日本企業が海外で「これだけは勝てる」強みとは? 

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グローバル・ニッチビジネスの戦略[3]

安渕:海外のマーケットにプロダクトやサービスを持ち込むうえで、日本企業あるいはそれぞれの会社さんが持つ強みは何になるとお考えだろう。(37:38)

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渡部:勝っているわけではないけれど、私の心の支えにしている思いはある。私としては得意なところで戦わないと勝てないと思う。ただ走るだけなら体格の良い黒人の方々に勝てないし、人が苦しむ結果になったとしてもえげつなくお金儲けだけをしようとなったらユダヤ人と中国人には敵わないと思う。

では、サービス産業に関して「アジアで戦っていける」と思う心の支えは何か。私は社内で、「ホスピタリティ能力は、経験×技術×心」と言っている。で、「経験」のところはいろいろとやり方があると思うけれども、「技術」については非常に優れた改善・改良能力を日本人は持っている。それで世界一になったのがトヨタだと思う。そのDNAを生かせる。最近はサービスサイエンスという言葉もある。サービスを科学的に捉え、どのKPIをどう整備すれば最も良くなるかを考えるといったアプローチだ。冒頭でご紹介した写真でも同じ。ある程度は数値化をしてカメラマンに指標を与えないと、その人の好き嫌いで撮ってしまう。私たちはそうした技術を改善・改良することでお客さまの満足度をより高めていきたい。まさに星野リゾートさんがなさっていることだ。お客さまにアンケートを取ったうえで徹底的にPDCAを回し続けていらっしゃる。

あとは、「思い」の部分。これは滝川クリステルさんがおっしゃっていた「おもてなしの心」だ。私も商売でいろいろな国へ行くけれど、「日本人って本当に親切やな」と、心の底から思う。そんなん、アメリカに行っても見つからない。農耕民族の日本人が元々持っていて、そして島国で育んだおもてなしのDNAは日本人の極めて優れた能力だと思う。改善・改良能力という技術とおもてなしのDNAという心を持っていることは「かなり有利やな」と。それが心の支えだ。私たち自身は負けたりもしているし、資本力で一気に攻めてこられると結構きつい。でも、そういった思いで戦っている。

安渕:それは他のサービス業にも適用できるという感触をお持ちだろうか。

渡部:BtoCでお客さまに直接自分たちのサービス事業価値を提供しようというモデルでは、今申し上げたポイントが絶対に使えると思う。

更家:たとえば、森精機さんや堀場製作所さんには圧倒的な技術力がある。カプコンさんも「バイオハザード」をつくったりしているわけで、圧倒的な企画力や構成力、あるいはデザイン力があると思う。私どもはまだそこまで行っていないけれど、質の高いデザイン力や開発力が日本の強さという面は大きいと思う。

たとえば私どもは直近の十数年、オリンパスさんと一緒に仕事をしてきた。で、酢に酸素一つ加えた過酢酸というもので内視鏡を消毒する商品をつくっているのだけれど、これは日本オリジナルの技術だ。それをオリンパスさんと組んでやることによって、今はアメリカでも使っていただけるようになってきた。競合は天下のジョンソン・エンド・ジョンソン。同社にも「ステラッド」とか「ディスオーパ」といったブランドがあって、ある部分ではそこと争っている。だから磨かざるを得ない。それで今はいろいろ大学さんとも協業しながら新しい消毒液等を開発している。

ただ、弱みはオーバースペックになり過ぎるときがあること。過剰な品質で値段が合わないものをつくったりする場合がある。その辺のバランスが大事だと思う。たとえばアメリカの企業はディストリビューションをつくるのが非常に上手だ。サービスについても強い。従って、ある部分は現地で誰かと組む等、融通無碍にやらないといけない。強さと弱さをカップリングしていく発想が必要になると思う。

辻本:ゲーム業界で考えてみると、日本市場はすごく有望だ。アメリカに比べたら規模は小さいけれど、それでも1億数千万人の方がいて、しかも今はファミコンができて30年が経っている。当時10歳だった人が今は40歳になっている。40歳の方がゲームをやることになんの支障もない。一部では「子どものもの」と思われる方がいまだいるかもしれないけれど。

そう考えると、日本でもしっかりビジネスをやっていけばゲームは儲かる。「日本では儲からんから海外へ行こう」というのは無理。自国で受け入れられないものを海外へ持って行っても儲かる筈もないと、僕は思う。まずは日本のゲーム市場でしっかりビジネスを立ち上げ、それを欧米やアジアに展開していくことを考えるべきだと思う。もちろん海外に行けばやり方自体は変わってくるけれども。

それともう一つ。日本市場はすごくユニーク。プレイステーション4もXbox Oneだけでなく3DSやPS Vitaという携帯のゲーム専用機も売れている。で、PCオンラインでもスマートフォンでもゲームをやっている。ありとあらゆる環境でユーザーさんに遊んでもらっている。さらにはソーシャルゲームでDeNAさんやグリーさんも出てきたし、スマートフォンが出てくるとガンホーというPCオンラインゲームの会社が「パズドラ」1本で数千億円の売上と数百億の営業利益を3年間あげている。それ以外にもスマートフォンベースでコンテンツをつくっている新しい会社さんが同様の勢いで出て来ているし、とにかく、ゲームが国民に大変広く受け入れられている。

大切なのは、その環境で積み重ねてきた経験をいかに海外へ展開していくか。特にアジアの人々は日本のコンテンツやテイストをすごく受け入れていらっしゃる。グローバルに見れば欧米のゲーム企業もアジアを狙っているし、韓国や中国の企業もいる。でも、日本ならではの環境で培ってきたクリエイティビティやオリジナリティのあるゲームで展開していけば、必ず日本企業はゲームで再興できる。そういう思いで、カプコンは日本のゲーム会社として世界一になるべく、今後もチャレンジしていく。

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安渕:それほど日本市場はポテンシャルもある、と。

辻本:そう思う。移動時間にゲームをする人も多いし、これほど娯楽にお金を使ってもらっているわけだから。

安渕:実際、東京で電車に乗っている人のほとんどがスマホ画面を見ていて、しかもその半分以上はゲームだ。ニューヨークでそういった風景は見ない。

辻本:近年は「妖怪ウォッチ」も爆発的にヒットしている。これ、ゲームのキャラクターだ。日本ではゲームが売れなくなったと言われながら、こちらは去年1年でおよそ150万本売れた。先日はその2作目が出たけれど、2週間でおよそ200万本売れた。新たなゲームIPだ。こういうことが日本でもまだまだできる。

安渕:小さなお子さんがいらっしゃらない方はご存じないないかもしれない。今、「妖怪ウォッチ」というのは子どものあいだで一番人気だ。そのアイテムを欲しがる子どものために、親が夜中から店舗に並んだりして大変なことになっている。

辻本:妖怪を見るのではなくて「妖怪の時計」なので誤解なさらないよう(笑)。

安渕:最新機種は「妖怪ウォッチ タイプ零式」というのがございます、ご参考まで(会場笑)。さて、この辺で関西の視点にも触れたい。3社とも大阪か京都に本社を置いておられる。関西でやっている強みや違いというのも改めて伺ってみたい。(48:12)

更家:関西でリクルーティングをしていても、やっぱりおもろいやつが多い。東京には真面目に決められたことを決められたプロトコルでやる人が多いと感じるが、それが関西になると、「そんなん嫌いや。押さえつけんといてくれ」といった感じになる。実はそれで海外へ飛び出している人も結構多い。最近は「私もアフリカでやりたい」と、すごく優秀な方が当社にも応募してくるようになった。それで今は3人ほどウガンダに行っている。一流大学を卒業して、それでソフト開発でちょっと疲れたりして(笑)、「一度アフリカに行きたい」という人もいたり。

辻本:当社も開発のほとんどを大阪で行っているけれど、更家さんがおっしゃった通り、面白いもんをつくりたいと考える面白い人たちが多い。「オリジナリティがあるものをやりたい」と。また、「やるけれども儲けなあかんで?」という話をよく理解している。最近はダイレクトにユーザーを獲得するため、ゲーム業界もいろいろとユーザーイベントを行わないといけない。それで発表会を行ったりすると、カプコンの開発陣はまあよく喋る。しょうもない笑い話もする。その辺はやっぱり大阪気質だと思う。

ちなみに、ゲーム業界の人間は自分たちがつくったゲームを映画にしたがらない。仮に映画化するとなると、「俺が、俺が」になってしまう。「映画監督みたいにやりたい」と。ゲームと映画はまったく違うものなのに。でも、そこでカプコンの場合は、「ゲームはゲームで儲かっているけれど、映画にすればまたこれだけ儲かるで?」となる。儲け話に飛びついてくる。その辺、大阪や関西の人間はきちんと計算しているというか、「儲けてなんぼ」ということが分かっているのは大きいと、僕は思っている。

安渕:辻本社長も何か面白いことを言わないといけない?

辻本:外でつまんないことを言いつつメディアに取りあげてもらって、「あ、社長も面白いこと言うな」と。社内で言ってしらーっとなったら怖いから(会場笑)。

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渡部:まず、関西の人たちは格好をつけないと思う。「なにかっこつけてんねん」という言い回しがあるけれど、コミュニケーションが比較的上手なんだと思う。関西出身の人間をアジアへ送ってマネジメントさせると、なんというか、関西弁で言うところの「正味の話、どうなん?」という、詰めた話をしてくる。だから、アジアでうまいことやるのは比較的関西の人が多いと思う。関西出身の社員が多いというのもあるけれど。

あと、京都に本社を置いているといいことがある。全体会で堀場(厚氏:株式会社堀場製作所代表取締役会長兼社長)さんから「京都から東京に本社を動かした上場企業は一社もない」とのお話があった。堀場さんのお父さんは、「京都から本社を移すのは都落ちや」とおっしゃっていて(会場笑)、それが怖いというのもあって(笑)。ちなみに実態としては東京に本社移していても、「本社は京都や」と言い張っている方を知っている(会場笑)。で、たしかに京都では情報が流通するし、それに加えて京都は良い意味で狭い。私ですら堀場さんのみならず堀場さんのお父さんとお話させていただけるほど、世代間に壁がない交流がある。それで、自分の父ちゃんに言われると「やかましいわい」と思ってしまうことでも、違う方に言われてメモを取っているような自分がいたりする。で、「あれ? これって父ちゃんが言ってたことやな」と、はたと気付いたり。そこで自分の経営スタンスを修正するときもある。

あるとき、東京の同業他社を意識していた私は、「今、こんなことを考えてます。利益がこれぐらい出るモデルを10個横展開すれば、これぐらい儲かります」なんて話を京都の方にしたことがある。すると、「しょうもな。東京のやつがやるみたいな商売考えやがって」って言われた(笑)。そういう批判をストレートに言ってもらえる地盤が結構ある。非公式にそういう機会をたくさんいただける。世代を超えていろいろと小言を言っていただける方々と接することができるのは京都ならではなのかなと思う。

→グローバル・ニッチビジネスの戦略[4] は4/23公開予定

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