて社会保障改革を本気でやりましょう」と。それと、今日はあまり議論にならなかったが、今は所得税の体系も歪んでいる。税金の本丸は所得税だ。日本ではいろいろな課税免除措置が重なりに重なって、所得税率10%以下の人が、なんと8割もいる。信じられます? イギリスには15%しかいない。ドイツやアメリカでも3割から4割前後だ。だから皆さま、「税金が高い」と言うけれども、実は多くの人がそれほど税金を払っていない(笑)。で、高額所得者の税率だけが普通、あるいはそれより少し高いわけだ。この所得税改革も1丁目1番地として議論しなければいけない。

また、社会保障改革を行うための「器」は必要だけれども、それが民主党政権から引継いだままのもので果たして良いのかという問題もある。それと実はもう1つ。これも今日は議論にならなかったが、地方交付税の問題もある。社会保障の次に大きい項目は地方交付税。これをどのようにしていくかというのも重要だと思う。まあ、このほかにも金融問題や人口問題や少子化対策等々、重要な問題はたくさんある。けれども、尾崎さんも言われた通り、まずは社会保障改革が行える環境をつくらなければいけない。そこで、私は今ポイントを6つほど挙げさせていただいた。そのすべてについて皆さんは多彩な意見をお持ちだと思うけれども、できれば1~2点ピックアップして、「これをやるべきだ」とのご指摘いただきたいと思う。

浅尾: やはり政治的に最も簡単なのは資産売却だと思う。今その資産を管理している人以外、売却されて困る人はいない。例えば1兆ドル外為特会に関して言えば平均のデュレーションが3.5年。で、負債のほうは3カ月のロールオーバーだけれども、112円がブレークイーブンだとするとおよそ8兆円の含み益だ。だから、満期を迎えた米国債をロールオーバーせず円に替えるだけで100兆円の負債が落とせるし、円高にならなければ含み益も使える。外為特会を運用している人たちにたかっている人々は、それに反対するかなとは思うけれども。あとは、先ほど申し上げた通りだ。ほかにも特別会計や土地があるので、そういうものを売っていく。これに反対する人はそれほどいないから、進めたらいいと思う。それで大きな金額が動いて、仮に国の借金の1割が減ったとなれば大きなニュースになる。

それと徴収に関しは、今の制度に問題がある。個人で払っていないのは当然問題だけれども、日本の雇用者は大多数がどこかの会社や法人に勤めているし、法人はすべて厚生年金に加入しなければいけないわけだ。ただ、所得税はお給料から天引きできるから、赤字の会社でも税務署に源泉徴収した所得税を払うことはなんの苦もない。その一方、厚生年金についてはお給料から天引きしても同額を会社が負担しなければいけない。だから、会社側からすれば厚生年金や健康保険に入らないインセンティブが働く。加えて、事態を悪化させているのは徴収主体が日本年金機構(旧社会保険庁)と税務署に分かれている点だ。調べてみて驚いた。会社設立時は法務局にて登記を行うわけだけれども、その内容はすべて税務署にも行くから、会計期が来ると「税金を払ってください」「申告をしてください」といった案内が来る。で、それを受け取ったほうは、赤字でも働いている人から源泉徴収をした所得税なら自分の懐は痛まないし、税務署を敵に回すと怖いから真面目に払う。

ところが、会社を設立したという情報は、実は社会保険庁には行っていなかった。だから、彼らはどこに会社があるかを知らない。従って、全国で275万の法人が確定申告を毎年行う一方、全法人に加入義務がある厚生年金に関しては、加入法人数を国会で聞いてみても、「分かりません」と言われる。で、「175万事業所が加入しています」という答えになる。ただ、本社と工場が別の事業所という会社もあるから175万事業所から類推される法人数は80万前後だと思う。で、それ以外の企業は…、大部分は中小企業というか小企業だけれども、実は厚生年金や健康保険に入っていない。これが大きな不公平につながっているし、徴収漏れの源泉にもなっている。その2点を是正することで、少なくとも公平感や公正感は保たれるのではないかと思う。

0380e25b205fbd8c5971305833943570

小黒: 2点ほど申し上げたい。所得税改革は、ある意味で非常に重要だ。どういう意味で重要か。先ほどの「税率10%以下の人が8割」という問題とは別に、社会保険料や労働所得税が一体で制度設計されていないという問題がある。例えば、健康保険料を払わない人たちが出ている原因の1つに、所得が低い人たちにとって保険料が逆進的になっているということがある。保険料は定額的なので。それを改善しなければいけない。これは社会保険料と税の所得再分配機能をどのように位置づけるかということも、改めて議論しなければいけないのではないか。

そうするとパンドラの箱が開いたような形になって大変だけれども、それでも議論は必要だ。これは年金問題とも実はつながっているし、生活保護ともつながっている。つまり、「どれぐらいの水準にするのがいのか」と。なぜ年金のところで保険料に下限があるのかというと、「ここまでは絶対もらえる」という定額があって、それと対になっているから。ただ、厚生労働省では従来からいろいろ議論しているけれども、その辺の議論と所得再分配の部分をなかなか突破できていない。でも、現状を放っておいていいのかというと、最終的には逆進性のような問題になって跳ね返ってきているわけで、やはりきちんと議論しなければいけないテーマだと思う。

それと、私としてはやっぱり社会保障の部分を議論しないと話が進まないと思っている。特に、社会保障費110兆のなかでも50兆という最大のウェイトを占める年金について。例えば、先ほど竹中先生もおっしゃった通り、きちんとした所得がある人や金融資産を持つ人に一定の年金を払う必要性があるのか。ただ、そこの部分については、昨今は環境が整ってきていると思う。マイナンバーの制度が動き出そうとしているので、今後はそれをストックである金融資産等とどのように組み合わせるかが最後の突破口になると思う。今は与党もその辺をいろいろやろうとしている状態だ。

問題は、どのようにして、そうしたストック情報を取れるような仕組みにするか。そこで1つアイデアを提示したい。銀行のクレジットカードは一定の期間で必ず更新が行われる。そこで、ストック情報を把握されるのを皆は嫌がるわけだけれども、「マイナンバーに登録しなければクレジットカードは発行できません」といった形にする。ATMカード等についても同じ。ただ、今はATMカードだけの場合、初回発行後は更新がなされない。なので、例えば5年おきぐらいに…、政府があまり表に出るのでなく、例えば全銀協の自立的な動きとしてカード切り替えを誘導し、マイナンバーに金融資産も登録させる。それで税務当局のほうにきちんと資産をはじめとした税務情報が集まる仕組みをつくっていく。そのなかで年金も考えていってはどうかと思う。少し時間はかかるけれども、その辺が現実的だと思う。この辺はあまり議論されていないが、金融庁がそういうことに本気で取り組めるよう、政府からもきちんとコミュニケートしていただくことが重要だと思っている。

竹中: マイナンバーとの関連で伺ってみたい。税と社会保障の、本当の一体化を表す政策の一つとして給付付き税額控除がある。1999年にブレア政権で採用され、2001年にはフランスやオランダも採用された。これ、小黒さんは賛成だろうか。

小黒: 私はやるべきだと思う。今まではマイナンバーのような制度が整っていなかったから、それができなかった。でも、今後はもう準備室を立ち上げて、すぐにでもやっていただきたい。期間も決めて移行していただく必要があると思う。

尾崎: 政治的には大変であっても、「先々の財政を考えるとやらなければいけないのでは?」と思うのが、高齢者の定義の見直しだ。以前、私は議会で60歳になる議員の方に、「知事、僕は高齢者だと思いますか?」と聞かれたことがある。めちゃくちゃ元気な方に。実際、60歳は高齢者だろうか。65歳や70歳はどうだろう。医療の発達ゆえに医療費はかかるようになったが、結果として人は元気になった。だから、もう一段頑張っていただくことも考えるべきではないか。また、給付についても少しずつ、例えば一部の年金について給付開始年齢を遅らせるという議論は、生物学的な流れとしても必要だと思う。そうした定義の見直しに伴って、やらなければならないことは膨大にある。だから社会保障改革の議論を行う際は政府を挙げて、その影響に関しても徹底的に議論を積み重ねて欲しい。それによって極度の痛みを緩和したり、本当に困っている人にしっかり手を差し伸べられるようにして欲しい。

ただ、これは小倉先生が言われたことにもダブるけれども、「60歳じゃない。65歳からだ」「いやいや、70歳からだ」と言っても、個人差というものがある。その個人差にはきめ細かく対応できるようにする必要があるけれども、まさにマイナンバーの導入などによってそうしたことができる環境が整ってきた。もちろん、あまり細かく個人の状況を把握できるようにすること自体については大きな議論があると思う。ただ、それでも個人差を正確に把握できる環境になってきたのは間違いないと思うので、期は熟してきたのかな、と。いずれにせよ、今後は国政の場でも「高齢者って一体何歳からなのか」という議論は避けて通れなくなるのではないか。

竹中: 現在、高齢者の定義は65歳ということだけれども、ぜひ、来年の私の誕生日までにそれを引き上げていただきたい(会場笑)。

→参加者全員に聞く、2020年消費税率は何%になっているか。 最終回は7/31公開予定

名言

PAGE
TOP