「地域を経営する」 質疑応答 

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朝比奈:では、この辺で会場からも質問を受けたいと思う。(52:51)

会場A:横須賀市民として吉田市長にお聞きしたい。他の地域とアライアンスを組むというアプローチも重要だと思っている。たとえば奈良のイベントに出て横須賀をPRするのもいいし、湘南についてもライバルとしてではなく連携仲間と考えれば良いのではないか。そういった考え方がもしあれば、ぜひ構想をお聞きしたい。(53:48)

吉田:特に都市間競争と言われる時代のなかでは、互いの強みを発揮しつつ、アライアンスを組むがすごく大事になると私も考えている。1つの例として防災面の連携がある。横須賀は、同じく海上自衛隊の基地がある舞鶴市、佐世保市、そして呉と4市で防災協定を結んだ。そうすることで、どこかが被災しても距離的に離れている3市が助けに来ることもできだろうと思う。で、もう1つの例が三浦半島での連携だ。地理的にはライバルである横浜市が横須賀の北にあり、相模湾側には北から鎌倉、厨子、葉山、横須賀、三浦という風に並ぶイメージだ。この三浦半島で一致団結しないと横浜や東京には絶対に勝てない。今も鎌倉には毎年2000万人前後の観光客が訪れるけれど、今はその9割5分が鎌倉だけを訪れて帰ってしまう。しかし、その1割だけでも三浦半島を周遊してもらえたら、それだけでも観光面で潤う。逆に、すべての観光客に車で来られてしまうと渋滞になって鎌倉市も大変困る。それなら、横須賀に車で来て1泊してもらい、そこから電車で鎌倉に行ってくれたら鎌倉市民も喜ぶ。そういった面でアライアンスが組めると思う。ぜひ三浦半島で独立国家構想…、と言うと派手過ぎるけれど、「三浦半島連邦」ぐらいは目指したい。(54:41)

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会場B:奈良市民に支えていただいている近畿日本鉄道に務めている。仲川市長のシビックプライドというお話にすごく共感した。それを醸成するため、「こういった施策が実際には効いた」といったご経験などがあればぜひ教えていただきたい。(56:45)

仲川:私自身、ニュータウンで生まれ育った人間で、京都出身の父親と大阪出身の母親で住む家探したら、ちょうど家が当たったということで奈良に住んでいたわけだ。だから大学を出て東京へ行って、そして奈良に帰ってくるまで、実は奈良出身でありながら奈良のことをよく知らず、関心もなく、そこが故郷という感覚もあまり持っていなかった。奈良にはそういう人が多い。特に近鉄電車沿線に暮らす方々は近鉄さんが開発したニュータウンに住むケースが多いし、沿線はだいたい同じような雰囲気だ。ただ、一方で旧市街というかお寺さん周辺に住む方々は、「うちは何百年も住んでいまして」なんていう人が多く、そのコントラストが大きい。だから、同じ街なのになかなか融合しておらず、不協和音というわけでもないけれど、街として1つのブランド、あるいは思いというかビジョンを共有できていなかった。(57:47)

そこをつなげたい。2010年の「平城遷都1300年祭」で良かったのは、外から来られた方々に「奈良はすごい」「奈良はいいよ」と、口々に言っていただけたことだ。それが1番のシビックプライドになった。私は、観光というのは観光業界のための産業ではないと思っている。他所の方が観光客として入ってくると、違う視点でその土地に光が当たり、それによって地元の人々が気付いていないところに価値が見出される。その結果として、住んでいる人が、「おお、俺らはすごいところに住んどるやん」という話になる。私は観光が間接的に、地域の人たちの誇りを育てる面が大きいと思う。その意味では、たとえば奈良市にある新興住宅地のほうでも実は古い歴史遺産があったりするので、そういうものも掘り起こしていきたいと思う。(58:59)

会場C:上海から来ているが、海外から見ると関西には日本のルーツと言える要素が多いと感じる。奈良だけでも大仏をはじめとした素晴らしいものはあるけれど、奈良から大阪、そして京都へと1〜2週間かけて巡ってもらい、そこで日本のルーツを伝えるような発信の仕方もあると思う。その点についてはどうお考えだろう。また、吉田市長からは「選ばれる街、横須賀」といったお話があったが、歴史や自然という点では千葉や鎌倉など、(関東には)競合相手が大変多いと感じる。歴史や自然以外の産業について何かお考えがあれば、そちらも併せてお伺いしたい。(01:00:12)

仲川:私は関西全体がこれから地盤沈下しないだろうかという強い危惧をいだいているけれど、たしかに日本のルーツというポイントを生かした商品造成を行うことは大きな価値につながると思う。その辺については国内にもいろいろなネットワークがあるし、海外とのグローバルネットワークもある。たとえば鑑真大和上は苦難の末に日本へ渡り、奈良で仏教の戒律を伝えられた。だから、奈良の唐招提寺は鑑真大和上がいらした中国揚州の大明寺とつながりがあるわけだ。そういう世界とのつながりも、これから大航海時代と言われる観光の時代において商品造成のチャンスになると思う。というのも、たとえば奈良市の姉妹都市である韓国慶州のヒュンダイホテルは、奈良市内のホテルとも提携していて、そこで互いに送客するといったこともやっている。歴史遺産があるような街を訪れたいと考えている人は、たとえば「慶州の次は奈良にも」という潜在層につながっていることもある。ただ、今まではグローバルチェーンのなかでそれを実現する相互送客の仕組みがなかった。中国も含め、今後はそういうことを次々やっていけば、さらにマーケットを広げることができると思う。(01:02:30)

吉田:「選ばれる街」というのは、横須賀市役所のビジョンになる。そこで「子育てしやすい街」と表現すると、それも良いビジョンではあるけれど、たとえば土木部の職員はどっちらけになってしまう。だから、まずは選ばれる街を目指したうえで、「では、選ばれるためにはどうすればいいのか」と。そこで各セクションが考えてくださいという指示を出すことができるようなビジョンとして、高らかに掲げている。(01:04:32)

そのうえで産業についてお話しすると、横須賀には造船産業や自動車産業の歴史もあるけれども、私が今1番注目しているのはICTスタートアップの誘致だ。横須賀にはすでにYRP(横須賀リサーチパーク)というR&D施設があるけれど、私としては今後、コアな研究開発を行う企業と、事業化やスタートアップを考える企業の両方がいて初めて価値のあるR&D施設になると思っている。従って、市役所がベンチャーを支援してうまくいったことはないし、すでに起業または事業化されているようなスタートアップを積極的に誘致したい。また、そうした誘致活動のなかでエコシステム的なものもつくっていきたいと思って、先日は「ヨコスカバレー構想」というのもぶちあげた。堀(義人氏:グロービス・グループ代表)さんも来てくださって、150人ほど集まった。まだ中身はあまりないけれども、顧問になっていただいた堀さんは、「これで3年間で100社、100億円を呼びこもう」とおっしゃっている。今後はそれに向けていろいろな施策を打つとともに、協力者も募っていきたい。ぜひ注目してください。(01:05:10)

会場D:住民の方々に安心して暮らし続けていただくためには雇用や企業が重要になると思う。その観点で、奈良市の雇用・企業向け対策をお伺いしたい。(01:07:15)

仲川:奈良市は越境通勤とともに専業主婦率も日本一だ。女性の労働参加率が大変低い。これ、良い意味で受け取れば、働かなくても悠々いけるという話になるとは思う。ただ、0歳から5歳ぐらいまでの子どもを持つ母親の就業率が高くなってきたというアンケート結果も最近は多い。働きやすい環境が整ってきたという側面がある一方、「これからは共働きしないと生活してられない」という面もあるのだと思う。従って、今まで眠っていたリソースの活用という意味で女性の労働参加率をどう高めるかという議論も重要だ。そのためにも、奈良のなかに企業をつくっていく必要がある。ただ、奈良はどこを掘っても遺跡が出てしまうという事情があって、たとえば企業の工場建設でもイニシャルコストが掛かり過ぎてしまうという問題がある。土器を掘ったりする費用は自前になるので。そういうこともあるから、奈良としては現在、特に観光分野のスタートアップをいろいろと支援している。(01:07:52)

一方、とはいいながらも、「大阪と同じことを奈良がやってもしゃあないやろ」という考えもある。従って、大阪に30分、長くても1時間以内で通えるロケーションの良さも生かしつつ、土日は地域で奈良らしい暮らしをしてもらうための施策も考えたい。農作業をしたり、自然のなかで子どもと遊んだりするようなライフスタイルも魅力を高めたいと思う。それで今は…、まだできていないけれども、通勤電車に乗る方の割合が高いのなら、通勤電車がもっと利用しやすくなるような、たとえば市民への情報提供の方法は何かといったことをいろいろ検討している。(01:09:48)

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会場E:地域でクリエイティブな人材を呼び込むために、どのような施策が必要になるとお考えだろうか。(01:10:45)

吉田:大事な課題だけれどもすごく難しい、実際、放っておいてもクリエイティブな人々が集まるということはない。ただ、私としてはそこで1つ、カリスマ的な人にまず来ていただくというアプローチがあると思う。今、面白法人カヤックの柳澤(大輔氏:代表取締役)さんが「カマコンバレー」というのをつくっていて、彼のところには小規模事業主の方などが大勢集まっている。彼のような人間を横須賀に引っ張ってくるという視点はすごく大事だと思う。それで、とりあえずは彼には「ヨコスカバレーはカマコンバレーの横須賀支部ぐらいでいいですよ」なんて言っているけれど、将来的にはカマコンバレーもヨコスカバレーが飲み込んじゃおうと(笑)、そんな風に思っている。(01:11:10)

仲川:奈良が鹿と大仏に象徴されるということは、ある意味、その2つがすべてのように思われてしまっているということでもある。奈良は、それ以外であれば予備知識というか学問的裏づけがないと分かりにくいという、ある意味マニアックで玄人向けの場所だ。逆に言うと、ハマる人はずっぽりハマる。たとえば東京の企業を経営していらっしゃる方や霞ヶ関の方で、年間20回以上奈良を訪れる方が結構いる。だから、今はいろいろな分野でリーダーを務めていらっしゃる方々向けに奈良のVIPツアーを開催している。先般はロックフェラーさんが「奈良に来たい」とおっしゃっていたのでツアーを組んだし、家入一真さんをご案内した際は「田植えをしたい」とおっしゃるので、実際に作業していただいた(笑)。そういった発信力のある人々をプレスツアーのような形で引っ張ってくると、それが口コミで伝わって、「じゃあ私も」とおっしゃってくれる方が増えてくる。その辺をどんどんやっていけばいいんじゃないかと思う。(01:12:28)

会場F:役所と他セクターの連携について伺いたい。なんらかの形で地域に関わりたいと思っている方は多いと思う。ただ、「市役所はよく分からんし、付き合うと面倒だ」とおっしゃる方も多い。そこで、市役所を活用する価値や市役所との付き合い方について、お二方から何かアドバイスというか、コメントがいただければと思う。(01:14:28)

吉田:我々としては、「横須賀市役所は良い太鼓でいよう」と宣言している。うまく強く叩いてくれたらよく響くということで、ぜひ良い提案を待っている。で、そのときは…、あすか会議だから言うけれども、まず私に連絡をくだされば(会場笑)、それで現場につなぐ。「話を聞いて欲しい」と、上からの押し付けではなく言われたら現場も話を聞くし、そこから情報共有を始めることができると思う。一般的な話ではないので恐縮だけれども、横須賀市役所の場合はそれで結構だ(会場笑)。(01:15:05)

仲川:ポイントは、市長はじめ市役所の方々が、市役所組織を経営しようと思っているのか、それとも街全体を経営しようと思っているのかの違いだと思う。そこで、特に市長の考えが重要になる。大都会の企業セクターやNPOセクターはボリュームがあるから、それぞれに仕切ることのできるリーダーがいる。でも、特に地方都市の同セクターは皆小さく脆弱だ。そこで、市長というのは市役所のマネージャーとしてではなくて、民間企業やお寺さんを含めた街全体の総合プロデューサーとしての視点を持つ必要があるのだと思う。少し踏み込み過ぎかもしれないけれど、結果的にはそれが良い街づくりにつながるのではないか。ぜひ、そういう視点で頑張っていきたい。(01:15:41)

朝比奈:濃密な75分だった。改めて仲川市長と吉田市長に大きな拍手をお願いします。どうもありがとうございました(会場拍手)。(01:16:30)

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