新刊「人生の座標軸」堀義人 —組織人 (4/6) 

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自分が働く理由はグロービスの経営理念につながっている

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組織人という軸に移ろう。恐らく皆さんもそうだと思うが、僕も「何のために働くか」ということを深く考えてきた。で、それは僕のなかで3つある。一つ目は、やはり自己実現だ。自分の夢や志を実現したいという思いがある。で、2つ目は、自分がやっていることを通して社会に貢献したいという気持ちがあるからだ。良い人材を輩出し、新しい産業をつくり、新しい知恵を発信したい。それによって多くの人が触発され、学び、新しい出会いが生まれて彼らの人生が変わっていくという流れが出来たら嬉しい。そして3つ目は、まったく新しい経営システムをつくっていきたいという思いだ。

その三つはグロービスの経営理念に繋がっている。多くの人に自己実現の場を提供し、ビジネスを通して社会貢献を行い、新たな経営システムをつくる。新たな経営システムとは何か。20世紀はマイクロソフトやソニーの時代だったかもしれないが、21世紀はグーグルでもなくグロービスだと思っている。グロービスで新しい経営システムをつくるというのが僕らの理想だ。考え方を含め次々と新しいものをつくりたい。

グロービスが変わっているのは、そもそも上場していないという点だ。株式はすべて社員が持っている。また、株式会社で持っていたものをすべて社会に寄付して学校法人にしてしまった。学校法人は社会のものだ。終わった瞬間、すべて社会に返さなければならないという決まりがある。オーナーシップがないものに学校法人をつくってしまった。上場していたら数百億円のお金が入ってきた可能性もあると思う。「グロービスベイスターズ」や「グロービスイーグルス」なんていうチームも出来たかもしれないが(笑)、それは楽天さんやDeNAさんに任せ、「僕らはもっと違うことをやろう」と。そんな風にして「何のために働くのか」を明確化することが大切だと思っている。

キャリア「デザイン」よりキャリア「コミュニティ」が大事

僕はキャリアコミュニティという言葉を使っているが、以前、「成功するキャリア・デザイン—「やりたい仕事」は自分でつくれ」(日本経済新聞社)という本を書いたことがある。読まれた方はいるだろうか。…いらっしゃる。せっかく読んでいただいたのに申し訳ないのだが(会場笑)、同著に書いたことは半分正しいが、半分間違えていると今は思っている。同著のコンセプトは「自分というものはプロダクト」というものだ。ジョブマーケットに自分というプロダクトがあり、その中身つまり魅力を高めていくとともにしっかりプロモーションしていく。「そんなキャリアビジョンに従って生きていきましょう」ということを書いた。それは今でも半分は当たっていると思う。

ただ、もう一つ、別の考え方もある。たとえば戦国時代、織田信長側についたのは豊臣秀吉や徳川家康で、つかなかったのは浅井長政や朝倉義景だ。で、後者は一家郎党、首が飛んでいった。これは自分がどこに所属するかで運命が変わるということだ。勝ち組にいるか負け組にいるかによって運命が変わる。信長側の武将たちは、「じゃあ、お前は加賀に」と言われて領地を与えられ、一国一城の主になった。

自分と組織の信念が合っているか確認するのが大切

そこにはコミュニティが生まれている。つまり会社というのはコミュニティだ。「ということは、どのコミュニティに所属するかを探すプロセスがキャリアということでは?」と考えるようになった。そうなると、どのコミュニティに所属したいかが一番重要だ。それを探すプロセスがキャリアであり、自分の生き方ではないだろうか。そうなると、コミュニティ探しでは自分の信念と組織の信念が合っているかどうかが大切になる。

懸命にキャリアを築いても、未だ日本では35歳を超えると転職も難しくなる。ジョブマーケットが狭くなってしまう現実がある。「キャリアアップしていこう」と考えても、マネジメントポジションを担うことの出来る人材や専門能力が非常に高い人材以外は、転職しづらいというのが現状ではないか。そう考えると、どんなコミュニティに所属するかが重要だ。自分が燃えることの出来るようなものがそこにあるか。そこで自分がやりたいという気持ちになるか。自分がリーダーに共鳴・共感出来るか。そうした視点でコミュニティを探し、なければ自分でつくるというぐらいの考え方をする必要がある。

ただ、自分でつくるといっても、どこかと関係を持たないとすぐに潰されてしまうかもしれない。だから良い同盟関係を結べるような仲間等を増やしながらキャリアをつくっていくべきではないかと、僕は考えている。で、そうした組織が「我こそはここに何々をつくるんだ」と、新しい旗を立てる訳だ。そこに仲間が集まって、彼らと理念やビジョンやミッションを共有する。そして仲間のため、社会のために頑張っていく。そして良い人材をどんどん引っ張ってきて、コミュニティを大きくしていくということになる。

「成功するキャリア・デザイン〜」で間違えたと思うのは、組織や理念とのフィット感、あるいは自分の生きがいといった要素をあまり入れなかった点だ。キャリアというものをすごくロジカルに考えていた。しかし、ハーバードの友達でも、「ロジカルなキャリア戦略でジョブホッピングしたけれど、これで本当に幸せなのかな」と言っている人がいる。そうでなく、自分がやりたいと思うことを行うべきだ。人から見えるようなキャリアでなく、自分がやりたいことを明確化して、それにあったコミュニティを見つける。それが組織人の生き方として重要ではないかと思う。

僕の場合、そうこうするうちに今度はG1サミットをつくった仲間と「日本を変えていこう」と考えていくようになった。冒頭で申しあげた通り、グロービスが右肩上がりであるのに日本は右肩下がりという状況を見て、「日本というコミュニティの一員として日本を良くしていきたい」と考えはじめた。「なんとかしなければならない」と。ただ、当初は何をすれば良いのかが分からなかった。で、どうすれば日本という国を良くすることが出来るのかを考え続けた結果、僕は三つのことを決めた。

写真撮影:東洋経済新報社・尾形文繁

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