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東京との情報格差が縮小、関西発のイノベーションが続々

投稿日:2015/04/16更新日:2019/04/09

関西発・世界に突き抜けるビジネスの方法論[4]

堀:では、会場とのやりとりに入ろう。(46:23)

会場(御立尚資氏:株式会社ボストン・コンサルティング・グループ日本代表):関西弁で質問したい(会場笑)。お話を伺っていて、新しもん好きのところと、長いことしつこくやるところと、両方持ってはると感じた。ただ、今はアメリカ型資本主義のルールが日本にどんどん入ってきて、国全体では「スチュワードシップ・コードやガバナンスのあり方を変えましょう」という議論も出てきている。それはマクロでは正しくても、上場企業に関して言えば、今日おっしゃっていたようなことを少しずつやりにくくしていくのかもしれない。ドイツでも同じようなことが起こり始めていて、それで非上場を選ぶ会社が増えている。企業文化を残しつつ上場し続けるモデルは今後も成り立つのだろうか。あるいは、「いや、めんどくさなったら上場止めたほうがええ」となるのか。特に森さんの会社は株式公開をするために上場してなあかんという辛さもあると思う。世の中がそうしたやりにくい方向へ進んでしまうとお考えか、「そんなんやりようやからなんとでもなるわ」と思っていらっしゃるのかを伺いたい。

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堀場:我々は一応上場しているけれど、まあ、やっぱり上場した創業者はいいですよね、すごく(会場笑)。そして創業者以外は上場していてもいいことは何もないと思う(会場笑)。私も今はスコットランドへ行ったりアメリカへ行ったりと、仕事の3割ぐらいは上場しているからやらなければいけないことに追われている。ただ、いいこともある。我々は「契約社員」だから、年に1度、必ず認めてもらうための儀式がある。こういう「祇園」がある限りは緊張感があっていいのかなと思う(会場笑)。

会場(田口義隆氏:セイノーホールディングス株式会社取締役社長):世界に出るうえで、変えるべき点と変えない点をどのように区別していらっしゃるのだろう。

森:変えないかんところはたくさんあって、今も一つ気になっていることがある。先ほど「平均賃金は一緒」といったお話をした。ただ、付加価値は同じでも工場ワーカーの労働時間が違う。ドイツではさすがに組み立てエンジニアの労働時間が短い。我が社が月20時間ほどの残業で年間1850~1900時間となるのに対して、あちらは1450時間だ。品質など細かい話はあるけれども、それで同じようにやっている。「ここはちょっとチャレンジだな」と思う。両社で包み隠さず、社員が互いの情報を見るようになったとき、互いに努力するところがあると感じている。

会場(瀬尾傑氏:講談社「現代ビジネス」編集長):関西からイノベーションを起こすため、何が必要になるとお考えだろうか。

堀場:やはり情報が大変重要だ。京都から東京に本社を移さない理由として、先ほどお話ししたこと以外に、アカデミアの情報量も経済の情報量でも東京に負けていないというのがある。加えて、衣料でワコールさん、セラミックで京セラさん、電子部品で村田製作所さん、各種電子機器でオムロンさんがいる。すべて日本一、世界一だ。だから別に東京へ行かなくても最新情報が手に入る。東京に行ったら大変だ。誰が1番か2番か3番か分からないし、トップの顔が見えない。会社は有名だけれども誰に聞いたらいいか分からない。話を聞いてみても、その人が本当に会社のことを思って言っているのか、「自分は偉い」ということを言っているのか分からない(会場笑)。京都ではそういうことを言う必要がないので。

もっと言うと、たとえば京都の料亭に京都経済人が集まると誰が上座に座るか。300年の歴史があり、従業員は30人で、売上もそれなりという会社の方が上座に入る。で、上場企業でも歴史の浅い我々は下座。我々より大きな上場企業でも、その子会社の方はさらに遥か下座になる(会場笑)。東京では逆。上座に来るのは、売上の大きいところ、従業員の多いところ、赤字が大きいところ(会場笑)。つまりランクの付け方が違う。従って、情報量の違いは本当に大事だ。京都ではセレクトされた情報を、それほど努力せずとも手に入れることができる。実際、私は国内の販売チャネルをどうしたらいいか、ワコールの塚本(能交氏:株式会社ワコール代表取締役社長)君に聞いた。ものづくりについても同じだ。村田製作所の前社長である村田泰隆さんに北陸の拠点を見せてもらった。一箇所は本当に手作りで、一箇所は超自動だった。で、蟹を食べて帰ってきた、と(会場笑)。絶対、こっちのほうが面白い。とにかく、そうした情報がすごく手に入れやすい。逆に言えば情報が手に入らないと難しいと思う。

堀:会場には関西でベンチャーを興した起業家の方もいらっしゃる。谷井さんはどうだろう。これまでにベンチャーを2度立ち上げ、それをそれぞれ楽天とヤフーに売った唯一の方だ(会場笑)。谷井さんも大阪本社を移さないとおっしゃっていたが。

会場(谷井等氏:シナジーマーケティング株式会社代表取締役社長兼CEO):現実問題として情報量が足りないというのはあると思う。だから、僕自身は本社を大阪に置きながら東京にも半分ほど行っていたりする。ただ、東京に馴染むと東京のやり方を吸収してしまうようなところがある。だから、その「型」にはまらないよう、僕はかなりゲリラ的に、皆さんと逆の方法を選んできた。そんな風に、少し離れていることによってニュートラルに考えることができるという面はあるような気がする。

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堀:僕は囲碁が大好きなのだけれど、昔は京都ではプロ棋士の棋譜が手に入らなかったという。でも、今は打った瞬間に誰もがオンラインで棋譜を見ことができる。それで今は強い棋士が皆関西人になった。岩間一幸氏、村川大介氏、結城聡氏等々…、かつては東京が強かったのだけれど、今は情報格差がなくなってきたからだ。その意味でもやはり情報がキーワードになるのだと思う。ネット系はまだ東京一極集中だけれど、今は大阪でも「EO(Entrepreneurs Organization) Osaka」という若手起業家の会が立ち上がってきた。そこに多くの情報が集まり、皆が勉強会でさまざまなことを吸収している。それで多くの起業家が出てくると、十分な情報に加えてネットワークや人脈も生まれる。そこに京大はじめ在関西の大学が入ってくれば大きな可能性となるし、今後は面白い形でイノベーションが起きるのかなと思う。また、関西では各県で発想の違いがある。「『関西は一つ』じゃなくて『関西はひとつ一つ』」なんていう言葉もあったけれども(笑)、そうしたダイバーシティもイノベーションを起こしていくと思う。

→関西発・世界に突き抜けるビジネスの方法論[5]はこちら

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