あのグローバル企業が関西から出ずに海外進出した理由 

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関西発・世界に突き抜けるビジネスの方法論[1]

堀義人氏(以下、敬称略):この第2部ではビジネスと経済、そして産業の視点で「関西から世界へ」という議論をしたい。パネリストの御三方はまさに関西発企業の経営者だ。3社ともベンチャーとしてスタートして、いまだ本社を東京に移していない。本拠地はそれぞれ奈良、大阪、そして京都にあって、時価総額は3社とも1500億円超。一方では海外売上比率が6~7割の会社もある。すごくグローバルなビジネスを展開している企業の代表にお集まりいただいた。

さて、今回はG1関西ということで、まずは関西「らしさ」について伺いたい。土壌あるいは経済的風土等、どういった要素があったために関西で強くなれたのかを伺いたい。以前、冨山(和彦氏:株式会社経営共創基盤代表取締役CEO)さんは、「世界で戦っていくうえでは地元の匂いがぷんぷんする企業が強いんだ」と言っていた。トヨタなら三河の、ノキアならスウェーデンの、サムスンなら韓国の匂いがぷんぷんする。「それぞれの土壌が持つ強みをそのまま持っていった企業が世界で強くなっていく」と。そういった意味で、関西にはどんな強みがあって、それがどのように企業の強みや文化になっていったのだろう。まずは山田さんからお話しいただきたい。

Fcd646db21ba40bdf3ac981d2586e2ca 山田邦雄氏

山田邦雄氏(以下、敬称略):私はG1関西のボードメンバーだし、会場には知り合いの方も大勢いらっしゃる。だから今回はお二人の引き立て役という立場かなと思うけれど(笑)、まずはトップバッターとしてお話をさせていただきたい。まず、いわゆるスケールの指標で見ると関西が東京に負け続けているのは明らかだけれど、「それは良くも悪くも日本のなかで見るからや」と。東京と比べるとどうしても負けたように見える。でも、「量的な指標で考えるから負けたように見えるだけや」と。負け惜しみに近いけれど(会場笑)、そうした視点は大事だと思う。

で、我々のほうはと言うと、製薬企業とはいえコンシューマ領域だけでやっている。従って、まあ、厚労省さんにはいろいろお世話になっているけれど、基本的にはあまり東京を見ないで商売ができる。純民間で、かつコンシューマ領域でやってきたということが、ある意味では地元の匂いがぷんぷんするという部分なのかなと思う。

あと、海外展開に関して言うと、うちが海外へ出たことには独特の理由がある。たぶんDMG森精機さんや堀場製作所さんは競争優位なテクノロジーがベースにあり、日本の技術的強みを持って海外に出られたのかなと思う。そうした典型的な海外展開のパターンと比較すると、我々はかなりローテクな商品を出していると言える。従って、もちろん品質にはこだわっているけれど、海外へ行ったからといって無条件で「素晴らしい商品だ。ぜひ買わせてくれ」という話にはならない。

だから、そこそこ質の良いコンシューマの商品で、「どうやって海外に出ようか」と。強みがあるから出たというより、むしろ、このままではたいした発展もしないから海外へ出るしかない状況だった。我々の業界は10~15年前から構造的不況に陥っていたし、半分はそういう理由だ。もちろん、実際に現地へ行ってみるとまだまだ満たされていないニーズがあったという面もある。現地の商品を見ても、「これではいかんやろ」といったことがあって、そこにチャンスを感じていた。で、あとはとにかく、「まあ、やってみるか」と。「やってみなはれ精神」というのは有名だけれど、残りの半分の理由はそれだ。チャレンジせざるを得なくて、それでこの20年ほど海外でやってきた。

いずれにせよ、当時は中国やベトナムやインドネシアといった地域で新しい資本主義マーケットができつつある時期だった。おかげさまで、その波にはタイミング良く乗らせてもらったと思う。ただ、この2~3年でまた違う感じはしてきている。今までは新興国に日本の商品を持っていくと、それだけで良い商品だと評価される面があった。しかし、今は現地も経済的実力を少しずつ付けていて、そこでつくられる商品の品質も上がってきた。ぼやぼやしていてはいけないというか、「おや? 日本の一歩先を行く商品があるな」といったことも少し感じ始めている。これまでの海外展開とは大きく様相が変わりつつある感じだ。

C38cec7d8c1383485d968a97f6acc153 堀義人

堀:今後も東京に本社を移す気はないのだろうか。

山田:もちろん東京にも支社はあって、150人ほどの社員がいる。ただ、そこでも関西弁が標準語(会場笑)。「個性を無くしたらいかん」と。採用も半分は関西から。もう半分は全国から採っているけれど、関西色は維持していきたいなと思う。

堀:G1関西のボードでもある世耕(弘成氏:内閣官房副長官/参議院議員)さんからは、「会議の標準語を関西弁にしよう」との提案があった。ただ、僕も京大時代は関西弁を喋っていたが、皆さんからすると聞きたくない感じになるかもしれない(会場笑)。もちろん皆さんは関西弁でどんどん進めて欲しい。では、続いて森さん。(08:24)

41c2435c630da84067e82388a704eabb 森雅彦氏

森雅彦氏(以下、敬称略):私どもは工作機械をやっていて、今はドイツの会社と少しずつ合併を進めているところだ。「できるだけお金を使わず、株式交換等で合併していきたいな」ということで、今は東京とフランクフルトという両株式市場の違いにいろいろ頭を悩ませながらやっている。

当社は和歌山出身である私の親父と叔父が1948年に奈良で創業した会社だ。私自身は京都大学を卒業後、大阪の伊藤忠本社で働き始めている。それで兵庫の雲雀丘花屋敷に住んでいたのだけれど、そのあいだに実家のほうの会社は三重県に工場をつくった。で、私は今、奈良市民として…、会場に奈良市長もいらっしゃるけれど、奈良市民として奈良市に税金は納めているけれど、実は去年から京都に住んでいる(会場笑)。ということで、典型的な関西人としてずっとやってきている。

会社のほうは、今は利便上の理由で名古屋駅前に本社を移しているが、登記上の本社は奈良県大和郡山市だ。で、先々月は東京にグローバルヘッドクォータというものをつくった。同じものはチューリッヒにもつくっていて、この二つで世界をカバーしようと考えている。東京のほうは山田さんのところと同じ。100名程度で関西弁が標準語。東京のいいところだけを使っていこう、と。メーカー兼サービス業のようなところがあって、東京をグローバルヘッドクォータ、名古屋をナショナルヘッドクォータに位置付けていている。また、1時間ほどの距離で社員が頻繁に行き来している奈良と三重の両工場はマニュファクチュアリングテクノロジヘッドクォータという感じだ。一方、欧州ではハノーバー近くのビーレフェルトというところにナショナルヘッドクォータ、チューリッヒにグローバルヘッドクォータ、バイエルンの山奥にあるフロンテンというところの工場をマニュファクチュアリングと研究開発のヘッドクォータという形にしている。

で、私どもは1970年頃から輸出を始め、今はおよそ70%が輸出になっている。ドイツではまだ株式を25%しか持っていないので、連結対象ではあるけれども完全に一緒の決算ではない。ただ、それでもグループ全体で売上の90%が海外になる。我が業界はドイツでも日本でも規制がない。よく新人アナリストが来て「森さんのところもサービスで儲けなアカンよ」と言ってくる。「はあ…」なんて言って聞いているけれども、「ユナイテッド・テクノロジーズのエレベーターを見なさい」と言うわけだ。「自動車も航空機も医療もエレベーターもすべて規制でサービスが決まっている。年に1回点検しなさい」と。でも、工作機械というのは20年ほど使われるのだけれど、恐ろしいことに業界にはなんの規制もない。これまでずっと、お客さまの自律と我々のサービスで維持・管理され、安全が保たれてきた。

唯一の規制は輸出管理制度だ。いわゆるワッセナー・アレンジメント。一番恐ろしい外国為替及び外国貿易法になる。なぜ工作機械がこれに管理されるのかよく分からないけれど、それに別表というのがあって、これに違反するといきなり東京拘置所に入れられる。そして、海外売上の最大6割まで6ヶ月間召し上げられて輸出禁止になる。うちが違反したら一発でおよそ500億円が無くなるという恐ろしい法律だ。だから私は新地を歩いてスキャンダルになってもぜんぜん恐ろしくない(会場笑)。そんなことはどうでもいい。とにかく外国為替及び外国貿易法に引っかからず、法令を遵守することが大事で、これが我が業界の大変特異なところになる。

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あと、関西の話をすると、大阪・京都・神戸に加えて、和歌山や奈良も入れると関西はどちらかというと半島でもある。イタリアやスウェーデンあたりと同じだ。奈良や和歌山や三重といった半島にはエネルギーが集まるんじゃないか。尖がっているものにはエネルギーが集まるんじゃないかと思う。熊野古道とか、あの辺は私の見方からすると京都あたりともまた少し違うのかな、と。そのエネルギーが、親父の時代から続いているところの海外進出になっているという感じが今はしている。また、関西の会社はどこもそうだと思うけれど、まあ、「いばるな」「かますな」というのが新入社員に教え込むところでありまして(会場笑)。なにせお客さまは20年ほど使われるのだけれど、機械というのはだいたい18年目ぐらいに壊れる。そこですぐにパーツを持っていけなかったら、次はもう名古屋のコンペティターを使われたりする(会場笑)。とにかくお客さまに気持ち良くやってもらわないかん。

→関西発・世界に突き抜けるビジネスの方法論[2]はこちら

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