最高の労働条件が最高のおもてなしの要因(大西氏) 「流通革命」  

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小澤: 売り手さんのモチベーションに関してもう少しお伺いしたい。「ひょっとしたら流通業を支える方々が今後減ってしまうのでは?」という不安もある。そのなかで、トップである伊勢丹さんはどのような教育をなさっていて、どんな人材を求めていらっしゃるのだろう。若い方々のリクルーティングもどんどん苦しくなっていると思うが。(41:46)

大西: 販売は本当に大変だ。どこの業態も同じだけれど、立ち仕事が一日続くし、自分の都合で仕事ができない。お客様にご満足いただくのがミッションだから、具合が悪くてもお客様がいらしたら最高の笑顔でおもてなしをしなければいけない。ただ、その割には労働条件が良くない。まず最高の労働条件で働いていただかない限り、お客様に最高のおもてなしはできない。だから、目先の売上は落ちるけれども、たとえば営業時間を詰めたり、従来あって今はないような定休日を増やしたりしていく。それによって働きやすさやモチベーションも多少上がっていくと思う。(43:07)

実際、お得意様対応では1人で4億~5億売る人がいるし、店頭でも1年で1億~2億売る人がいる。そういう人たちに対してはコミッション制を導入しなければいけない。「こんなに売って、給料はこれだけか」というのは絶対にダメ。たくさん売った人やお客様を数多く持っている人にはきちんとインセンティブを付加する制度にしないと、販売職自体のポジショニングも上がらないと思う。時給制の人に関しても実単価を多少上げていく必要があるかなと思うし、フルタイマーの社員や契約社員に関しては根本的に人事制度を変えていくべきだ。「とにかく販売が命なんだ」と、会社の姿勢として見せない限り、この部分の生産性は高まらないように思う。(43:56)

小澤: それは百貨店業界としてかなり革新的な試みになるのだろうか。(44:57)

大西: 業界というか、今は社内でもかなりの反発があって、それを乗り切るのが1番大変だ。「不公平だ」「販売する時間だって皆違うんだから」といった声がある。しかし、そんなこと言っていたらいつまで経っても販売の生産性を高めることはできないし、優秀な人材を採ることもできない。(45:05)

小澤: 社長の強烈な危機感を感じる。そこではバイヤーさんが、インターネットであってもリアルであっても1つの鍵になると思ってよろしいのだろうか。(45:30)

大西: まったくもって、それが答えだと思う。ネットでもリアルでも最後に重要なのはそこだ。MDは最後に売るところまで考えなければいけないから、その一連の流れが重要なのだと思う。(45:59)

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小澤: 国際展開についても伺いたい。流通の国際展開となると、出て行くのも難しいし、実は入ってきているところでも成功していないところが多い。伊勢丹さんはすでに三越さんとかなり進めていらっしゃると思うが、海外展開についてどうお考えだろう。日本の市場は縮小していくわけで、いかに海外へ打って出るかという議論も経営会議では相当なさっていると思う。物流まで含めるとオポチュニティは多いと思うが。(46:19)

大西: 現在、リアルな店舗は海外に36店舗ある。でも、ユニクロさんやイオンさんに比べると出店スピードは遅い。また、マレーシアには1年に30店舗も出したりするような百貨店もあるが、日本の百貨店は先ほど申し上げた通り収益の構図に関して問題もあって、それができていない。これからリアルな店舗を数多く出すのも不可能という状況だ。従って、これは具体化できていないのだけれども、とにかくネットやITをうまく利用して海外戦略を立てないと、海外ではもう戦っていけないと思う。(47:04)

ただ、インバウンドはアウトバウンドに少し先行している。日本へいらっしゃる海外の観光客は増えているから、そうした方々に自分たちのプロダクトとプレゼンスを見せることで、結果的には彼らにまた戻ってきていただけるというのはあると思う。その辺も含めてとにかく早急に具体化して、ITをベースにした海外戦略をつくる必要がある、というところまでは分かっているのだけれども(笑)。あの楽天さんですら中国から撤退なさったわけで、簡単ではないと思う。去年あたりから海外のSNS会社とコラボレーションを行い、たとえば当社の商品をフォーマットに載せて“あたり”を見たりはしている。ただ、まだなかなか具体化できていないというのが実情だ。(47:43)

小澤: 見ているのはアジアになるのだろうか。(48:30)

大西: 世界から見ると今後はアジアというのがあるし、商売もしやすいと思う。ただ、ファッションという切り口で考えると欧米にもまだまだチャンスはあると思う。(48:34)

小澤: あ、それは力強い。となると欧米の会社を買収するなんていうのも…。(48:47)

大西: それは分からないけれども(笑)、商売の仕方が日本とまったく違うから。逆に言えば、だから欧米でも成り立つ可能性があると思う。大型店というか、たとえば日本の百貨店みたいなものをニューヨークに出すのは難しいと思うけれど、小中規模店みたいなものを出すことは可能だと考えている。また、それとは別に、来年はマレーシアに1万1000m2の「JAPANモール」というものをつくる。それを試金石にして東南アジアで展開していきたいとも考えている。(49:03)

小澤: 「消費に対して積極的な中国やアジア各国が今後、かつて日本が歩んだ道を辿るのかな」と考えると、まず百貨店が一気に伸びていくイメージがあった。(49:44)

大西: 日本では地方でも都心でも中心街に百貨店があって、そのあと郊外にイオンさんのようなスーパーが出てきていた。でも、東南アジアの場合はその逆。我々よりイオンさんが早く出て行かれたので。(50:02)

小澤: その辺をどんどんスキップしていると。(50:17)

大西: そう。スーパーに続いて当社のような百貨店もすでに出ているけれど、大した規模では出ていないし、そこは少し難しい面がある。(50:20)

小澤: たしか昨日あたり、中国のEC化率が10%になったというニュースを見たし、ひょっとしたらアジアは日本が歩んだ道を飛び越しているのかもしれない。また見誤るところだった(会場笑)。ローソンさんはいかがだろうか。(50:29)

玉塚: 現在は中国や東南アジアを中心に500~600店舗ということで、海外事業の展開は正直言って遅れている。(50:49)

小澤: 500~600店でも遅れていると。(50:57)

大西: すごく遅れている。ただ、我々のような小型の、いわゆるネイバーフッドストアへのニーズは各地域にあるし、チャンスはあると思う。難しいのは、海外ではローカルアジャストメントをしなければいけない点だ。100%ローカルアジャストメントしないといけない商売と、アジャストメントゼロの商売があるとしたら、たとえば後者はルイ・ヴィトン。でも、コンビニは、たとえばジャカルタに暮らす人々の生活を朝から昼から晩まで支援する。だから食べるものも日常で使うものもほとんどローカルアジャストメントしなきゃいけない。スーパーやコンビニの海外展開ではその辺が難しさになる。(50:59)

ただ、僕らはいろいろなものを持ち込むことができる。小型のお店でMDを絞り込み、「52週間どんなマネジメントをするのか」「どんなサプライチェーンを組むのか」「どんな商品構成でやっていけば収益を上げることができるのか」「フランチャイズ展開をしていく際のポイントは何か」等々、ICTも含めてそういうシステム全体を持ち込むことができる。その意味では大いに魅力があると思う。(51:59)

で、そうなると現地でどんなパートナーや経営者と組むかが鍵になると思う。僕らはインドネシア人じゃないから分からないので。そのうえで、ある程度標準化して、ローカルアジャストメントできるような仕組みをどれだけ短期間で持ち込むことができるのか。また、その際は、たとえば日本のベーカリーさんと組むというのもある。「山崎製パンさんの技術ってすごいですよね。一緒に行きましょう」と。それでパンや米飯の強力なサプライチェーンを構築していくと。時間はかかるけれど、そういった仕組みを構築して各地に根差した商売をしていく。そして強いローカルパートナーと組む。そういうことをうまく位置づけできればチャンスはあると思う。簡単ではないけれども。(52:26)

小澤: ローカルパートナーは大変重要な切り口になるし、今も交渉等はなさっているとう思うけれど、今はどういう地域を見ているのだろう。(53:26)

玉塚: 現在、中国では400店舗ほど展開している。で、残念ながら赤字になっているから、中国事業をきちんと黒字化していかなければいけない。あとは東南アジア。タイやインドネシアに加えて今度はフィリピンにも出る。ただ、私は北米にも大きな可能性があると思う。もちろん競争は激しいし、アメリカ人にとっては150坪でも小型と思うかもしれないから、その辺の議論は必要だ。ただ、いわゆる小型の絞り込んだネイバーフッドストアの製造小売業型には大きなチャンスがあると思っている。(53:35)

小澤: 欧米はその業態が発展していると思うが、東南アジアはどうだろう。パパママショップのような地元商店以外に、地元コンビニも発展しているのだろうか。(54:18)

玉塚: 地域によって違う。たとえばフィリピンにはサリサリストアというのがある。小さなスペースで日用品などを売る形態だ。本当にお父さんお母さんでやっているサリサリストアが、50万店舗ぐらいあるのかな。(54:35)

小澤: それはチェーンではなく?(54:48)

大西: チェーンでなく。ただ、それを営むお父さんお母さんも、今は「息子にこの商売やらせていいのかな」と思ったりしている。だからタイミング的には面白い。そういう方々の一部に、モダンなコンビニにチャレンジしてもらうといった動きは今後出てくると思う。あと、タイにも屋台はたくさんあり、こちらはセブン-イレブンさんがチャロン・ポカパングループというタイの巨大企業と組んでいて圧倒的に強い。ただ、それでもタイの流通形態が少しずつ洗練されていくことで、いろいろと機会が出てくると思う。(54:49)

小澤: 大変興味深い。日本でも多くの酒屋さんがある時期にコンビニとなっていったわけで、「サリサリストア50万店舗がローソンになる可能性もあるんじゃないか?」なんていう想像をした。ヤマトさんもすでに海外では相当展開されている。難しいことも多いと思うけれども、今後の展開はどうだろう。(55:27)

山内: 今、日本でやっているのとまったく同じ形でアジア各地に宅急便を展開している。上海、香港、シンガポール、マレーシア、台湾等々、今ではそれらの地域でクロネコマークの車が街中を走るようになっている。ただ、そうした地域では届けてもらうことの価値が日本ほど浸透していない。まだ、「安くても届けばいい」と。「安心・安全に送りたい」といったニーズを持つ富裕層から広がっている状況だ。ともあれ、私どもとしてはそんなふうにして各地で宅急便を展開して、そのうえで日本を含めボーダレスにつなげたい。それによってアジア全体で、隣の県に出すような気軽さで宅急便が出せるような形にしていく。特に、日本の農産物というか第一次産品は価値が非常に高い。向こうでは日本のりんごが1200円で売れる。それほど日本のものに価値を認めていただいている。私どもにはクール宅急便もあるし、そこで日本の農産品をアジアに出しいていくといったこともしていきたい。(55:54)

小澤: 小売事業者や生産者の皆さまからすれば、クロスボーダーでものが売れるようになるのは素晴らしいことだと思う。しかも自分たちで手間をほとんどかけず、ヤマトさんに頼ればやれるようになるわけだ。それで単価も3倍になると。(57:38)

山内: そう。メイドインジャパンの価値は本当に高いと思うから、もっともっとボーダレスに、ECも含めて広げるべきだ。ただ、今まではそこで物流がネックになっていたから、一つ一つでも送ることができるような仕組みにする必要がある。特に関税がネックだから、TPP交渉が今後進むことを私どもとしては期待している。(57:54)

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小澤: では会場との質疑応答に移りたい。(58:20)

会場A: 次世代もヤマトさんの席は確保されているとのことで、ご一緒に仲良くやっていきたい(会場笑)。流通の分野で日本が世界に提供できる価値はなんだろう。世界へ打って出て行くにあたり、「日本企業にはこういう強みがある」というお話をお伺いしたい。(59:11)

大西: 私どもが勝手にやるという話ではなく、日本として、これから海外展開に伴って「ジャパンラグジュアリー」や「ジャパンプレミアム」といった価値をつくっていくことができると思う。それほど、ものづくりの力や技術力は高い。これは日本独自のものだ。あとは販売サービのおもてなし。流通小売という観点で言えば、この観念は日本にしかないというほどのものだと思う。その2つは十分に勝機があると考えている。(59:42)

玉塚: よく外国人の友人に…、お褒めの言葉として2割ぐらいに聞いたとしても、「このレベルのお弁当やサンドウィッチをこの価格で買えるのは衝撃だ」と言われる。もちろんそういう業界になったのは鈴木敏文セブン-イレブン会長のリーダーシップが素晴らしかったからというのもある。ただ、やはり強烈な競争もあった。現在、コンビニは全国に5万5000店舗あるが、実は淘汰が進んでいる。セブン-イレブンとローソンとファミリーマートのトップ3社で75%ほどのシェアを占める状態だ。4番手以降の方々にとっては厳しくなってきた。街を歩いていればローソンがあり、その横にセブン-イレブンがあり、その横にファミリーマートがあり、その現場では僕らがまた出店しようとしたりしていると。やっている本人たちはきつい。でも、この強烈な競争がイノベーションを生んできた。そこで培ってきた、たとえばサプライチェーンの構築方法やその週次マネジメントといった多くのノウハウを海外に持っていくことができると思う。(01:00:24)

大西: 「次世代も席を確保」というのは小澤さんの個人的ご発言なので(会場笑)。日本が提供できる価値を一言で申しあげるとホスピタリティだと思う。日本企業の接客姿勢は本当に素晴らしいと、私どもも海外展開の過程で改めて実感している。たとえば上海で始めるにあたって現地セールスドライバーを採用したのだけれど、お届けの際に帽子を取って頭を下げることを拒否する。それで退社した人間もいた。「荷物を届けているのは俺だ。なぜ、受け取る側が礼を言わずに俺が礼をするのか」という感覚だ。ただ、受け取ったお客様にそれを何回かやっていると、お客様に「それ、気持ちいいよね」と声をいただけるようになり、するとサービス提供側も変わってくる。そんなことを経験した。今後もそうしたホスピタリティの意識を崩さず提供したい。(01:01:46)

会場B: ヤマトさんはヨーロッパでもサービス展開されていると思うが、ある生産者に、「サンプルを日本に出すにあたってヤマトにお願いするようになってから、商品破損が圧倒的に少なくなった」と言われたことがある。そうしたサービス品質を海外に浸透させるため、どのように文化を伝えていらっしゃるのだろう。(01:03:20)

会場C: 10年後を見据えたとき、皆さまの考える一番の脅威またはチャンスを1つ挙げていただくとしたら何になるだろうか。そこでどのように対応していこうと考えていらっしゃるかも併せてお伺いしたい。(01:04:13)

会場D: ツネイシホールディングスは海運などの事業を100年ほど営んできたが、今の物流は国内陸送が中心になっていると感じる。しかし一方では島国日本で地方港も大変充実してきた。そこで、地方港の活用と海上輸送の可能性についてヤマトさんにぜひご見解を伺いたい。(01:04:43)

山内: 海運は今後ますます重要になると考えているし、私どもはすでに秋田と鳥取から、それぞれ港を使って大陸のほうに企業様の小荷物をお送りしたりしている。日本全国にそれぞれ中小企業を中心とした、特にものづくりの産業がある。そこで生まれた製品やサービスを細かく送り出していくためには、航空輸送だけでなく海上輸送も必要だ。ただ、今は正直、海上輸送のためのインフラがまだ不足している。それをしっかりと整備して、日本のものづくりがもう一度力強く発展できる環境をつくっていけるよう、国にも働きかけていきたい。(01:05:20)

小澤: 国際化における人材教育や事業モデル伝達に関してはどうだろう。(01:06:11)

大西: 海外展開のうえでも人がベースになると思う。それで、私どもも現在はローカライズのスピードを上げているところだし、日本からの出向者もいる。ただ、将来に向けて地元の人たちを早くトップにして、その人たちを日本に呼んできて、そしてまた現地に戻す。規模は違うけれどもユニクロさん的な考え方だ。あるいは、最初に「この人だ」と決めたうえで、日本で育てるということもしている。その後、その人が育った本国ではないところで活躍してもらう。マレーシアの優秀な若手を中国で使うとか。そうした作業はグローバル化のなかで必須だと思う。で、現場レベルはというと、山内社長がおっしゃっていた通りだ。おもてなしの考え方を説明したりするものの、なかなか伝わらない部分もある。しかし、それでも日本企業で働いている誇りを持ってもらい、飽きずに伝えて続けていくしかないと思っている。(01:06:39)

玉塚: できていないが、やはり経営理念と企業文化を正しく植えつけていくことがベースだと思う。そのために、商売のやり方や理念を共有した仲間をローテーションさせ、リーダーとなる可能性のある人材に日本で仕事をさせたりしている。(01:07:41)

小澤: 最終的にはフランチャイズになるのだろうか。(01:08:23)

玉塚: 国によって違う。まだ直営ベースでやらなきゃいけないところもあるし、少しずつフランチャイズ展開をしていくところもあるし。(01:08:27)

山内: 私どもとしては2つ。1つは「洗脳」だと思っている。もう私どもの考え方を繰り返し伝え続け、ロールプレイングもやり続けながら浸透させていく。そこで辞める方も当然いらっしゃるが、残る方もいらっしゃる。だから、そこは崩さずに進めるのが良いと思う。それと現地リーダーの存在も大切だ。日本人が全員を教育していたら絶対に失敗する。だから、私どもが考えるホスピタリティの精神を持っている方をいかに見つけるか。絶対にいる。だからその人を見つけて日本に来てもらって、サービスのあり方などを見てもらう。そうして生まれたリーダーが現地へ行って、今度はローカライズした教え方で広げていく。そういう教育が良いのかなと、経験上感じている。(01:08:39)

小澤: もう一つ、御三方に最後のまとめをいただくうえでもちょうど良いご質問をいただいた。15年後に最大の脅威となるものを1つ挙げるとしたらなんだろう。(01:09:40)

大西: 冒頭で小澤さんは数年後のEC市場が30兆になるとおっしゃっていたが、それでも謙虚な見立てだと感じる。恐らく、それを超えるほどのマーケットになると思う。となると、小売業の売上自体が伸びないのならリアルな店舗から20兆がなくなるわけだ。つまり現在6兆の百貨店はすべてなくなるという…、百貨店が日本から完全になくなるとは思わないが、とにかくそれほどのスピード感で動いているわけで、最大の脅威はそこに尽きる。我々百貨店もECは当然やっているが、たぶん今のままではダメだと思う。だからこそ今は懸命にSKU(Stock Keeping Unit)を増やし、インフラをつくっていく。ただ、それとは別の次元の話として、今後3~5年のタームでネット上からお客様を呼んでくる仕組みを用意する必要があると思う。今は百貨店としてのECがあるけれど、広くマスに向けたところがない。従って、そのフォーマットを、たとえばどこかと一緒につくるというのもある。ある程度差別化できるコンテンツが、今のところはあるので。そこで生き残っていくしかないと思っている。(01:10:23)

玉塚: 人口減少と人口ピラミッドの変化が一番の脅威になると思う。ただし、経営の立場からすると先ほど申しあげた通り、それをチャンスに変えなきゃいけない。たとえば高知で見える風景と東京で見える風景はまったく違う。特に地方では劇的に人口構造が変わるし、人口減少とともに高齢化が進む。そうした環境における店舗のあり方や適切な店舗数、または商売のパターンをよく考えないといけない。たとえば2020年にオリンピック・パラリンピックがあるが、そのあとも含めて首都圏から見えている風景とはまったく違う。従って、各地域をきめ細かく見ていったうえで、人口ピラミッド=お客様の風景が変わってくることに現実としてどれだけ対応できるか。そういう対応をしながら適切な打ち手を先手先手で打てるのか。その辺が最も気になる。(01:12:15)

山内: やはり社会構造の変化だと思うし、私どもとしてはそこで労働人口の減少が一番の脅威になる。また、お客様のニーズはより高度なものとなって、さらに多様化も進むだろう。それらを支えるためには物流業者が一体となって、世の中のためのインフラとして支えていくという動きが必要になると思う。脅威ということであれば、それに尽きる。あと一つ、強いて言えば、3Dプリンタが気になっている。今は部品を出力できるようになっているけれど、それが非常に硬質なプラスチックでできるようになると、それまで物理的に輸送していたネジなどの細かい部品を送る必要がなくなる。『スタートレック』で観たような転送装置の世界だ。そうなったら物流はいらないという話になる。「物流だけは、モノだけは、絶対になくならない」と私は今まで思っていたが、そういう点では…、まあ20年先の話かもしれないが、少し脅威を感じる。(01:13:57)

小澤: ECに携わるものとしても3Dプリンタの存在はすごく重要なポイントだ。たとえば本はモノとして動かなくなった部分があり、音楽もCDとして動かなくなっている。データだけがインターネット上で動いている。ネジなどの多品種なプロダクトは在庫を持っているのが大変だ。そこで、「3Dプリンタを工場のほうで買ってください。そうしたらデータを販売するのでそこで出力してください」という話になると、物流がなくなる。これはかなり実現されていると思う。食べ物や飲み物ではそうならないかもしれないが、15年後にはそういった現実が当たり前のようになっている可能性もある。(01:15:06)

時間が迫ってきた。物流および流通の未来について、本セッションを通して皆様のなかで少しでもイマジネーションが湧いていたら幸いだ。私としては、2つほど大きな過ちをせずに済んだなと(笑)。私は流通業をものの本でしか知らないが、5~10年でかなり大きくプレイヤーや業態が変化していくという。百貨店に人々が出掛けていた時代にコンビニが生まれ、それによって売り手が家の近くに来た。そして、さらにECが広まると家にまで売り手が来るようになった。そのようにして、売り手を買い手の距離がどんどん縮まってきたように思う。しかも、その先の10年という大きな潮目のなかで、今度は物流がなくなってしまうかもしれないといった話すら出てくる時代になった。そのなかで壇上の御三方は、これから流通業を大きく変えていくことが期待されている。今日のお題と照らし合わせても、明らかに御三方がキープレーヤーになると思う。今日はオープンにお話しいただいたこと、そして未来を託すという意味で、最後に大きな拍手をいただきたい。ありがとうございました(会場拍手)。(01:16:03)

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