小泉進次郎氏×越直美氏×神保謙氏 「10年後の政治・外交—今、僕らがやるべきこと」後編 

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「『先生、信次郎は今のままでいいんです』と父親が言ってくれた・・・。教育と家族・地域の連帯の問題は切り離せない」(小泉)

鈴木:では会場からも質問やご意見を募っていこう。(41:32)

会場(大嶋啓介氏・てっぺん代表取締役):私は居酒屋経営のなかで人材育成に特化している。それで学校でも講演をする機会が増えており、将来は学校経営もしたいと思っている。今の学校教育に疑問を持つ機会は多く、子供たちがどんどん“不可能思考”になっていると感じる。そこで教育に関する皆さまのご見解を伺いたい。(42:00)

越:教育に関して言えば、これから「見えない世の中」になっていくなかで、それでもやっていくことの出来る人材を育てることが大事なのだと思う。そのためにもまずは多様な人材を育てること。アメリカで働いていた私としては、やはり日本の教育は画一的だし、そのなかで考える力がなかなか育っていないと感じる。(43:31)

また、多様な人材を育てるうえでは英語教育が欠かせないとも考えている。日本人の発想は大変豊かだと思うが、海外でその考えを伝えることがなかなか出来ない。まさに私自身がそうだった。従って、英語に力を入れることでより多くの価値観を取り込んでいくような教育を地方でやっていきたい。(44:19)

小泉:昨日、小林りん(インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢代表理事:以下、肩書略)さんと教育の話をしていたのだが、政治が教育を考えるうえで何が難しいかというと、100人いたら100人が自分の経験に基づいて「この教育が絶対に正しい」と思っていることだ。ただ、「A君にはこの教育方法が良いかもしれないが、B君には合わないかもしれない」ということは多々ある。そこで思うのだが、僕自身の体験を振り返ったうえで何が大きかったかを考えてみると、やはり親子関係だ。家族のあり方ということになると思う。(44:56)

たとえば中学3年時の3者面談で最初で最後、父親が同席してくれたことがある。当時の担任だった体育の先生がその日はすごくもじもじしていたのを覚えているが(会場笑)、そこで先生が父に「進次郎君にはもっとリーダーシップを発揮して貰いたい」というようなことを言った。で、僕自身は「面倒くさいことを言うな」と思った訳だ。そんなことやりたくないのに。そうしたら父親が、「先生、進次郎は今のままでいいんです」と言う。「私も父親が政治家だったから進次郎の気持ちが分かる。親父が政治家だと良いことをやっても悪いことをやっても目立つから、あまり目立たないようにしようと思うんでしょう。私はそれでいいと思います」と言ってくれた。親父は毎日家にいる訳ではないんですよ(会場笑)。当時は週末に電話で話すぐらいだった。けれどもその一言。びっくりした。「何故自分のことをこんなに分かっているんだろう」と。(45:39)

そうした積み重ねが色々とあった。私は父親に「勉強しろ」と言われたことが一度もない。周りの人たちが「孝太郎と進次郎にもっと勉強するよう言ってください」と言っても、「俺が言ってやっているならとっくにやっているよ。最後にやらなくて困るのはあいつらだから」と言う訳だ。そういう話を耳にして、「本当にやばくなったら言い訳出来ないぞ」と思いはじめた。それで「本当にやばくなる前ぐらいまでにはやろう」と。(47:06)

まあ、僕の育った家庭というのは今で言うシングルファザーの家庭だ。けれども周りには親戚等、支えてくれる人が多かった。だからひとり親家庭の寂しさであるとか、たとえば愛情に対する飢えであるとか、そういったものを感じないまま生きてくることが出来た。すごく有り難いし、恵まれていたと思う。(47:35)

しかし、今は結婚した3組のうち1組は離婚するという世の中だ。そのなかで育つ子供たちの近くにおじいちゃんやおばあちゃんがどれほど付いているだろうか。どこまで助け合い、地域が支えてくれるか。その点ではやはり綻んできていると思う。その辺で何が出来るかを考えるのが政治の役割だと思う。教育とは直接関係ないことかもしれないが、巡り巡ってすごく重要な部分ではないか。(47:59)

「長く閉じた環境で歴史や伝統を築いてきた日本において、移民受け入れに際してはまず真摯な議論が必要」(神保)

会場(本田勝之助氏・会津食のルネッサンス代表取締役):地方や外交といったものの構造をしっかり分析しないと目の前の課題も解決出来ないと思うし、海外で何をやるべきかという考えも生まれてこないと思う。そこでどのような提案をしていけば人が育ち、実行能力が生まれ、日本の地方と海外が繋がっていくのかという部分で私自身は取り組んでいるが、ぜひそのアドバイスやヒントをいただきたい。(48:55)

会場(為末大氏):安全の問題を別に考えると、人口を増やすには移民が最も良い手段だと思う。この点についてはどうお考えか。(49:30)

会場(熊谷俊人氏・千葉市長):意思決定への関与という部分について伺いたい。投票率についても国際的なルールづくりへの関与についても同じことが言えると思うが、日本はこの30年ほど、意思決定に参加するということを避けてきたように思う。「それではいけない」という危機感が最近は出ているのだと思うが。いずれにせよ、そうした「自分に関わりあるものの意思決定に自ら積極的に参加していく」という文化をつくっていくため、どういったことをしていくべきだとお考えだろうか。(49:38)

神保:最初のご質問に関して言えば、10億人の中間層が生まれていくことで今後伸びていくアジアの需要にどうコミットしていくかが大事になると思う。そこに対する企業戦略や産業政策をつくっていくことで自ずと回答が出てくるのではないか。(50:37)

それと移民についてだが、2030年ぐらいの予測を見てみると高齢化の進展によって特に先進国が移民のプレッシャーを抱えることになると思う。で、そこでアメリカのように移民の数と出生率の高さでダイナミックな生産性を維持していける国と、長い歴史や伝統のなかで制度を築いてきた国とでは、移民受け入れに関しても別の問題が出てくると思う。日本は今まで大変慎重だったが、やはり我々が海外の人々とどんな社会をつくりあげていくのかという真摯な議論は不可欠になるだろう。私としては、最初はシンガポールのような形で高度なスキルを持つ人材に出来るだけ来て貰いたいと考えている。ただ、当然ながら我々も強烈な高齢化を迎える。そうした人々をどのような形で受け入れていくのかというコンセンサス形成も不可欠になると思う。(51:00)

意思決定への関与も大変重要だ。たとえば何らかの国際機関等、エグゼグティブなステータスにおける日本人の割合は非常に小さい。従ってそこを狙った人材育成および配置を考えていくことも欠かせないと思う。(52:01)

会場(小林りん氏):アジアの新興国を引き込むことが今後の日本外交には重要とのお話だったが、具体的にはどういう形を想定していらっしゃるのだろうか。(52:32)

会場(高橋大就氏・東の食の会事務局代表/オイシックス海外事業統括):社会保障は本来、富の再分配機能だ。しかし年齢で区切ってしまう現在の制度下では金融資産の6割を持つ高齢者に対して国が強制的に富を再分配する構図となり、ナンセンスだと感じる。そうではなく、政治決定として、団塊世代の方々に「権利を放棄してくれ」と。もう一度頭を下げて「国を救ってくれ」と言うべきではないかと思う。(52:54)

会場(高島宏平氏):この会場にも10年後に政治家となっている方がいるかもしれない。そこで10年後を一緒につくる仲間として、「こういう人に来て欲しい」、または「こういう人は来て欲しくない」(会場笑)という要素があれば教えていただきたい。(53:27)

神保:新興国を取り込むというのはあらゆる分野で必要だが、まず政治で言うと、安倍総理の外交で私が非常に好きなフレーズがある。「地球儀を俯瞰する外交をしたい」というものだ。たとえば中国および韓国との関係は非常に大事。ただ、目の前の問題を解決するためにも、世界的な外交パワーのなかで日本のパワーをつくりあげていく必要があるという意味だと思う。そして、そのなかで成長していく国々にどんどん布石を打っていこうと。こういう発想が政治では欠かせない。(53:55)

一方、経済の面で言うと…、これはたとえば韓国企業等がこれまでずっとやってきたことだと思うが、新興市場やニッチ市場を言われていたところに相当の勢力をつぎ込んで市場を開拓する必要があると思う。それが10年後に身を結んでいく。日本企業もそういうところへ積極的に飛び込んでいくべきではないか。(54:52)

それと人材についてはまさに小林さんが実践されていると思うが、たとえば学生に「どこに留学したらいいでしょう?」と聞かれることがある。で、10年前であれば「アメリカかイギリスに行きなさい」と言っていたのだが、私は最近、「アジアへ行きなさい」と言っている。アフリカ、中東、ラテンアメリカ、等々…、どんどん機会を開拓し、そこで培った経験を10年後に生かすようにして欲しいと。人材という面で新興国にコミットする訳だ。若いうちに新興国で人生を過ごすことがこれから重要になると思う。(55:13)

「マイノリティの意見を反映させるためにも、もっと多くの若者と女性に政治の世界に来てもらいたい」(越)

小泉:高齢者の方々に「ごめんなさい」と言う前に、まだやるべきことがある。ギリシアのような財政破綻に陥ってしまえばそう言わなければいけない相手が出てくるかもしれないが、今はそこまで行っていないし、本来やるべきことにも手をつけていない。それに、3人に1人しか投票へいかない状態にも関わらず、「欲しいものは欲しい」というのは間違いだと僕は思う。「政治がどんな議論をしているか分からない」という声もあるが、今は衆参の全委員会をインターネットで、しかもノーカットで見ることが可能だ。そうしたことをせずに要求だけを挙げて、けれども自分たちの権利は行使しないというのは我儘だと思う。(55:52)

だからこそ若い人たちが行動を起こし、まずは20〜30代が投票率を100%にする。そうなればようやく60〜70代が身動きをするだろう。今、60〜70代は10人中7人が投票を行っている。若い世代は3人だ。それならば、民意を反映するのが政治だとすれば高齢者のほうに良い制度をつくるのは、悲しいけれども自然なことだ。ただ、その自然な状態は日本の構造と将来を考えたら不自然だから、それを変えていく。僕らがこれからやらなければいけないのはそこだと思う。(56:55)

越:政治の世界に来て欲しくない人は選挙で落とされるかなと思うので、来て欲しい人ということで言うとやはりもっと若い人と女性に来て欲しい。社会保障ひとつとっても若いからこそ将来を見て考えることが出来ると思うし、女性もまだまだ少ないと思う。国会議員では10%ほどいらっしゃると思うが市長では1%ぐらいだ。そうした政治の世界では未だマイノリティの意見を反映させるためにも、あるいは多様な意見を反映させるためにも、若者と女性にもっと来て欲しいと思う。(57:44)

鈴木:それでは時間も迫ってきたので、御三方には今日の議論を踏まえて最後にメッセージをいただきたい。(58:50)

越:今日は地方だけでなく国や外交のお話も伺うことが出来たので、私自身にとっても良い機会だった。地方についてはいつも悲観的になっているのだが、前向きに考えるためのパワーを貰ったと感じる。これからもここにいる皆さんとともに、前向きに、そして若い力で頑張っていきたい(会場拍手)。(59:14)

神保:授業の最終回に学生へのメッセージとしてよく話すことがある。実は会場にいらっしゃる菊川怜さんが出ていらした10年ほど前の番組の話だ。そこで菊川さんがアメリカの映画監督の方とお話をしていたなかで、「成功する女優と成功しない女優の違いはなんですか?」といった質問をされていた。で、そのときにディレクターの方が「コミットメントだ」と答えていた。自分の仕事を天職だと思い、それに人生をコミットメント出来るかどうかが成功する人としない人の違いであると。(59:41)

外交に関してもやはりコミットメントが重要だと思う。たとえばシリアで起きていることに対して、もし皆さんが心のどこかで痛みを感じるとしたら、それにどうコミットしていくのか。そういうことを基点にして行動が生まれる。そうした気持ちを大事にしつつ外交との距離感をぜひ縮めて欲しいと思う(会場拍手)。(01:00:25)

小泉:ヤクルトの宮本慎也選手が先日の引退会見で仰っていたことは、僕には一番ストンときた。「好きではじめた野球が、プロになり仕事に変わった。それで楽しいと思ったことは一日もない」と。僕も政治家になってちょうど4年になるが、本当にそういう思いでやってきた。日本の政治家が抱える課題はそれほど大きい。今関心を持っていない人々の生活にもいずれは反映していくのが政治の魅力であり、それは怖さでもあると思う。ぜひ関心を持って貰えるよう頑張りたい。(01:00:50)

それともうひとつ。村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)という新作に「赤」という登場人物が出てくる。で、彼は新人教育セミナーのような場で一人の新人にこう話す。「君に良いニュースと悪いニュースがある。まず悪いニュース。今から君の手の爪か足の爪か、どちらかを剥ぐ。これは変えられない。次に良い方のニュース。どちらの爪を選ぶかは君の自由だ。さあ、どちらにする? 10秒以内に答えられなければ両方剥ぐ」。人はそう言われると、だいたい8秒でどちらかを選ぶそうだ。では何故そちらを選んだかを聞くと、「どちらも同じくらい痛いと思うけれども、選ばなければいけないと思ったから」と答えるそうだ。そこで「赤」は「本物の人生へようこそ」と言う訳だ。(01:01:42)

僕はその話を読んだとき、これは今の日本だと思った。二つの選択肢が目の前にあるけれど、どちらかを選んだら痛みが無くなるなんていうことはない。どちらを選んでも必ず不利益を被る人がいる。その意味ではビジネスも政治も同じだ。だからこそ決断をしていかなければいけない。そういった世界を生き抜くために僕ら若い世代は汗をかいて頑張らなければいけないと感じる。今日はそんな風に思う力を改めて皆さんにいただいた。本当にありがとうございました(会場拍手)。(01:02:43)

鈴木:御三方とも仰っていたことだが、大事なのは課題にしっかりとコミットメントしたうえで私たちの力を還元していくことだ。会場の皆さんはそれぞれの分野で今すでにやっておられると思うが、それを10年後もやり続けるという自覚と覚悟を持つことだと思う。どうもありがとうございました(会場拍手)。(01:03:25)

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