関西の復興に必要なのは自立と分権、そのためには…? 

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“関西の時代” 新たな国づくりに向けて果たすべき役割とは[3]

さて、ここまでは市町村や都道府県といった単位で部分最適化を考えるより、国政というレベルでのお話が多かった。山田知事がいらしたら、今度は地方の視点からも少し議論していきたい。現在、安倍内閣では地方創生という大きなテーマが掲げている。全国知事会では…、山田知事が会長をしていらっしゃるけれども、昨日だったか、全国知事会にて地方創生に関する提案書が提出されたとの報道もあった。そういった点も踏まえ、知事というお立場からのお話も伺いたいと思う。(40:21)

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西村:「特区がずっと続くのはおかしい」というのは、まったくその通りだ。兵庫県には人口2万数千人ほどの養父(やぶ)という市があって、こちらは農業委員会が持っていた農地利用規制の権限を市長に移して一躍有名になった。農業委員会には農地の集積や転用を認める権限があるのだけれども、それまでは名誉職のようになっていて施策がなかなか進まなかった。しかし、今回の国家戦略特区で養父市ではその権限を市長に移した。それで市長が自分の街づくりを考えながら、「ここは別の用途に転用する」「ここは集積を早めていく」といったことができるようになった。

これ、規制改革会議でも、「土地利用を規制する農業委員会の権限が名誉職のようになって、選挙もなくいつも同じような田舎の名士が選ばれるのはおかしい」という話になっていた。それで市長が任命できるようにしようということが提案され、次の国会でその法改正を行う。結局、養父市で始まった農業委員会の改革が半年から1年遅れで全国に広がった形だ。その意味では、特区でやっていることは先行者利得のようなもの。先に認められたことでスタートするわけだけれど、前原さんがおっしゃるように一時的なもの。全国へ広げることを我々としても考えている。

あと、ベンチャーの件でもう1点、我々は教育が重要だと考えている。(山田知事登壇)…もう少しだけ喋らせてください(会場笑)。今、世の中がこれほど早く変わっているなかで、「教育を変えなきゃいけない」と、皆が考えているが、なかなか変わらない。そこで今回、特区で公設民営の仕組みを入れる。公立学校を民間が運営できる仕組みにすることで、公設だけれども特徴ある公立学校をつくっていく。そのなかで公立学校同士でも競争が起こって、公立学校が自ら改革を起こしてくれたらと思う。

今は経済財政諮問会議の下で人をどのように育成していくかといったことを、堀(義人氏:グロービス経営大学院学長[以下、肩書き略])さんにも入っていただいて議論している。恐らく50年後には現在ある仕事の2/3がなくなるとも言われている。ロボットや人口知能によってがらりと変わるわけだ。今職業訓練をしているものでも、たとえば今の小学生が大人になってそれなりに活躍する30~50年後にはその仕事がなくなっていることもあり得るわけだ。

たとえば、これまでは人工知能が将棋のプロになかなか勝てなかった。なぜなら、ロボットはそれまで論理的に演繹法で考えていた。詰め将棋のように考え、それで何百何千手先まで見て、「Aという手を打てば勝てる」と判断し、常にAという手を打っていた。でも、それでは人間に勝てない。人間はそれほど論理的には考えず、アナログでいろいろなことを考えながら打っている。しかし、最近の人口知能は過去すべての対戦を頭に入れて帰納法で考えるようになった。で、「こういう場面ではBという手を打ったほうが確立は高い」と判断できるようになってきた。それで論理的に考えたAでなく経験則で考えたBで打つようになり、それで人間に勝ち始めたわけだ。

人間の経験則のようなものまでロボットは学び始めている。それがいわゆるビッグデータと言われるものだ。過去のデータを分析して新しいことをやろうとする。それができるようになると、人間のやっていた領域もほとんど人口知能に取って替わられていく。残るのはロボットよりも優れた指示を出す部分や細やかな仕事ということになる。そうした環境で教育はどうあるべきか。普通にやっていても、その仕事が将来も続くかどうかは分からないし、特に日本はホワイトカラーの生産性が低いと言われている。それをどのように高めていくかも考えて、今後は教育制度や職業訓練を考えていかなければいけない。関西の特区では学校の公設民営が可能になるので、そこでいろいろな形の学校ができたらと思う。特に異端・異能を発揮するような、変な人を村八分にすることのないような学校が生まれ、才能を持った人を引き上げて欲しい。そうしてロボットや人口知能に取って替わられない、人間ならではの働きができる仕事をぜひ関西から生み出して欲しいと思う。

秋山:では、山田知事にもお話を伺っていきたい。

322a2333d44b9c4a50f148cd31a155b2 山田啓二氏

山田啓二氏(以下、敬称略):どういう感じなんでしょうか。ぜんぜん分からなくて(会場笑)。

秋山:ですよね(笑)。基本的には、東京一極集中が進んだのは「なんでやねん」という問いをベースに、「そこで我々ができることは何か。どういった変革が起こせるか」といった議論をしていた。それで、お二人からはキーワードとして道州制や広域連合、あるいは国家戦略特区の活用といったお話が出ている。地方創生に関しては知事会から国にいろいろと提案をなさったとも伺っているので、少しお時間を取って、山田知事からそうしたテーマに関してお考えになっていることを伺いたい。

山田:今日は諸事情あって遅れてしまった。申し訳ありません。また、今回は前原先生と西村先生という取り合わせのなかに入れていただいて、本当にありがとうございます。これは私にとっては因縁の取り合わせだ。私が今住んでいるのは前原先生の選挙区である左京区で、私が生まれたのは淡路島の洲本市。西村先生の選挙区ということで(会場笑)。

さて、なぜ東京一極集中が進んだかと言えば、「進めた」から。「進んだ」のではなく「進めた」だけ。リニアを見ても分かる。東京と名古屋を結べば東京一極集中は当然進む。北陸新幹線も同じだ。東京と金沢を結べばさらに東京一極集中が進むのは当たり前。すべて東京一極集中となるよう、政治が動いてきた。だから関西をどうするかという話になるたび、私はいつも「人をばかにしていないか?」と言っている。たとえばリニアは、最初は東京-名古屋にしかつくらず、「その他の地域は20~30年後になりますよ」と。大阪や京都をばかにしているのかと思う。新東名と新名神に関しても、東京から名古屋、そして草津まで来た。で、そこから先は凍結(会場笑)。北陸新幹線も「金沢まで行けばあとは本格的なものはいらないからフリーゲージでどうですか? 湖西線は2級の新幹線でいいですか?」と。「なめとるのか」と思う(会場笑)。

これが現状だ。それで東京一極集中がなぜ進んだかなんて言うのはお笑いだ(会場笑)。それだけじゃない。私が「大貧民ゲーム」と言っていることがある。リニアモーターカーの着工がいよいよ認可されたけれども、これ、JR東海が儲けに儲けて、「地方公共団体の税金は要りません。すべて自分たちでつくります」となっている。立派だと思う。新東名と新名神も同じだ。「料金が上がるから地方公共団体の税金負担は要りません」と。可哀想なのは北陸新幹線だ。地方公共団体が1/3も税金を出していて、それで新潟知事が「もう出さない」と言って仲間割れを起こしているほどだ。

なんのことはない。豊かな太平洋側ではただでどんどんインフラ整備が進んでいくわけだ。私はこれを「大貧民ゲーム」と呼んでいる。こういう不公平な現実がいたるところにある。今度の人事院勧告なんてその典型だ。皆さんご存知ないと思うけれども、公務員の給料総額は変わらない。それで、今度は「地域で差を付けようじゃないか」となった。たとえば、「東京であれば滋賀の北部よりも20%高くしましょう」と。それほどの差が出てしまう。で、霞ヶ関であれば補佐には霞ヶ関手当てというのがあって、また上乗せされていく。で、移動するときは可哀相だから広域移動手当てを付けてあげる、と。だから東京のほうがむちゃくちゃ給与はいい。

それぐらいは、まあ、仕方がないと思われるかもしれないが、そのあとが乱暴だ。京都の南のほうに二つの町があり、今回、地域手当が片方の町ではゼロになり、片方の町では6%になった。そちらの給料のほうが高いと思われるかもしれないが、町の給料調査はしていない。では、どういう風にして地域手当に差を付けたのか。片方は大阪に通っている人が12%で、もう片方は同10%以下。つまり大阪に人がたくさん通っているところは給料が高いだろうから6%乗せる。一方、大阪に通っていないほうは地域手当ゼロだ。

だから地域創生と言っても、その町が一生懸命企業を呼んで雇用を増やしたら大阪に通う人がいなくなって、給料が下がる。「大都会に行けば給料上がりますよ。そして、苦労して企業を呼んで雇用を増やしたら給料が下がりますよ」と。こんな仕組みになっている。なぜ、こういうことになるのかと言えば、やはり東京一極集中と中央集権という構造のなかで物事が考えられているから。今、全国町村会会長は長野県川上村の村長さんが務めていらっしゃる。この村はすごい。農家の平均年収は2000万に達するというとんでもない村だ。ただ、先ほどお話しした通り給与調査は行われていない。だから、川上村から東京へ通う必要なんてないわけだし、給与が低い。「これが地域創生ですか? 東京一極集中を是正する人事院勧告ですか?」と言いたい。

西村先生とお会いすると申し訳ない気持ちになるが、私は特区の件で、いつもこんな調子で激しくやっている(会場笑)。何をしたかというと、「特区、すごいじゃないか」と。これから日本の未来を変えるわけで、別に金をくれと言っているわけじゃない。「手続きを簡略化して、たとえば混合診療の範囲を広げよう」と言った。また、「今後は電力線でなくマイクロ波で非接触充電できるようにしようじゃないか」と。京大宇治キャンパス全体で非接触充電できるようなものをやろうという話を昨年9月に行った。

ただ、そこでぐちゃぐちゃ言う。昨年6月に正式提案して、今年9月に特区会議をやったときの回答が、「既存の制度で十分できるかもしれません」。1年以上経ってそんな回答をしていたら、このスピードの時代に追いつかない。そこからも大変だ。また、うじうじ言ってくる。これは西村先生もご存知ないと思う。「その議事録に注釈を付けてくれ」とか言ってくる。議事録にどうやって注釈をつけるのか分からないけれども(会場笑)、「年表を付けてくれ」と言ってきたりする。要するに、自分たちが遅れた言い訳を書かせてくれというわけだ。そんなことを考えている暇があったら早く決定しろと言いたい。そういう風に、実は特区と言ってもすべてのことに関してダメな理由を探している。どれもダメな場合は、「検討する」となり、検討してもダメな場合は「既存の制度でできますよ」と。そういうことを言っていては、いつまでたってもダメだと思う。

関西の復権に最も必要なのは自立と分権だ。道州制や広域連合というのもそうした歩みでなければいけない。自立しなければいけない。特区を任せるのなら、そこに思いきり権限を渡すこと。いちいち忙しい西村さんを煩わせる暇はない。この前は分権を政府に提案して、900数件申請して結果は10件だ。これで東京一極集中打破する気力が地方に湧いてくるのかと言いたい。こういう現状が関西の復権、そして東京の一極集中の元になっているということは申し上げておきたい(会場拍手)。

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※開催日:2014年10月18日、19日

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