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世耕・官房副長官×高島・福岡市長×古川・佐賀県知事「日本の発展、九州の発展〜官邸と地域の新たなコラボレーション〜」 前編

投稿日:2014/04/16更新日:2021/11/29

「地域」から同時多発的に日本をより良くしていこう(堀)

堀義人氏(以下、敬称略):G1サミット初の地域会議が福岡で開催されることを大変嬉しく思う。G1サミットを始めた理由はたった一つ。日本を良くするためだ。僕は「どうすれば日本が良くなるか」を考え続けた結果、一番良い方法は一番簡単な方法になると考えた。日本を良くするリーダーを支える。安倍総理、世耕さん、小野寺(五典氏・防衛大臣)さん、林(芳正氏・農林水産大臣)さん等々、今は多くの仲間が政権でも活躍しているが、彼らを支える訳だ。また、地域では古川知事や高島市長のような方々を、そして財界ではベンチャーの旗手となる方々を支え、マルチなネットワークをつくる。当然、東京オリンピック開催でご活躍していくような方々も支えていく。(00:24)

また、文化や経済あるいは科学技術といった各分野で大いに議論を行って、「どうすれば日本が良くなるのか」というビジョンを描く目的もある。それをネットでオープンに発信し、可能な限り多くの人に伝えることができたら皆が「思想から行動へ」を実現できると考えた。批判ばかりでは何も生まれない。提案しながら、僕らが日本を変える自覚を持って行動する。そう考えてG1を始めた。(01:35)

今回、そうしたG1サミットの一つとして地域会議を始めた。これまでも経営者による「G1経営者会議」、英語で行われる「G1GlobalConference」、若手による「G1新世代リーダーズサミット」、ベンチャーによる「G1ベンチャー」(2014年4月29日に開催)と、さまざまな会議を行っているが、「地域で開催して欲しい」という要望も強くなってきていた。G1では「日本の政治を支える次の卵を育てる」という目的を持った「G1東松龍盛塾」というものも開催している。これは年に3回行われるが、そのうち1回を地域で行い、「それに合わせて地域会議も開催しよう」と。それで今年始まったのがG1地域会議だ。(02:17)

目的は、地域の人々とそれ以外の人々でコラボレーションを行うこと。従って、登壇者も参加者も半分ずつお招きした。今回は地域の方々を80名、地域以外の方々を60名ご招待したが、G1参加者の重複を考えるとだいたい半分ずつになると思う。そうして地域から同時多発的に日本を変えていくという営みを、ここ福岡の地からスタートさせようと考えた。(03:22)

この会議に招待した皆様はボードメンバーで厳選させていただいた方々だが、僕自身は会場にいるそうした方々全員とお話ししたいと思っている。カンファレンスというと参加して終わりということも多いが、G1はコミュニティと仲間をつくる場だ。僕は全員に声を掛け、全員のお名前と顔を一致させることも目的にしている。僕から積極的に声をお掛けするので、ぜひ交流していただきたい。(03:57)

なお、最初の全体会となる本セッションだが、世耕さんから今朝、大雪でフライトがなくなって出席できなくなってしまったとのお電話があった。そこで構成を多少変更して急遽、古川知事にご登壇いただき、世耕さんとは最後の15分間、電話で結びたい。それまで壇上の議論をツイッターで発信し、世耕さんにはそれを読んでいただいたうえで議論に入っていただこう。では、官邸と地域のコラボレーション、そして九州あるいは日本がどういった方向に進んでいくかということをテーマに議論を進めよう。まずは高島市長。今回の地域会議開催にあたってホスト役としてすべてを企画してくださった高島市長から、九州のビジョンを語っていただきたい(会場拍手)。(04:36)

チャレンジ精神とベンチャー精神で地域を変える(高島)

2896 1 高島 宗一郎氏

高島宗一郎氏(以下、敬称略):以前から古川知事をはじめ私達九州・沖縄のメンバーは、「G1地域会議を行うのならぜひ私達の地域で」と、名乗りを挙げていた。九州でほぼ同世代のリーダーである皆様と明日の九州・地域・日本・世界について語り合うことができるということで、大変な意義を感じている。九州のメンバーとG1サミットのメンバーで互いに切磋琢磨するためにも、福岡市として絶対に本会議を成功させるつもりで準備を進めてきた。本セッションの会場であるここ福岡市博物館でコンベンションが開催されるのは二回目だ。一回目は2000年に開催された九州・沖縄サミットの蔵相会合だった。そうした会場で、皆様へのおもてなしとプログラムの両方にご満足いただけるよう、最後まで頑張りたい。(06:34)

3年少し前の市長就任以来、私は個人としても市長としても成長させていただけるような数多くの機会をいただいている。ただ、G1サミットはそのなかでも最も刺激があって、最も成長させてくれる場と言える。強烈なライバル達に出会えるからだ。私は、誰から何を習うよりもライバルの存在が自分を最も成長させてくれると思う。ただ、普段の活動範囲では新しい出会いを求めることがなかなかできず、同業種でも改革的で命をかるほどチャレンジングな仲間に出会える機会は少ない。(08:37)

しかしG1サミットに参加させていただいてからは、日本を良くするという真の改革心を持った数多くの首長さんとお会いすることができて、大変な刺激を受けている。それまでも自分自身ではスピード感とチャレンジ精神を持っているほうだと思っていたが、古川知事や僕と同い年の鈴木英敬三重県知事、あるいは樋渡(啓祐)武雄市長は皆、官僚出身だ。官僚出身でかつチャレンジ精神を持っているとなると、もう鬼に金棒と言える。行政を動かすための仕組みを熟知する人がチャレンジ精神とベンチャー精神を持って取り組むと、その地域は本当に変わっていく。(09:37)

千葉の熊谷(俊人)市長も同様だ。政令指定都市の市長としては最も若く、私よりも若い。熊谷市長はデータ通信関係の仕事をなさっていた方だが、ICTと行政というテーマでご自身が培ってきた経験を存分に活かしてイノベーションを起こし、大変チャレンジングな取り組みをなさっている。ライバルと言ってはおこがましいが、そうした方々と出会うことで私自身もさらに高みを目指して勉強しなければいけない気持ちにさせられるし、政治家としても人間としても大きく成長させていただいている。(10:31)

当然、G1サミットには同業者だけでなく、芸術、政治、行政、ベンチャー、科学、数学、哲学、等々…、あらゆるジャンルのトップリーダーとネクストリーダーが集まる。そこで一つのテーマに関して色々な角度から、しかもカジュアルに議論が行われる訳だ。これは参加者にとってだけでなく、日本にとっても大きな可能性になると感じる。特に今回の会議では、「九州から見る日本」と「日本から見る九州」の両面から、九州のメンバーとG1メンバーが刺激し合うことで非常に大きなパワーが生まれると思う。「批判よりも提案を」、「思想より行動を」、そして「リーダーとしての自覚を」というG1精神に則って、それぞれが何を得るかという部分で大いに期待したい。(11:39)

人口増、多くの学生、アジアの玄関口、高い開業率が示す福岡の可能性(高島)

高島:さて、今日はまず、ここ福岡がどのような場所かというお話を少しさせていただきたい。まず福岡の大きな特徴として、今後20年にわたって人口増が予測されている、日本でも大変珍しい街である点が挙げられる。現在、福岡市の人口は毎年およそ1万3000人増えている。人口は去年150万を突破したが、2月1日時点で151万人になった。で、その内訳を見てみると15〜29歳という若い世代の比率が日本で最も高い。一番の理由は学生が多いことだ。学生の数と割合は京都に次いで全国2番目で、さらにその内訳を見てみると理工系学生が多いことも大きな特徴となっている。また、留学生も非常に多い。これはアジアに極めて近いという地の利だ。(12:56)

福岡あるいは九州は、「アジアの玄関口」とよく言われるが、これは具体的にどういうことか。皆様は港というと横浜や神戸をイメージするかもしれないが、実際は博多港が外国航路船舶乗降人員において21年連続日本一となっている。また、福岡空港は現在、海外19都市とも直接結ばれている。遠くは欧州アムステルダムから、そしてアジア諸国には毎日飛んでいる。先日は台湾に行ってきたが、福岡からは2時間少しだ。私達にとっては東京とほぼ変わらない。福岡からであれば、東京へ行くのも上海や青島へ行くのも同じだ。ソウルや釜山は東京よりよほど近い。台湾の同じ場所には東京から来ていた人もいたが、彼らは2時間で着くことができないし、「しかも成田-都内でさらに2時間近くかかる」と言っていた。福岡空港には市内からタクシーで行けば10〜20分ほどで着く。また、空港自体も成田ほど混んでいないし、さほど広くないこともあってすぐに乗降できる。従って、東京のほうが国際都市に見えるかもしれないが、「東京の方々は海外へのアクセスに関して不便な思いをしているな」ということは、よく感じている。(14:16)

福岡の特徴をもう一つ挙げると、開業率が日本で最も高い大都市という点がある。これには色々な要素がある。理工系学生が多いのも一つの要素だが、オフィス賃料が東京やシンガポールと比べて格段に安いということもある。(16:43)

次に数字のお話をしたい。福岡市の市税収入は昨年に比べて72億円増加した。今日は朝から羽生選手がソチ五輪で金メダル獲得というニュースも入ってきたが、前回のバンクーバー五輪の年はリーマン・ショック後で、市税収入はピーク時を117億円下回っていた。ただ、平成26年度の市税収入は福岡市はじまって以来の2759億円に達した。リーマン・ショック後の平成21年度決算と比較しても、全国の政令市で最も高い4.4%の伸び率となった。(17:13)

何故この4年間でこれほど市税収入が伸びたかというと、福岡市の成長戦略が大きい。「観光集客」、「企業誘致」、「子育て施策の充実」の3点だ。まず観光集客については、とにかく福岡市民の9割は第3次産業に従事しているから、そうした方々に向けて「交流人口を増やすことが一番の成長戦略ですよ」と。コマーシャル等あらゆる手段を使って訴えていった。そうして皆で思いを一つにして集客していったことで、年間の入り込み観光客数も4年前と比較して126万人増えた。また、企業誘致によってこの3年間で企業数も126社増え、1万130人の新規雇用も生まれている。(18:20)

そうした背景のなかで、今日は「地方にとっての成長戦略」、そして「国にとっての成長戦略」という視点でお話をしたいと思っていた。福岡市は地方として明確な成長戦略を立てたうえでチャレンジしている。ただ、地方と国とのあいだでは成長戦略の整合も必要になる。国の強みは税制等の大きな制度をつくることができる点だが、国は現場を持っていない。実際にやるプレーヤーがいなければ何も動かないし、現場と乖離した成長戦略をつくっても現場がなければ意味はない。(19:33)

一方、地方の基礎自治体行政は現場を持っているので具体的施策を細やかに打つことができるが、たとえば「実効税率が高過ぎます」と言ってもそれを変えることはできない。雇用条件の明確化による雇用の流動化といったこともやりづらい。従って、そうした国と地方の強みと弱みを、どのように一体化させながら成長戦略を実現させるのか。福岡市ではまさに今、産学官民が一体となったオール福岡体制で、「福岡地域戦略推進協議会(FDC)」というものをつくり、そこで成長政略の実現を目指している。そんな風にして、官・民・地方が得意とするものをどのようにベストミックスさせ、どのように連携しながら日本を力強く成長に導くことができるのか。今日はぜひ後ほど、世耕さんも交えてお話しできればと思う。(会場拍手)。(20:29)

交わした言葉の数だけ何かを持って帰れるのが「G1」の良さ(古川)

2896 2 古川 康氏

古川康氏(以下、敬称略):今日は世耕さんが会場へ来ることができず、参加者のなかで世耕さんに最も顔が似ている私が選ばれた(会場笑)。皆様はG1サミットに関して漠然としたイメージをお持ちかもしれないが、この会場にいらっしゃるのは誰かが推薦してメンバーになった方だけだ。「興味があるから自分も」と思って参加できている人は一人もいない。お仲間なり何なり、誰かが「この人はぜひ仲間に入れたい」と思った方であり、そしてご自身でも「そうかな」と思っていらした人達ばかりになる。(21:57)

だから、受動的に話を聞くだけの時間にするのは勿体ない。今はたまたま私達が壇上にいるものの、誰が壇上に上がってもおかしくないのがG1だ。どうぞ自由闊達に参加していただきたい。たとえば食事の際も、できれば会ったことがない人や名刺交換したことのない人の隣に座って話をしてみて欲しい。わずか二日間ではあるが、人と知り合い、その人が良い人か否かを判断するには恐らく十分な時間だと思う。交わした言葉の数だけ間違いなく何か持って帰ることができるという点も、これまで本サミットに3回参加した私の経験から申しあげることができる。(23:15)

たとえば、佐賀県庁の職員は海外へ行くときに必ず「グローバルWi-Fi」を使うようにしている。それもG1で知り合った社長さんが会社で持っておられるものを教えてくださって、「ローミングなんかしていたら駄目だよ。こういうものを使わなきゃ」とおっしゃったからだ。それでポータブルのWi-Fiルータを持っていくようにしたら、コストは下がって通信もしやすくなって、皆、すごくハッピーになった。(24:11)

ジョブカフェという、特に若い方々へ職の斡旋をする施設についても同じだ。役所や役所の関係機関がそういうものをやると、どうも、ぱっとしない感じの施設になる。しかし、ある方にG1で「自分たちは札幌でその仕事を請けている。どんな風にしているか見に来させたら?」と言われた。それで担当を行かせたら驚いて、「もう、用がなくても行きたいぐらいの感じでした」と言う。それで、「じゃあそういう風にしよう」と。それで今度から…、公募だからそこにお願いするかどうかは決まっていないが、とにかく「決まったやり方ではなく、来る人にもっと満足して貰えるようなやり方が他にあるんだ」ということが学ぶことができた。私達の話は一つの例に過ぎないが、皆様にも間違いなくプラスになる部分や実際に活用できることがあると思う。(24:49)

また、去年は何人もの経営者の方が、「実は拠点をシンガポールに移したんだよ」というお話をしていた。シンガポールが企業誘致をしているのだという。会社社長のような比較的高収入の方に、「ぜひシンガポールに住んでください」と。それで実際に行ってみると、企業としても非常に低い税率で仕事ができることも分かった。そういう話はネットなどを通して文字としては読んでいたが、目の前でそういう人を見たのは初めてだった。そんな風に、G1では‘Whatishappeningnow?’といったことや、次に起きることを実際に見て、感じていただくことができる。(25:54)

女性の積極登用を「男女雇用機会均等法」が阻むという矛盾(古川)

古川:さて、本セッションは官邸と地域のコラボといったことをテーマに議論することになっている。「官邸」と言われるとテレビで見る建物がイメージとして湧くと思うが、我々が普段「官邸」という言葉を使うときは、その建物に代表される政権中枢をイメージして語っている。ただ、内閣府という紛らわしい言葉もある。だから「内閣府と内閣官房はどう違うの?」といった質問が「Yahoo!知恵袋」のようなサイトにもたくさん載っていて、そこで「小学6年生にも分かるよう説明して欲しい」と書いてあるのに、なかなか分からない感じだ。我々の理解では内閣官房でやっている仕事こそ、世耕さんがいらっしゃる官邸の仕事だと思っている。政府として「これをやるぞ」と言ったとき、きちんとやることを決めるまでは内閣官房がやるのだが、閣議決定して政府としてやることを決めたら、あとは所管の省庁に仕事が割り振られていく感じだ。まさに企画の企画たる所以の仕事をしているのが官邸だと思う。(27:17)

我が国ではかつて、各省庁の役人さんが考えた政策について、官邸が「まあ、分かった」ということで政党側と協議して、それで物事を決められていた。だから誰が総理大臣でもだいたい同じという印象があった。ただ、それが小泉内閣以降かなり変わってきた。「その政策が官邸として納得できるものなのか」、「そうした政策の優先順位をどうするのか」といった部分で、官邸の機能がかなり充実してきつつある。世耕さんはまさにその真只中にいらっしゃる。「次の選挙はいつか」、「他国がどのような反応をするか」といったことも含めながら考えていらっしゃるのだと思う。(29:07)

たとえば安倍総理は最近、東京オリンピックおよびパラリンピックが開催される2020年を中期ターゲットイヤーにしようと仰っている。発展途上国または成長国家として開催した1964年のオリンピックでなく、「2020年には成熟社会におけるオリンピックおよびパラリンピックを開催しなければ」と仰っているのだと思う。その一つの象徴が、2020年までに管理的な地位にある女性の割合を30%にするという話だ。これは随分前の男女共同参画計画にも書かれていて、しかも当時は閣議決定されていたのだが、皆、忘れていた。それで、最近になって総理がその話をしておられる訳だ。(30:18)

で、いずれにせよ地域としてもそれをやっていかなければいけないということで、まずは福岡県で経済界の人々が集まり、「民間でも行政でも指導者地位にある女性を増やしていこう」ということになった。それで「女性の大活躍推進福岡県会議」というものがはじまった。これは将来的には九州会議へ持っていくということで、福岡県でのスタートをうけ、次に佐賀県でもこの会議を発足させた。(31:13)

それで、「それなら県庁でも」と考えた訳だが、そこで気付いたことがある。今、佐賀県庁で管理的地位にいる女性の割合は10%。これを2020年までに30%へ引き上げようとしても…、管理的地位というのは課長級以上を指すが、現在係長級にいる人達を全員課長へ引き上げても数十人足りない。だから、「じゃあ外から採用しよう」と話したら、「ちょっと待て」と。男女共同参画の担当が、「男女雇用機会均等法に抵触するのでは?」と言う。「そんな馬鹿な。そもそも女性の社会進出を進めるための法律でしょう」と言ったのだが、「いえ、平等にしろという法律です」と言われた。(31:43)

そこで法律について調べてみのだが、これが変な法律だ。「男女雇用機会均等法では、女性の登用が進んでいない民間企業では女性に限って採用することができる」とある。「お、できるじゃないか」と思うでしょ?ところが、国家務員と地方公務員が対象外になっている。そういう法律を閣議決定した後、「国家公務員と地方公務員には先鞭を切って女性を登用しろ」と書いている。けれども、それはできない訳だ。(32:40)

そういうことを見ていると、「2020年までに30%へ引き上げようと、官邸は本当に思っているのか?」と感じる。我々としては、現在の安倍政権と政府官邸は本気で物事を進めようとしている場所だと思っている。そう信じたい。ただ、実際にはそれを阻むものがある。そういったものに対し、我々は批判ではなく行動とともに意見を出しながら変えていきたい。今日はそんなお話もできたらと思う(会場拍手)。(33:08)

地域の課題は、一にも、二にも、三にも「人口問題」(古川)

堀:ここからはパネルディスカッションと質疑応答に移りたい。まず、私のほうからは地域の現場にいらっしゃる方々の課題認識をお伺いしたい。どのような課題があり、それに対して官邸は何をすべきとお考えだろうか。まずは省庁と官邸との関係を抜きにして、中央あるいは日本全体と地域という観点も併せて考えてみたい。(34:30)

高島:まず、「国としてこれから地方をどのようにしたいのか」という問いがある。「東京と大阪と名古屋だけで良いのか?地方の役割をどう考えているのか」と。また、権限と財源に関する課題もある。これまの「国土の均衡ある発展」でなく、それぞれの地域で競争し、互いに切磋琢磨しながら発展していくという方向であれば、やはり十分な権限と財源をいただきたい。ただ、権限の委譲というものは理屈としては「そうだな」と思うが、現実的にそれをどのように実現していくかというプロセスを考えると、非常に大きな困難があると感じる。大きく分けるとその二つになる。(35:58)

古川:一つ目は人口問題で、二つ目が人口問題で、そして三つ目が人口問題という感じだ。福岡市のように人口が増えている地域は非常に少ない。首都圏でも千葉県ですら人口が減りつつある状況だ。日本全体でも人口が減っていて、高齢者の割合も増えている。そうした状況を踏まえて、きちんと「こういう社会にしていく」という“絵”を描くのは国の仕事だと思う。人口構造がどのようになるかをきちんと国民に示し、真剣に議論していく必要がある。(37:00)

で、“二番目の人口問題”ということで言うと、とにかくそうした状況下で、国民のおよそ半分が年金を貰うような社会というのはもうあり得ないと思う。知り合いの国会議員は先日、社会保障制度が進んでいると言われる北欧へ視察に行ったが、「行ってみたらぜんぜん進んでいなかった」と言っていた。たとえばデンマーク。長寿国であり、福祉は大変充実している。ただ、年金の支給開始年齢は74歳になったという事実がある。年金が払いきれなくなり、支給開始年齢を平均寿命マイナス4年に引き上げたからだ。今はもう「4〜5年しかあげないよ」という感じだ。医療も発達している成熟国家では皆が長生きするようになったため、そういうことが起きている訳だ。(37:53)

その辺についてどう考えるべきかという話であれば、やはり70歳でも何歳でも、働きたい人や働ける人には働いて貰うという考え方になるだろう。障害のある方でも働いて貰える人には働いて貰って、納税者になっていただくということだ。当然、女性という最大の資源は社会を支え、引っ張っていく側として活躍して貰うということを明確にしていく。そうでないと、この国における明日の像も見えてこないと思う。(38:57)

“三番目の人口問題”は、特に減り方が顕著な地方でどうするのか、だ。地方中核都市は一見良さそうに見えるが、たとえば福岡市から30分〜1時間も離れると過疎地・過疎集落が数多くある。僕が今住んでいる佐賀市も同様だ。現在の人口は二十数万人で、僕は小学校高学年から佐賀市に随分長く住んでいたが、その頃から景色が基本的に変わっていない。その頃にあったビルが今もある。違いと言えば、昔あった店舗が今はなくなって、誰も入っていないといった点だ。21世紀になったのに、あれから数十年経ったのに、地方都市の街の形は変わっていない。それについては処方箋がない訳でもないと思うが、とにかく今申しあげた三つの人口問題に対して官邸がどれだけコミットしているかが大変に気になる。(39:23)

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地方そのものが新事業創造のインキュベート施設になる(高島)

堀:もう一つ。グロービス福岡校の設立にあたっていろいろ調べてみて驚いたのだが、九州地域は一人当たりGDPが低い。都道府県別では多くが40番台だ。シリコンアイランドと呼ばれ、先進的で非常に元気があるというイメージもあったが…。これは何故だろう。また、今後は地域として経済的課題にどう向き合うべきだろうか。(40:31)

古川:一つ感じるのは、そうした数字を出すにあたって企業活動を見ていく際、たとえば東京に本社がある企業に関しては九州の工場や支社の評価が東京に帰着しているところがあるという点だ。従って、九州の経済や生活水準は東京やその他の地域と比べて数字ほど低い訳ではないと思う。それと、これも統計マジックのような話かもしれないが、統計に表れない部分も無視できないと思う。「ごん狐」のようなもので、帰宅してみると門のところに野菜が置いてあったりする。農家と近しいため、買わずに済んでいる方も多いのではないか。「それは大した数字にならない」と思うかもしれないが、実際に私はこの十年、米を買っていない(会場笑)。収入だけを見て生活水準のように考える向きはあるが、たとえば福岡は収入の水準がそこそこあるのに物価水準は比較的低い。だから、自由に使える可処分所得が高い地域というイメージだ。そうした両面で見ないと幸福度や実際の豊かさは分からないと思う。(41:28)

高島:福岡市で行った市政アンケートでは市民満足度が95%だった。低所得者層の方々が非常に多いという側面はある。生活保護を受ける水準を若干上回る層だ。行政でいろいろと免除の対象になるという、そうした世帯率は非常に多い。ただし、市民の皆様の満足度が非常に高い訳だ。物価が元々低いということもあって、実際の生活では暮らしやすさを感じていらっしゃる部分もあるのかなと思う。(43:20)

ただ、地方の役割ということで言うと“景色”が変わっていないという面がある。産業や人間の新陳代謝が行われていないという意味だ。右肩上がりの状態でなければそれまでの生活を維持することもできないのは、どこの世界でも同じだと思う。何らかの商店がなくなってしまうにしても、時代は大きく変化している訳で、そこで新しい付加価値を伴った代謝が行われる必要がある。そうした代謝が遅い面はあると思う。(44:20)

そうした意味でも起業が大事になる。新しい価値を創り出していく。チャレンジングな学生が卒業後に会社を興すのも良いが、新しい人々の新しいアイディアと既存企業とのマッチングで、より高い付加価値を生み出すというアプローチもあるだろう。私としては、日本全体で見ると実は地方自体がインキュベート施設になるのではないかという気もしている。安く住むことができて、かつ数字には表れない暮らしやすさもある。そうした環境で、いかに地域の特性を生かした新しい価値をつくっていくことができるか。それも大切な課題であり、ヒントにもなるのかなと思う。(45:11)

※後編はこちら

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