英語教育とIoT、海外との圧倒的な差をどう埋める? 

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大学入試改革と中等教育[3]

藤原:続いて日本の英語およびICT教育についても議論したい。これ、圧倒的に遅れていることは誰もが認めるところだ。それをどうリカバリするか。入試制度改革とも絡むと思うけれど、ここに関して現場ではどんな危機感や要望があるだろう。

漆:ICTに関して言うと、以前総務省というか、ある委員会にいたとき、「あ、ダメだな」と思ったことがある。いろいろな人が集まって法案をつくる議論をしていたのだけれども、皆、リスクばかり口にする。「子どもにネットを開かせたら危ないからホワイトリストにしましょうよ」と、責任回避の話になる。今も、たとえばタブレットを持って家で勉強するといった授業があるけれども、地域によってはネットにつながらないタブレットだったりする(会場笑)。この点、海外では交通ルールと同じで、「リスクもあるけれどもメリットもあるから」という教え方をする。でも、日本では子どもをリスクから切り離し、囲ってしまっている。で、そのあとは世の中に出して、猛獣がいる社会でも「一人で戦いなさい」みたいな話になる。そういう海外との差がICTでは特に激しい。

ついでに言ってしまうと、情報科の教員免許や教科書というのもナンセンスだと思う。IT関連の会社をやってらっしゃる方なら分かると思うけれども、もう、教科書つくったって途端に古くなる。免許取ったって勉強していなければすぐ古くなる。だからICTについてはそういうものと少し切り離して、国際レベルでやったほうがいいと思う。

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藤原:恐らく目先が利く私立は高校でタブレットを買わせちゃっていている。以前、近大付属でも授業をしに行ってみたら全員がiPadを持っていた。品川女子もそうだ。私立の高校からタブレットを持つようになって、そこで公立と私立に相当差が付いてしまう感じがする。このあたり、下村さんはどうお感じだろう。

下村:タブレットに関して言うと、できれば5年以内に、すべての小中学生に持たせたい。ただ、ご指摘についてはその通りだ。昨日も文科省の担当者が私のところに、「デジタル教材の検討会をつくりたい」ということで名簿を持ってきた。そこにあった名前は学校関係者が多かったのだけれども、1年かけて検討した教材なんて、もうその頃には使えないというほど技術は日進月歩で進んでいる。だから、いろいろ言われるかもしれないけれども、利益相反しないような形で専門家を入ってもらう必要がある。そこで随時やっていかないと、とにかく1年前のことやっても仕方がないので。

あと、ソフトのほうは、もう役人的な発想では無理だ。だから、国が一律にやるのではなくて、最先端で活躍している民間の方々にどんどん協力してもらう。すでにいくつかの自治体ではそれでチャレンジしているところもある。それでどちらかの業者と組んで、子どもにとって成果を最も高めることができるようなソフトを開発してもらう。そういう自由度を持たせたほうが早いと思う。

漆:あと、子どもが教えるという視点もあると思う。今、うちでは実験的にプログラミングの授業を中1からやっているけれど、教員より圧倒的に子どものほうが早く覚えるし、もう上級生が下級生に教えられるようになっている。だから、なにかこう…、子どもが子どもに教える仕組みのようなものをつくったほうがずっと早いと思う。

藤原:そのほうがずっと早いね。武雄でもそういうことが起きている。ちなみに武雄は安くしようということで、スペックを落としたものを中国で独自に生産させた。ソフト込みで3万円前後だ。それなら教材費として月1000円取れば3年間でリクープできるわけで、全国の公立小中学校でできると思う。今は恐らく教材費を2000~2500円徴収しているけれども、その半分をデジタルに回すだけで一気にできる。

漆:うちもまさにそれでやっている。

藤原:続いてグローバル教育に関して。小林さんに吠えて欲しい(会場笑)。

小林:グローバルというと英語教育という話によくなるけれど、大切なのはそこではないと思う。「大事なのは多様性ではないですか?」と、いつも申し上げている。自分にとっての当たり前が当たり前でない人とコミュニケートして戦って…、戦うというか一緒にやっていく時代だから。あと、とにかく変化のスピードが早くなっているから、先ほど申し上げた問題解決能力も大切だ。しかも、解決するだけじゃなくてそもそも何が解かれるべき問題なのかを発見する力が求められていく。それができる人こそグローバル人材になるというか、国内外問わず必要になるのだと思う。

で、英語について言うと、やっぱり日本人の先生方に「はい、英語やってください」といきなり言うより外国の方にやってもらうほうが良いと思う。それで、たとえば私どもの学校では先生の8割9分ぐらいが外国の方だ。それで日本の一条校として認定いただいていて、皆さん、特別免許というのを取らせていただいている。これは長野県内のどの学校でも通用する10年間の正教員免許だ。これは教育職員免許法のなかで、かなり緩やかな制度としてある。ただ、その運用状況が都道府県によって大きく違う。それを変えるだけで、教えられるべきことと教えることのできる人とのギャップをずいぶん埋めることができると感じる。ただ、それを文科省さんにお願いすると、「そこは都道府県に任せていますから」となる。そこで何かできないかなと思う。

藤原:英語教育については奈良の西大和学園という学校がすごいことをしている。高校の実技教科を英語で教えている。これは絶対アリだと思う。体育や音楽なら、たとえばリアルな鉄棒が目の前にあったりするから英語でやっても分かる。抽象的なものを英語で覚えるのは大変なので、そうやって覚えるほうがいい。

下村:私は、日本の受験英語は完全に失敗だったと思う。それはセンター試験自体が問われるという話だと思うけれど、「読む」「書く」「話す」「聞く」のなかで、センター試験ではリーディングが200点でリスニングが50点。それだけやっていればよくて、話す力や書く力が問われない。でも、その四つすべてやらなければ語学ではない。だから6年間勉強したって喋れない。これ、外国から見たら「馬鹿なのか」という話になってしまう。そうじゃなくて英語のあり方そのものが問題なのだと思う。

従って、センター試験ではなく、TOEFLやTOEICや英検も含め、今お話ししたような四つの能力を問う民間の試験を、大学入試の代わりにできる形にしたい。「うちの大学はそこで何点取っていれば、もう受験英語はチェックしません」と。そうした試験は受験料が高いので、そこをもう少し平準化して安くしたうえで活用してはどうかと思う。そんな風にして、民間の良いものも英語教育に反映していく。無理にセンターで受験英語のようなことはしないほうがいいと思う。

藤原:これ、皆さんも文句ないと思う。むしろ「早くやってよ」と(会場笑)。

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下村:実は80大学ぐらいが部分的に始めている。あまり知られていないが。

藤原:さて、そろそろQ&Aの時間になるけれども、何か言い残したことがある人は(下村氏挙手)。はい、3分以内でお願いします(会場笑)。

下村:たとえ国内にいても今後はますますグローバルな時代になるわけで、やはりグローバル教育は必要だ。で、英語はもう共通語だから学ばざるを得ない。ただ、それともう一つ、多くの日本人は海外へ行っても日本のことが分からないし、語れないという問題がある。これは諸外国から見ると…、はっきりは言われないけれども、「日本人は人間として魅力がないね」という話になってしまう。結局、日本の文化や伝統や歴史といった、アイデンティティとなるものも一緒に教えなければ真のグローバル人材にはなれないと思う。日本人としての根底部分をしっかり押さえたうえで、世界でも初めて通用できる。我々はその両方をしっかりやっていきたい。歴史教育でも、「いい国つくろう鎌倉幕府」とか、そういうことばかりやったって意味がないわけで。

藤原:鎌倉幕府成立なんて1192年じゃなかったですからね(会場笑)。

下村:実際はね。むしろ、「なぜ武家社会が勃興したのか」といった歴史的背景を学び、今の時代や思考と重ね合わせて考えるような作業が大事なのだと思う。

小林:軽井沢の学校をつくったとき、一番苦労したのはお金集めだったけれども、そのほとんどが校舎づくりに使われた。ただ、たとえばオランダでは200人の子供が集まったら国が学校をつくらなきゃいけない。で、そのときの施設は、(下村氏を向いて)たとえば校舎の広さ等まですべて決まっているわけではないんですよね?

下村:基準はあると思う。ただ、私立でも公立でも、親御さんが「200人集めました」と言えば国が責任を持って学校をつくらなくてはいけない。

小林:とにかく、ニーズは多様化して変化のスピードが早くなっている。そこで、たとえば「校舎が一定の大きさでなければ学校をつくることはできない」といった縛りが多いと、変化のスピードが遅くしてしまうという懸念がある。

漆:これは私が言うことではないかもしれないけれど、財源。教育に関するGDPあたりの財政支出割合がOECD最低ということを、もっと皆に知って欲しい。オランダは公立でも私立でも教育費は無償。大学まで無償で、さらに大学生はバイトしなくて済むよう、おこずかいまでもらえる。サウジアラビアもそうだ。そういうところの学生と日本人学生は戦えないのではないのかなと感じる。だから「未来に投資を」と。

→大学入試改革と中等教育[4]は6/11公開予定

※開催日:2015年3月20日~22日

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