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IR、人手不足の対応…観光活性化のために必要なこと

投稿日:2015/06/04更新日:2021/11/30

関西・観光客“倍増”計画 ~2020年に向けての挑戦~[4]

星野:ではそろそろQ&Aに移ろう。ご質問でもご提言でも、なんでも結構なのでぜひ発言していただきたい。

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会場(古川康氏[佐賀県知事]:以下、敬称略):僕は「Airbnb」ユーザーだ。あれは認めるべきだと思う。今は、京都へ行っても宿を取れないことがたくさんある。取れたとしても11万円だったり(会場笑)、「トリップアドバイザー」で探しても出てこなかったりする。そういうときは「Airbnb」しかない。海外でも同じ。「ミラノサローネ」でミラノへ行ったときも、普段は2万円の宿が6万円だった。普通の値段と泊まれる宿は「Airbnb」でしか見つからない。だから、本当に観光客のことを考えたら「Airbnb」は必要だと思う。「Uber」も同じ。カリフォルニアに行ったら普通にタクシーつかまえるほうが大変で、「Uber」のほうが使える。そういったことをぜひ考えて欲しいと思った。

それともう一つ。海外だと1日乗車券は24時間で計算しているところが多い。しかし、僕の記憶だと京都の1日乗車券は午後2時に買っても午後6時に買ってもその日しか使えない。あれ、24時間にしてもらえませんか。佐賀にはそういう切符がない。だから、その代わりということで最初の24時間は利用料金が1,000円になるレンタカーキャンペーンを実施したりしている。そういうことをやったりしているので、「京都でもそういうことをやってもらえたらな」と思った。

会場:カジノについてはどうお考えだろうか。その是非を、そうお考えになる理由も併せてお聞きしたいと思った。

会場(宋美玄氏:産婦人科医・性科学者):たとえば京都で産婦人科の大きな学会があったりすると、宿泊者がたくさん溢れて皆大阪に泊まったりする。たとえば広域の大きな学会は神戸や大阪に譲って京都であまり開催しないとか、そういった調整もあると思うが、学会は観光産業でどのように位置づけられているのだろう。

門川:まず、1日乗車券に関して言うと、市バスは700円から500円に下げた。大変人気がある。地下鉄は600円だ。1番長い区間が往復680円だけれども、1日乗車券で600円にしているから観光客にとっては格安になる。従って、「歩いてこそ京都」ということで、公共交通優先の取り組みを今は懸命にやっている。また、京都バスも嵐山嵯峨に乗れるようにした。これも大変評判がいい。そういうサービスをまず強化していきたいと思っていて、24時間というのはちょっと堪忍して欲しいなと(会場笑)。

あと、コンファレンスについて。京都で国際会議をやると1.5~2倍の参加者になる。国際会議というのは、大阪と神戸と京都で、あるいは横浜と取り合いしているのではない。3大陸ないし5大陸で順番に回ってくるのだけれども、「次はアジアでやる」となったら、これは香港と上海と日本の取り合いだ。そうなると、「京都なら勝てる」といことで、国内は京都に決まる。それを大阪にすると、「それなら上海や香港のほうがええわ」となるので、世界的にも「そうだ、京都へ行こう」(会場笑)。これは私が言っていることではないけれども、「そうだ、京都へ行こう。しゃあない、大阪で泊まろう」と(会場笑)。とにかく、京都の場合は地下鉄烏丸線が奈良まで走っているし、東西線は大津石山まで行く。大阪の地下鉄は大阪市内しか走らず、相互乗り入れしていないわけだ。これからやられると思うけれども。そういうことで、開かれた取り組みをしている。国際会館から奈良まで乗換なしでたった1時間だ。京阪さんでもすっと行けるから、大きな目で見て関西全体で頑張ったらいいと思う。よろしゅう。

星野:前段でお話ししたスイスが観光都市1位の理由として、レールウェイパスもある。これがすごい。すべての鉄道会社さんやバス会社さんで使える。たとえば僕らはJRでも西日本や東日本があるというのを、国鉄が分かれたときから歴史を知っているから分かるけれども、海外の人はまったく分からないわけだ。従って、こういうパスの連携も不可欠だと思う。下條さんはこの点についてどうお考えだろう。

下條:当然、1枚のICカードですべての鉄道を利用できるのが理想だ。それに向けて努力していて、現在は関西私鉄系の「PiTaPa」(ピタパ)とJR系の「ICOCA」(イコカ)の両方が使える。これは私ども京阪で最初に使えるようにした。その流れで皆やったらいいと思うのだけれど、私どももなかなか弱小で大きな勢力には(笑)。

福山:IRに関しては…、僕は今日、久しぶりに政治的な話抜きでここに座っていられると思ったのだけれども、今は記者さんから毎日聞かれていることと同じことを聞かれて困っている(会場笑)。僕は星野さんとは友人なので、そういうことでご推察いただければと思う。今は政調会長をやっているので、私が今日何かを発言すると明日の新聞にすべて書かれる。そうすると党内でもいろいろあるので。ただ、現状に関して言うと、国会で間に合うかどうか…、ぎりぎりのラインだと思う。地方創生法に関する法律や女性関連の法律もあって、そこと同じ委員会になるので間に合うかどうかは微妙だ。各党で意見がばらけているし。恐らく11月中盤ぐらいからこの話題が一気に出てくるんだろうなという、そういう相場感のお話で勘弁してください。

星野:IRについて僕の見解を一言だけ。今は規制緩和という感じになっているが、実は市町村が手を挙げる形になっている。で、手を挙げた市町村がいろいろな計画を国に提出して、それで国がどこにやらせるかを決める。1987年にリゾート法が施行したときも、まさにこのスキームだった。それで結果はどうだったかというとリゾート法でできたリゾートのほとんどが破綻している。だから、規制緩和は本来、「皆自由におやりください」という形にするべきだと思う。青少年への対策も含め、「安全・安心の基準さえ満たしてもらえたら、どこでもできますよ」と。これが本当の規制緩和だと思うけけれど、そういう議論では国のレベルではなかったのだろうか。今回は国が5箇所指定するという噂だけれども、僕は過剰投資になると思っている。

福山:まだ中身も詳細は決まっていない。1年先送りの法案だ。

星野:現在のようなスキームだと、大きな投資をするところに決めがちだと思う。そうなると結果的に過剰投資となって、その事業自体がうまくいかなくなるんじゃないかという危険を感じている。なので、本当の意味での規制緩和をして欲しいと私は申し上げているが、そう言い続けたら最近は呼ばれなくなってきた(会場笑)。

須田:学会に合わせて外国人観光客の宿泊場所を手配する立場から感じていることがある。よく、社内でホテルを予約する部署の人間が、「やばいっす。その日、嵐が来ます」と言ったりする。台風のほうではない。「ジャニーズのほうの嵐が大阪に来る」と。そうなると、その周辺はすべて嵐のお客さんで埋まってしまう。これは学会も同じだけれども、そんな風にして宿泊施設を大規模に押さえてしまう行為等を、全体的な視点から誰かがマネジメントしてくれたら我々は非常にやりやすくなる。

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会場:「relux(リラックス)」というホテルや旅館の予約サイトを去年から運営している。そこで外国人向けのサービスも始めた。で、今日はマクロな話が多かったけれども、ミクロに見たとき、訪日旅行客の方が日本にどういったことを期待しているお考えだろうか。要は、日本はどこと競合しているのかと思っていた。どこの国と迷って日本を選んだのか、あるいは選ばれなかったのかがすごく気になっている。

須田:僕としては、インバウンドの外国人観光客のマーケットを一つにして見るべきではないと思っている。国や所得水準によって求めているものがまったく違うので。10カ国でやるなら10の市場とお付き合いするといった考え方で、いろいろな戦略・戦術をつくっていかなければいけないと思っている。

で、我が社はアジアを中心に15カ国でビジネスを展開しているけれども、日本がどの国と競合しているかという点では、去年は韓国および東南アジアと競合していた。「韓国に行くか、日本に行くか。日本に行ったら料金は韓国の倍かかるけど、どっちに行こうかな」というのが去年のトレンドだった。でも、今年はそれが変わっている。日本はヨーロッパと競合している。理由は二つ。一つはバス料金が上がった。で、もう一つはホテルの料金が上がった。そうなるとツアー全体の価格が上がる。で、その上がった価格がヨーロッパへ行く料金と同じになった。それで、「ヨーロッパに行くか、日本に行くか」という風に変わってきた。結局、日本旅行が実際にどれぐらいで売られているのかによって競合する国が変わってくると、私は感じている。

福山:すごく重要なご質問だと思う。僕は答えがないのだけれども、たとえば中国と尖閣でいろいろ問題が起きたとき、間違いなく中国の観光客が韓国に流れた。それで韓国の方に、「中国と日本が尖閣で揉め続けてくれたら韓国の旅行関係の企業は儲かるので、揉め続けてくれたらいいよ」と言われたことが僕はある。「ということは、中国人のなかでは日本と韓国が一応競争関係にあるんだな」と感じた。

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星野:実際にどこと競合しているかというと僕も分からないけれども、日本というのは「いつか行ってみたい国」に入っている。だから短期的にどこと競合するかはあまり重要ではないと思う。「いつか行ってみたい国」なら、そこはやっぱり行きやすい環境をつくっていくということが大事だと思う。

会場:現在、「日本のマチュピチュ」と言われる竹田城の城下町再生に携わっている。最近は竹田城周辺に柵が立てられたりして、本来の良さが失われているということで問題になっている。それについて観光課の人と話してみると、行政としても実はそういうことをしたくないそうだ。ただ、警察と消防からいろいろ言われるのを止め切れず、結果として動いてしまったという現実がある。どうすればこういった状況を変えることができるとお考えだろう。

星野:京都は昔ながらの景観を守りながら、けれども安心・安全も実現していかなければいけない。実際の案件ではそこで細かいせめぎあいや悩みがあったりすると思うが、市長はその辺についてどのようにご判断なさるのだろう。

門川:旧建築基準法でつくられた京町屋を生かして宿泊施設にしようとすると、町屋でなくなってしまう。だから、京都市は全国で初めて独自の条例をつくった。法律には適用除外の規定がある。だから京都市独自の基準を定め、建築基準法の適用除外としたわけだ。それで町屋を大学の教室にしたり旅館にしたりしている。「歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」という条例だ。そこで、たとえば消火器を置いたり、3ヶ月ごとに防災訓練をするといったソフト面でカバーして、ハード面は変えなくともいいといった形にした。やはり安心安全は確保しなければいけないけれども、「それで良さがなくなってもあかん」と。今はその両立に挑戦している。

星野:これはもう観光のセンスだと思う。京都の素晴らしいところは、着物を着た市長が観光客に求められているものを分かっている点だ。地域観光では首長にそういうセンスが問われるし、ご質問のお話にも直結するのではないかなと思う。以前、奥入瀬渓流遊歩道を歩いていた一般観光客に枝が落ちてきて、その方が下半身不随になってしまったということがある。そこで、「国による国有林の管理が悪いのでは?」ということで国が訴えられた。そうしたら最高裁まで行って、最終的にはたしか2億5000万ぐらいの賠償責任が出た。私としては、その瞬間から日本の行政全体がすごく保守的になったと思っている。

だって、どうやって国有林の枝が落ちてこないことを国が確認するんですか。そんなことを税金でやっていたら大変なコストがかかる。無理だ。国有林にある木の枝をすべて切らなきゃいけない。だから、行政にすべての責任があると考えるような文化は直していかなくちゃいけないし、「自己責任で旅行しているんだ」という考え方が必要なのだと思う。「旅行には一定の危険があるんだ」という風に、考え方を改めなければいけないと思う。そして行政側は規制をするのでなく、事業者を安全度で評価する。そのうえで、今は口コミサイトも盛んなので、「ここは過去にこんな事故があった」「ここはこのぐらい安全を守っている」という風に情報公開するのが大事になると思う。

会場(亀井智英氏:Tokyo Otaku Mode Inc.共同創業者兼CEO):2020年に向けて外国人観光客が増えたとして、多くの日本人が英語対応できない等、受け入れ側の体制が整っていない面もある。そこでビザを観光用として、日本で働きたい人向けに発行するといったことができないかな、と。そうすれば問題解決になると思う。

星野:京阪さん、ホテルや鉄道の英語対応は大変だろうか。

下條:大変だ。一番の問題は忘れ物をしたとき。窓口では答えられないので、タブレットを使おうということで今は準備をしている。これは、第三者の通訳を介して駅の従業員とお客さまが話せるようにする仕組みだ。

星野:観光サービスならワーキングホリデーのような制度も活用できると思う。

門川:買い物環境の整備は本当に大切だ。だから買い物をなさるところでは、先ほど申し上げたように、五か国語対応および24時間対応のコールセンターとつながる仕組みにする。駅も同じだ。京都の地下鉄駅にはすべてそれを導入して、そこに電話をすれば通訳と同じ役割を果たせるというものを始めている。いずれスマホでもできるように開発を進めたい。ただし、言葉が大事ということで、小学校と中学校では生け花とお茶を教えて、それを英語で説明できるようにするというカリキュラムを今年スタートさせた。オリンピックのとき、彼らは大学生や社会人になっているということで、そういうこともやっていく。

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星野:学校の人材も大事だけれど、ワーキングホリデー等は、日本人の職を奪うようなこともなく時期が来れば帰る。そういう制度も日本に入れて欲しいと思う。

福山:それは2020年に向けて十分検討の余地があると思うし、現在は「多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」というものも環境省でつくられている。ただ、これはあくまで看板やその周辺で、ご提言のような本質的ソフトや人材に関してはまだ足りない。従って、そこは皆さんのお知恵をいただいて対応していきたい。

星野:そろそろ時間となった。今日議論をしてみて改めて分かったのは、やらなければいけないことは数多くあるということだ。ただ、それは同時にポテンシャルがすごく高いという意味でもある。従って、ぜひ観光を今後もサポートいただき、ご興味を持っていただき、場合によっては各種規制緩和や制度改革にご賛同いただきたいと思っている。今日は本当にありがとうございました(会場拍手)。

※開催日:2014年10月18日、19日

関西・観光客“倍増”計画 ~2020年に向けての挑戦~[3]

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