海外と比較したうえで日本の良さを知ることが大切 「九州発・世界に躍進する企業を生み出すには」後編 

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民間の力で色々動かしていただきたい(会場)

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会場A:「上に政策あれば下に対策あり」という言葉が中国にあるが、日本の場合は前者が政治・行政のある首都圏で、そこから最も離れた九州で明治維新がスタートした。日本地図を逆さにして大陸側から見てみると、やはり九州はアジアに最も近い。そうした意味でも九州にはぜひ最先端のアンテナになっていただきたい。アメリカであればカリフォルニア、中国であれば上海のように、日本全体で行うことに躊躇があるものに次々挑戦する場になって貰いたいと思う。ただ、安倍政権の戦略特区はトップダウン型だ。九州にはそうした国の政策に頼ることなく、先ほどのお話にあったようなインターナショナルスクールや病院を民間の力でつくっていって欲しいとも考えている。(53:08)

また、移民の話も今後はクリティカルな議論になるだろう。雇いたくても若い人がいないという現象は、すでに首都圏のトラック業界や建設業界で生まれている。そう考えると、韓国・中国とは色々と難しい問題が今はあるけれども、たとえば台湾と九州を一緒と考えて自由に出入り出来るような場所をつくるという手もあると思う。それによって難しい問題もブレークスルー出来るかもしれない。いずれせよ、今日は九州の挑戦が日本の未来を握っているような感じがした。皆さんであれば出来る筈だから、ぜひ民間の力で色々動かしていただきたいと思う。(54:14)

杉本:私自身は雇われている身なので会社の利益を自分の意志だけで使う訳にはいかないが、もう少し利益が出ていればやっても良いかなと思う。いずれにせよ、「民間の力で」というお話のなかには、お金の要素よりもここで暮らす人々の感覚という要素のほうが大きいのではないかと思った。よその国の方がたくさん来るということは、自分の家の隣に外国人が住むことになるかもしれないということだ。それを受け入れることが出来るかどうか。それが一番大きいと感じる。(55:20)

会場A:シンガポールの街にはさまざまな肌の色や髪の色をした方々がそこらじゅうにいる。九州もそうなるだろうし、そうでなければ駄目だとも思う。その危機感を共有出来るかどうかが鍵ではないか。いずれにせよ、霞が関や首都圏よりも九州のほうがそれを進める力は大きいと思う。「隣にどこの国の人が来るか分からない。そんなのは嫌だ」と言うのは、日本が茹で蛙のまま落ちていく道だと考えている。(56:41)

麻生:すごく共感する。私はその道筋として二通りあると思う。一つは海外の色々な地域にいらっしゃる方々が日本なり九州なりに来て、ごっちゃになるということ。で、もう一つは先ほど申しあげた通り、僕らが外に出ていくことだ。最近は華僑に対して倭僑という言葉も出てきている。日本は現時点では大国と言われているし、中国もそれを認めるような発言をしている。まあ、日本人が思っている以上に大国だ。ただ、世界の歴史を見てみると、かつて大国であった国が大国でなくなるときはかなりの確率で国体が維持出来なくなり、違うものになっていく。民族的に新しい国が生まれるときもあれば、国自体が変わってしまうこともある。数少ない例外がイギリスで、彼らはアメリカと近いということもあって大国とは違う形で維持されている部分があると思う。ただ、それでもポジションは非常に低くなっていく。(57:21)

何を言いたいかというと、日本が大国であることによって僕らが得ている恩恵は非常に大きいということだ。これが失われるというのは、「日本のスイス化論」といったような甘っちょろい話ではないと思う。筑豊にも華やかなりし時代はあり、当時は飯塚市の人口も24万人だった。ところが今は市町村合併でも10万人。それがなければ7〜8万だ。衰退がどれほど人の人生を不幸ものにするかということを、本当に分かったうえで衰退への道を歩もうとしているのか。僕は非常に疑問視している。「いざそうなればガタガタ言うのではないかな」と。(58:54)

実際に不平を言うか否かはさておき、とにかく今は志ある人が立たなければいけないし、それは外から色々な人を受け入れることでもある。気持ち良くなくても、受け入れる。あるいは気持ちの良い現在の居場所から、自分達が海外へ打って出ていく。その両方があると思う。日本には昔からまれびと信仰や来訪心という言葉があり、外から来てくれる人はありがたいという気持ちを持っていた。「色々なことをもたらしてくれる」と。僕はこれ、きっと海沿いの地域で生まれた言葉だと思う。九州はそうした受け入れる力と外に出る力の両方を素地として持っているのだろうし、ぜひそこに期待して、田嶋先生がおっしゃったようなことが九州で実践出来たらいいなと思う。(59:51)

榎本:特区指定を目指すなら、「ここを特区にすれば日本で最も早く新しい成長モデルを見せてくれる」と期待されるものでなければいけないと私も思うし、福岡はそれが出来る都市だと信じている。あと、移民に関しては一つ、広島にあるツネイシホールディングスという会社の事例をご紹介したい。そこの神原(宏達氏・代表取締役副社長)さんという方を僕は尊敬している。同社造船工場がある村の住民はかなりの割合でフィリピンの方々だ。造船所が研修制度か何かで受け入れているから。その村では普通の定食屋に行ってもお客さんのおよそ9割がフィリピンの方といった状態だ。ただ、それで違和感がない。だから、そこで新しい村の姿が出来ているところを見た僕自身としては恐れを抱いていない。とにかく民間がまず頑張らなければ駄目というのはその通りだし、九州福岡の若手ビジネスマンである我々は小さくまとまらないよう互いに切磋琢磨しなければいけない。そういう意味でも、民間は先人の活力というか度量を忘れずに頑張っていかなければいけないと感じる。(01:01:16)

波頭:移民に関しては私の感想も榎本さんに近い。たとえば群馬県太田市の自動車工場やエレクトロニクス関連工場にもブラジル人がすごく多いし、川崎にもブラジル人のコミュニティなどがあったりする。私としては、日本人というのはなし崩し的に受け入れると意外と上手く調和するし、そこに新しい街が出来ると思う。むしろ政治論議で移民の話をするとイデオロギッシュになってしまってスムーズに進まなくなると感じるが、実質的には移民の街というのもすでに出来ている。従って、日本人が持つ意識をグローバル化・国際化させていくためにも、国際交流のためにも、特区的に事実をどんどん積み上げていけば良いのではないかなと、私は考えている。(01:02:54)

日本を支えていくようなマインドセットを持つことが出来るのか(会場)

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会場B:たとえばトヨタさんはインフラがあったからそこで創業をした訳ではまったくないと思う。今回のテーマである「世界へ躍進する企業を九州から」という意味で言うと、結局、裏のテーマである精神論に行き着くと感じる。では、どのようにすれば我々世代で産業をつくって日本を支えていくようなマインドセットを持つことが出来るのか。私の親戚も飯塚にいるのでたまに行くのだが、やはり、かなり厳しい。ただ、福岡でちゃらんぽらんに生活している人は、それが10〜20年後は他人事でなくなることにほとんど気付いていない。逆に言うと、どうすればその状況をこれから頑張らなければいけない世代が早く認識するとお考えだろうか。皆で飯塚に行って何か目にすれば分かるのか、あるいは時が来るまで我々は手を打つことが出来ないのか。恐らくその辺が根本的な問題という気がする。(01:04:35)

榎本:ぬるま湯であることを自覚して危機感を絶やさないために私自身が努力していることは、東京やシンガポールやニューヨークといった、世界の成長している先進都市を年に一度ほど訪れるということだ。その様子を目の当たりにして、そして帰国してから福岡の姿を見る。それで、「たしかに食べ物は美味しいし温泉は気持ちが良いけど…、これで良いのか?」といったことをいつも確認するようにしている。(01:06:09)

麻生:お話にあった通り、親戚や友人がいれば受信する感度もまったく異なる。そうであれば北九州へ行っても、あるいは極端な話、たとえば東北へ行って自分が関わった人々の何が変わってしまったのかを目の当たりにすれば、それを自分のエネルギーに変えるようなことが出来ると思う。どのようにすればそういったことを伝えることが出来るのか。それが一つのポイントではないか。(01:06:56)

それと九州から世界へ躍進するということも踏まえ、私自身が今やっていることを一つご紹介したい。日本は基本的にモノリンガルの国だ。アジアのほとんどの国において、ある程度の気概を持っている方はバイリンガル以上。ところが日本では本来責任を持つべき人達のあいだでもモノリンガルの比率が非常に高い。これを変えていくべきだと考えているし、「そうなりたい」と考える人間にはなるべくモノリンガルから脱皮する機会を与えたい。それで私の会社では一昨年から数千万を投資し、無料の英語教室をつくった。強制ではなく、とにかく受けたい人に提供するということだ。私としては、国や自治体が同様に、「英語を勉強したい」「他の言語を勉強したい」と考える人にはその場を提供するということがもっとあって良いのではないかと思う。(01:08:03)

杉山:日本は非常に良い国だ。グローバルで見るとすべてのことが恵まれていると思うし、その中しか知らないと危機感を持つのはすごく難しい。従って、麻生さんが言われたように英語を勉強する、あるいは海外のことを自分で勉強するなどして、何らかの“道具”を身に付けるべきだと思う。また、周囲はそういうことを色々な形で支援していくべきだ。学生時代等、出来るだけ若いうちから日本以外の国を見て、日本と比較してどうなのかということを知ることは非常に大事だと思う。当社でもそんなことを考え、去年から宮若市と宗像市との3者共同で、高校生の子達をカナダへ送るという研修をはじめた。それで行って来た若者達はやはりすごく成長している。そういったことをやっていくのが大事だと思う。(01:09:44)

波頭:最後の質問は奥深く、クリアに答えるのが難しいご質問だったと思う。ただ、いずれにせよ杉山さんのお答えにもあった通りだ。企業でも同じだが、少しずつ衰退していくという状況下、明確な危機感を持つ必要がある。ただ、1〜2人のリーダーや感受性の高い先鋭的な人達だけでなく、コミュニティや組織集団として大きな危機感を持つためにはかなりタンジブルなインシデントが必要だ。たとえば大金を失うといった、日常活に直接ダメージとなるようなことがないとなかなか難しい。従って、九州を新しい方向へ転換させるための危機感を醸成するのであれば、政策的な誘導やイベントによって、ソーシャルノームに働きかけることも重要ではないかと思う。(01:11:29)

ただ、危機感を煽るほかにも企業や地域を新しい方向へ導く手立てはあると思う。「こういう世の中になればいいよね」といったポジティブなアナウンスやイメージの共有も、ときには有効だろう。今日は壮大でクリアな答え出しにくいテーマだったと思うが、御三方が非常に面白いアイディアとユニークなビジョンを示してくださったため、私も大変勉強になった。皆さんも今後の九州をどのように発展させていくか、あるいはそのなかで自分の企業をどのように導いていくかという点について色々と参考になったのではないかと思う。以上で本セッションを締めたいと思う。ご静聴、ありがとうございました(会場拍手)。(01:12:43)

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