麻生太郎氏×堀義人氏 「“とてつもない日本”を、九州から」 

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元気がないと何も出来ない

麻生太郎氏(以下、敬称略):G8やG20やF1ってのは聞いたことがあったんだけれど(会場笑)、G1というのは聞いたことがなかった。「なんですかそれ?」と聞いたんだけれども、高島(宗一郎氏・福岡)市長さんの、例の上手いプレゼンテーションになんとなくのせられて、ここに連れて来られてしまった。(00:26)

今日は「とてつもない日本」(新潮社)という本に書いたような話をして欲しいとのことだが、あれを書いたのは7〜8年前だったと記憶している。その頃と今とで何が違っているか。間違いなくこの1年数ヶ月で、アベノミクスによって日本人が抱えていた、なにかこう…、沈鬱、憂鬱、抑圧した雲が晴れた感じに変わった。「明るくなりそうだな」という雰囲気が出てきた。これは間違いなく、政治家や政治体制が変わると世の中がこれだけ変わるという、政治を舐めたらえらいことになるという良い例だ。それを3年3ヶ月のあいだ、皆、月謝を払って覚えたんですよ(会場笑)。ね?会場にだって民主党が良いと思って入れたの、たくさんいるだろ?(会場笑)いなきゃ自民党はあんなに負ける訳ねえんだから。で、そう思って3年3ヶ月やらせてみたら、「こらぁロクなことがないな」と。「やっぱりきちんとしたのを選ばにゃいかん」という話になった。結果として現政権となって1年2ヶ月ほどのなかで法律が変わり、ルールが変わり、税制が変わり、政策が変わり、世の中が大きく変わってきたのだと思う。(01:10)

2012年12月16日の選挙にあたって、安倍総裁からは「日本を取り戻す」ということを訴えさせて貰った。日本の何を取り戻すのかと言えば、はっきりしている。日本の活力、活気、元気を取り戻すというのが一番のミソだ。元気がないと何も出来ない。健康でも元気じゃないやつはいる。だから健康なんてあまりアテにしないほうがいい。健康は大事だけれども、健康でも元気がなかったらなんのための健康か分からない。だから元気が出てこないといかんし、元気がありさえすれば少々の病気でも治っちゃったりする。元気というのはすごく大事だと思う。(02:55)

世界中が認めているこの国の良さを一番分かっていないのは日本人

「とてつもない日本」という話についてだが、今はイノベーションとか…、学者はやたらと難しい言葉を、イノベーションや横断技術といった言葉がよく使われる。そこで、ぜひ皆さんに思い出して貰いたいことがある。例を二つひく。(03:42)

明治時代に設立された大阪紡績という会社がある。今は東洋紡という名前に変わっていると思うが、この会社は当時最も優れていたと僕は思っている。何故か。当時の大阪紡績は糸を紡いで綿糸をつくっていた。これは明治日本にとって唯一の輸出産業に近い状態だった時代だが、工場を動かしていたのは昼間だ。その時代に大阪紡績は、たしか明治12年にライトが発明されたのだが、その後、工場内に電灯を採り入れ、使いはじめた。(04:12)

世界で最初だ。それまでは皆、昼間にだけ操業していた。当時の一般的な灯りは石油や菜種油を使ったランプだったが、紡績会社の工場内で綿糸に火が点いたらアウト。だから当然、夜はやらない。しかし大阪紡績は工場内に電灯を入れて生産性を倍に高めた。昼夜二交替制を世界で最初にやったのは大阪紡績だ。これ、誰が開発したのか。皆、エジソンとか有名な人の話ばかりして、ノーベル賞が云々といったような話をする。けれども、電灯を使って昼夜二交代制をやるという、今であれば当たり前のことを世界で最初にやってのけたのは大阪紡績の一社員だ。この人、高学歴だった筈はないね(会場笑)。学歴を調べたことはないけど。これが一つの例だ。(05:08)

例をもう一つ。昭和39年、東京オリンピックの開催と同時に新幹線が開業して約60年経つが、いまだかって人身事故はゼロ。それがあの会社のすごいところだ。これを台湾へ売り込みに行く等、色々やらされたので覚えたのだが、新幹線の何がすごいか。時間通りに動かすことが出来るのは、運転士が偉いからか、時間通りに廻す車掌が偉いからか、保線士が偉いから、あるいは機械のメンテナンスをする人間が偉いからか。誰が偉いのか分からない。調べてみると、あれ、皆で動かしているんだな。皆が自分の仕事をきっちりこなしているところがみそだ。(06:21)

「東京駅へ着きました」となれば、アロハシャツを着たおばさん達が車内に入ってすべて綺麗にしていく。アロハが似合うかどうかは別の話(会場笑)。間違いなく確実に6分間ですべて掃除する。あれは客も偉いね。「倒したシートを元に戻してください」なんて言われるとすべて元に戻す。中国であれが出来たら偉い。あの通りに動くかどうか、ぜひ試してみて貰いたい。ちらかし放題だから6分で片付くことはないと思うし、倒したシートを元に戻す客もほとんどいないと思う。こちらはそれを全部やる。乗っている客も偉い。皆であれだけのものをつくりあげ、今日まで続いているのだと思う。(07:45)

「とてつもない日本」ということで僕が言いたいのは、間違いなく世界中が認めているこの国のそういう良さを一番分かっていないのが日本人ということだ。それを教えてくれたのが「COOLJAPAN〜発掘!かっこいいニッポン〜」というNHK番組でもある。僕も「出ろ」とかなんとか言われて、「僕はクールでもなんでもないし、付き合う気はありませんからお断りします」と言ったけれども。僕はテレビ番組というのは底が浅いものが多いからあまり出演したくなくて、ほとんど出ないように努めているから。(08:42)

とにかく、その意味でぜひ皆さん方にも、この九州で自分たちが持っている強みを考えてみて欲しい。地理的には、これから飛躍が期待されるアジアやアフリカに日本のなかでは最も近い訳だ。だからこそ高島宗一郎さんという人が3年少々前、現職市長に対抗していきなり出てきて、福岡市出身でもないやつが(会場笑)、面白いことを言った。あのときは新人7人で相手は現職2期目よ?誰が見たって向こうが勝つと思った。けれども分からないもので、開けてびっくり玉手箱。6万7000票も差をつけてさ、圧勝したじゃない。掲げたネタが良かったな。「アジアのリーダー都市になります」。僕も色々な人間に「出馬したい」ということで支援を頼まれたことはあるけれど、これは法螺として最もでかい法螺だった(会場笑)。ありゃあ、ウケた。「この法螺には乗ってもいいな」と思って、選対顧問のようなものもやらせていただいた。おかげで勝たせていただいて、今日のような会にも呼んでいただいた。これでぴったし10分(会場拍手)。(09:28)

「世界中がそうだから、きっと日本もそう」、ではない

堀義人氏(以下、敬称略):今日は「とてつもない日本」、「日本を取り戻す」といったお話に加えて、チームジャパンというお話を新幹線の例なども交えてお話しいただいた。私としては、「日本を取り戻す」という考え方のなかで最も大切なのが日本人としての誇りだと思っている。ソチオリンピックでは羽生結弦選手が金メダルを、葛西紀明選手が銀メダルを獲得した。誇りに思う。ただ、そうした気持ちが日本人はどうも弱いのではないかとも思っている。私はダボス会議等でスピーチをする際、日本人のアイデンティティや強みといったものを相当強く意識して戦おうと思っているが、そうしたアイデンティティや強みについてはどのようにお考えだろうか。(11:07)

麻生:英語が出来てスープを啜らずにめしが食えるようになったら国際人になったという思い違いをしている人が世の中には多い。けれども語学が出来るなんていうことはそれほど立派なことでもなく、頭の良さに関係ない。慣れだ。では世界に出て行くうえで日本人として何を頭の中に入れておかなければいけないかと言えば、はっきりしている。今、世界には少なくとも193の国があるけれども、1000年以上の長きに渡り同じ場所で、同じ日本として、同じ皇室を戴いて、同じ言語を喋り続けている国は日本以外に一つもない。世界で最も古い国はどこかと言えば、誰がなんと言っても日本だ。我が国には日本書記という中国語で書かれた歴史書と、古事記という日本語で書かれた歴史書が、5世紀にはすでに有史として残っている。それよりも古いものを持っている国は世界に二つとない。日本以外で古い国と言えば恐らく10世紀ぐらいから続くデンマークぐらいだろうが、それ以降はないのではないか。(12:10)

だから今でも、少し勉強すれば誰でも源氏物語を読むことが出来る。たとえば英語の古語で書かれた本を読むことの出来るイギリス人は、よほど勉強している人でもない限りほとんどいないと思う。そういうものを日本はこれほどきちんと持ち続けることが出来ている訳だ。皇紀で言えば今は2674年になるが、5世紀から数えてみたってちょっとしたものだ。とにかくそうした歴史があると言えば、世界ではそれだけで皆が「へえ」となる。一発で話が通じると思う。そうした歴史のなかで、資源もなく国土面積で言えば世界の0.3%ほどしかない極東の島でGDPが世界2位となったと言えば、ちょっとしたものではないか。いくらでも例を挙げることは出来るけれども、とにかく最も大事に持っていなければいけないのはそういうところだと思う。(14:00)

堀:今回の地域会議では人口減に関する問題提起が数多く行われた。海外の人々と話をしていても、人口減が日本の抱える最も大きな問題の一つであると認識しているように感じる。これはどのように変えていくべきだとお考えだろう。今のお話も併せて「教育をこのように変えていきたい」といったお話があれば、お伺いしたい。(15:29)

麻生:仕事が安定しないと結婚しない。結婚しないと子供を産まない。一番分かり易い例は宮若市(旧宮田町域)にあるトヨタ自動車九州(以下、トヨタ)の例だ。政調会長をやる前の話だったと思うが、「社員を正規で雇って欲しい」という旧宮田町の要望を受け、トヨタは利益が出はじめたのに合わせて社員を正規で雇った。それで宮若市では結婚式がすごく増えたというから、市長を呼んで、「保育園の陳情でもしたほうがよかないか?今、出生率は日本一じゃないか?」と言った。事実、日本一になったんだけれども。やはり正規できちんと雇われるという話にならないと、なかなか職も安定しない。嫁に出す親も、「お前はトヨタの社員か?日雇いか?」と聞いてくるだろう。それで正規ということになれば、「まあ、顔は気に入らねえけど仕方がねえ」という話になるのかもしらん。(15:55)

いずれにせよ、たとえば旧約聖書では、「神との契約を破ったイブに対して神が与え給うし罰が、子供を産み、育てること」という話になっている。それが、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の経典だ。日本はそういうものとまったく違う。ぜひ日本という国の生い立ちを考えて欲しい。「世界中がそうだから、きっと日本もそう」ではなく、元の元が違うということもぜひ頭に入れておいていただきたいと思う。(17:22)

技術革新し続けることが大切、それを支える法律も準備する

会場(徳田和嘉子氏・CROSSFM代表取締役社長):成長戦略という視点で、私達世代が今からどのようなことを見据えていくべきだろうか。たとえば少子化問題のその先まで見据えて、今から何を準備しておくべきだとお考えだろうか。(18:33)

麻生:18から19世紀にかけ、産業革命や重商主義を経て巨万の富を得たイギリスが次に何をしたかと言えば、ロイズ銀行等に代表されるファイナンスに進んだ。あるいはアメリカ。20世紀に入り、フォード・モーター、USスチール、ゼネラルモーターズ、ウェスチングハウス・エレクトリックといった企業とともに巨大な産業をつくりあげて、世界GDPの6〜7割を持つほどのものになったのちに何をしたか。リーマン・ブラザーズ、ゴールドマン・サックス証券、モルガン・スタンレーに代表されるような、グリーディーなファイナンスに進んだじゃない。それでサブプライムローンなる怪しげなものを世界に売り飛ばし、世界中が迷惑した訳よ。「日本はあまり引っかからなかった。偉かった」なんていう言う人はいるけれど、違う。日本の銀行の頭取は英語が出来なかったから引っかからなかっただけ(会場笑)。それだけですよ、僕に言わせたら。こういうことを言うから銀行に嫌われるのだけれど、僕は今でも事実だと思う。(19:01)

ただ、とにかく結果としては引っかからなかった。それで今、日本は猛烈な勢いで金利が下がっていて、もう0.6も下回って0.5だ。世の中、おかしなことになっている。かつて250兆だった借金は1000兆に膨れあがり、約500兆だったGDPは468兆ほどに下がった。GDPは今戻っているが。とにかく、早い話、借金が4倍になった。ところが借金が250兆だったときの金利はいくらだったか。当時は武村正義という人がいて…、まだ生きているかな(会場笑)、彼が大蔵大臣をやっていた当時の金利は6〜7%だった。で、今は借金がその4倍になっているにも関わらず金利は1/10の0.6%。我々が習った経済学であれば、少なくとも金利は4倍になってなければおかしいのに。こうなると、皆何を考えるようになるか。「1%で借りてきて誰かに4%で貸せば、俺は3%儲かるな」なんて考えるようになる。金融なんかやってきた人間は、すぐそちらに頭が走るんだと思うね。かつて、他の国はそうだった。(20:33)

日本は間違いなく、アベノミクスが数年で成功したあとに金融が力を持つ。そのときにそちらへ走るのか。僕は、日本という国がそこでもう一度、きっちり考え直さなければいけないと思っている。幸いにして、まだ日本では第二次産業の就業者が人口比で28%ほど残っている。第一次産業はおよそ5%に減ったし、第三次産業は70数%にまで増えているけれど、第二次産業が20数%残っている。これが最大の強みだ。その人達が、皆できちんとやるというものづくりを続けていくことが大事だ。(22:11)

そこで技術革新というものをやり続けていかなければいけない。イギリスは人口が少ないからそこそこいくことが出来たけれども、日本は人口が多いし、かつアメリカのような資源もない。金融だけで食えるということにはならないだろう。金融で食えるのは一部だ。残りの大多数がきちんと生活できるようにするため、技術を育成し、シーズを見つけ続けていく。第二次産業をやり続けていくという決意が必要なのであって、私どもは今回の編成でもそういったものに関してしっかり予算をつける。「設備投資を今行っていただければ、減価償却資産の即時償却を認めます」というような法律もつくらせていただている。とにかくそういった方向でいき続けていくことだ。(22:57)

特に北九州にはものすごい技術がある。上下水道をやっている水道局というものがあるでしょ?そうした水道局の、すごい技術で水を濾過して綺麗にする装置の部品なんていうのは、北九州にいくらでもある。ところがそうした水道局のシステムをトータルで、たとえば「シンガポールに売りましょう」という話になっていない。東京都なんて恐らく世界最大の水道会社になると思うが、そういう気がまったくない。理由は簡単だ。自治省所管の福岡市、自治省所管の北九州市という風に、皆の頭が超ドメスティック、ウルトラドメスティックに出来ている。水道局の施設やシステムそのものを海外に輸出して金を稼ごうなんていう気は、福岡県にも東京都にもまったくないね。どうして、「ウォシュレット」が世界で広まらないかなんていうことを考えたこともないんですよ、あの人達は。「ウォシュレット」なんて海外で見たことはないでしょ?アメリカにもない。水が悪いからだ。水が悪いとどうなるかは、想像に任せる(会場笑)。(24:04)

堀:技術革新を起こし続けながらチームジャパンで頑張っていくというお話だったと思う。僕らとしても今後、現政権を精一杯支えながら日本を良くするという方向で頑張っていきたい。麻生さん、今日は本当にありがとうございました(会場拍手)。(25:48)

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