シリコンバレーは街全体が一つの会社になっている!? 

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地域発ベンチャー大国・日本をつくる[2]

高野:冒頭で「関西型エコシステムがつくれるかという議論にしよう」とのお話をしたが、とはいえ、シリコンバレーの現状も生で見てきた人にもう少し聞きたい。(18:24)

岩田:シリコンバレーは本当にすごいところだ。何がすごいかというと、ほとんどの日本企業にあるものが逆にない。企業理念がない。日本企業なら、たとえば中小企業のHPにも企業理念のコーナーがあって、「当社はこういうことで社会課題を解決します」といったことを書いている。でも、米国会社のサービスHP等で、そこに企業理念が載っているところをご覧になったことはまずないと思う。

「すごいな」と。日本企業は日々の経営のなかで企業理念を語るけれど、シリコンバレーの会社は企業理念を語らない。では、どうやって皆をマネジメントするのか、あるいは求心力を得るのか。よくよく聞いてみると、シリコンバレーには社会共通の企業理念みたいなものがある。「3年でイグジットする」(会場笑)。そういう大変分かりやすい理念に向けて皆が頑張っている。経営者も資金を調達したときから、「創業メンバーに半分ぐらい渡してもええわ。4人で25%でもええわ」と。で、そのあと調達したらもう半分渡して、「自分は12.5%になってもいい。そのあと5%になってもいい」と。3年でイグジットするからその計画がうまく成り立つ。

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で、社員も基本的にはストックオプションをもらわないと働かない。アメリカ型ストックオプションというのは面白い。日本では辞めたら放棄になるけれど、シリコンバレーでは辞めたあとも持ち続けることができる。で、しばらくしてその会社がどこかに買収されたら、その人がいきなり儲かるなんていうことがある。

そうなるとストックオプションを効率良く貯めるためには、3~4年で次の会社に移ったほうがいいという話になる。企業としてもそれでいい。営業やエンジニアに関してはノウハウを取れば勝ちだ。営業リストのようなものは個人が持っているから、そのリストを食い尽くしたらその人は不要ということになる。だからその人を買ってきて、その人が持つリストに売っていく。で、3年ほどしたらそのリストも尽きるから、その時点で「さようなら」。とにかく社会全体が3年でイグジットするという共通理念を元にうまく動いている。一つの会社のような感じで圧倒的に完成されている。

で、そのなかで経営リソースとなる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が効率的に、最も強く求められているところへ回っていく。そういう、一つの大きな組織のようなイメージがある。これこそ究極のエコシステムなのかな、と。また、圧倒的な資金があるし、情報もメディアもあるし、人という面でも世界中から集まってくる。すべてが完成されて、高度に融合しているのがシリコンバレーなのかなと、私は理解している。

谷井:私どもはサンフランシスコに投資子会社を持っている。それで現地のベンチャービジネス等に少し投資をしているのだけれど、まず、VCのあり方が違うという気がしている。アメリカのベンチャーキャピタリストは投資できる産業分野が限られていて、それも結構ニッチなところまで決まっている。たとえば、単にITへ投資するというのではなくて、それがBtoBなのかBtoCなのか、と。もっと言うと、「私はソーシャルしか投資できません」ということがある。また、そうしたキャピタリストはそれらの分野でビジネスをした経験があることも前提になる。そういう人間だからこそ理解できるビジネスのキーポインを踏まえたうえで投資している、ということがあるように思う。

これは、フェアチャイルドセミコンダクターから始まるシリコンバレーの歴史を紐解いてみても分かる。今話題のイーロン・マスクもそうだ。彼は「PayPalマフィア」なんて言われているけれど、要するにビジネスをつくりあげて大成功した人間たちが順番にスピンアウトしている。それでVCになったり、別のビジネスで当事者になったり、ものすごい勢いで変わり身をしている。だから、ビジネスで生まれたビッグマネーがシリコンバレーのなかで再投資されている。そこで誰に投資するかを決めるのも、そのなかにいる人たち。しかもビジネスの当事者が投資に関与しているわけで、お金の流れとしてエコシステムがあると感じる。

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吉川:街全体が一つの会社のようになっているという感じは私もしている。だから、そのなかで信頼を裏切るようなことをしてしまえば、なかなか個人として生きていけない。信頼をすごく重要視していると思う。その意味では日本企業を意識するところがあるのだけれども、彼らは企業の枠を超えて自分をインダストリー全体のなかで見ている。それで、自分の専門分野として何に貢献していくかということを常に考えているし、キャリアプランがしっかりしていると感じる。(22:31)

で、とにかく3年ぐらいでどんどん変わっていく前提に立っている。私としては1980年代の日本企業よりもシリコンバレーの企業ほうが嘘をつかないという感じがある。勝負の期間が短いから契約書に書いてあることを徹底的に守る。一方で、投資をしても、基本的にはその契約内で終わってしまうというか、それ以外の話はまったく出ない。期間が過ぎたらおしまい。次の投資家を探す。非常にドライだ。「ここまで助けたのに」みたいな義理人情がまったくないという感じで、びっくりする。

私はボストンのほうにも投資していたけれど、そちらは義理人情が効くというか、中長期の貸し借りができる感じがある。でも、シリコンバレーは本当に短期間の勝負だから、中長期の貸し借りは絶対にあり得ない。それはそれで事情もよく分かるし、そのなかで契約上の文言には忠実にやっていく。それを踏まえたうえで、心して契約書をつくっていかないといけないなという印象を持っていた。

→地域発ベンチャー大国・日本をつくる[3]は5/13公開予定

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