【テキスト】「目に見えない魅力」、それが日本の強み 

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2020年に向けた日本の都市と産業[3]

竹中:では、会場に開いていこう。先ほど申し上げた通り、コンファレンスは重要だ。「こうしてはどうか」といった意見や質問を募りたい。賛否両論いろいろあると思うので、活発にご議論いただきたい。いかがだろうか。(00:21)

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会場(ナカガワ氏):GPCIのトップ5には、東京以外にはほぼカジノがある。タブーかもしれないが、今後アクセルを上げていくという意味でもカジノについてご意見を伺いたい。(01:00)

世耕:オリンピックと絡めて考えてはいない。我々はすでに準備室をつくって、今は議員立法ではあるけれどもIR(統合型リゾート)基本法という法律を通そうとしているところだ。基本法というと誤解をされそうだけれど、この法律は「必要な法律の準備をしなさい」ということ決める法律。それが今は国会にかかっている。報道によると日程的には成立が難しいのではないかと言われている。ただ、いずれにせよオリンピックとは絡めていないが、都市の魅力を高めるための大変重要な仕掛けの1つだとは思っている。シンガポールもかつては観光客が減っていった時期がある。しかし、2つの大きなIRをつくって一気に観光を盛り返した。従って、意識としてはどちらかというと東京オリンピックで盛りあがった、そのあと。大きな空白が来ないよう、次のプロジェクトとしてIRを考えている。東京と決まっているわけでもないし、日本のどこかにつくっていくことが重要ではないかなと思う。(01:37)

森:私も世耕さんに質問したい。たしかラスベガスでもカジノの収入は3割前後に留まっている。インテグレーテッド・リゾート(IR)とあえて言っているし、MICEのほうで都市の魅力をつくることにもっと重きを置くというのはできないのだろうか。(02:51)

世耕:我々がIRという言い方をしているのは、まさにそのためだ。実際、総理もシンガポールへIRを見に行って考えが変わった。たとえばカジノのスペースは、面積ではIR全体の3%しかない。しかも厳格に管理をされていて、シンガポール人は高い入場料を払わなければ入れない。「これならいけるよね。こういうのなら日本に欲しいよね」となって、それで今は動きが出てきているという状況になる。(03:13)

竹中:今、世耕副長官は大変慎重におっしゃったけれども、私の聞いている範囲では残念ながら今国会で通らないようだ。これは私が勝手に言っているけれども(会場笑)。あと、どこが良いかということに関しても、相当に広い場所が必要とされている。お台場という声はよく聞くが、それではとても狭い。インテグレーテッド・リゾートというのは恐らく別の発想で考えなければいけないと私は思う。(03:43)

世耕:あと、今世論調査を行うとまだ圧倒的に反対が多い。博打や賭博といった感じでアンケートを取るとそうなってしまう。従って、IR本来の意味を伝えていくということについて、ぜひ企業の皆さまにもご協力いただけたらと思う。(04:29)

会場(野田泰平氏:株式会社ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン代表取締役社長CEO):2020年以降の東京に何を残していくかという議論があったが、世界の人々が東京と聞いて思い描くメインビジュアルとしては何をお考えになっているだろう。映画では渋谷のスクランブル交差点が出てきたりするし、ゴジラではいまだに富士山と東京タワーが出てくる。その一方、実際の都市開発ではどうも日本っぽさがなく、無機質でどこにでもあるようなものが多いと感じる。しかし、有名な都市はメインビジュアルが素晴らしいし、それを見に行きたいと感じる。世界の人々に「訪れたい都市」として思い浮かべてもらえるメインビジュアルとして何を残していくべきかというのは大きなテーマではないかと思っていた。(04:55)

竹中:ゴジラの映画には森ビルが映っていましたよね(会場笑)。(05:53)

森:たとえば丸の内や六本木のビル街のような、ビジュアル上の強みはあるかもしれない。ただ、日本の強みはおもてなしというか、たとえば地下鉄が正確に動くといった、むしろ目に見えない魅力だと思う。それらのビジュアル化となると難しいけれど、東京のリデザインという点ではそこを忘れてはいけないと思う。人の温かみがあったりタクシーがすごく清潔だったりするという話も、もう少し出していくべきだと思う。ただし、一つのキャッチ―なビジュアルとしてはなかなか出ないと感じる。それが浅草なのかというと「本当かな?」と思うし、世界トップの都市として経済活動が活発ということを示すことも重要だ。インテリジェントビルというと古い言葉になるけれど、ハイスペックなビルのオフィスや居住空間の快適さを示す必要もあるのかなと思う。(06:02)

世耕:これ、政治家にはなかなか考えつかないので、文化関係の方々に考えていただきたい。たとえば海外の友人には東京のごみごみした雰囲気が大好きで、あのネオンが東京だというイメージを持っている方もいる。「それがインテリジェントビルになってしまうとどうなのか」と。この辺、我々の想像力では難しい。外国の方々が日本に何を期待しているのかをよく聞き取りながら考える必要があるのだと思う。(07:13)

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会場(森俊子氏:Toshiko Mori Architect PLLC 建築事務所創立者CEO/ハーバード大学院教授):2020年でなく2050年頃をターゲットにしてマスタープランを組まないと、後世に遺産でなく負担が残ってしまうのではないかと心配している。ロンドンではたしか2050年まで考えていて、昨年も水泳の大会会場を常設施設に縮小していったという。実際、企業としても負担がかかるし損もしてしまうし、それで無駄なものをつくってしまうのがとても心配だ。何を常設として何を仮設とするのか。本当に大切なのは2050年に何が残るかだと思う。世耕さんがおっしゃっていた通り、東京は伝統も新興都市の要素もあってすごくエキサイティングだ。そうしたユニークなビジョンでイノベーションを起こし、バーチャルテクノロジーも使いながら、長い目で見たプランニングを民間経営者の方々にも続けていただきたいと思っている。(07:50)

竹中:前セッションで甘利大臣がおっしゃっていたように、2050年を見据えた「選択する未来」というプロジェクトが政府のなかにある。その中間チェックポイントとして2020とうまく連動してくるかどうかというご質問だったと思う。(09:32)

世耕:オリンピック後については我々も、ある程度は意識をしている。ただ、2050年までオリンピックと絡めて描けているかというと、これはまだまだだ。非常に貴重なご提言だと思うので、しっかり意識していきたい。(09:51)

会場(岡野原大輔氏:株式会社Preferred Networks取締役副社長):ITベンチャーを運営している。アメリカや中国のIT企業には公的支援が相当入っていると感じる。シリコンバレーにはNASAやDARPAが数千億単位で資金援助をしているし、中国でも…、それが良いことかどうかは分からないが、グレート・ファイアウォールで海外サービスが入らないような規制もある。同様に、日本でITに大規模支援を行うことは可能だろうか。オリンピックは大変良い機会だ。2020年に向けて、たとえば会場で人々をトラッキングするような映像管理・解析システム等々、今は多くの国内IT企業がオリンピックを支えるインフラ研究を行っている。オリンピックをきっかけに、日本のIT企業がアメリカや中国のIT企業と戦えるようになればと思う。(10:14)

世耕:ITにとって2020年は本当に重要なイベントだ。我々もかなりの投資を行っていくし、技術開を応援したい。ここは2つの側面があると思う。1つは海外から来た方々にジャパンクオリティを味わってもらうこと。ITでもおもてなし精神に満ちあふれた、便利で素晴らしい品質のサービスを提供していきたい。で、もう1つがセキュリティだ。ロンドンではオリンピック関連のシステムに2億回のサイバー攻撃があったと言われている。2020年は恐らくその数十倍になるだろう。そこから守るということを通して、今まで日本が弱いと言われていたインターネットのセキュリティ技術を育てていくことも、長期的には考えていきたい。(11:40)

竹中:その関連でIT戦略会議やIT戦略本部というものを、私たちがやっていたときにつくったわけだけれども、昨今はその存在感が見えなくて…。(12:42)

世耕:最近はやっていないですね。(12:56)

竹中:そうですよね。当初はITのブロードバンドインフラをつくるというのが目標で、それはそこそこサクセスフルだった。ただ、そのあとに国家目標のようなものが見えなくなっていた。そこは課題だと思う。(12:58)

世耕:その課題を克服する良い機会だ。今後は便利なサービスを提供するための各種プラットホームが出てくると思うので、そのなかで良いものはしっかり育てていきたい。特に現在はセキュリティ分野について海外の企業に頼り切っているので、日本のセキュリティ技術をしっかり伸ばしていきたいと思う。(13:13)

森:ネットワーク化が進めば進むほどサイバーセキュリティは大切となるのに、日本企業はそこに対して鈍感だ。現在はビルもほとんどの制御をコンピューターで管理している。で、日本でもようやく2年ほど前に経済産業省主導でCSSC(Control System Security Center)という研究グループが立ちあげられた。で、先日はオランダの同じようなサイバーセキュリティ団体と「アタックされる側の情報を共有して強くなろう」といった話をしていて、最近はそこに民間企業も入ってきている。ネットワーク化が進めば便利にはなるが、どこか一カ所やられるとすべておしまいという話になってしまう。オリンピックは格好のターゲットになるわけで、そこでサイバーセキュリティを高めるというのは喫緊の課題だ。だから世耕さんのお話は心強く感じた。(13:34)

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世耕:実は、日本のセキュリティ技術も捨てたものではない。詳しくは言えないが、シンガポールのIRを視察したときにいろいろ見せてもらって分かった。セキュリティ関係では日本の技術がずいぶん使われている。(14:30)

竹中:私の同僚である村井純(慶應義塾大学環境情報学部長兼教授)さんに教えていただいたのだが、IT技術とシステムはオリンピックの都度、発展しているそうだ。リレハンメル冬季オリンピックでサン・マイクロシステムズ(現オラクル)が専用サーバをつくった以降、オリンピックにおけるIT開発が大変活発になったという。これも何かの起爆剤となるよう、皆さんに知恵を出していただくところだと思う。(14:45)

会場(内山英俊氏:株式会社ANALOG TWELVE取締役COO):日本の強みはやはりITを含めたテクノロジーだと思う。日本へ来た方に、そうしたテクノロジーを感じていただくのであれば、現時点でかなり実現されていないと2020年に感じていただくのも難しいのではないかと思う。2020年に向けて、たとえばどこかの一都市で実験的取り組みが行われているといったものがあれば、ぜひ教えていただきたい。(15:31)

会場(深沢英昭氏:東京海上キャピタル株式会社取締役社長):先日、米系ヘッジファンドの人に聞いたのだが、彼らはアジアの拠点を検討した結果、シンガポールとムンバイにしたという。東京は候補だったが、子どもさんの教育という点で難しかったそうだ。「今、アメリカンスクールは日本でずいぶん縮小してしまっているようだ」と。ただ、たとえば香港は治安の問題もあるし、中国にも環境の問題がある。安全や環境という点を考えると今は東京を売り込む絶好のチャンスだ。英語教育を充実させ、ビジネススクールを早急に東京へ連れてくればシンガポールや香港に対しても相当エッジを効かせることができると思う。その辺についてご見解を伺いしたい。(16:28)

世耕:日本のテクノロジーをオリンピックでいらっしゃる方々にしっかり見せていくというのは重要だ。いくつか考えているが、先ほど申し上げた燃料電池車。羽田から燃料電池のタクシーで都心へ向かうといった姿を見せることができたらと思う。また、今後はホストシティーやホストタウン構想も動かしていく。そのなかで技術見本市のような場所をどこかにつくりたい。それで、東京だけではなく、もう一カ所、どこかに寄ってもらえたらと思う。そこで「田舎の村や歴史を味わえる地方がいい」と言う方もいれば、「最先端の工場が見たい。テクノロジーを感じたい」という方もいらっしゃると思う。そうした方々のニーズに応える場所をどこかに複数設定していきたい。(17:44)

あと、日本の拠点に関して言うと、実は、最近は結構勝ち始めている。最終的には経済が元気かどうか、だ。その意味では見方が変わってきていて、日本に拠点を置きたいというところも増えているし、メディアの視線も変わってきた。この辺はニワトリとタマゴの関係だけれども、そうした人々のニーズ応える教育環境の整備は早めに行いたい。逆に言えば、民間の皆さんに私立をつくっていただいても構わない。そのときは認可の手続き等で我々も全面的に協力していきたいと思う。(18:37)

竹中:今の「サクセスストーリーができてきている」というお話は本当にその通りだと思う。日本経済の成長率が高まって、株も以前よりは上がって、そして何より円が安くなっている。そこで日本に投資したいという企業も増えているし、日本に帰ってきたいという企業も増えてきた。ただ、かつて民主党政権時代に六重苦というのがあったけれども、そのなかで依然として重くのしかかっているものがあるとすればエネルギー。これは、引き続き大きな問題として残っていくと思う。(19:23)

さて、では最後にひと言ずつ締めの言葉をいただきたいが、1つ絡めていただきたいお話がある。最近は「東京への一極集中を避けよう」ということがよく言われるけれども、これは少々誤解を招くのではないかと以前から思っていた。東京にはもっともっと集中していいと思う。これは地方創生とも関連するが、この点にも触れていただきつつコメントをお願いしたい。(19:56)

世耕:和歌山選出の国会議員にシビアなことをおっしゃいますが(会場笑)、やはり東京が元気でなければ駄目だ。東京に引っ張ってもらうというスタイルは避けられないと思う。東京をしっかりと元気にしていく。実は竹中さんも和歌山出身ではあるし、私も地方選出の議員だけれど、その姿勢で頑張っていきたいと思う。(20:19)

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森:いろいろと手を打つ必要があると思うが、やはり幹を成長させるために根っこを広げるべきなのだと思う。「国家が成長し、人々が前を向くためにどうするか」という本質的なところを見て、官民一体で前に進むことが重要なのだと思う。(20:44)

竹中:ありがとうございました。本セッションの議論を受けて引き続き、官と民の健全な役割分担や緊張関係について、皆さまに議論を深めていただきたいと思う。では、壇上3名のうち2名が和歌山県出身者という(会場笑)、本セッションを締めたい。ありがとうございました(会場拍手)。(20:04)

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