震災からの本格復興のために今すべき仕組み作りとは? 

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復興 ピンチをチャンスに変える思想と行動~持続可能な地方創生モデルを東北から~[3]

高島:ここまで、皆さんには震災で生まれた新たな動きや兆しについて伺ったけれども、続いては「それを受けてどこへ行くのか」という話もしていこう。そこで、ニューオリンズの事例を紹介したい。10年前、ハリケーン・カトリーナで壊滅的な打撃を受けたニューオリンズは、現在、人口10万人当たりの起業家数で全米1~2位となった。しかも、現在は「マグネットシティ」と言われ、タレントが集まる街として全米第1位とされている。それで、今はアントレプレナー大会のようなものも開催され、全米から起業家が集まっているという。特にソーシャルビジネスと言われるような、たとえば貧困問題の解決をビジネスという手法のなかでやっていくといったアプローチに関して、ニューオリンズが今はメッカになっているそうだ。

僕らの仲間であるETICの宮城(治男氏:同NPO代表理事)さんが最近そこへ行っていろいろと話を聞いてきた。すると、現在のような状態になるまで10年かかったという。で、「1番辛かったのが4~5年目ぐらいだった」と。それまでは「復旧」というか、元に戻すということができていたけれども、「そこから先、どこに行っていいかよく分からなかった」そうだ。そこで道を見つけていかなければいけなかった4~5年目が、実は一番大変だったという話を聞いている。

で、ニューオリンズではそれまで「リカバリ」(復旧)や「リビルディング」(復興)と言っていたのだけれども、4~5年目から「ルネサンス」というキーワードを掲げていった。そのうえで、「街を新しくつくっていくんだ」と。そうしたニューオリンズのビジョンは一つの事例として参考になると思う。一方の日本ではオリンピック・パラリンピックが2020年に開催されるわけで、2011年から今年一杯が最初の5年、そして来年から2020年までが次の5年として位置づけられると思う。そうした未来に向けて東北ではどんなビジョンを持ち、アクションを起こすべきかとお考えだろうか。

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岩佐:経営者の立場で具体的なことを申し上げると、やっぱり農業の集積ということになると思う。今、宮城県の仙南地域は恐らく日本でも随一の施設園芸集積地になってきている。しかも、それは世界的にも割と大きな規模になってきた。また、今は国全体としても「農業をなんとかして盛りあげていこう」といった動きがある。しかも、日本の食べ物はとっても美味しいということで海外でも高く評価されている。

そういうなかでやるべきことは、徹底的に農業で投資を行い、東北を世界一の施設園芸集積地にすることだと思う。また、そのうえで海外へ売っていく際は産地間連携をしていく必要がある。今はそれがなかなかできておらず、オールジャパンの動きになっていない。香港で東北の苺と九州の苺が戦ったりしている状態だ。でも、少なくとも東北は連携できると思う。これは農業だけじゃなくて水産業もそうだと思う。それで東北として世界に打って出て行く。そして東北からのイニシアティブとして、一次産業で一点突破するということが、現実的には私たちにできることじゃないかなと思う。

高島:そうしたスマートアグリ構想のようなものにはすごく大きなチャンスがあると思う。それを実現するために今やらなければいけないことはなんだろう。

岩佐:マネジメントのできる人材が不可欠になる。やはり人の問題が一番大きいと思う。なんとなくつくって、できたものをすべて農協に出荷するわけではない。決められたときに決められたものを安定的に納品して、コストも厳格に管理しなければいけない。これには相当なオペレーションやマネジメントのスキルが必要になるけれども、今はそのための人材が圧倒的に不足していると私は思う。

高島:一力さんは、これからの5年をどうお考えだろうか。

一力:やはり東北には農業と水産業に関して一歩先を行く恵まれた資源がある。だから商品に付加価値を乗せてブランド化していく必要があると思う。実際、震災後は「ピンチをチャンスに変えよう」ということで東北でも多くの方が新しい事業にチャレンジしているが、なかなか形になっていない。たとえば、津波を被った塩害農地に野菜工場をつくり、震災対策交付金も使いながら水耕栽培を復興モデルにしようということで取り組まれた方々もいる。でも、そこは残念ながら昨年、債務超過で操業停止に追い込まれてしまった。やはり販路の開拓以前にマネジメントが大切なのだと思う。ものをつくって、そこに付加価値を乗せて売ることもできて、経営全般がしっかりしていないとダメなのかな、と。ただ、今後もさらに多くの方が挑戦をしてくれると思う。

それから、被災地ならではの新しい産業として、減災・防災産業というのもあると思う。あのときの経験として、「こういうものがあったら良かったね」「もっとこうすれば良かったね」というものがある。そこで、防災機器メーカーや地震・津波の速報システムを扱うIT企業にチャンスが出てくる。彼らに加えて、警備、医療、食品、防災教育または避難訓練まで含めて、地域全体で減災・防災産業の拠点にするという構想を我々は提案している。先日開催された世界国連防災会議でもそういうことがずいぶん議論された。被災地として、たとえば「いかに瓦礫のなかでも避難するか」といったシミュレーションもできる。そこで考えるべきことがたくさんあると思う。

キーワードの一つは、国連防災世界会議で安倍総理も唱えていた‘Build Back Better’という考え方だ。より災害に強い地域をつくるということ。「より良い復興」という捉え方でもいいと思う。より良い復興という意識は、単なる防災会議のキャッチフレーズでなく、被災地全体で一人ひとりが肝に命じるべき言葉だと思う。‘BBB’ということで子どもでも覚えやすいと思う。

高島:政治の視点で、階さんはどんな方向に持っていきたいとお考えだろう。

階:明るい目標として、釜石市が2019年ラグビーワールドカップの会場になることが決まった。「その2019年に向けて被災地の復興を進めていこう」と。インフラはもちろん、仮設住宅から普通の住まいに戻っていただいて、そして今までにない街づくりをしていきたい。やはり、ある程度人口を集積して賑わいのある街にする必要がある。それによって、日本の地方が抱える問題を解決する一つのモデルケースになって、各地に希望を与えていくといったイメージを私は持っている。

あと、先ほどのスマートアグリという話を聞いて思い出した。水産加工業でもさらなるスマート化が必要だ。たとえば水産加工業は3K産業と言われている。「きつい、汚い、苦しい」と。けれども、大変な肉体労働のなかには重い魚類を手で運ぶような部分もある。しかし、そうした現場をトヨタの方に一度見てもらうと、「ここはこうすればいいよ」といったアドバイスを受けて、ちょっとした工夫をして改善できるということもあるようだ。そういう部分でも企業の知見を活用してスマート化を進めることができたら、三陸の基幹産業である水産業でもさらにいい成長できるように思う。

高島:先ほどの‘BBB’と同様、より良い水産業にしていくチャンスがある、と。山田さんはどうお考えだろう。

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山田:産業の復興も重要だけれども、最終的な目標は、昨日からG1サミット でも議論になっている通り、人口減を食い止めることだと思う。それで子どもたちがたくさん生まれて育っていくという風にしない限り、最終的には何をやっても日本は縮んでしまう。その意味で最先端地域になればいいなと思っている。

たとえば、学生さんたちの進学支援をしていて感じることがある。これは親御さんを亡くされた学生さんだからかもしれないが、「夢を持って頑張る」と言ってくれてはいるものの、比較的こじんまりしているというか…。たとえば、「亡くなったお母さんとの約束だったから理容師さんの仕事をやりたい」といった夢なわけだ。これ、素晴らしい。ただ、まだ少し打ちひしがれているというか、小さな希望のような感じもする。

でも、やっぱり岩佐さんのお話なんかを聞いていると、非常に面白そうだという感じがするわけだ。だから、岩佐さんのような活動が、ひょっとしたらまだ高校生にあまり知られていなんじゃないかと思う。そこで、まさに成功しつつあるヒーローというものをもっと皆に知らしめたい。やっぱり高校生は今から変わっていく人たちだから、その人たちがもっともっとアグレッシブな夢を持って欲しいと思う。

それで、たとえば大学は東京の学校を選んでも、そのあと早く地元に帰ってきて、たとえば岩佐さんの指導を受けて自分のやりたいことをやっていって欲しい。あるいは立花さんのように漁業をしたり。ニューオリンズのようになるにはもう少し時間がかかるのかもしれないけれど、とにかく地元へ帰ってくる。それで楽しく生活して、ハッピーだから「子どももつくって家庭をつくろう」と考えるような、そんな循環になればいいなと思う。まだ少し夢のような感じもするけれども、とにかくそこへ持っていくために皆で考えていくべきだと思う。

高島:ではここから、どういったアクションを取っていけば良いか、会場の皆さんとも議論していきたい。質問でも結構なので、何かある方は挙手を願いしたい。

会場(立花貴氏:株式会社四縁代表取締役/一般社団法人東の食の会理事):今から3年半前、山田会長のところから人材を一人お借りして、その1年後、さらにもう一人お借りして、今は二人の出向社員の方に仕事をしていただいている。それで地域の雇用を生み出すため、今夏オープン予定の子供向け複合体験施設をつくる活動等に携わっていただいたりしている。また、漁師さんたちとの会社も応援していただいたりしているところだ。ただ、僕はこれまでのおよそ3年半で1000社ぐらいにお願いをしてきたが、人材をお貸しいただけたのはロート製薬さんと別の1社のお一人だけだった。だから今は3人だけ。もう少し民間の優秀な人材に地方で活躍していただきたい。そうした人材に、被災地だけでなく産業が衰退して人口が減少している日本中の地域に飛び込んでいって欲しいし、あるいはそれを制度化していただきたい。

高島:「こうしたら人材を出す側の企業でもメリットを出せるんじゃないか?」というようなアイディアは何かあるだろうか。

会場(続き):今は制度上なんのメリットもないというか、手弁当で来ていただいている状態だ。それを何か税制面で支える、あるいは何か優遇するような制度があれば、さらに加速するかなと思っている。

高島:たとえば、学生がそれで単位を取得することができるようにするというのはどうだろう。

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会場(続き):今は学生インターンを国内外から20人ほど受け入れている。で、そのうち何人かは僕らのところに来ている企業の方々…、年間3000人ほどの方々と一緒に活動しているけれども、その企業に入ったりしている(笑)。まあ、たしかにそれで単位が取れるならもっとたくさん来てくれるだろうなと思う。

階:行政をサポートするような人たち、あるいは行政と地域住民の橋渡しのようなことをする人たちに対しては、復興支援員という国の仕組みがある。釜石あたりでも若く優秀な人たちが集まっていて、そこで行政のサポートをしているということがある。ただ、ご質問は企業に直接出向ということだろうか。

会場(続き):「新規事業をやれ」と言われたらできるような人に、地域あるいは地方の産業に飛び込んでもらって、新しい事業や産業を生み出して欲しい。ただ、そのためには、経営感覚もマネジメント経験もあって、営業もできるような人がいい。難易度は相当高いけれど、民間企業にはそういう人材がたくさんいると思うので。

階:別セッションで、安渕(聖司氏:日本GE株式会社代表取締役/GEキャピタル社長兼CEO)さんが、「日本企業には若いうちに経営の勉強をする機会が乏しく、40ぐらいになってやっと中間管理職になる。しかし、海外では20代から経営の修羅場を経験させて人材をストレッチしていく」といったお話をしていらした。そうした、日本企業ではあまり進んでいないような、若い人を経営人材として鍛えるような場としての東北というのも有りだと思う。そこで国としても、その適地となる被災地に人を送る企業を支援していく。「これは一つのアイディアだな」と思いながら、今はお話を聞いていた。ぜひ研究してみたいと思う。

会場:3点お伺いしたい。東日本大震災で被災した地域の多くは、もともと過疎の問題を抱えていた。そうした地域における人口流出の問題にどう取り組んでいけば良いとお考えだろう。また、新たな産業づくりを後押しする具体策として、どういった支援が必要になるかも伺いたい。あと、その産業づくりに関連するが、農業あるいは減災・防災の集積地とするためには、どういった取り組みが必要だろうか。足りないのは民間の動きなのか、あるいは国の法整備なのか。以上3点、お伺いしたい。

会場(鎌田由美子氏:カルビー株式会社上級執行役員):岩佐さんは大変なスピードで海外へ出られたと思うが、そこに地元の方はどれほど関与して、金銭的な面も含めて地元へのリターンがどれほどあったのだろう。また、海外での成功がドメスティックな地元の方々の意識改革にどれほど寄与したのかも伺いたい。

それと、人材の流動化に関して一つ提案をさせていただきたい。たしかに企業には年功序列やヒエラルキーがあるため、若い人々がトライできる場が少ない。ただ、特に大企業にいる20~30代の人々は大変優秀であることが多い。そういう人たちは「ぽん」と外に出されたら、たとえば営業や経理が分からなくとも、その場で勉強して動けるようになることが多い。一方で、たとえば今はダイバーシティに関して、「なでしこ銘柄」というものに認定されると株価が上がったり企業価値が注目されるようにもなるわけだ。従って、人材流動化に関しても政府のほうで何か認定するような仕組みをつくってはどうか。別に若手でなくてもいいが、たとえば「1年以上10人以上出した企業にはシルバーマークを、3年以上30人以上出した企業にはゴールドマークをあげますよ」と。地域活性企業として国が認定するような形にしてはどうかと思う。お金ではなく表彰みたいなものがあるだけでも、ずいぶん世間的には変わると思うので。

岩佐:まず、地元へのリターンと関与について。現在は一緒に創業した農業歴40年のベテラン農家の方が、インドで農業の指導をしている。結果的に、地元の人たちとインドの人たちが完全に結びついた状態になってきているというのが面白いと思う。それでインドの農家の方々も日本へ研修に来られたりしている。ただ、金銭的なリターンには残念ながらまだまったく出せていない。インドでの事業は成功しつつあるし、マーケットも見えている。ただ、生産体制が量的にまったく追いついておらず、インドの事業で経済的インパクトをもたらすまでは至っていない。

あと、インドへ行ったことで意識が変わった面はあると思う。まあ、私もそうだけれども、実際のところ、今東北に来ている起業家はかなり疲れてきている。いい話ばかりじゃないので。3~4年経って、やはり東北の根強い保守性を感じているようなところがある。そうした保守性をどんどん壊していかないといけない。そこで、「震災後に創業した企業がインドに行きました」なんてニュースが出ると、「なんか面白いことをやっている人がいるな」となる。それで地元の農家の方や農協の方が、「あいつらもやっているなら俺もやらなきゃ」となる。我々がそういう刺激物になっていると思う。それは同時にチェックされるということでもあるから、厳しい目で見られることもある。でも、今はとにかく刺激物として存在できているのかなという感覚がある。

山田:ご指摘のような部分で評価していただけたら、うちの株価ももう少し上がるのにな、と(会場笑)。まあ、少なくとも、企業としてのやりがいというかメリットは十分あると私は思っている。だから我々がサポート企業側の、一つのモデルケースになれるよう、もうちょっと突き抜けることができたらと思っている。そうすれば、ご提案していただいたような制度導入の呼び水にもなるので。

あと、人口流出への対策については、簡単な答えはない。ただ、これほど追い込まれて変わるチャンスが出てきた東北でも新しい兆しがつくれないとなると、他の、まだぬるい地域はなかなか目覚めることができない。今はそういう思いで懸命にやっている。今後は、次のステップとして宮城県の女川町に入り込む予定だ。そこで、昨日いらしていた女川町の須田(善明氏)町長とともに、特に健康と子育て環境を良くしていくような取り組みを新しく始めようという話になっている。こちらのほうは形も答えもまったく出ていないけれども、そのうち何か発表できればと思う。

階:人口減に関して言うと、自然減少と社会減少の両方進んでいるというのが、東北をはじめとした過疎地の厳しいところだ。まずは社会現象を止めたいし、そのために仕事の場をつくりたい。その意味でも、岩佐さんが掲げていた「10年で100社、1万人」というのは大変分かりやすいと思った。そうした地域創生のKPI(Key Performance Indicator)を、今は国のほうでもつくるように言っている。そうして目標を立てて、官民一体で仕事の場をつくるというのを最大の目標にすべきだと思う。そこで、先ほどラグビーワールドカップの話をしたけれども、やはり観光やスポーツイベントは外からお金を取り込んでくる仕事として最もやりやすいと思う。だから、それらをきっかけにして雇用をつくりたい。それと農業に関しては、岩佐さんが先ほどおっしゃっていたノウハウを教えてくれるという部分は、ぜひ岩手でもやっていきたい。

それともう一つ。三陸沿岸には地理的な制約があり、これまでは小さな街が点在している状態だった。でも、今回の復興で高速道路をはじめとした交通網が整備されたことにより、たとえば今まで1時間かかっていた隣町に20分程度で行けるようになってきた。そうなれば、今までは点在していた拠点がまとまって、10万人規模の街が岩手県でも2~3つできるようになる。そういう部分から産業集積の芽をつくっていけたらと思う。人や街が集まれば当然そこから産業も生まれると思うので。

一力:ご質問にもあった通りで、いろいろとアンケートをとってみても「地方でチャレンジしたい」と言う大手企業の方は多い。ただ、地方には雇用の場が少ないとか、起業する人が少ないとか、いろいろな問題がある。従って、私としてはベンチャー支援の仕組みをがらっと変えることを提案したい。各省庁にいろいろな起業家支援があるけれども、特に被災地の起業に関しては復興庁でまとめるとか、知識経験実績のある方を復興庁のアドバイザーとして活用するといったことをしてはどうか。それで、人口規模が小さくても持続可能な、最先端のモデルが東北で実現できたらと思う。そういう気概や希望を持ち、東北再生を日本成長の起爆剤にして東北から日本を変えていく。それが、これまでいただいた多大のご支援に対する恩返しになると思う。

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高島:今日の議論を通して、現在の東北ではいくつもの新しい事例が出てきていることも分かったと思う。また、ニューオリンズがやっているようなことを超えられるどうかという点に関して言うと、人材が大きな肝であるというような結論だったと感じる。そして、そうした人材を集めるためには、「復興はしんどいよ。辛いよ」ではなくて、「復興は楽しいよ。これからすごいことになっちゃうよ」という風に、人々を惹きつけるような未来を僕らが語っていくことが大事になるのかなと思った。ぜひ皆さんにも明るく、復興の話をしていって欲しい。ありがとうございました(会場拍手)。

※開催日:2015年3月20日~22日

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