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「メディアの新たな形」質疑応答

投稿日:2014/08/07更新日:2019/04/09

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会場A:個人的にはツイッターで有力な方をフォローするのが最良の情報収集手段だと感じている。ただ、その有力な方を発見するのに苦労する。皆さまは普段、どのようにして最も“濃ゆい”情報にアクセスしていらっしゃるのだろう。(52:17)

瀬尾:編集のなかで、「このジャーナリストは信用できる」「この政治家の言うことは面白い」と思える方をどう探すかといえば、一番単純なのはその方が書いた過去の記事をすべて読むこと。あとはなんらかの情報を目にしたとき、それが本当に正しいかどうかを考えるためにほかの方が書いた情報と読み比べる習慣も身に付けるべきだろう。同じファクトについても媒体によって書いていることは違うので。そうした比較のなかで自分なりの判断基準をつくっていけばいいのではないか。(53:17)

川上:ご質問は、「自分が何を“濃ゆい”情報と考えているか」という問いと裏腹だと思う。たとえば本セッションも、事情をよく知らない方にとってはよく分からない表面的な話にしか聞こえないかもしれない。ただ、実際にはそれぞれがやっていることの手の内も互いに知っていて、どこを喋るか否かといった部分で牽制し合いながら喋っているわけだ。その意味では、大変“濃ゆい”情報が流れていた(笑)。それを“濃ゆい”と思えるかどうかが一番のポイントだし、文脈を知ることが大事なのだと思う。(54:45)

会場B:リテラシーの高い方は皆さまがやっていらっしゃるようなメディアにも接触できるが、そうでない方もいて、その格差が広がっているのではないだろうか。個人的感覚だが、特に50〜60代には、たとえば「文脈を読む」、「他のメディアを調べて情報を比較する」といった能力を持っていない方も多いと感じる。そうしたリテラシー格差の壁は崩れるものなのかどうかということをお聞きしたい。(56:13)

加藤:ある程度年齢が上の方は、ずっと新聞を読むという話でもいいと思う。たとえば朝日新聞を読んでいれば朝日の文脈はすべて受け取ることができるわけで、そのリテラシーの範囲で暮らせばまったく問題ないと思う。で、それより下の世代はリテラシーがあるから、それで世代が少しずつ入れ替わるだけなのかなと思う。(57:20)

佐々木:もっと読みやすいハードウェアが出てきたら変わるかもしれない。ペーパータブレットは…、そんなに変わらないだろうか。iPadなどの登場で相当読みやすくなったとは思うけれど、高齢者の方にとってはそれでも読みにくいときはあると思う。もっと軽く、目にも優しいといったハードウェアが登場したら変わる気がする。(57:49)

川上:去年か一昨年ぐらいから、まさにスマートフォン時代というか、デバイスが一気に置き換わる時代が始まったと感じる。1995年に始まったインターネット時代は、恐らく20年経った現在、一旦終焉を迎えたというのが僕の認識だ。で、それまでずっとPC画面だったものが今スマートフォンやタブレットに変わっていることの意味は、本当はもっと大きい。我々が今持っているスマホやタブレットは、ある種、PC画面のシミュラークルだった。それがオリジナルへ変わっていくが、今後5年間だと思う。(58:10)

加藤:少し前向きな話を思いついた(笑)。今リテラシーが求められているのは、インターフェースがまだ洗練されていないからというのが大きいと思う。で、それはアーキテクチャやテクノロジでだいぶ解決できる。今、スマホ画面はむちゃくちゃ狭く一覧性がないから、たとえばレコメンドやキュレーションを受け取るための操作も出てくる。ただ、それを新しいUIやアルゴリズムでやるということを、今はGunosyもNewsPicksもやっている。従って最終的にはリテラシーが不要になるんじゃないかと僕は思う。(59:02)

川上:実はデバイスの領域は大きなハードルだし、そこで今後はすごいイノベーションが起こると思う。逆に起こらなければご指摘のギャップも埋まらないだろう。(59:47)

佐々木:加藤さんは以前、「メディア消費デバイスは、最終的に現在のiPhoneより大きく、iPadより小さいものになるのでは?」とお話ししていたと記憶している。(01:00:03)

加藤:2〜3年前のインタビューでそう言った。今も同じ考えだ。実際、そうなりつつあるでしょ? 次のiPhoneは恐らくもっと大きくなるし、Nexus5はさらに大きい。その辺のサイズに落ち着く気がしている。だから、そこに合わせたインターフェースの発明が必須で、僕らはそれを今やっている。会社にはデザイナーもいるし、統計学者と一緒に「どうやってレコメンドするか」といったアルゴリズムも設計している。(01:00:17)

川上:Corning社というガラスメーカーがつくった、「未来のガラスはこうなる」というビデオがある。そのビデオには、スマートフォンをテーブルに置くと、それがトリガーとなってテーブル上にニュースなどがぱっと表示されるというシーンが頻繁に出てくる。つまり、今後もウェアラブルなデバイスは増えると思うけれど、それは何かを見るというよりもトリガーとしてのデバイスになるだろうと。で、実際に表示するデバイスはもっと大きなもの、あるいはユビキタスなものになったりする。そんな風にして家のテーブルや壁がすべて画面になるというのが将来の形なのかなと思った。(01:00:59)

加藤:「Chromecast」や「Apple TV」はまさにそのための機器だ。(01:02:05)

川上:そう。今それがちょうど出てきている。テレビがネットの表示デバイスになるような、そういったデバイスが今後どんどん増えてくるのかなと。(01:02:08)

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会場C:今後は動画も活用していくというお話があった。これは発信側メディアとして、どういった使い方でコミュニケーションを行うイメージになるのだろう。(01:02:28)

佐々木:たとえばビジネスパーソンは忙しいから、対談やインタビューといったコンテンツは余程大物が出演する場合でもないかぎり動画にしなくてもいいと思う。一方で、たとえばグーグルのドローンのようなハードウェア系ニュースは動画で魅せたほうが圧倒的に早い。その辺でもノウハウを積む必要があると思う。たとえばブルームバーグは1日200本ほど短い動画をつくっているけれど、どれも面白い。その辺はまだ日本の経済メディアがチャレンジしていないことだから、これからどういったものが受けるのかということも含めていろいろ試していくと思う。(01:03:10)

瀬尾:女性誌をはじめとしたファッション系コンテンツは動画で価値を出しやすいし、広告もつきやすい。講談社でもそういう取り組みはしている。ただ、出版社には動画制作のスキルがないのと、現状では動画制作の外注費用もまだ少し高いという実情がある。だから、どこかの段階で…、それはクラウドソーシング的なものかもしれないけれど、もう少しコスト感覚が変われば頻繁にできるだろうなと思う。(01:04:24)

会場D:動画に関連した質問になるが、テレビというものはビジネスとしてどれほど「もつ」とお考えだろうか。今はまだに儲かっているので皆がぼやんとしているけれど、それがどれほど続くとお考えか、お聞かせいただきたい。(01:06:35)

加藤:出版に関して言えば、日本でインターネットが普及した2000年前後から15年ほどかけて、今は3割ほどがネットに侵食されたと思う。で、あと10年ほどかけて恐らくすべてネットになるのではないか。計25年ほど。では、テレビに関してそれがどうなるか。侵食はこれから起こると思うが、そのスパンはどう考えても25年より短いし、僕は10年ぐらいだと思う。ただ、「もつ」という状態の定義次第だ。電波を安く借り上げて高く売る場所としてのテレビ局は分からないけれど、クリエイティブ集団としては問題なく「もつ」と思う。今のサイズで維持できるかというと、また違う話になるが。(01:07:14)

佐々木:「最近のテレビ局はかなり動くようになった」と、テレビ局の方は皆おっしゃる。日テレのHulu買収が典型的だ。これまでは構想だけでまったく実現できなかったことが、今は一気に動き始めている。「なにかこう、潮目が変わった」という話を最近はよく聞く。だから、意外と面白くなるんじゃないかなという気もする。(01:08:18)

瀬尾:僕もそう感じる。テレビ局というのは、マスコミ業態のなかではすごくいろいろなことにチャレンジしているセクションだ。新聞はどちらかというと未上場の会社が多くてクローズドだけれども、テレビ局は上場会社も多いし、株主への責任を果たさなければいけないという思いもあるんだろう。それに、元々映画産業などと組んでプロジェクトを手がけるといったこともやっているから、新しいことへのチャレンジは結構している。もしかするとレビ局のほうが柔軟に逃げ切れるのかなと。あるいは業態としてまったく違う形で生き残る可能性もあると思っている。(01:08:38)

加藤:そう思う。お金と人材が豊富だし、クリエイター集団として考えると大変恵まれた立ち位置だ。攻め込む気があればやばいことはまったくないと感じる。(01:09:15)

佐々木:テレビ局のライバルになるところはないと思う。(01:09:27)

加藤:そう。だって、真似できない。電波がないし。(01:09:29)

川上:私もそう思う。テレビのリーチに関して言えば、もうネットが逆立ちしても永久に適わないとった声もある。それはもちろん電波に基づくものだが、そうでない部分でも、たとえば彼らのビジネスデベロップメントは大変しっかりしている。アントレプレナーシップの高い人々だから、やっていけるように思う。(01:09:35)

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会場E:「今後、広告と報道の区別がなくなってくるのでは?」というお話もあったが、そうなると報道の中立性が失われるのではないかという気がしている。(01:10:38)

瀬尾:元々、中立性なんてない(会場笑)。嘘です(笑)。(01:11:04)

佐々木:私もそう思います(笑)。(01:11:10)

瀬尾:(笑)。メディアの公正と中立が求められるという話はよく聞くけれど、僕は公正のほうが大事だと思う。オープンに、分かりやすく、公平に報道する。ただ、中立というのはどうだろう。どこかに必ず立ち位置がある筈だ。たとえば、よくマスコミは「安倍政権の圧力があるから載せられないんじゃないか?」といったことを言うけれど、僕が見ている限りそういうことはほとんどない…、あるのかもしれないけれど。ただ、とにかく、どちらかというとサラリーマン的な論理で「場所が確保できなかった」とか、「たいしたニュースじゃないと思っていたから」とか、その程度。そこにはそれぞれの立ち位置があるわけだ。従って、ネイティブ広告を含めてメディアのほうから、「我々はこういう視点でこういう報道をしています」という立ち位置を見せることが重要だ。それが右に寄っていようが左に寄っていようが、メディアというのはそういうもの。誰かを通すことで中立性は失われるのだから、そういうものだと思って付き合う。で、メディア側はその立ち位置を見せることでフェアネスを確保するという、そういう話だと思う。(01:11:13)

佐々木:「現代ビジネス」に載っていた記事で、牧野(洋氏:ジャーナリスト)さんの集団的自衛権を巡る中立性の議論が興味深かった。結局、朝日のほうはすごく煽る形で「こんなのあり得ない」みたいに書いて、読売のほうは賛成の議論ばかりと。「そこは報道欄とオピニオン欄を分けるべきだ」と、牧野さんは書いていらした。(01:12:26)

瀬尾:そう。アメリカのメディアでは報道の部分と論説の部分が分かれていて、論説には自分たちの意見を出す一方、報道の部分はできるだけフェアネスを持ち、起きていることをできるだけ書く。日本のメディアはまだそれができていない。そもそも僕は社説という言葉が大嫌い。会社の説なんてあるわけないじゃないかと(笑)。「エディターズコラム」とか何かに変えるべきだ。あれを社説と呼ぶ時点で日本の新聞は終わっているなと思う。せめて「ナベツネ説」とか書けばいい(会場笑)。(01:12:48)

佐々木:会社内で意見が分かれたっていい。そちらのほうが自然だ。(01:13:31)

川上:結局、広告主に遠慮するか否かという中立性の問題以上に、実は日本のメディアが世の中の意見に対するフェアネスというか、バランスを失ってしまっているという問題のほうが大きいのだと思う。僕は以前からジャーナリズムは三つの対象に向けてバランスを取らなければいけないと思っていた。書き手つまり自分たちの組織に対するバランス、読み手に対するバランス、そして書かれる対象に対するバランスの三つだ。そうした人々とのバランスをきちんと取ったものがジャーナリズムだと思う。その意味では、書かれる対象が広告主だったらどうするかという問い以上に、そもそも自分たちの立ち位置に関してオープンでもなければバランスを取ってもいないということが、日本のメディアに関しては大きな問題だと思う。(01:13:35)

この点に関して言うと、NewsPicksさんや「現代ビジネス」さんのは、もう容赦なくネットユーザーから叩かれ批判されるわけで、そちらのほうがバランスを取ることのできる環境にあると思う。それなら、仮にネットで広告主に対して遠慮するようなネイティブ広告を出したとして、それで批判されても、「批判したかったらすれば?」という話になるだけだと思う。ネイティブ広告はそれほど問題はないと思う。(01:14:38)

佐々木:ルールは必要だと思う。(01:15:15)

川上:そう。オープンにして立ち位置を明確にするルールは必要だ。ただ、それ以上に深刻な問題がいろいろある。だからネイティブ広告だけを取り上げて「問題だ」と言う必要もあまりないというか、そこは問題の深度として浅いと思う。(01:15:17)

会場F:EC物販のプロモーションは今後どうあるべきだとお考えだろう。どんどんネットメディアに流れる一方で、ネットにおける報道の純度が上がっていくとマーケティングが入る余地もなくなってくるのかなとも感じる。ネットメディアと物販やサービスのマーケティングはどのような関わりになっていくのかをお伺いしたい。(01:15:50)

加藤:「ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)」さんがやっていることは大きなヒントになると思う。手帳をはじめいろいろと物販も行っていらっしゃるが、「ほぼ日」さんは単にモノを売っているわけでもないし、ファンクラブでもない。特定の価値観とストーリーを共有したお客さまにモノを売って、商品の感想やそのコミュニケーションも混みでエクスペリエンス全体を売っている。コンテンツも含め、恐らく物販はすべてそうなるのかなと思う。NewsPicksのコミュニケーションも同じだ。コンテンツやモノを軸にコミュニティが生まれていくから、そこでどのようにコミュニケーションを設計していくかということが、これからは大事になるのかなと思う。(01:16:23)

川上:今回はいろいろなところまで話が広がったが、この辺で本セッションを締めたいと思う。皆さん、ありがとうございました(会場拍手)。(01:17:55)

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