アジアの競合に技術をキャッチアップされない方法は? 

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日本の技術力が世界を席巻する日[3]

佐藤:一方で、たとえば電機業界では技術が流出してアジアにキャッチアップされた面がある。世界を席巻し続けていくため、どのように技術をキープしていけばよいのだろう。あるいは、それまでと違うことをやっていくべきなのだろうか。(29:14)

鈴木:製品を販売した瞬間から技術流出は始まっていて、それを止めることはできない。分解され、分析され、研究される。また、お客さま自身が流出の手助けをしているようなところもある。レシピに対する好奇心が大変旺盛で、「教えなさい」とおっしゃるわけだ。監査という名の下、徹底的に教えるよう強いられる。それをいかに誤魔化して、隠して、機嫌を損ねず教えないようにするかという工夫はしている。ただ、いずれにしても販売した時点で分解・分析されるということはある。

だから、流出したとしても真似されないようなものづくりをする必要がある。仮に材料やレシピが解明されても、「あそこの良品率には辿り着けない」と。それは工場における創意工夫といった言い方もできるし、まあ、シークレットという言い方になるのかもしれないけれど。たとえば、「日写と同じ製造機械を使っています」という風なことを言って回っているメーカーさんがいる。で、それは迷惑だなと感じつつも「仕方がないな」と思ったりするわけだけれど、仮に我々と同じ機械を買って来ても我々と同じようなものはつくれない。その辺になるのかなと思う。

佐藤:それはノウハウ?

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鈴木:そう。工程の管理能力も含めて。逆に、私どもはカタログで買えるような機械を極力使わず、自社設計をするようにしている。

佐藤:それが日本の強みでもある、と。

鈴木:私の経験から言うとそういうことがあるんじゃないかなと思う。

佐藤:村田さんのところも真似されることはあると思う。

村田:どんどん真似される。カタログで間違っているところまで同じみたいな(会場笑)。取扱説明書のスペルミスが同じだったり(笑)。ただ、面白いことがある。メカニカルなものは…、ソフトでブラックボックス化といったことはよく言われるけれど、それとて限界はある。ただ、たとえばうちの場合、先ほどお話しした「空気で糸を紡ぐ」というのはノズルで旋回流をつくるのだけれど、そのノズルはセラミック製だ。とある国内の協力会社につくってもらっているのだけれど、これ、図面と違う。図面に載っていないような公差がある。私もときどき挨拶にいくほど親しくて付き合いの長いところだからやってくれるのだけれど、要は図面通りにつくるとなかなかできないわけだ。一方で、スイスの競争相手はそのノズルを金属加工でつくっている。削り出しだ。うちはセラミック。シュリンケージを考えないといけないので難しいからだ。

旋回流というのは音速だ。それを小さなノズル内で起こしている。ただ、内部で糸がどういったふるまいをするかは、自分たちもいろいろ解析しているものの、20年間やっていてもまだ分からない。解析が難しい。欧米の怖いところは、あるいは中国もそうだと思うけれど、その辺を徹底的に分析することだ。そして、可視化して数値化して、理論で攻めてくるところは怖いなと思う。ただ、今のところは図面にない要素があって、図面と同じものをつくろうとしてもできない。そういう、比較的アナログな要素が、一見デジタルに見えるメカニカルなものづくりのなかにもある。

佐藤:それは試行錯誤しながらつくっていく?

村田:そう、試行錯誤。それで後付けする。サイエンスとインダストリーにはそういう面が結構ある。今の旋回流は分析すれば学会で発表できるような結果になるかもしれない。うちもヨーロッパもまだ研究しているけれども、いずれにせよ、後付けでやってみたらできたということが実はある。

佐藤:試行錯誤を繰り返す粘り強さも日本の強みだとお感じだろうか。

村田:ちょっと三六協定を改めてもらって(会場笑)。たとえば研究所に泊り込んで徹底的にやるような人のなかには、管理職になかなか上げられない若い人もいる。従って、その辺はやっぱり専門職というか、スペシャルなホワイトカラーとして扱っていただけるような環境にして欲しい。今は工学部の卒業生にインド人や中国人がものすごく増えていて、続々と入ってきている。でも、日本の若い人は少ない。だから今いる人材をどのように教育し、モチベートしていくかが大変重要だ。そう考えると、あまりにも過酷な労働規制はマイナスになるんじゃないかという気もする。

佐藤:青木さんの会社は匠の技を持つような職人さんも多いと思う。(34:29)

青木:最後は手でやるから。ただ、そこに行き着くまでお金がかかる。人への投資ということだと思う。あと、先ほどお話に出ていた技術流出に感じても同じだけれど、僕としては「それでええんか?」と心配していることがある。僕は、今の日本に一番必要なのは軍事産業だと思っている。軍事産業を、なんというか…、今の日本でもう少しいい位置づけにしないといけない。その技術に国の投資がかなり入るから。

以前広島へ行ったとき、タクシーの運転手さんとこういう話になった。「景気、どないやねん?」「あかんなあ。今日は広島何しに来たん?」「大和ミュージアムを観に来てん」なんて話をしていたら、その運転手さんが「造船の技術は大和から来たんやで?」と言っていた。戦後の日本が造船で世界一になったのは、戦前にとてつもないお金をかけて大和のような船をつくったからだ。飛行機でもゼロ戦があったけれど、そっちはアメリカに全部取られた。それで7年間、飛行機つくったらあかんということになって、それでパーだ。技術が途切れた。でも、造船は違う。日本の製造業はよくやっていると僕は思う。だから、そこで加えて…、国を頼れというわけじゃないけれど、日本の技術を冠たるものにするのなら、やっぱり軍事産業は最新かつマル秘の技術だ。

村田:人の命がかかっているから。

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青木:そう。絶対に大事やと思う。皆さんがどう思っているかを逆に聞きたい。

村田:インターネットも元々は「ARPANET」という軍事技術だったことはよく知られている。実際、そういう風にアメリカやロシアや中国といった大国が巨大な予算でやっていることを日本はまだしていない。要するに、そういう技術をパクればいいと思う。インターネットは元々軍事技術だったけれど、現在はまったく違う方向に進んでいる。ロボットも無人化技術もそうだ。あれを民間利用や平和利用に転用するものづくりの技術を日本人は持っていると思う。だから、技術流出を防ぐと同時に、他所から取ってくるということも大事ではないか。昔の日本人はもっと、あられもなく謙虚に真似をしていた。今は逆で、少し格好をつけ過ぎているところがあるのかなと思う。

鈴木:優秀な技術は世界で幅広く求められているし、今後の世界はやはり技術移転というところに話が向かうと思う。で、そうした移転をしやすい技術か否かが、その技術が幅広く使われるかどうかを考えるうえで一つの判断基準になる。なにかこう、匠の技が満載されているような技術は、「良い技術というのは分かるけれども、あまり使いたくない」といったことをお客さんには言われる。日本でつくったあとに中国へ持っていってつくって、次はメキシコに持っていってまたつくるという風に、「技術移転しやすいものでないと使いたくないんだ」と。これ、我々当事者は自分たちで保持したいわけだから、移転云々と言われるのは面白くないけれども。

あるいは…、こういう言い方が良いのかどうか分からないが、内部統制やコンプライアンスといったことで企業による仕事の進め方や業務の設計が画一化されるような時代になっていくと思う。ただ、私どもは今年、とある中小企業を買収した。で、その会社の中身を改めて拝見してみると、我々のようなサイズの会社がもう忘れそうになっているようなものがある。匠の技とか、それこそ家にも帰らず研究開発に没頭する姿勢とか、材料まで自分でいじくって良いものをつくろうとする文化とか、そういうものを持っている会社だった。その意味では、たまにはキャラクターがまるっきり異なる会社を取り込んで、社内を目覚めさせるということも必要なのかなと思う。

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