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三越伊勢丹ホールディングス・大西氏×ローソン・玉塚氏×ヤマト・山内氏×ヤフー・小澤氏「流通革命」

投稿日:2014/11/25更新日:2021/11/29

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小澤隆生氏(以下、敬称略):流通業・小売業は巨大産業だ。日本では1000万人以上が就業し、市場規模は150兆円。私が申し上げるまでもなく、流通業の発展が日本経済へのインパクトを占うと言っても過言ではない。そこで今回は今後の流通を担い、あるいは揺るがすであろう素晴らしい御三方をお招きした。御三方が今後の流通業界をどう見ていらっしゃるのか、会場の皆さまに、「あ、なるほど」と感じていただければと思うし、議論のなかから新しいビジネスを何か思いついていただきたい。私自身、今は孫(正義氏:ソフトバンク株式会社代表取締役社長)という者に「インターネットから流通を考えろ」との指示を受けている。今日は勉強する立場でしっかりインタビューさせていただきたい。まずは会場の皆さまと刷り合わせを行いたいので、プロである御三方に「今の流通業界・小売業界をこう見ている」というコメントを順にお願いできればと思う。自社のことは置いておきましょう(会場笑)。(01:26)

33012 大西 洋氏

大西洋氏(以下、敬称略):小澤さんに半分ぐらい喋っていただくほうが私も皆さまも楽しいと思うけれど(笑)、まずは簡単な見解をお話ししたい。GDPの6割が消費であり、そのおよそ半分となる140兆~150兆が小売業の売上だ。で、もちろん現在はEコマース(以下、EC)が伸びていて、その市場規模は現在13兆~14兆と言われている。小澤さんも同じご意見だと思うけれど、この市場は恐らく3~4年で20兆、もしかすると30兆まで伸びるのではないか。ただ、小売業・流通業全体のパイは増えないから、その20兆はリアルな店舗からECへのシフトになる。従って、私どもに限らずリアルな店舗で商売をしているところはECにシフトしないと生き残っていけないと考えている。ただ、100%ネットの世界で流通が行われるわけでもない。ネットとリアルとの融合とはよく言われるが、それを具体的にどう実現させていくかが課題だと思う。(03:58)

玉塚元一氏(以下、敬称略):3つ、お話ししたい。まず、今は垣根がどんどんなくなってきたと思う。ECにしてもそうだし、我々コンビニも、たとえばスーパーさんが取り扱うような商品を次々扱いだして、一部の店では薬も売っている。逆にドラッグストアは生鮮も売っていて、食品の比率が上がってきた。これまで業態ごとに違うとされていた考え方から、垣根のない形で競争が激化している状況だと思う。(06:29)

また、現場で強く感じるのは二極化が本当に進んでいる点だ。高齢化とともに、質の高い生活を経験された方々は健康にすごく気遣うようになったし、金を払うのならそれなりの理由があるものを選ぶようになってきた。原産地が分かるもの、製法がしっかりしているもの、高い機能があるもの等々、バリューがあるものを選ぶようになっている。さらに言えば二極化は1人のお客様のなかでも進んでいて、ときには徹底的にコストにこだわっている。ただ、だからといってディープ・ディスカウンターがすごく数字を伸ばしているわけでもない。従って、質と価格のバランスを徹底的に追求する必要がある。質を妥協して安いだけにすると日本市場ではなかなか認めていただけない。訳があってきちんと価値があるものも一方では求められているから、そこで中途半端になると儲ける構造をつくるのは難しくなると思う。(07:08)

そして3つ目は、すでに起き始めているチャレンジになる。大きく言うと、僕ら小売業はやっぱり人の商売。ペニービジネスだってピープルビジネスだ。ローソンでも20万人ほどの方々が働いている。ところが、そこで人手不足の問題がかなり深刻化してきた。従って、いかに生産性を上げていくか。我々の場合は99%が加盟店であり直営店ビジネスじゃない。それで、言い方は悪いけれども、少し前までは「売場のことは加盟店で」といった面があった。で、「本部は良い商品をつくり、良い宣伝をしよう」と。しかし、今は僕ら自身が売場に踏み込む必要がある。そしてICTを活用し、物流のやり方やデリバリーの頻度も考え直す。いろいろなことに踏み込んで生産性を高める必要がある。日本のサービス産業は生産性が低いと言われているが、実はもう足元でそれ高めざるを得ない流れになってきた。そこで対応できる業種だけが生き残るというほどの流れが、恐らく来ていると感じる。(08:36)

小澤:小売業界では10年や5年単位で主要なプレイヤーが変わることも多いと聞いている。伊勢丹さんは未だに強いけれど、百貨店さん全体が強い時期を経て、そのあとスーパー、そしてコンビニが強くなっていったという流れがある。そこにドラッグストアも出てくると。そのようにゲームのルールが変わっていくのはなぜだろう。(09:43)

33013 玉塚 元一氏

玉塚:我々はすごい特許や技術を持っているわけでもなく、言ってみれば、おにぎりやお弁当を並べて「いらっしゃいませ」とやっているわけだ。僕らがやっているのは40坪ほどの小型店舗。で、そこで僕らが、たとえばスーパーに限りなく近づけてみても…、もちろん「やればいいじゃないか」という話だけれど、ただ、今まで染み付いたいろいろな成功体験などがあってなかなか難しい。逆にスーパーさんも、「今後は小型ネイバーフッドストアだ。高齢化も進んでいるしチャンスはある」と考えるだろう。(10:34)

ただ、ドラッグストアとスーパーのハイブリッド化、我々コンビニとドラッグストアのハイブリッド化といったチャレンジはそんなに簡単じゃない。もちろん、チャレンジはいくらでもできる。参入障壁的には仮説を立ててプロトタイプのお店を1店舗やってみればいいわけだから。だから小売業界の皆さんは実験大好きだし、いろいろなところでいろいろなことをやっている。で、そうした実験を繰り返すなかで、やはり皆の狙いがだんだん近づいてくる。高齢化が進んでいることもあり、今はそれでご近所のお店というカテゴリが伸びているという背景があるのではないかと思う。(11:13)

小澤:ナチュラルローソンさんで二極化に合わせて質も追い求めていったり、100円ショップの会社を買収してローソンストアを100展開していったり、ローソンさんはいろいろな実験をなさっていると思う。このあたりの手応えはどうだろう。(11:59)

玉塚:「絞り込め」と、投資家の皆さまにはよく怒られるけれども(笑)。でも、我々の商売では結局のところ、いわゆるPDCAを高速で回していくという連続作業が大切になる。それでお客様に聞いてみたりした結果、チャレンジのなかで「あ、こういうことなんだ」という発見がある。そのなかで業態を進化させていくことが大事。だから、ナチュラルローソンにしても今回お仲間になっていただいた成城石井さんにしてもそうだけれど、それが我々の本丸であるブルーのローソンに生かされていく。そういうことを組織として、常にスピード感を持って回していくことが非常に重要なのかなと思う。(12:23)

33014 山内 雅喜氏

山内雅喜氏(以下、敬称略):流通には、我々は物流という立場で携わらせていただいている。私からは3つほど挙げたいと思う。まず、とにもかくにも最近はスピードがめっぽう速くなってきた。ECが登場して以来あっという間に、今は年率2桁以上のペースで伸びている。それでもまだEC比率は3.8%だ。さらに拡大していく。生活スタイルの変化がそれを後押ししているのだと思う。かつての大量生産・大量消費から「個」の時代、つまり多様化・個性という時代に入ってきて、それに今一番対応できているのがECなのだと思う。私どもはそれを裏方としてお支えする物流だけれども、そうした流れの変化にどれほどきちんと対応していけるかが我々にとって非常に大きなテーマとなる。バーチャルとリアルの融合も含め、これからもこの分野はますますスピードを上げていくと思う。ローソンさんのチャレンジもさらに速くなっていくのかなと思う。(13:50)

そして2つ目。今は個人のお客様のニーズというか、要望・要求の水準がどんどん上がっている。たとえば私どもは今、「時間帯お届けサービス」ということで2時間刻みのお届けをしている。また、ご不在のときに何度でも訪問したり、事前にメールで「明日のお届けは何時がよろしいですか?」と伺ったりもする。「送り先はご自宅でよろしいですか?」といったことをメールで事前にお知らせするサービスもある。(15:19)

荷物が翌日に届いてびっくりというのも今は当たり前になった。今後もお客様にとっての利便性はどんどん高めていくけれど、お客様はすぐにそれを普通だと感じるようになる。その意味で、利便性に対する要求はすごく高まっているし、日本のお客様はそこにすごく敏感とも言える。スピードだけじゃない。「当日配達がいいんだ」とはよく言われるが、それに加えて「欲しいときに欲しい場所で」受け取ることのできるサービスが今後は必要になると思う。そうしたニーズの変化をひしひしと感じている。(15:57)

で、3つ目は玉塚さんがおっしゃっていたことと同じだ。今後の労働力不足は物流業界全体にとっても非常に大きな課題になる。日本のものづくり復活のためにも、小売業が日本でもっと進化を遂げるためにも、我々物流の領域がそれをしっかり下支えしなければいけない。労働力不足に向かう社会で、そうした課題にどう対応していくのか。流通業を支えるという意味で非常に大きな課題だと思う。(16:54)

小澤:日本全体の問題を凝縮したようなお話だった。恐らく日本国民の数は減っていくわけで、強烈なインバウンド増加や移民受け入れといったことがない限り、小売業のマーケットも小さくなる。そんな状況下で物流という、力仕事も多い業界の課題をどう解決していくのか。(17:40)

山内:今後はどんどん多様化して、細かいものを多頻度にお届けする流れになっていく。たとえば大きい荷物は自宅に持ってきて欲しいけれど、小さいものはコンビニさんで受け取ることができたりするような方向に変わると思う。(18:21)

33015 小澤 隆生氏

小澤:さて、今お話しいただいた課題に対して、御三方はどのような手を打っていこうとお考えなのだろう。まずは山内社長。ヤマトさんはまさにリーディングカンパニーとして、物流業界で50%近いシェアを確保していらっしゃる。今回のテーマである「新たな覇者」といっても、ヤマトさんはすでに「席を1つ確保」という感じだ(会場笑)。たとえば現在も「アマゾンだ、楽天だ、我々だ」ということで各社ECを手掛けているが、最後は必ずヤマトさんが運ぶわけで、その役割は今後もさらに大きくなると思う。そこで、そもそもなぜ現在のポジションを築きあげることができたのかというお話を含め、将来的な見立てとそれに対する御社の対応を教えていただきたいと思う。(18:35)

山内:我々の宅急便ビジネスは、実は個人のお客様へどのようにお届けするかというところから始まっている。それで今は日本全国に、おかげさまで網の目のようなネットワークを張り巡らせることができた。そして昨今のECでは、お客様による要望の多様化に伴い、「欲しいものを欲しいときに」という形で進化してきた。そこで私たちが考えているのは、正直に言うと、荷物を出される方よりも受け取られる方の利便性をいかに高めていくか、だ。商品を購入されるお客様に使い勝手の良さを感じていただいて、「また買おう」と考えていただきたい。また、「あ、こういう商品は自宅に持って来てもらうほうがいいな」と。受け取られる方がストレスを感じない世の中をつくりあげていくことが、ECを中心として今後の社会に新しい利便性をもたらすと思う。(20:08)

そこで、たとえば事前に「荷物が明日届きます」となったとき、それがお水なら、「ちょっと重いから自宅まで持ってきて欲しい」ということができるシステムが必要になる。「あ、DVDは軽いから宅配ロッカーに入れておいて」、あるいは「コンビニさんに寄って持って帰るからそこに届けておいて」と。そんなふうにして受け取り側の選択肢を広げ、利便性を高めるということを私たちはさらに追及していきたい。(21:29)

そのためには、受け取られるお客様のご要望を個別にお聞きをするITシステムが必要だ。たとえば私どもの「クロネコメンバーズ」というサービスに会員登録していただくと、その方に「明日荷物が届きます。午前中の配達でよろしいですか?」といった事前連絡がいく。そこで、「明日は夜にして欲しい」との返信をいただいたら夜にお届けすると。あるいは、ご不在時は登録アドレスにメールをさせていただき、「今お届けにあがりましたけれどもご不在でした。今日の夜がよろしいですか? 明日であれば何時がよろしいですか?」といった個別対応を行う。ITでそうした仕組みをつくりながら受け取り手の利便性を高めていけば世の中の変化を下支えできると思うし、それによってECを中心した個人消費もさらに膨らむと思う。(22:04)

ただ、そのなかで労働力というもう1つの課題について考える必要がある。私どもとしては、そこで多様な労働力にご活躍いただきたい。よく言われる通り、主婦の方や高齢者の方、あるいは外国人労働者にもそこで活躍していただけるような仕組みづくりを進めていきたい。そういったところに重点を置いている。(23:13)

小澤:たしか、時間指定サービスを最初に始めたのも、全国にきめ細かい拠点を最も早く設けたのもヤマトさんだ。また、我々EC事業者からすると、商品をお届けする過程の最後にお客さんと向き合ってくれるのが物流会社さんという認識がある。ECではリアルな店員さんが介在しないから、買い手からすると最後に誰が運んでくれるかがとても重要になるという声もいただく。実はEC関連でクレームの3分の1ぐらいは「配送が悪かった」というもので(会場笑)。いずれにせよ、ヤマトさんは今も顧客満足度No.1だと思うが、そうしたサービス品質はどのようにつくりあげてきたのだろう。(23:46)

山内:「どんな教育をして、どんなマニュアルをつくっていらっしゃるんですか?」ということはよく聞かれる。でも、実はたいそうなマニュアルがあるわけでも、ぴしっとした教育体系があるわけでもない。ただ、私どもは全国4000カ所でお客様の近くに店を出していて、それぞれ「小集団」という小さな単位で仕事をしている。そこで社員一人ひとりが、「お客さまに喜んでもらえて嬉しい。自分達のサービスは良いものなんだ」と思えるかどうか。奇麗事に聞こえるかもしれないが、お届けの際に「助かったよ」と、お客様に声をかけていただければ、それが一番のモチベーションになる。あるいは、そこで「自分が毎日お邪魔するお客様にご迷惑をかけてしまった」となれば、もっと良いサービスを提供しようという気持ちになる。そんなふうに、お客様に喜んでいただけることを自らの喜びにできる環境づくりが不可欠だ。だから、私達はなるべく小さい集団でチームをつくり、エリアを担当させる。そうすると、「ぶら下がり」がなくなるからだ。一人ひとりの責任が重くなり、自分のお客様という意識ができる。私どもの理念には「全員経営」という言葉がある。「全員が常にお客様に対して会社の代表としてどうすべきかを考えて行動しよう」と。それがマニュアルのようなものになる。(25:13)

小澤:何か秘訣があれば良かったのだけれど、やはり文化というのは一朝一夕にできるものでもないと感じる。創業時の志が受け継がれているのだと思う。ローソンさんはどうだろう。コンビニ業界にはセブン-イレブンさんという強力なライバルというか先行他社もいる。前に楽天という会社がいる私としてもぜひ聞きたい(会場笑)。(27:00)

玉塚:まずECに絞ってお話をしたい。僕は「EC」というのはすごく限定的で狭義な言葉だと思っている。山内社長が先ほどおっしゃっていたことのなかにキーワードがあった。というのも、どのように商品やサービスをお渡しするかは、技術の発展などとともに今後も多様化していくと思う。ローソンとしてはそこで現在の1万2000店舗という資産も最大活用して、極めてオープンなプラットフォームをつくりたい。そこでお客様の多様なニーズに応じ、利便性を高めたいと考えている。(27:48)

そこで3つのポイントがあると思っている。お客様とのインターフェース、マーチャンダイジング(以下、MD)、そして物流だ。まずインターフェースに関しては、たしかにスマホやネットがある。ただ、たとえば田舎にあるリアルなお店にはいまだ分厚いカタログがあったりする。そういう、たとえば電気屋さんも近くにないような環境なら、おじいちゃん、おばあちゃんにそれをご説明するのも立派なインターフェース。また、ローソンには「ロッピー」というイケてない機器があるが(会場笑)、これも大事なインターフェースだ。インターフェースが多様化すると思うし、そこで多くの機会が生まれる。(28:41)

当然、流通商売としてMDも重要だ。では、ローソンとしてでき得るMDは何か。我々は全国1万2000店舗で3温度帯の管理をしている。冷凍、冷蔵、そして常温で1日に4回も5回も輸送している。「CO2削減を考えて配送頻度を減らそう」というイシューは置いておくとして、それでとにかく2500台ほどのトラックが全国を走っている。そう考えると、やはり我々が考えるべきは食、あるいは3温度帯の強みを徹底的に生かすMDなのだと思う。そして自分たちでできない領域のMDについては、我々が的確に受け渡しのプラットフォームとなってお渡ししていく。そういう設計にしたい。(29:27)

物流もポイントだ。実際、酒屋さんからコンビニになった方々はそれをご近所でずっとやっている。「お水は足りていますか?」と、トラックで聞いて周る世界が昔からあるわけだ。従って、我々が今持っている物流リソースやプラットフォームを活用して、最終的にお客様のご自宅にお届けする。ここはコスト勝負の面が強いし、サービスレベルの勝負もある。我々でできるところはやるし、まったくできないということで山内社長にお願いする領域も多いと思う。大切なのは、多様化のなかで自分たちの強みを強く認識し、商品やサービスや財の受け渡しに関してどのように利便性を高めていくか。そう考えると我々の店舗網はうまくやれば大きな資産として活用できると思う。(30:23)

小澤:1万2000店舗を一から作ろうと思っても難しい。その強みを活用しつつ、急激に発展するECに関しては受け渡しだけでなく発注の場としても考えると。そういえば今朝の日経新聞で、ローソンでアマゾンさんの注文と受け取りができるようになるという話も読んだ。コンビニさんの在庫には当然ながら限りがあるけれども、店舗には人がいるわけで、店内に買い手も売り手もいる環境で発注の幅を広げていくと。(31:35)

玉塚:アプローチは2つ。まず、我々のお店を活用してもらう。宅配便について言えば、「本当は夜遅くにピックアップしたい」というお客様はいる。あるいは「実は家まで来て欲しくない」「近所で確実に、自分でピックアップしたい」というお客様もいる。今はそうした方々向けにサービスを始めているけれど、まあ、今まではいろいろな意味で利便性が低かった。イケていない「ロッピー」経由だったので。それをレジで直接できるシステムを変えていく。なぜか。もちろんお客様の利便性を考えてのことだけれど、実はもう一つ、そうした方々がピックアップしに店舗へいらっしゃること自体がチャンスになるというのもある。過去のデータを見ると、およそ半分のお客様が来店に合わせて『からあげクン』やおにぎりを買ってくださる。客数が増えるのは加盟店にとって非常に重要だし、そこで一部手数料が落ちるというのもある。まずはそれをやりたい。(32:18)

それと、アマゾンさんは商品点数数千万点という大変なロングテールの商売をなさっている。その意味では「家電」や「本」といった話でなく、ロングテールのエリアではアマゾンさんの商品を、逆に田舎のお店では、たとえば大きくて分かりやすいボードをつくり、それで売れ筋のトップ50ぐらいを取っていく。それでレジに行けば精算できる形にしたい。で、その2日後に「何々店まで取りに来てください」という感じだ。地方では加盟店さんも臨機応変に対応してくださる。それこそ、「荷物が重たければ持って行きますよ」なんていう世界もある。これ、実はすごく重要な話だと思う。(33:23)

小澤:地域のお店が在庫に捉われず商売できるようになるのは、すごく大きいと思う。特に高年齢者の方々はEC利用率が低い。「でも、興味はある」と。そういうお客様への対応という意味でも素晴らしいと思った。ちなみに、今シニアのお話が出た。今後の高齢社会では売り手も買い手もシニアになっていく。そこにローソンさんとしてどのように対応していこうとお考えだろう。インターフェースの部分で人が間に入るというのもあるが、商品ラインナップはここ10~20年で変わってきているのだろうか。(34:25)

玉塚:ものすごく重要だ。10~20年前であれば顧客層の中心は20~30代の男性だった。それでタバコと缶コーヒー、あとは『カラアゲくん』が売れる、みたいな(会場笑)。しかし、今後は惣菜や生鮮を強化してシニアのお客様が来店しやすいお店をつくっていく必要がある。もちろんそれを我々としても人口動態の変化とともに進めてはいるけれど、もっとスピードを上げなければいけない。(35:32)

小澤:じゃあ、「シニアローソン」みたいなものができあがって。(36:12)

玉塚:コンビニはマスの商売だし、個店対応は立地によってまったく異なる。だからそこは地域に根付いた商売をしないといけない。また、シニアと言っても、今の60~70代と昔で言うシニアのイメージはまったく違う。僕は外国人の投資家にこう言っている。「日本が高齢化だ、高齢化だと言うけれど、間違えちゃいけない。元気で1600兆円の金融資産を持っていて、健康コンシャスで“孫が可愛い”という高齢化だ」と。「ペシミスティックに考えたらダメ。これはオポチュニティだ」と言っている。(36:14)

小澤:これは重要な示唆だ。シニアと言った瞬間、腰が曲がったおじいちゃん、おばあちゃんを思い浮かべてしまっていた。(37:11)

玉塚:それはいわゆるネット的発想。リアルでは本当に皆さん元気だ。(37:18)

小澤:危うく履き違えて、ものすごく文字の大きなECサイトをつくるところだった(会場笑)。では、大西社長にもお伺いしたい。百貨店はひょっとしたら高度成長期、憧れる場所として発展してきたかもしれない。ただ、最盛期は8兆~9兆の市場規模だった時期から一転、今は6兆前後まで落ちている。伊勢丹さんはそれでも断トツのNo.1だけれど、今後に関してはどんな風景が見えていていらっしゃるのだろう。(37:19)

大西:先ほど、玉塚さんから「垣根がなくなった」というお話が、そして小澤さんから「なぜそうなったのか」という問いかけがあったけれども、要するに昔はそれぞれ役割があった。百貨店の役割があり、コンビニの役割があった。つまり、お客様は何か理由があって買う場所やチャネルを決めている。となると、たとえば利便性に関しては当然ながらネットが強い。コンビニも近くにある。では、環境・空間はどうか。心地良い環境で買いたいというのも一つあると思う。ここに関して言うと、もしかしたら百貨店に多少の優位性があるかもしれない。(38:16)

あと、先ほどMDに関して商品の質と価格というお話があったけれども、本来であれば商品の質は百貨店が一番良くないといけない。これは高いか安いかじゃなく原価率の問題だ。いくらのものをいくらで売っているか。商品のクオリティは原価で決まるから、これはSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)が一番いい。だからユニクロさんが一番いいと。では、百貨店というのはどうなのか。サプライチェーンがちょっとおかしくなっていてそこにプレイヤーがたくさんいるので、原価率が一番低くて上代が高い。そこで、それでも「おもてなし」「環境・空間」ということでやってきた。それと、もう1つのポイントがMDのなかの販売だ。「じゃあ、おもてなしということで言えば百貨店に優位性があるのか」と。今、お客様が最も感動する販売を行っているのは、ホテルとディズニーランドだ。ここにも百貨店は入ってこない。(39:07)

となると、結局、百貨店の強みはなくなってしまった面がある。それで当社は今、サプライチェーンに自ら入り込み、自分たちで素材を見てものづくりをして、自分たちで売り切る業態に変えていかなければいけないと考えている。SPAになるわけではないけれど、それに近いことをやっていかないと生き残っていけないと思う。(40:02)

また、おもてなしについてもホテルやディズニーランドのレベルを目指す。具体的にはどうするか。欧米に比べると日本はサービス業の生産性が大変低い。店頭で1日販売をするという仕事は大変だし、百貨店でもそれほど人気がない。従って、店頭でものを売っておもてなしをする人たちのモチベーションを高めるため、その人たちに関して今までにない人事制度を導入する必要がある。たとえばコミッション制。私は、1番優秀な販売員は役員や常務より多くの給料をもらっていいと思っている。それによってお客様に最高のおもてなしをしていく形にしないと、現在のような業態間競争では絶対に勝てない。それと、先ほどドラッグストアのお話もあったけれど、ドラッグストアもコンビニもネットも10兆を超えている。10兆を切っている小売業の業態は百貨店だけだ。これをそのままにしていると本当に勝てないままになってしまう。それと、チャネルということで言えば、やはり買い方の1つとしてネットがある。これは利便性が高い。では、そこで我々はどのように生き残っていくか。コンテンツという部分では百貨店が培ってきたものも多少は生かせる気がしている。(40:27)

 

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