新しい体験をニュースメディアでつくり出したい 「メディア・イノベーションがもたらす社会」後編 

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津田:では続いて、可能であれば3社が今、どれほどのコストが掛けているのかということも伺っておきたいと思う。編集部の人員や「どういったエンジニアがいるのか」といった、今の体制について教えていただけないだろうか。もし、「オープン当初はこのぐらいで、今はどれぐらいにまで成長した」というお話ができるようであれば。(35:26)

梅田:なかなかシビアな質問だけれども(笑)。(36:11)

津田:ユーザベースはSPEEDAと共通化している部分もあると思う。(36:14)

梅田:逆に、今までそうしていたのが良くなかった。片手間になってしまっていたからだ。SPEEDAが収益を生んでいるし成長エンジンだから、どうしてもそちらに目がいってしまっていた。それでSmartNewsもなかなかリリースできなかった面がある。だからチームを完全に分けた。今は、NewsPicksのチームは絶対にSPEEDAはやらないという体制だ。当初はエンジニアの数が4.5人で、ビジネスが一人だった。今はエンジニアを少し増やしてビジネスも二人になったという程度なのでそれほど大きくはなっていないが、今後はコンテンツづくりを重要視しつつ一気に拡大させたい。(36:19)

津田:NewsPicksのサービス自体は無料で利用できている。何か売上をあげるとしたら、有料プランのようなイメージだろうか。(37:08)

梅田:そう。まず、我々の領域ではSmartNewsさんほどのユーザー数はなかなか獲得できないのかなと思う。だから有料課金の方向にしか未来がないのではないかと思うし、それにチャレンジしたい。有料課金とネイティブ広告の二つに大きな可能性を感じていて、それをどのようにミックスさせていくかというアプローチになる。(37:17)

津田:そこで編集部をつくりオリジナルの記事を出せば、さらにネイティブ広告も入れやすくなっていくと。(37:43)

梅田:そう思う。インフルエンサーの方々にもたくさん使っていただいているので、その拡散効果がある仕組みをつくっていきたい。ただ、今は別の問題に直面している。今までSPEEDAで稼いだお金をNewsPicksに注ぎ込んでいたが、最近はSPEEDAも海外展開でお金がかかるようになってきた。「そろそろお金が尽きてきたな。どうしよう・・・」と(笑)。BtoCサービスでしっかり収益化させていくには時間がかかるということだと思う。ただ、これはやり続けなければいけないとも思っているので、あとは減ってきたお金との兼ね合いのなかでどうしていくかという話になる。(37:49)

津田:具体的には有料でしか読むことができない記事をNewsPicksで提供するといったモデルになるのかなと思う。たとえば1〜2年後にはこれぐらいのユーザー数を獲得したいといった目安はあるだろうか。(38:31)

梅田:社内の計画や説明のために使っているプランはあるが、正直に言うとよく分からないというのが本音だ。(38:50)

津田:SPEEDAという定番の経済データベースとは、どのようなシナジーを実現していきたいとお考えだろう。(39:03)

梅田:今はSPEEDAにアナリストがいる。上海やシンガポールにもいるそうしたアナリストが分析レポートを挙げているのだが、彼らがNewsPicksでもコメントをつけてキュレーションを行っている。今はその部分だけ。ただ、我々としても必ず融合していきたいし、SPEEDAでNewsPicksの記事を読むことができるようにもしたい。いずれにせよ、今我々が考え得る永続性のある形としては有料課金とネイティブ広告のミックスしかないと思う。従って、そこで突き進むしかないのではないかと感じている。(39:17)

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津田:瀬尾さんはどうだろう。当初から黒字と仰っていたが、瀬尾さん一人だった訳で(会場笑)、それでなんとかやっていた感じだと思うが。(40:02)

瀬尾:会社の誰かに立ち上げるよう言われた訳でもなく、僕が「自分でやります」と言って、当初から仕様書まで自分でつくっていた。ただ、実は当時、僕は「フライデー」の編集次長だったので、その仕事と「現代ビジネス」立ち上げを並行して進めていた。まず、朝10時ぐらいから夕方4時ぐらいまで、「現代ビジネス」の原稿を読んだり打ち合わせを行ったりする。そのあとはフライデーの原稿が来るのでそれを見る。週刊誌はだいたい夜中に作業するので、朝4時ぐらいまではそれを続ける。そして、「現代ビジネス」の新しい記事が朝6時に公開されるから、その最終チェックを4時から6時まで行って、6時に寝るという。それでまた10時から仕事をはじめる。そんな超ブラックな仕事を1ヶ月ほど続け、「頭がおかしくなるんじゃないか?」と思って当時の上司に「異動させて欲しい」と言ったら、「お前は人事権に口を出すのか?」と言われた。人事権でなくて自分の体の心配をしていただけだったのに(笑)。(40:25)

いずれにせよ、最初に言われていたのは「黒字にしろ」ということだった。保守的な企業だったので、新しいことをやろうとすると「本当に儲かるんだろうな?」なんて聞かれる。そこで「儲かります」と言いながら考えていたことが、まずは人件費を極力減らすことだった。また、色々なデジタルメディアを見ているとバックのシステム等、色々とお金を掛け過ぎていたと感じたので、それは極力減らした。クラウドの時代だから、あるものを借りてきて自分たちではできるだけ抱え込まないようにしていた。(41:40)

津田:つまりエンジニアがいなかったと。(42:11)

瀬尾:そう。そういうものはすべて外に出し、既存サービスでつくっていった。そしてコンテンツをつくるところにだけお金をかける方針だ。ただ、ようやく今年2月に「2020企画部」というものができて、そこに新しく社員が一人入って来たので、人員は、倍増という(会場笑)。あと、編集スタッフとしては専属で契約している方が人いる。これは優秀な方を自分で探して仕事をお願いしているという状況だ。(42:13)

津田:実は、「東洋経済オンライン」、「ダイヤモンド・オンライン」、「プレジデント」、「現代ビジネス」等々、オンライン経済メディアが共通して使っている「isMedia」というプラットフォームがある。あれはどういった経緯で使うことになったのか。(43:01)

瀬尾:僕は新卒で日経マグロウヒルという、今は日経BPに社名が変わった会社に入った。そこで新雑誌の開発や「日経ビジネス」の編集に携わっていたのだけれど、途中で講談社に転職した。「現代ビジネス」を立ち上げる際、たまたま日経BPで「日経ビジネスオンライン」のシステムをつくったチームが会社を飛び出し、独立するという話を聞いた。「なら一緒にやろうよ」と。彼らはすごく良いシステムをつくるので、それを僕らも借りる形になった。その後、僕らと同じように彼らにシステムを借りるビジネス系メディアが増えてきて、今、ビジネス系はほぼそこのシステムを使っている。(43:21)

津田:ASP的に利用してコストを抑えていると。SmartNewsはどうだろう。(44:47)

藤村:会場には投資家の皆様もいらっしゃるので(会場笑)、偉そうなことは言いにくい(笑)。とは言いながらも本音を申しあげると、今、SmartNewsのユーザー数は400万近くにまで伸びてきた。そうしたことも考えると、ビジネスにマジックはないのだとすれば広告か課金というモデルがあり得る。ただ、それを現時点ですぐ実行することにはブレーキを掛けている。だから現時点では売上も立っていない。(44:56)

一方で体制や関して申しあげると、かなり人数を増やしてきたつもりだが、まだ13人だ。そのうちエンジニアは7〜8人なので、経営自体はライトウェイトでできていると思う。従って、図々しい言い方だが現時点のユーザー規模でマネタイズをはじめても黒字化はすると思う。ただ、現時点で広告を出したりして十分にお金を設けようとするのはまだ少し早いのかなと。あまり多くの広告をユーザーに押し付けてしまうのも、ユーザー・エクスペリエンスを大切にする我々としては良くないと感じている。従って、今のところはコストに関して、正直言って給料も現時点では抑え目に運用しているし、人数も少ないことを考えると、まあ、ライトウェイトな経営でもう少し我慢すべきだと思う。そうしてユーザーボリュームというかリーチが拡大したところで、たとえば適切なボリュームの広告を出すという流れの良い循環にしたいと思う。(45:50)

津田:SmartNewsが「現代ビジネス」やNewsPicksと違う点として、コンテンツの供給体制がないということも言えると思う。梅田さんのところはSPEEDAというデータベースがあり、アナリストもいて、今後は編集部もつくるとのことだ。また、「現代ビジネス」も当然コンテンツをつくっているし、たとえば「週刊現代」で「これはネットでもウケるだろう」という記事があればそれを転載することもできる。SmartNewsはそれがない。今後もすべて自動化で行うという仕組みのまま、成長を目指すと捉えたら良いのか。あるいはなんからのコンテンツ内製等をしていくのだろうか。(47:33)

藤村:機関決定はない。ただ、我々には基本的に、「素晴らしいコンテンツを見つけ出す仕組み」や「コンテンツを消費者に届ける仕組み」にフォーカスして技術を高めようというポリシーがある。コンテンツ内製のアプローチはそこからズレると思う。良いコンテンツというものは絶対的にあるけれど、それが人に届かなければ存在しないに等しい。従って、自負を込めて言うと、コンテンツをクリエートできる能力と、良いコンテンツを的確に見つけ出して人に届ける社会的価値は、僕はこの10年ほどの間にほぼイコールに近づいてきたのではないかと思う。その意味では、私自身はコンテンツをつくることに携わってきた経歴があるけれど、そこに大きな価値を見出すより、それを人へ届けるという領域にあらゆる技術やエンジニアリング能力を投入していきたい。(48:25)

津田:その状態になってから一気にやるほうが、投資家の方々により良い結果をもたらすことができるというのもあると思う。瀬尾さんはどうだろう。先ほどは「5〜10年後にはNewsPicksもSmartNewsも今の形ではないだろう」といったお話も出たが、それは「現代ビジネス」も同じだと思う。メディア環境が変わる将来、ニュースを扱うメディアはどう変化するとお考えか。あるべきビジネスモデルと併せてお伺いしたい。(50:29)

瀬尾:ジェフ・ベゾスのワシントン・ポスト買収、eBay創業者の新しいニュースメディア立ち上げ等、むしろアメリカでは今、ソーシャルメディアに代わってニュースメディアが投資対象として注目されている。日本もそうなる可能性は十分あると思う。そのなかで「現代ビジネス」のようなメディアが、僕らはスモールメディアだと思うが、そういうセグメント化されたスモールメディアが成立する方法は、今の段階でそれなりに確立している。講談社は10〜20代向けにサッカー情報を毎日提供する「ゲキサカ」というニュースメディアも運営していて、これも黒字だ。少数精鋭編集でやっているが、その規模までは可能だと思う。それと、藤村さんや梅田さんがやっていらっしゃるようなプラットフォームに近い部分もビジネスモデルとして成立すると思う。しかし新聞社や週刊誌のようなミドルメディアは、記者を入れると100人ほど抱えている。そこで100〜500人が食えるようなメディアをつくるのはなかなか難しいのかなと感じる。(51:13)

そこで一つの可能性としてお話ししたいのだが、僕らはメディアのビジネスモデルをもう少し大きく考えるべきだと思う。今まではどちらかというとメディア運営で商売を考えていた。そうではない。たとえばワシントン・ポストのように、どこかに買ってもらうことで投資を回収する。また、たとえば「現代ビジネス」でもいくつか特徴的な仕組みを構築しているが、自ら開発したサービスを他メディアに提供することで回収する考え方もある。そんな風に、今までのようにメディア単体で儲けるのでなくサービスの仕組み全体で儲けていく。それによって、今まで外に流れていたレガシーメディアによるお金の流れを、こちらに組み込んでくる必要があると思う。(52:52)

津田:つくる部分と届ける部分の分業化もどんどん進むからこそ、逆に言えばメディア企業同士のアライアンスが重要になってくるということだろうか。(53:47)

瀬尾:そう思う。それともう一つ。コンテンツをつくるスキルは未だ僕らが持っている強みだ。今はネイティブ広告も注目されているし、企業サイドではオウンドメディアをつくる動きも増えている。その辺も僕らのビジネスに組み込んでいくべきだろう。(53:57)

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津田:あと、今日は御三方に話を伺っていて共通の話題として感じたことがある。スタッフの給料という問題だ。何故、日本ではマスメディアが強いままで、かつ、そこから新しいネットメディアに人材が流入しないか。端的に言うとマスメディアに務める記者の方の給料が非常に高い。たとえば大手新聞社やテレビ局であれば30代で年収1000万は確実に超えるような状態だ。アメリカでは、スター記者を除けばそこまで高くはないし、プロパブリカのようなオンラインメディアでも年収500〜600万を払えばそれなりに優秀な記者を集めることができる。だから両者のあいだで人材の行き来が盛んな訳だ。ただ、これは僕の悩みでもあるが、日本で「ネットに賭けよう」と言っても優秀な記者や編集者がなかなか集まらない。瀬尾さんはどうお考えだろう。(54:40)

瀬尾:なかなか日本のメディアが潰れない。早く潰れたほうがいいんじゃないかと(笑)。新聞社やテレビ局で横の流動性が最も高まるのは潰れたとき。そうなれば良い人材が流れる。僕は日経の内側を相当知っているけれど、「この人は将来、日経を背負って立つんじゃないか」と思った先輩スクープ記者や、残っていれば論説になっていたような方々が結構辞めている。彼らに聞くと、「もちろん日経にいたほうが給料は良いし、どこに行っても大事にされる。けれども自分はそういうことがやりたくてこの世界に入ったんじゃない」と言う。「独立してやっていきたいんだ」といった方がぽろぽろ出てきた。これは過去になかった動きだと思う。(55:50)

津田:新聞社にはそれなりに転籍もある。地方新聞で大変腕の良い記者が大きな新聞に移り、たとえば「プロメテウスの罠:明かされなかった福島原発事故の真実」(学研パブリッシング)のスクープを飛ばすようなことがあったりする。そこで、新聞社から新聞社でなく、NewsPicksやSmartNews、あるいは「現代ビジネス」に行こうと考えるような人たちが、今後2〜3年で出てくる可能性はあるだろうか。(56:58)

梅田:我々は編集部をつくろうとしているので、水面下では色々な方々とお会いしているのだが、間違いなくそうした流動性は生まれると思う。肌感覚としては、この1〜2年で大きく変わるのではないか。ただ、今のメディア業界というのは社会主義に近いところがあると思う。しかし、やはりスター記者は高い給料をもらえるような資本主義の仕組みをしっかりつくるというのも一つの解だと思う。(57:24)

瀬尾:あと、ジャーナリストや取材者といった書く人の育成も大切だ。ネットやブログで活躍できる方もいるが、取材ノウハウや記者としてのリテラシーには高度にテクニカルな面があり、それはやはり勉強する必要がある。ただ、残念ながら日本のメディアはこれまでそうした教育を新聞社なら新聞社、出版社なら出版社という風に内部でやってきた。それを外部化すべきだ。そうした教育を行うところが人材供給源になればネット企業に新しい人材が来てくれる可能性も高まるだろう。逆に言うと今は新聞社の体力が落ちて、なかなか社員教育ができなくなっているという問題もある。(57:55)

津田:最近、毎日新聞がいわゆるストリートニュースの取材を止めるという衝撃のニュースがあった。そこは通信社のニュースを使い、プロパー記者は調査報道に専念させる方向で舵をきりはじめた訳だ。そういう動きも含め、今はメディアの変わり目なのだと思う。では最後に一言ずつ、「自分たちはこういうやり方で問題を乗り越え、こんなメディアにしたい」というお話を決意表明のような形でいただきたい。(58:52)

梅田:メディアの世界で素人の我々が、「この世界を少しでも変えることができたら」ということではじめたのだが、調べれば調べるほど、中に入れば入るほど、やはり100年間の歴史は非常に強固だと分かった。これだけ変わらなかった業界はなかなかないと思う。ただ、今はスマホの誕生がトリガーにもなって、「この100年の転換点にあるのではないか?」と、NewsPicksを運営するなかでも日々感じる。だからこそ、誰も実現したことのない次のメディアのモデルを追求したい。しっかりとしたマネタイズにせよ、事実を伝える報道にせよ、意義はそこにあると思う。今は試行錯誤中で、今日は「編集部をつくる」なんていう、まだやっていないことも決意表明的に話したが、我々は我々のやり方でそうした世界をつくりたい。(59:35)

瀬尾:メディアの世界は今、ビジネス面でも信頼性の面でも厳しい局面にある。僕らは新しいメディアをつくるなかで色々な方に話を聞いて回っているが、やはり不満が多い。「今のマスコミは駄目だ」と。ベンチャー起業家の方々も、「ベンチャーを応援してくれない。大企業の話ばかりで、ベンチャー経営者が成功すると妬み記事ばかり出てくる」と言う。そこで感じるのは、実は皆さんがマスコミに期待をしてくださっていることだ。だからこそ建設的なコンテンツ、あるいは書かれる側や読者とのインタラクティブな仕組み等、今皆さんが抱いているような不満を解消するようなソリューションをつくることができたらと思う。そこで今のレッドオーシャンがブルーオーシャンになるし、僕が目指す「儲かるジャーナリズム」も実現できるのではないかと感じる。(01:00:43)

僕としては「そのためのヒントになるのでは?」と思うことがある。ネットに期待されていること、逆に言えばマスコミを呪縛するものは何かと考えると、一番大きいのは数字に縛られている点だ。テレビは視聴率に、新聞や週刊誌は部数に縛られている。ただ、今はネットメディアも「PVを稼がなくては」と、結局、視聴率云々という話と同様の世界に入ろうとしている。それではネットメディアをやる意味がない。ネットはインタラクティブなのだから読者の顔が見えるし、読者と強固な信頼関係を築くこともできる。従って、今までのネットメディアのさらに先に、数字に縛られない本当の品質や読者との信頼関係によってマネタイズするようなモデルを構築できたら、現在のマスコミ批判において大部分を占めている大衆迎合的要素も上手く切り離せると思う。だから僕はジャーナリズムには二つの独立が必要だと思っている。一つは権力や権威からの独立。そしてもう一つは、僕らが忘れがちな大衆からの独立だ。ネットはこの二つを確立するために最適な道具だと思うし、その可能性を追求したい。(01:01:58)

藤村:僕が今一番お伝えしたいのは、コンテンツ神話に捉われ過ぎてしまう危険性だ。僕は会社経営をしていたとき、こういうことをよく経験していた。ある媒体が業績を落としてしまったとき、現場の担当者に「お前、どうする?」と聞くと、「もっと頑張ってたくさんコンテンツをつくります」と言う。「それ、違うんじゃないか?」と最近は感じる。もっと良い仕組みとか、コンテンツを生かすテクノロジーとか、メディアに携わる人たち自身のなかにもっとダイバーシティを持ち込まないといけない。そうでないと、結局、コンテンツをつくる人間が一番偉いという話になる。その人たちがうんうん唸っていれば何か良いメディアやビジネスが成立するという話になってしまう。今はそういった考え方に一旦カッコを入れて保留すべきだ。新しい仕組みや儲かる仕組みを考えながらメディアの生き方を探るため、今はちょうど良い時期に来ていると思う。(01:03:49)

そういう儲かる仕組みが回るようになると、瀬尾さんが仰っていた通り、「ここにお金を張って新しいビジネスをやらせるか」といった、投資先というメディアのあり方もできると思う。とにかく、メディアはコンテンツのことだけを考えていると袋小路に入ってしまう。コンテンツを届ける環境はこの10〜20年で大きく変わったのに、未だ「どうやって良いコンテンツをつくり、人々に読んでもらうか」という議論にしかなっていないところにメディア業界の危機がある。それを突き破るためには多様性のある、図々しい言い方だが、我々のようにメディア業界からは生まれてこなかったようなベンチャーと組んでみるというアプローチもあるのではないか。そんな風に、メディアのど真ん中にいる人たちを魅了するようなビジネスを、我々としても頑張ってつくりあげたい。(01:05:00)

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津田:では会場との質疑応答に入ろう。(01:06:12)

会場(アレン・マイナー氏:株式会社サンブリッジコーポレーション代表取締役会長兼グループCEO):以前、SmartNewsをアメリカのサイトでダウンロードしようと思ったのだが英語版がなかった。こうした仕組みはグローバルに提供できるのに、何故そこに取り組まれないのだろう。(01:06:23)

藤村:良いポイントを突かれた(笑)。小さな会社ではあるが、今後はそれをやっていくつもりだ。英語版ももちろんそうだし、また、日本コンテンツも英語コンテンツも一緒に読みたいといった声もあると思うので。アンドロイド版ではすでにダウンロードできるが、いずれせよ今後はそれ以外でもできるようにしたい。(01:07:04)

会場(鉢嶺登氏:株式会社オプト代表取締役社長CEO):今はスマホ向けニュースサービスのテレビCMもよく見かけるが、僕はその様子を見て2000年前後のポータル戦争を思い出す。あれは当時、LYCOSやExciteもテレビCMをがんがん流していたが最後はYahoo!JAPANだけになった。スマホ向けニュースサービスも同様に、最後は1社しか生き残らないとお考えだろうか。そうでないとすると、どんな形で勝とうとなさっているかを教えていただきたい。(01:08:01)

梅田:一社かどうかは分からないが、必ず集約されると思う。ただ、新聞にも一般紙と経済紙があるし、そこで我々は経済の領域として特化できると考えている。経済の領域で大事なのはユーザー数よりも深さ。どれだけ深く入っていくことができるかが、我々が今考えるべき方向性だと思っている。(01:08:42)

藤村:基本的には、PCウェブサイトでコンテンツを体験するという時代から、かなり早いピッチでスマートデバイスのコンテンツ体験に移ってくる。スマホは今5000万ユーザーということで、当然、数年のあいだに総人口に匹敵するような規模になるだろう。そこで決定的にユーザー体験が変わり、変わったことに誰もが馴染む。重要なのは、そこを今から先取りして製品を開発できるかどうか。ただ、今はアプリのマーケティング範囲が非常に狭いため、そこでの方程式も狭められていると感じる。だから今は派手にお金を使うマーケティングがなされているのだと思う。しかし我々のユーザーはDAUの比率が高いということもあるので、基本的には製品の良さ、あるいは体験の素晴らしさということがユーザーを増やすベースになると思う。従って、マーケティング自体は我々も機会があれば色々と打って出ると思うが、本質的に重要なのは数年後のコンテンツ体験を意識した製品を考えることではないか。その方針が日々変わるようだと、今、これだけビジネスのスピードが速くなり、尖った製品をつくらなければいけない時代ではロスになる。未来のほうに賭ける形で頑張っていきたい。(01:09:35)

会場(宝珠山卓志氏:株式会社D2C代表取締役社長):当社は広告の枠売りをしているが、アプリ提供者の方々に色々お話を伺ってみると、どうも「広告か課金か」という二者択一になっていると感じる。しかし、広告屋からすると「課金っていいな」と感じるし、そもそも新聞や雑誌は課金も広告もやって収益を最大化している。両方やるのが一番良いと思うが、その辺が進まない理由がもしあれば伺いたい。(01:11:36)

梅田:僕は併用されるようになると思うし、今、何故そうなっていないかというと、自分としても不思議なぐらいだ。広告も色々な種類があり、我々も明確にネイティブ広告と課金という、この二つが必ず主流になるだろうと思っている。(01:12:23)

津田:報道やジャーナリズムとして、広告主とのあいだで中立性を担保したいという意図から「課金で」という話になることはあると思う。雑誌でも広告を一切入れず購読料で成立している媒体はあるし、そうした影響があるのではないか。(01:12:50)

瀬尾:僕も二者択一にすべきでないと思う。読者からコンテンツを買ってもらう方法の一つが広告であり、課金だ。従って、それらを上手く組み合わせていく必要がある。ただ課金が上手くいっていない理由は、正直、メディア側の怠慢というか努力不足だと思う。きちんとしたユーザー体験を届けることができていない。実際、たとえばクックパッドや食べログは課金に成功している訳で、そういう新しい体験をニュースメディアがまだつくり出していないのだと思う。そこは我々としてもやっていきたい。(01:13:12)

津田:SmartNewsは、広告は視野に入っているかもしれないが、たとえば月額課金のような有料化についてはどうお考えだろう。(01:14:13)

藤村:視野には入れてはいないが、議論としてはあると思う。SmartNews自体が全面的に課金アプリとなる可能性は基本的にゼロだと思うが、たとえば媒体主様から課金でビジネスを一緒にやりたいと言われることは多い。「その辺をSmartNewsでスムーズに課金してもらえたら嬉しい」と。その辺は考える必然性があると思う。(01:14:25)

津田:G1サミットが貴重なのは、定期的にこうした新しいメディアをフックアップして紹介するところだ。半年後なり1年後なり、御三方のお話を伺う機会がまたあるかもしれないが、そのときは恐らくどのメディアも成長しているだろう。さらに驚くような新サービスや構想を発表なさることもあると思う。ぜひ今後も3社に注目していただきたい。最後に登壇者の方々に拍手をお願いします(会場拍手)。(01:15:04)

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