仕組みだけでは人は育たない!リーダーシップはどう生み出す? 

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日立製作所が取り組む、グローバル展開における人財マネジメントの要諦[3]

Ea5cb568fdc41fc6c4d97f0ed38f5875 井上陽介氏

井上陽介氏(以下、敬称略):先ほどは控え室で、「グローバル人財育成に関する問題意識が生まれたのは1990年代半ば」とのお話を伺った。経営体制が変わってからそれが一気に進んだということだと思うが、その背景もぜひ伺ってみたい。

山口:1996~97年だったと思うけれど、当時の僕は本社人財部門で国際人事部グループという弱小グループの課長をしていた。そこでGEやインテルといったグローバル企業と言われる会社を訪ね、どういった人事プラクティスをしていらっしゃるのをと聞いて回っていたことがある。で、それを報告書にまとめて本社でプレゼンしたとき、なんの質問も出なかったことを今でも覚えている。つまり興味がないんですよ。

井上:当時の海外売上比率はどれぐらいだったのだろう。

山口:3割を下回る程度で、基本的には国内を伸ばすことが重要だった。人財部門についても海外より国内の問題に対応することのほうが重要で、海外はマイノリティだった。僕はマイノリティをずっとやってきたから(笑)、むしろそちらに興味があった。それでグローバル人財に関するプレゼンをしたのだけれど、まったく興味を持たれなかった。でも、「こういう部門を目指すべきだ」という当時のプレゼンと、今やっていることは、実はほとんど変わっていない。日立としては、それほどグローバル化が遅れたのだと思う。2011年まで待たなければいけなかったのかというと、もう少し早めにスタートできた筈だ。この十数年間で、いわゆるグローバルHRと言われているところの知見が日立にまったく蓄積されてなかったことは残念だと思う。

グローバル化に何も対応していなかったわけじゃない。グローバル人財の育成はしていた。ただ、これは一番やさしい。というのも…、育成は一番難しいけれども、「グローバル人財を育成します」と言っているうちは耳ざわりが良いから誰も反対しない。全員賛成なんだ。だから、それはやっていた。でも、人財をアイデンティファイしてひとつのプールをグループ全体でつくることは難しくてできなかった。各会社は「嫌だ」と言うに決まっているんだから。「取られる」と思うから。それが実態だ。でも、2009年に七千数百億の赤字を出して、「グローバルで成長を加速しなければ」となったとき、今の人財のままでいいのかという大きな課題が突きつけられたのだと思う。

井上:危機感が相当高まって、「変わらなければ」という風になった、と。

山口:危機感は自然に生まれない。漠然とした不安は自然に生まれるけれど、危機感は僕らが働きかけてつくり出さないといけない。「このままでいいのかな」という漠然とした不安は皆持っているけれど、それだけでは一歩踏み出さない。だから、健全な…と言いうのも変だけれども、皆が「もう一歩、何とかしなきゃ」となるような健全な危機感をつくり出す必要があると思う。

井上:経営体制が変わったところで山口さんが投げ込まれたボールのようなものはあったのだろうか。

山口:元々やってみたかったことだったし、中西さんが社長になられて幸運だったことがある。僕はアメリカでIBMのHDDディビジョンを買収したことがあったのだけれども、その会社に中西さんがCEOとしてやって来た。そこで僕は人財部門の責任者にいたとき、一緒に仕事をしたことがあった。そういう関係もあって、「お前も来いよ」と言われてやっていたというのは幸運だったと思う。

井上:お話にあった抵抗勢力とはどんなものだったのだろう。まだ変革の途上にあるとのお話だったが、それをどう乗り越えられたのかも伺ってみたい。

山口:まだ乗り越えていないところもあって(笑)。

井上:日立グループの場合、事業体としてすでに成立している大きな会社が多数ある。そこに新たな仕組みとして、遠心力でなく求心力を働かせながら「全体を統合する」と言えば、ある意味で抵抗されるのも自然なことかなとも思うが。

山口:それはそうだ。それまで何もコントロールしていなかったので。彼らにしてみたら「コントロールされるのでは?」という恐怖感というか…、別に悪いことをするわけじゃないから「恐怖感」というもおかしいけれど(笑)、そういう気持ちがあったと思う。今まで自分たちで決めることができたのに、「ひょっとして自分たちで決められなくなるのか」と。また、「自分たちだってそれなりにやってるじゃないか。そのままやらせてよ」、「投資したばばかりじゃないか。このままやらせてよ」とか、いろいろな要素があった。たとえば、会社として一つのデータベースをつくるということで、「このフォーマットでデータを上げてください」とお願いしたときも、その場では何も言わないけれどデータを出してこない(笑)。「これ、絶対に抵抗してるよな」と。

井上:最初ははっきり分からないような。

山口:無言の抵抗も多かったし、あからさまに言ってくるところもある。「自分たちのプライオリティはここじゃない」と。ただ、最初にプロジェクトをスタートした際、すべてのメジャーな事業所に行って社長に説明している。そこにHRのトップにも同席してもらって、「こういうことをしていきます」と。で、その場で「やりません」とは言わない。「そうですね、いいですね」って(笑)。総論は賛成だから。まあ、はっきり言ってくるところもあるし、データを出さないとか会議に出てこないとか、そういうことでも分かる。

すると、「あ、この会社とこの会社は相当難しそうだね」というのが少しずつ分かってくる。そこは徹底して攻める。ただ、高圧的な態度でいくわけじゃなくて、「これをやるために僕らも人を出します」といった言い方をしていた。「やれ」って言ったってやらないんだから。それと、やっぱりなんのためにやっているのかを説明していくことも大切だ。時間はかかるけれど、そのプロセスは落とせないと思う。

結局、今回のプロジェクトは上からスタートしたわけでしょ? でも、それまでの日立はボトムアップの面が強く、人を集めて「どうしますか?」というところからスタートしていた。それで時間をかけてつくっていた。でも、「今回はその時間がないな」と。3~4年でやっていかなければ無理だと最初から思っていたし、僕の頭のなかではやるべきことが結構クリアだった。だから、当初は「これに反対するなんて考えられない」というほどで(笑)、少し傲慢な感じだったかもしれない。ただ、とにかく「やるべきことはコレとコレ。これはぜんぶやる」と思っていた。そういう部分に対する反発もあったと思う。

井上:「3~4年でやっていかなければ」とお考えになったのはなぜだろう。

山口:トップのサポートがいつまで続くか分からないと思っていた。だからサポートがあるうちに成果を出して、「ここまでやった」と言わなければいけないと思っていた。それと、僕はどこかの会社や地域を限定してやっていくことはしなかった。それだと950社32万人でモメンタムが生まれないから。何かを変えるのなら相当振らなければいけないし、それによってメッセージも生まれるのだと思う。副作用はあるからリスク管理はしなきゃいけない。けれども、とにかく3~4年のあいだに「やるんだ」という機運をつくるため、一気呵成にやるしかない、と。何がなんでも (笑)。

こういう風に話すとなんだか博打を打っているように聞こえるかもしれない。でも、そうじゃない。僕も日立の人財部門に長く在籍しているから分かる。僕らの部門は…、今日は「頑迷固陋」と言ったけれども、一旦納得して「やる」と決めたらやってくれるんだ。だから、組織の能力としては「やれる」とふんでいた。それで説得していった結果、納得してくれる方の数がたとえば2割にでもなったら、「あ、これはやれるね」と。そう思っていたからできたということがあったと思う。

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井上:今日は「OS」というキーワードもあった。日立のコアバリューとはなんだろう。また、今後はそれをどのように普及・浸透させていこうとお考えだろうか。

山口:「らしさ」の源泉がコアバリューだと思う。どういう会社になっても、誰が経営しても、その「らしさ」は失いたくない。これは日立の場合、「和」、「誠」、「開拓者精神」になる。言葉にすると「何それ?」という感じだけれど、それをメディアや教材のほか、各種ツールを使って従業員の入社初日に説明していく。何十カ国もの言語で訳しているし、Eラーニングでも学習できる。「じゃあ、それを本当に理解してくれているのかな」というと難しいところだ。ただ、たとえば15万人でエンゲージメントサーベイを行って、会社の進むべき方向や取るべき施策への理解度合いを見てみると、結構高い。そう考えると、今はそれなりに浸透してきたのかなという気はする。

で、そもそもコアバリューはなぜ必要なのか。質問の趣旨から少し外れるかもしれないけれど、僕は先ほど成長に関する話をした。成長ってものすごくタフだ。で、これに対して、日立のなかには、なんというか、言い方を少し変えるとカウンターカルチャーのようなものがある。「今までの4~5%成長でも良かったじゃないか。儲けるだけが会社じゃないよ」と。ただ、今はそれを7%や10%に持っていこうとしている。それによってグローバルなメジャープレイヤーになろうと言っているわけだ。

しかも成長の主な舞台を考えてみるとエマージングマーケットになるでしょ? そういうところに行って仕事をするとき、「会社にお金をもらっているから仕事をしてます」ではなくて、センス・オブ・ミッションやセンス・オブ・パーパスというか、本人に使命感や志がなければ成長は無理だと思う。では、そうした使命感や志が何に根差すかといえば本人の価値観。結局、その価値観と会社のバリューが100%ではないにせよ、方向的にアラインメントが取られているリーダーは強いんじゃないかと感じる。それがすごく重要で、逆に本人の価値観がどうしても会社のバリューに合わないなら、「このゲームから降りてください」という話になると思う。リーダーとして志や使命感を築いていくうえでも、やっぱり会社のコアバリューがベースになると思う。

井上:「いろいろな施策やお膳立てをしているけれど、リーダーが十分に育っているとは言えない」といったお話があった。そこであえて伺ってみたい。これは、「お膳立てがされた場で踊る人が、本当にリーダーと言えるのか」という問いでもあるように思う。リーダーは自分の考えや志に基づいて、お膳立てに関係なくリスクを取って動く人でないかと思う。会場にいらっしゃる方々もそうした点でお悩みだと思うが、どうすればそうした自立性あるリーダーを生み出せるとお考えだろうか。

山口:まさにそこが僕らとしても「今後どうすべきか」という部分で、先ほど「答えがない」と言ったのはそういう意味になる。ただ、この3年間で新しいプログラムを受けた従業員6500人のうち、1500名ぐらいを相手にした外部講師およびファシリテータの方々に聞いてみたことがある。「成長という観点で見ると、日立のマネージャーやリーダーはどう見えますか?」と。すると…、あまり言いたくないけれど、「マジョリティは自分のキャリアを賭けてグローバルに成長しようなんて真剣には思ってないですよ」と言われた。このプログラムは選抜した人財に加えて階層別というか、基本的には課長や部長になった人が通過するものだ。だから、そう言われたときは、「ええ! これって大変なことだな。…まあ、そうか」と。一方では、「15~20%ぐらいの人はストレスを与えたら成長プランを描けます。それはいいことです。一人も描けない会社もありましたから」と慰められたけれども(笑)。

それで、どうすればそうしたリーダーが生まれるのかという点については今すごく悩んでいる。当然、それは人財部門だけの問題ではない。たとえばマジョリティに国際経験がないということもあると思う。課長や部長や本部長のなかで、海外で日本人以外の人々と仕事をしていた人財が少ないし、まして修羅場なんて潜り抜けていない。そういう人たちがどうやって成長プランを描けるのかという問題がある。

それともう一つ。日立は今、鉄道や発電所といった社会インフラ事業に集中しようとしている。そうした事業ではプロジェクトのスタート時点で潤沢なキャッシュが必要になる。そうなると、どうしても部下が出してきたプランに、「ノー」と言ってしまいやすくなるというストラクチャーの問題もあると思う。社会インフラのビジネスでは成長の難度が特に高いと感じるので、そのリスク回避をサポートする必要もあると思う。

それと三つ目。僕らの行動の軸って、「人」でしょ? つまり関係性。上長との関係と部下との関係性について、日立には軸がある。決してパフォーマンスや業績だけじゃなかった。実はそこを変えるのがパフォーマンス・マネジメントであって、グレードでもある。厳しいプランを上長にあげれば、上長は困る。「その結果、上長との関係が悪くなるのは良くないよね」と。海外で仕事をしていると、そういうことはあり得ない。そういうことを一つひとつ直していかないといけない。それは予算制度についても言えることだ。できる範囲で予算をやっていくというのではやっぱりダメだとか、そういう仕組みの問題もある。いろいろなことに目を向けて手を打つ必要があると思う。

従って、ストラテジーとオペレーションとカルチャーの三つすべてで手を打っていかないと、今の状況は直らないのかなと思う。人財部門はそこで、人の育成や文化を醸成といったことを、研修プログラム等を通じてやっていく必要がある。答えになっていないけれど、そういうことを考えながら今は検討していこうと思っている。その辺は皆さんのアドバイスを聞きたいぐらいだ。

井上:人と人との関係性が変わっていくとすると、今後はコアバリューとなる「和」のあり方も変わっていくかもしれないということだろうか。

山口:逆に言うと、そうした「和」の部分が風化してしまっていたのではないかなと感じていた。そもそも、なぜ「和」というコアバリューが生まれたのか。誕生した頃の日立はベンチャー企業だった。で、皆が集まってわいわいがやがや、好き勝手にやっていたから色がまとまらなかった。だから「和」が出てきたのであって、最初から「とにかく仲良くしようよ」じゃなかった。議論がまとまらなかったとき、「やっぱりこの会社には皆をまとめる『和』必要だよね」と。ところが、今はその「和」が当たり前になり過ぎたというか、むしろ議論が出てこなくなってしまった。

最近は多様性という言葉がよく使われる。僕は、多様性には「属性」「考え方」「主張」という階層があると思っている。で、皆が今よく議論しているのは属性の多様性だ。「女性や外国人といった方々の比率を高めなければいけない」と。ただ、そういう人をいくら会社に入れても、その人たちが考え方を表明して主張する土壌がなければ意味がない。そこが日立で弱くなっている。だから、むしろ創業時の自由闊達にものを言っていくという土壌をもっとつくっていく必要があるという気が僕はしている。

井上:むしろ創業時の根源的な価値観がグローバル環境で重要になる、と。

山口:もっと生かせるのではないかなと思う。

井上:それが歴史のなかで薄らいだ面もあったということだろうか。

山口:長くやっているうち、風化してしまったこともあるのかなと思う。人の育成についても、昔は「リーダー」でなく「管理者」という言い方をしていた。部下の育成は管理者の重要な責任というか、役割だとされていたから。ただ、それがいつのまにか風化して、「人財育成は人財部門の責任だよね」となってしまった。大きい組織だし人の数も多いから仕組み自体は絶対に必要。ただ、仕組みだけでは人は育たない。

問題だと思うのは、人財部門が人財について議論をするときの、僕らの語彙の貧困さ。ものすごく貧困だ。「デキる」とか「デキない」とか、「一生懸命やってるね」「一生懸命やってないね」とか、そんな話に終始している。それは僕らの大きな反省点だ。つまり、どんな視点で人を見ていくかが会社のなかで固まっていない。だから僕は最近、「人財部門はインターナル・サーチ・ファームにならないとダメだ」と、よく言っている。たとえば誰か必要となったとき、「ロングリストはこれです。ショートリストはこれです」と、サーチ・ファームがやっているのと同じようなことを僕らができないといけない。

井上:人財育成に関してHRとラインの役割というお話があったけれども、当事者に関してはどうだろう。私としてはその人自身が「成長したい」思うことが出発点ではないかなと考えている。その部分はどう引き出していこうとお考えだろうか。

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山口:今はそこがすごく弱い。もちろん我々としてはキャリア開発講座もやっているけれども、これ、まったく意味がないんじゃないかと思うこともある。というのも、基本的には会社がキャリアをずっと管理をしている。少なくとも日立はそうだ。日立は4月と10月に大きな組織改正と人事異動がある。だからグループ全体では何万人も動くかもしれないけれど、「じゃあ、そのなかで自分のイニシアティブで動いた人は何人いる?」となると、ほとんどいない。これ、やっぱり異常かなと思う。

これもサーベイの結果だけれど、「自分が次のレベルへ上がるために何が必要か知っていますか?」という質問へのスコアが最も低いのは日本だ。そういうことを考えてなかった。考えさせていなかったんだ。僕はこれまで14回ほど転勤や異動をしているけれど、自分の意思はゼロ(笑)。でも、グレードを入れることで資格制度による昇格がないわけだから、次のレベルへ上がるためには何が必要かを自分自身が知っていないといけない。会社もそれを伝えないといけない。これは、「自分のキャリアについて自分で考えろ」ということだ。

その視点が今はない。そういう部分も変えていかなければいけないと思う。たとえば選ばれてタレントプールに入った人に、個別に「あなたは選ばれました」と言っていないんだから。その辺は話す会社もあれば話さない会社もある。アメリカでも半々ぐらいだと思う。ただ、レディネスが高い人であればあるほど、それを言わないと決心がつかない。動機付けとかではなく、決心・決意させる必要があるからだ。「大変な仕事をやることになるかもしれないけれど、その覚悟はあるんだよね」と。そういうことを本人に迫る必要が出てくるんじゃないかと思う。

井上:私どもグロービスの大学院には「志」という科目もある。

山口:あ、そうですか!

井上:そのなかで個人の内発的動機づけに取り組んでいて、その源泉を深堀していく。それがビジネスキャリアのなかでどのように醸成されてきたのか、あるいは自分自身がどういった教育を受けてきたのかといったことを掘り下げつつ、自分自身の願望として何をしたいのか、と。また、願望だけでなく社会との対話も交えつつ、何を成し遂げていくかというところまで昇華させていく。そこまでやらないと自立性の源泉となる志はなかなか生み出されないのではないかと思っている。このあたりは多くの日本企業にとって課題の一つではないかなと、個人的には感じている。

山口:そうだと思う。僕らも今はリーダーシッププログラムのなかにそういった要素をどのように組み込んでいくかといったことを考えている。

井上:続いていくつか、各論的に伺っていきたい。まず、人財DBにはどういった情報を集めているのだろう。氏名、組織名、肩書き、入社年度、年齢等々、具体的にはどこまでのレベルになるのかを教えていただきたい。

山口:まだそれほど多くのデータは入っておらず、必要最低限の情報といったところだ。だから、たとえばパフォーマンス・マネジメントの評価結果というのは他のデータベースに蓄積していく。で、人財DBには基本的な、たとえばグレードや職種や職名といった、個人の属性に関わるものが入っている。ここに経験や資格の情報も入れていくかという議論は社内でもあるけれど、そこに取り組む予定はない。今は世の中がだんだん変わってきて、たとえば本人のレジュメをアップロードすれば自動的にその人がどんな経験をしたかが分かったりする。そういうツールが生まれ始めているので。あるいは、そういうものがなくても過去何年かのメール履歴にアクセスしたり、本人が書いたパワーポイントにアクセスすることで、本人がどういった人かが分かるところまで今はきている。ビッグデータの世界でそういうことができる可能性が高い。だから、今入っているデータはベーシックな属性に関するものばかり。入社年度、年齢、性別、グレード、職種や職名、あるいは勤務地や会社名といった類になる。

井上:「GLD」は海外人財の確保・育成・配置のスキームということだろうか。

山口:それも含んでいる。今までは日本と海外を分けていたけれども、それをすべて一緒にした。

井上:日本人以外のリーダー育成施策としてはどんなものがあるのだろう。

山口:基本的に、日本人と日本人以外でトレーニングプログラムに差を付けることはなく、ハイポテンシャルな人財に関しては一緒に行う。また、現在マネージャーとなった人たちのマネジメント・トレーニング・プログラムも日本語と英語と中国語で行っていて、コンテンツは全世界で同じ。それともう一つ。そのもう少し上にいるマネージャーを対象に、たとえば「どうやって顧客に企業価値を提供するか」といったコンピテンシーやリーダーシップに関わる部分でもグローバルな共通プログラムをつくった。それも今年から各リージョンでロールアウトしている。ただ、そう説明をすると格好良く聞こえるかもしれないけれど、海外における人財教育への投資額や投資時間はまだ足りない。国内と比べて足りないし、ASTD(The Association for Talent Development)というトレーニング団体に加盟する企業の平均時間と比較しても足りないことが最近分かった。だから、もっとやっていかなければいけないと思う。

一方、僕はアメリカに行ったとき、「日本人のリーダーシップってまったくもって足りない。どうしたらいいのかな」と思ったことがある。それがすごく頭にあって、日本人のリーダーを育成したいという気持ちは結構大きい。先ほど言ったようにビジネスは誰がやってもいい。ただ、そのなかで僕らも伍していかないといけないし、「リーダーシップのない人たちが海外で何をどうマネージできるんですか」という思いがあるので。

これはガバナンスにも関わる。優秀な人を採ったけれども、結局はマネージできなくて、彼らも嫌気がさして辞めてしまうということだって起きる。だから両方やっていくけれども、日本人のリーダーシップ…、これは日立だけかもしれないが、そこは直していかなければ絶対にダメだと思っている。基礎的なトレーニングが必要というか、僕は、リーダーシップは「型」だと思っているから。柔道や茶道と一緒。基礎的な訓練をトレーニングのなかでやっているということになる。

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井上:これはなかなか答えづらいかもしれないが、今日お話しいただいたような施策群の評価は、現状では、100点満点で何点と認識していらっしゃるだろう。

山口:ビジネスにインパクトを与えて初めて評価できるのだと思う。その意味では少しずつ出てきていると思っている。あと、たとえばエンプロイー・サーベイというのは、組織の状態をスナップショット的に把握するだけだと思うかもしれない。でも、このサーベイはそうじゃなくて、どういうカットでも行える。10人以上の部下を持つマネージャーがいれば、その人たちの組織データがすべて出てくる。それをマネージャーのツールにしたかった。そういうものを使いこなしていくことでビジネスにインパクトを与えることができたら、いくらか評価できるのだと思う。まあ、そうした「面」では3年と少しの期間でかなりやれたのかなという気がしている。あとはどう使っていくかだと思う。

井上:今日のお話は人事・人財変革の話だったけれども、一歩引いて経営・企業変革という観点でも学びのあるお話だったと感じる。また、今日はさまざまな情報を余すところなくご披露いただいて、恐らく会場にいらっしゃる方々にとっても大変参考になったと思う。改めまして今回のスピーチと対談について感謝の意を表して、今回のセミナーを終えたいと思う。今日は本当にありがとうございました(会場拍手)。

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