グローバル展開したものの…今だから言える苦戦した市場 

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グローバル・ニッチビジネスの戦略[2]

安渕:いろいろなやり方でチャレンジをしている3社だが、まず、なぜグローバルにチャレンジするのかというお話から伺ってみたい。それはビジネス戦略なのか、あるいは、ある種の社会的な背景があるのか。そもそもの発想をお聞きしたい。(19:16)

更家:なぜグローバルに行くかと言えば、日本市場には欧米の、特に米国企業がたくさん入ってきているし、それなら逆に我々も外に打って出て行こうという発想があった。あと、やっぱり地球が好きということがある。だから今は地球的に考えて、「うちの商品を手洗い業界で世界No.1にするんや」と、社員にも叱咤激励を飛ばしている。そこで、戦いを通じて互いに磨き合うものがあるという信念というか、感覚がある。

辻本:歴史的背景を考えてみると、日本のゲーム業界はピンボールからスタートしている。これは進駐軍が持ってきたものだ。それを払い受けて日本人が遊ぶようになったわけで、ゲーム自体は元々欧米のものだった。ゲームセンターのテレビゲームもピンポンゲームも同じ。従って僕らが参入した段階で、ゲーム業界はそもそもグローバルでやっていくものだという感覚があった。アジアでもそういうものが売れていたし。もちろん日本市場は小さく欧米市場は大きいわけで、「開発コストがかかるのなら最大限の利益をあげるためもグローバルで売るものをつくろう」というのもある。それが、テレビゲームを始めた段階からカプコンの大きな戦略だった。

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渡部:先ほどお話しした通りで、製造業として海外へ行ってみたらこれから結婚する若年層のお客さんが数多くいらしたので、「おいしそうだった」という安易な理由がひとつ(笑)。あと、「アジアは行けそうや」と思った理由もある。結婚式というのは文化だ。で、その国の文化と我々が提供している日本の結婚式の価値に、一定の文化的同質性がないと難しいと思う。サービス産業には全般的にそういう面があるけれども、北米やヨーロッパでは結婚式は個人でアレンジするもの。会社に頼むという発想がないからまったくダメだけれども、その点でアジアでは行けそうだと考えた。

ただ、アジアでもインド、あるいはさらに貧しい国になると結婚式はごちそうを食べる機会というだけ。演出なんてしようものならお客さんから「先に食わせろー!」というクレームが来る(会場笑)。そうした地域には日本のブライダル産業からは誰も攻めに行っていない。ある程度の文化的同質性と、文化的成熟度のフェーズにも合っていないと進出できない。その点、先ほど挙げたアジアの数カ国はマッチしていた。

安渕:どういった国や市場から入って、どんな風に売っていくのかというお話も伺ってみたい。いろいろな苦労や困難があったと思うが。

渡部:中国で始めたときは本当に苦労した。で、結論から先に行ってしまうと、中国におけるサービス産業の展開は、今は少し時期が早いのかなと思う。だから、今はやや腰が引き気味だ。アジアではそれ以外の、もう少し農耕民族的な人々が多いASEANあたりが日本のサービス産業にとってのターゲットになると思っている。

うまく言えないのだけれど、中国の方には、今はまだホスピタリティという概念そのものがあまりない。そこに日本の会社が行くとどうなるか。「日本の会社はクレームにめっちゃ弱い。文句言いに行けば金を出しよる」という評判が先に立ってしまう。具体例を挙げると、前の週にお写真を撮らせていただいたお客さまが親族50人ほどで、腕に黒い喪章を付けてお店にいらした。で、「お前んところで撮った写真が酷かったからうちのばーちゃん死んだ。賠償しろ」と(会場笑)。で、「そんなことに責任は取れません」と言うと、「うわー!」と。もうテーブルやらガラスやら割り始める。それで暴力沙汰になって警察を呼んだ。ある日本人店長は、そういうことが何週間も続いて鬱になってしまった。そんな感じで、サービスを受けることで対価を払うという概念がそもそもない。「モノに金は払うけれど無形のサービスは金を払う対象じゃない」と考える方々に、僕たちの事業価値を発揮するのは「無理やなぁ」と、今は思ったりしている。

安渕:台湾は同じ中国系でも大分違う感じだろうか。

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渡部:台湾は大丈夫。文化の成熟度が違うのだと思う。これは私の勝手な解釈だけれども、人は誰かに親切で心地良いサービスというか無形のものを受けないと、自分のなかにホスピタリティという概念が生まれないのだと思う。経済的に比較的余裕が出たぐらいの国にいる人たちは、ホスピタリティに対する理解があると思う。

安渕:今、ある意味ではゲームも有形から無形の配信になってきている。ゲーム産業はどこにでも出て行けるのだろうか。(26:00)

辻本:元々はパッケージを売っていたわけで、そのために拠点をつくっていた。また、雑誌等々の広告についてもいろいろ考えていかないといけないので、それで現地法人をつくって人を雇っていたということがある。で、アジアはどうかというと、先ほど渡部さんがおっしゃっていた通り。「コンテンツに金払ってどうすんねん」と。「コピーしたらいいじゃない。ハードは買うけれどコンテンツは高いわ」という風に、コンテンツに対してお金を払う考えが毛頭なかった。

ただ、今はスマートフォンが出てきたし、アジアではPCオンラインゲームが流行っている。そうしたゲームは基本的にF2P(free-to-play)だ。最初は無料で遊ばせて、課金とともになんらかのアイテムを買わせたり、時間を短縮するということをやらせたりする。そうしたビジネスが韓国や台湾、あるいは中国で成熟してきた。だから、昨今はゲーム専用機でもオンライン化されて、サーバーで個人を管理しながら配信および課金していくモデルに切り替わってきている。

何より大きかったのはスマートフォンがグローバルで普及した点だ。アジアでも普及している。そのゲームアプリも基本的にはF2P。まずは無料で遊んでもらって、あとはPCオンラインゲームと同様に課金する。そうした課金化の流れによって、コピーされていたようなそれまでの状況から、今はビジネス展開ができる形になってきた。それと、配信だから拠点を置かなくても展開できるから経費もすごく軽減されている。

また、アジアではスマートフォンベースで開発できる状況になってきたので、今まではゲームで遊ぶ側にいた人たちが、「自分たちもゲームをつくって配信して、ビジネスにしよう」と考えるようになってきた。ASEANの国々ではこれからそういうゲーム産業の育成を支援しようという機運になってきている。9月に行われた「東京ゲームショウ」でも、アジア全体で日本のゲーム産業に参入しようという機運になっていると感じた。ゲームがネットワーク化およびオンライン化されて、さらに多くの人たちにゲームを楽しんでもらえる可能性が出てきた。それで今後もさらに市場が拡大していく。

安渕:ゲーム内のアイテム等に課金するモデルによって、ある意味ではビジネス展開が容易になってきた?

辻本:そう。窓口が広くなったので、お試しにゲームをやってもらえる。それで課金できる比率はプレイしてくれるユーザーのおよそ15%。それまではゲームにお金を払ってくれなかった人たちだから、そこから15%取れるのは大きい。ゲームをやるためにスマートフォンを買っているのではなく、通話や他のアプリのために汎用機を使っている方々なので。「それでゲームもできますよ」と。

安渕:全体のパイは逆に大きくなってきている、と。

辻本:そう。最近はAndroid OSがアジアでも広く普及していて、グーグルも方針を変えてきた。「Android One」という規格で統一しよう、と。今後出てくる低価格スマートフォン等のレベルに対応するためだ。グーグルとしてもアプリのなかでゲームが最も儲かることが分かってきた。だからゲームのOS環境を統一して、これからはゲームで稼ごうという発想に転換してきている。アップルはご存知の通り、ゲーム環境のOSが統一されていて、ある一定のレベルまでは担保されている。やはりアップルでもアプリのなかではゲームの売上が断トツに高い。加えて、国別では日本が世界で最も、圧倒的にゲームアプリの売上高が大きい。だからアジアの方々が日本にビジネスを仕掛けてくる。そんな風に、グローバルなゲーム産業もだいぶ変わってきた。

安渕:更家さんは難しい地域にチャレンジされている。現地ではどういったチャレンジや困難があるのだろう。(31:22)

更家:なぜグローバルに展開するかという点で、先ほど少し言い忘れたことがある。手の洗い方や、どのタイミングで手を洗うかといったことに関して、アジアはヨーロッパやアメリカのどちらかに倣っている。で、日本は割と先端的に進んでいるところがある。そういうことを自分たちの肌で感じながら実践しているわけだけれど、やっぱりヨーロッパは厳しい。一応は支店を持っているし、ロシアでも展開している。もちろん、アメリカでもやっている。で、たとえば手洗いに関してはアメリカではFDA(Food and Drug Administration)が、ヨーロッパではヨーロピアン・ノームが定める試験方法や許可基準が決まっている。それをきちんとクリアするために拠点が必要になる。

ただ、ビジネスが伸びているところはアジアだから、「アジアの、特に中国は押さえておかないかんでしょう」と。あと、現在は東南アジアで一生懸命やっている。マレーシアからタイ、カンボジア、ベトナムを、さらに今後はもう少し先のラオスやミャンマーもつなげていこうと考えている。で、タイでは工場を建てた一方、マレーシアでは中小企業のM&Aを先般行った。ここはもう少し伸ばしていきたい。また、オーストラリアはマーケットが非常に小さい。支店は構えているが、5~6年赤字が続いた。やはりある程度の人口でないとマーケット攻略はできない。それで社長とはずいぶん話をして、「まあ、赤字だけども頑張るから人は辞めさせんと頑張っていこう」という話なっている。今はやっとバランスが取れてきたぐらいの段階だ。

で、アフリカの話をすると、やっぱり一番のボトムになる。BOP(Base of the Economic Pyramid )ビジネスと言っているけれど、「ここで売れるんやったらどこでも売れるやろう」と。そもそも、アフリカのようにお金がないところでビジネスをするのはユダヤ人か大阪商人ぐらいで(会場笑)。そういう発想で入っていったのだけれど、ニーズがあることは分かった。必要とされているのは分かっているし、ハイエンドな病院もある。ただ、日本から商品を持っていっても値段が高くなってしまうから、現地でつくらなければ仕方がないということでパートナーを見つけた。それで今は製造のほうはパートナーがやっていて、あとは販売会社をやっている。

それで、病院等にルートができたらサプライチェーンをいろいろつくって伸ばしていこうと考えている。あと、今は研究開発ということで、アルコールや石鹸をつくる2000~3000万円ほどの小型製造装置を現地でつくっている。とにかく最初は難しいから、マーケティング兼ねてその製造装置を各国に入れている。現地には油と酒がある。酒を蒸留するとアルコールができるので、それでビジネスをしていこうかといった話になっている。結局、地域によってモチベーションが大きく違う状態だ。

我々はインドのムンバイにも販売会社を置いた。ライセンスを取得するのに現地法人が必要だったからだ。それでライセンスを取得し、今は現地でOEM企業を探している。それで3年ほど経った。インドは大きい国でゆったりしているけれど、そこで歯を食いしばりながらやっている。グローバルと言っても皆違うのだなと思う。ただ、一方ではグローバルスタンダード、そして別の意味では「グローバルバリュー」というものもある。「環境問題に皆できちんと対応しよう」とか、そうした共通すべきバリューに関しては我々もできるだけ同じ場所に立って、そのうえで共感を生んでいけば会社のバリューも上がるのではないかなという発想をしている。

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安渕:現地生産で品質を保つための何か特別な努力は必要だろうか。

更家:今はオンゴーイングでやっている。やっぱり現地でつくるとフタが取れたり液が漏れたりといったケースがかなり多い。ただ、日本から持っていくと高くなってしまうから、現地でボトルをつくってもらったりしている。実際、日本的品質への信頼は非常に高くて、たとえばウガンダでも日本車の中古市場は大きい。バスに京都市内の行き先案内が残っていたりして、それが消えると同じ文字を上書きしている(会場笑)。「なんでそんなんするの?」と聞いてみると、日本の中古車というのを自慢したいそうだ。ユニ・チャームのオムツや森永製菓の粉ミルクもすごく売れているし、日本品質に対しする信頼はすごく大きい。うちも中国に工場があるけれど、現地ではなんというか、「安いからしゃあないけど、できたら日本のものを使いたい」という心理がある。

→グローバル・ニッチビジネスの戦略[3] はこちら

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