作家・樹林氏×DeNA・守安氏に堀江貴文氏が聞く 「マンガボックスに見るコンテンツビジネスの未来」 前編 

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そこに意義がないならやる意味がまったくないと思っている(樹林)

29721 樹林伸氏

堀江貴文氏(以下、敬称略):今回初めてG1サミットというものに参加させていただくのだけれど、会場の面子が凄過ぎて驚いた(笑)。ともあれ、本セッションでは漫画に絡んだコンテンツビジネスの議論を行う。実は僕も「マンガHONZ」という漫画の書評サイトを運営している。これは元々「HONZ」というノンフィクションの書評サイトがあって、そこに良いレビューが載ると2〜3万部の重版がかかるような影響力あるサイトなのだけれども、「マンガHONZ」はその漫画バージョンだ。だから僕も漫画業界に関して、「漫画は将来どんな形で読まれるようになるのか」と、色々と問題意識を持っていた。G1サミット的言い方をすれば、漫画は日本が世界に向けて誇ることの出来る文化の一つとも思うし、それが今後どのように展開するのか、すごく興味がある。(00:49)

気付いたら壇上のお二人がマンガボックスというアプリを大成功させていて、「おお、こんな感じで漫画の未来が来るんだ」と、感銘を受けた。会場にいらっしゃる南場(智子氏:ディー・エヌ・エー取締役)さんには先日、「堀江君、競合サービス、つくってないよね?」と言われ(会場笑)、「そういえば某出版社の編集長とそんな話をしていたなあ」なんて思っていたが、まあ、南場さんの懸念は当たらずとも遠からずと(会場笑)。ちなみに僕と樹林さんはワイン仲間。一緒に仕事をしたことはなく、樹林さんの家で美味しいワインを勝手に飲んでいるだけだった(笑)。その樹林さんがいつの間にかマンガボックスに関わっていて驚いた。何故関わることになったのか。(02:23)

樹林伸氏(以下、敬称略):G1サミットで知り合った電通の方から、「こういう仕事があるんだ」という電話があった。ただ、実は僕のところにはそれまでもその手の相談が何件か来ていて、基本的にはすべて断っていた。単にインターネットで漫画を載せるだけならやる意味がまったくないと思っていて、そこに意義がないからだ。しかし、今回はお相手がDeNAさんで、大きい。となると内部留保をたっぷり持っている筈だから、しばらく損を重ねて赤字が続いても漫画雑誌として成立するまではもつだろうと考えた。(03:34)

無料でやるというお話だったからというのもある。僕は無料じゃなければ意味がないと思っていた。また、多言語で、最初からグローバルに挑戦するというお話だったこともあって、「それなら、とりあえず話を聞いてみよう」と。それで守安さんとお会いして、最初はかなりの無茶振りをした。たとえば、DeNA側から出てきた漫画家のラインナップはすべてボツにした。まずはばっさり、「全員駄目です。不可能です」と(笑)。あり得ないようなビッグネームとか、もしくはビッグネームのように見えるけれども絶対に売れない人とか(笑)、そういう名前がずらっと並んでいたから。(04:24)

そういう部分から入って、あとは僕のほうから色々な条件をぶつけた。その一つが出版社と提携して欲しいというものだ。「講談社や小学館のようなところと組んで、編集者を連れてきてくれ」と話した。漫画家だけで何か成立する訳ではない。漫画家と編集者の関係が大事だ。描いているのは漫画家だけれども、漫画雑誌をつくっているのは編集者ということをまず理解して貰いたいと思い、さんざんその話をした。(05:13)

堀江:クレジットされていないけれど編集者がストーリーまで考えることは多い。樹林さんご自身も元々講談社の編集者だったし、そのあと独立して原作者ということでやっていらした。皆さんもご存知のメジャーな漫画でも、クレジットこそされていないものの原作をしていた編集者はかなりいると思う。たとえば「北斗の拳」。「週刊少年ジャンプ」が約650万部売れていた最盛期、タイトルの下にマルで囲んだ「H」が振られていたときは同誌編集長の堀江信彦さんが原作をしていたという話を本人から聞いたことがある。さて、次は守安さんにお聞きしたい。何故、樹林さんだったのか。(05:43)

漫画を読者へ広める雑誌が減ってきた…「これはチャンスではないか」と(守安)

29722 守安功氏

守安功氏(以下、敬称略):何故漫画をはじめようとしたかというお話からしたい。元々ゲーム事業はすごく順調に進んでいて、なかでも、いわゆるIP(IntellectualProperty:知的財産)を使ったゲームがヒットしていた。ただ、一方でIPの版権料がかなり上がってきていたという状況もあり、「自分たちでオリジナルをきちんと抑えないとゲーム事業も難しくなるのでは?」と思った。そこで、まずはIPに最も適している漫画を生み出して、それをゲームに繋げていこうと考えたことがきっかけだ。(06:58)

そこで漫画業界を色々調べてみると、数百円で売っている週刊および月刊漫画雑誌の収支は、基本的にはとんとんか赤字ということが分かった。で、どうやら「雑誌で読者を増やしたあと、単行本化して利益を稼ぐというモデルで業界が成り立っているようだ」と。ただ、漫画雑誌の発行部数はここ10年で半減していた。けれども単行本のほうは、若干減ってはいるけれどもほぼ横ばい。となると、今までぐるぐる回ってきたこのビジネスモデルが、最初に読者へ広める雑誌が減ってきたために厳しくなるかもしれないし、だからこそ「これはチャンスではないか」と。インターネットを活用して漫画をきちんと広めていけば、単行本で回収するというモデル自体はまだ顕在だから、ビジネスとして大きく成功する確率が高いのではないかと考えた。(07:41)

堀江:IPとして注目したのは斬新だと思う。それはすごいと思った。(08:47)

樹林:僕もまったく同じ考えだった。長く業界にいたから分かるけれど、今、雑誌は大して儲かっていない。それでも、IPとして考える感覚が出版社側の人間にあまりいなかった。少なくとも3〜4年前まではIPの使い方が上手くなかったし、そういう感覚もなかったという点が、その頃の出版社が一番良くないところだったと思う。(08:54)

守安:もう一つ、観点がある。我々は2010年、国内で上手くいっていたモバゲー事業の海外展開をはじめた。ゲームのプラットフォームとソーシャルゲーム自体を自分たちでつくっていくというモデルを、海外でも広めようとした訳だ。ところが、ブラウザゲームで上手くいっていた日本とは違い、海外ではすでにアプリが主流になっていた。また、実はゲーム単体でも「そのなかでコミュニケーションをつくってしまえば、あまりソーシャルグラフって必要ないじゃん」といった感じになっていた。だから、ゲーム自体は当然まだやっていくけれども、そのプラットフォームを海外展開するというのは非常に難しいと考えるようになった。で、その次に「comm」というサービスを1年半前ぐらいに立ちあげて、もうお忘れになった方も多いと思うが(会場笑)。(09:33)

堀江:LINEのようなサービスだった。(10:32)

守安:そう、LINEみたいなもの(会場笑)。それを国内で立ちあげ、海外に持っていきたかった。が、あえなく国内で玉砕した。海外でプラットフォーム型ビジネスをなんとしてもつくりたかったのだけれど、なかなか難しかった訳だ。そこで、「でも漫画であればコンテンツをつくることの出来る事業者は日本にしかいないよね」と。日本の強みを競争優位にしてグローバルにプラットフォーム展開が出来るのではないかと考えた。そういうアイディアで久しぶりにエキサイティングして、「絶対に最初から海外を見据えたプラットフォーム展開にしよう」と、構想を広げていった流れになる。(10:33)

ただし、我々が漫画をつくることが出来るかというと、当然つくったこともないし、どうつくれば良いかも分からない。それで「これは困ったな」ということで電通の方に相談したら、「それなら樹林さんに頼むしかないでしょ」ということで紹介していただいた。それで「お願いします」ということで話が進んだ。(11:22)

漫画を読む時間がない、けどそこにチャンスがある(堀江)

29723 堀江貴文氏

堀江:僕はまた別の観点で見ていた。僕自身も20人ほどいる「マンガHONZ」のレビュアーさんと毎月勉強会をしているのだけれど、そこで先日、「最近の子って漫画を読まないよね」という話になった。僕らが子供の頃、漫画は唯一に近い一人遊びの娯楽だったと思う。一人で家にいるときはテレビを観るか、漫画を読むか。友達と遊んでいるときは違うけれど、家に帰ってからは部屋で一人、夜は漫画を読んだりしていた。ところが今は皆、たとえばLINEをやっている。だから漫画を読む時間がないそうだ。今回は、「あ、そういうところに無料漫画雑誌という形で突っ込んでいく方法もあるのかな」と感じた。実際、マンガボックスのユーザーはどういうときに読むのだろう。(12:00)

樹林:基本的には空いた時間だ。昔は家でうだうだしているときに読んだり、持ち歩いて電車のなかで読んだり、学校の休み時間に回し読みしたりしていた。あと、1995年頃に見られたバブル的な漫画雑誌の伸びは、コンビニの隆盛に従っているというのもある。つまり立ち読みだ。昔であれば書店でしか立ち読みが出来なかったけれど、書店の数はどんどん減っていく一方でコンビニが一気に出てきた時期があった。書店は立ち読みするとはたきをかけられたりしてうるさいじゃないですか。(13:06)

堀江:まあ、コンビニは基本的には集客のために雑誌を置いているからね。(13:45)

樹林:でしょ?だからそれで一気に伸びた。ところが、あるときからそれが頭打ちになっていた。その時期をよく見てみると、コンビニが雑誌を縛るようになった時期と重なっている。だから立ち読みが必要ということなんだ。(13:48)

堀江:あれは雑誌社からの要請?(14:02)

樹林:違う。たしか「本を汚されるのが嫌だ」というコンビニ側の理由だと思う。(14:05)

堀江:あのおかげでコンビニもかなり集客出来るという感じがするが。(14:11)

樹林:だから雑誌を縛るのはコンビニにとってもあまり得な話じゃないと、僕も思う。ただ、とにかくそれをやられて蛇口が締まってしまった。それまでは街のかけ流し温泉に入って「温泉っていいな」と思った人が、今度は高いお金を出して温泉宿に行くといった構図だった。そうした市井のかけ流し温泉がなくなってしまった訳だ。(14:14)

皆さんも一度、騙されたと思ってダウンロードして、読んでみてほしい(守安)

堀江:マンガボックス以前に同様のアプリはなかったのだろうか。(14:41)

守安:同じぐらいのタイミングでいくつか、PCであればピクシブさんやニコニコ静画さんが出てきた程度だと思う。スマホのアプリではあまり聞いていない。(14:47)

堀江:今はどれほどのダウンロード数になったのだろう。(15:01)

守安:300万台後半に。(15:04)

樹林:370万ぐらい。(15:08)

堀江:DAU(Daily)ActiveUsersは?(15:09)

守安:それになりに、あります。(15:11)

堀江:それ、すっごく知りたい。先日、テレビCMをはじめたGunosyはDAUが30%になったという発表をしていた。僕は別のキュレーションアプリでコンサルをやっていて内部の数字を知っているから分かるのだけれど、DAU30%というかなり高いアクティブ率だ。まあ、それぐらいはいっている感じだろうか。(15:13)

守安:ちなみに隙間時間ともう一つ。掲載漫画は毎週更新されているけれど、今は30〜40タイトルを掲載しているから毎日5〜6タイトルが更新されている。それが深夜0時に更新されるから、かなりの人が深夜0時になって一気に読みはじめる。(16:10)

堀江:すごいな、それ。(16:32)

守安:マンガボックスを使っていらっしゃる方は会場にどれほどいらっしゃるだろう(会場多数挙手)。(16:33)

堀江:僕は使っていないけれどもダウンロードしている。樹林さんからツイッターか何かで「こういうサービスをはじめたから使ってよ」というメッセージが来たから、「じゃあ、ダウンロードしますよ」と。(16:37)

守安:皆さんも一度、騙されたと思ってダウンロードしてください。それで10タイトルぐらい読んでみて欲しい。(16:59)

成功理由の一つとしてUIがすごく使いやすい(堀江)

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堀江:いずれにせよ僕は樹林さんからそのメールを貰ったとき、「また樹林さんがしょぼいサービスをはじめたのかな。協力してあげないと」と思ってダウンロードしてリツイートか何かをした。でも、僕のリツイートなんてなんの関係もなく一気に伸びて、「なんだこりゃ!?」と思った。世界を目指しているなら億のオーダーを考えるものだし、そうなると300数十万程度では成功と言えないのかもしれない。ただ、現状ではまあまあ上手く行っていると思う。その理由として一つ、ユーザーインターフェース(UI)がすごく使いやすいという点が挙げられると僕は思う。あれ、どうしてあれほどぬるぬる動くのだろう。すごく良く出来ている。僕はアプリもいくつかつくっているから分かる。プリロードもしているけれど、UI自体の出来もすごくいい。(17:12)

守安:スマホでも色々と良いサービスはあるけれど、「最低でもSmartNewsより使いにくいアプリにするな」という指示は出していた。たとえば、それまでは漫画アプリのほとんどが、読もうとするときにダウンロードをはじめていた。(18:50)

堀江:そう。それ、ダサい。(18:54)

守安:だから「それは絶対にあり得ない。最初に読み込んでおけ」と。(18:55)

堀江:LINE並みに速いと思う。ニュースアプリのUIで一番使いやすいのは「LINENEWS」だと僕は思うけれど、それ並み使いやすい。それもダウンロード数が伸びた背景の一つとお考えだろうか。(18:59)

守安:使いやすさは絶対的なベースとして必要で、そのうえで、なんだかんだいっても良いコンテンツが揃っていないと仕方がないと考えている。(19:21)

「これは単行本になっても売れないな」と思ったら編集長としてばっさり切る(樹林)

堀江:樹林さんの腕ということか。どうやってリクルーティングしたのだろう。(19:34)

樹林:色々なところに頼んだ。主に講談社で、あとは個人的な一本釣り。(19:42)

堀江:たとえば講談社のトップである野間(省伸氏:代表取締役社長)さんは「もう、OK!」となるような。(19:52)

樹林:イケイケなんだよね。(19:58)

堀江:ただ、たとえば講談社は「週刊Dモーニング」というアプリを、小学館は「裏サンデー」というサイトをやっていて、現場は「うちはこれをやっている。何故外部のアプリに協力しなきゃいけないんだ?」なんていう話になったりするように感じる。(20:00)

樹林:その辺のオルグが一番大変だった。(20:28)

堀江:あ、やっぱり。それはどうやって解決したのだろう。(20:32)

樹林:それはもう、説得。「このままじゃ駄目でしょ?」と。先ほどお話ししたような、「立ち読みの機会がなくなったから云々」といった話を含めて、とにかく「このままだとやばいよ。入り口をどうやってつくるか考えないと」といった話をした。(20:35)

堀江:「うちには『週刊Dモーニング』があるじゃないですか」と言われたら?(20:49)

樹林:あれは立ち読みじゃないから。お金を取っていて一応黒字にはなっているけれど、部数は少ない。だから、「それよりは何百万という大部数で宣伝しよう」と。いわゆる宣伝媒体として、雑誌という巨大メディアを使っていたのが漫画のスタイルな訳だから、「そこを閉じてしまったら駄目になるよ」と、色々な人に言い続けた。ただ、講談社時代に僕が長いこと指導して、ある漫画では立ちあげからずっと一緒にやっていた人間が今は編集長になっていたタイミングだったので、それはラッキーだった。(20:53)

堀江:コンテンツ集めに関して言うと、もう完全に樹林さんの人脈が鍵だったと。どういった作家さんを集めていったのだろう。(21:36)

樹林:僕がセレクトした。僕は編集者時代に何が一番嫌だったかというと、載るか載らないか分からないものを直すことだ。「載らないならそう言って欲しい」と。そうしたらイチからやり直せるから。だから今回は僕が見て、「これは単行本になっても売れないな」と思ったら編集長としてばっさり切る。いける思ったものは最大でも2〜3回の直しを施したあとに掲載してしまう。あとは載ってから勉強すればいい訳で。(21:46)

守安:樹林さんの人脈で、最初はもうあり得ないほどの協力を得ることが出来たのだけれど、最近は少し様子が変わってきている。たとえば別の月刊誌で連載されていた「アポカリプスの砦」という作品が、掲載誌の休刊ということでマンガボックスに移ってきたことがある。それでマンガボックスに掲載した瞬間、以前から連載していてすでに6巻ぐらいまで出ていた単行本の売上がおよそ10倍に跳ねあがった。(22:25)

堀江:すげえ!(22:54)

守安:無料掲載で単行本を買って貰うという例がデータとして実際に出はじめた。それで今は講談社でも色々な編集部さんから、「載せよう」という話が出ている。(22:56)

堀江:たとえば昔は「週刊少年ジャンプ」の発売日、電車にのるとそれを読んでいる人を何人か見かけた。今は一人もいない。皆、スマホをいじっている。恐らく紙の漫画雑誌なんて今は誰も電車内で読んでいないと思う。(23:07)

樹林:結局のところ、そこだ。今はホームのキヨスクに、たとえばガムを買う以外に近寄る人はいない。皆、ホームでスマホを見て、そのまま電車に乗っていく。だからスマホを本屋さんにするしかない。(23:22)

堀江:すごく分かるけれど、それなら何故出版社は雑誌を止めないのだろう。月刊誌では実売部数が2000〜3000部なんていうことも今は普通にあると聞く。大赤字だ。何故止めないのか。(23:47)

樹林:そこからヒット作が出る可能性がゼロじゃないからというのはある。「進撃の巨人」は初版がおよそ270万部だったけれど、掲載誌「別冊少年マガジン」の発行部数は連載当初、2〜3万だった。(24:22)

次はアニメを無料で見ることの出来る「アニメボックス」を考えている(守安)

堀江:少し話が変わるけれど、マンガボックスのダウンロードが最初に増えたきっかけはテレビCMをがんがん打っていたからという話を聞いたことがある。何故それほど数多くの出稿をしたのか。(25:34)

守安:気合を入れた事業だし、「最初は景気づけが必要」と(会場笑)。で、GRP(GrossRatingPoint)は当初想定していた数字の倍ぐらいになった。リリース時点ではすでにCMをつくりはじめていて、リリースの2週間ほど後に流しはじめた。(25:53)

堀江:普通、それほど早くCMを流すことはあるのか。(26:48)

守安:普通じゃないことをやらないといけないから。「comm」のときも早かったけれど、あのときはそれでもリリースのおよそ1ヶ月後だった。(26:52)

堀江:ちなみに僕は「comm」の失敗…、失敗という言葉を使ってしまうけれど、「comm」の失敗をかなりベンチマークしていた。サイバーエージェントと一緒にはじめた「7gogo」というサービスはそのベンチマークにも寄っている。ところで海外展開に関してはどんな感じのタイムラインを考えているのか。(27:11)

守安:まずは中国語圏と英語圏に注力していて、特に今は日本のコンテンツと親和性が高いということで中国を本命に考えている。ただ、難しい問題もある。たとえば日本人は雑誌に慣れているから週次更新の「1号、2号」という連載でも大抵の利用者は違和感なく読むことが出来る。ただ、中国では「何故“号”という概念なんだ?」となって、そこでまず受け入れられない。あと、「何故、『NARUTO-ナルト-』と『BLEACH』が載っていないんだ?」とも言われる。その二作品が載っている海賊版のアプリがたくさんあるから。その辺をどう対応していくかということとセットで考えつつ、なんとか海賊版に対応しながらオフィシャルなものをやっていくということになる。(27:39)

堀江:またテレビCMを大々的に打っていく?(28:37)

守安:CM出稿よりは海賊版対策。あと、特に日本以外では漫画よりアニメのほうが親和性は高いので、アニメを無料で見ることの出来る「アニメボックス」というのも考えている。(28:39)

堀江:そのお話をするのは今回が初めてだろうか。(28:56)

守安:たぶん、初めて。(28:58)

堀江:アニメと漫画を同じアプリでやるという感じだろうか。(29:14)

守安:基本的にはアプリを分けようと思う。そのうえで色々なものを試していくけれど、恐らく地上派のアニメよりも時間的に短いものが主流になっていくのかなと。(29:17)

堀江:それは日本でもやっていくのか。(29:31)

守安:日本でもやるけれど、海外だけのコンテンツ等、色々あると思う。(29:32)

堀江:バイラル展開についてはどうお考えだろう。一方的に漫画を流すだけでも良いコンテンツであればそれなりにDAUは維持出来ると思う。ただ、ソーシャルで共有する、あるいはバイラルでさらに広めるといったことは考えているのだろうか。(29:38)

守安:今でも、たとえば「先読み」というサービスがある。普通は週次更新で一週間待たなければいけないのだけれど、ツイッターやフェイスブックで共有すると次週のコンテンツを読むことが出来るというものだ。それでマンガボックス関連のツイート等が大きく広がっているので、その意味ではソーシャル的な共有も活用している。(30:05)

堀江:たしか、他では「作品画像のツイートOK」としたアプリもある。(30:27)

守安:今は作品単位やページ単位のシェアになる。(30:42)

堀江:「このコマがいい」みたいな。(30:48)

守安:そういったものが共有されると“引き”が強くなるので。(30:50)

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マンガボックスの仕事を通して日本の漫画をハリウッドにしたい(樹林)

堀江:ユーザー同士の交流についてはどうだろう。(30:53)

守安:ユーザー間交流ではないが、最近は「マンガボックスインディーズ」というものもはじめた。元々はプロのコンテンツだけを扱っていたけれど、個人にもプラットフォームを開放する。個人でも投稿出来るようにして、プロの作品もある一方で個人クリエイター作品も集まるという、裾野の広いプラットフォームにしたい。(30:59)

堀江:漫画を描いている人達を見てみると、今は格差というか、プロとアマチュアの差が縮まっていると感じる。音楽業界も同じだ。たとえばゴールデンボンバーはインディーズで、経費がかかっていない。彼らの場合は演奏メンバーもいないし。だから、先日も彼らのライブを観たのだけれど、「これ、めちゃくちゃ儲かってるな」と。1公演あたり、ざっと数千万円儲かっていると思う。漫画業界でも、たとえばコミックマーケットで書いている同人サークルのほうが稼いでいたりする。マンガボックスはそういう人達も取り込んでいくような感じだろうか。(31:26)

守安:玉石混合だけれども、現時点で、たとえば商業誌での連載や単行本出版の経験もある人がインディーズに投稿してくれたりしている。だからそもそも垣根がどこなのかという話もある。とにかく色々な方が参加してくださっていて、ユーザーのツイートを見ていると、「マンガボックス本体よりインディーズのほうが楽しいね」なんていう話もチラチラ出はじめている。(32:11)

堀江:掲載作家さんの契約形態はどうなっているのか。(32:29)

守安:基本的には商業誌と同様のモデルだ。(32:37)

堀江:ただ、圧倒的なダウンロード数があるから、「ここで連載したい」と思う人達が増えていくという。(32:39)

守安:インディーズでトップの人はマンガボックス本誌でも連載出来るという権利の設定もしているので、そのための登竜門的にチャレンジしている方もいる。(32:46)

堀江:正直、僕には「マンガボックスでは書かない」という作家の方々の意図が分からない。浦沢直樹さんや井上雄彦さんのように、たとえば「週刊Dモーニング」にすら漫画を掲載したくないという方々はいらっしゃる。何故なのだろう。(32:59)

樹林:雑誌育ちということも考えると、その感覚も分からなくはないけれど。(33:21)

堀江:僕はそういう作家さんを説得するメソッドを考えた。漫画家が描いた画は、雑誌ではノド側へ近づくに従って曲がって見える。「本来意図したコマの見え方と違うんじゃないか」と。「でもiPad等で見ると、きちんと原稿用紙のままに見ることが出来ますよ」と言えば…、少しは(会場笑)。(33:29)

樹林:やっぱり読むときの、なんというか、感覚がある。ぱらぱらとページをめくってどこかで「ぽん」と止まるような瞬間等を含めて、やはり漫画と紙の親和性は高いと思う。テキストに関して言えば将来的に紙は趣味のものになると思うけれど。(34:04)

堀江:僕は逆だと思っていた。僕がKindleやiPhoneで最も頻繁に読んでいるのは漫画だ。書籍をpdfで、たとえばスマートフォンを使って読むことはあまりない。(34:25)

樹林:その辺は変わっていくと思う。僕はDeNAと仕事をするという話になったとき、マンガボックスの仕事を通して日本の漫画をハリウッドにしたいと思った。(35:07)

堀江:なるほどね。まあ、なってきつつあるけれども。(35:21)

樹林:多言語で同時に展開出来るんだから。紙媒体は流通や向こうの出版社を通さないといけない訳で、それが大きな障壁だった。でも、それがなくなった。(35:27)

堀江:逆に言えば、日本の会社でもスマートフォンアプリをワールドワイドに展開出来る世の中になったからこそ、それが可能になったのだと思う。今、DeNAさんはガラケーの事業モデルが崩壊して大変だと思うけれど、そこで世界に向けて果敢に攻めていらっしゃる。スマートフォンアプリを開発している日本の他の会社にもそういう姿勢を見習って欲しいと思う。(35:40)

海賊版との戦いやマネタイズについてなどさらに深く掘り下げていく後編はこちら

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