日本の外交—米中関係と日本 

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「米国のRebalance in Asiaにおいて中国の存在感が増し、日本のそれは低下している」(Fukushima)

村田晃嗣氏(以下、敬称略):日本がGDP世界第2位となったのは明治維新から100年目の1968年だが、2011年には統計上で中国に抜かれた。この年は中国にとって辛亥革命から100年目だ。両国とも近代化に着手してから100年で世界第2位の経済大国という地位を手に入れた。ただ、日本はそこがピークで今は3位。今後はさらに順位を下げるかもしれない。他方で中国は7%前後の成長を続けると2024〜2025年にはGDPでアメリカを抜き去るかもしれない。(01:03)

そんなパワーバランスの変化にあって、日中では尖閣問題という具体的イシューが緊張の度を高めてきた。第一次世界大戦は1914年に勃発したが、同年にサラエボ事件が起こるまで欧州で4年におよぶ大戦争が起こると予見した人間はほとんどいなかった。あれから100年経った今はどうか。相互依存の度合いは大きく変化したが、本当に東アジアで同じことが起こらないのか。大きな課題に我々は直面している。そこで壇上の御三方には、まず現在の米中関係または日米中関係をどう見ているかという大きな話から伺いたい。(02:38)

Glen S. Fukushima氏(以下、敬称略):私自身は昨年秋、22年ぶりにアメリカへ戻って二つの大きな変化を感じた。ひとつは日本の存在感が相対的に低下していた点だ。それともうひとつ。オバマ政権は第一期目から‘Asia Pivot’または‘Rebalance in Asia’ということで、アジアに対する関心度を非常に高めている。特に中国に対する関心だ。(04:08)

具体例を三つ挙げたい。まず、私はワシントンD.C.にあるCenter for American Progress(以下、CAP)というシンクタンクで仕事をはじめたのだが、勤務初日に「オフィスと自宅のEmailを接続しないでくれ」と言われた。CAPは第2期クリントン政権下にあった2003年に設立された組織で、民主党系の人間が数多く所属している。中国はそこに注目して、毎日のようにメールシステムへの侵入を試みているという。初日から中国の大変な存在感を感じた。(04:51)

そして2点目。12月初旬に上院外交委員会(Senate Committee on Foreign Relations)で、あるミーティングが開かれた。議題は「アメリカ議会は2013年、アジアの何に注目したら良いか」というものだ。ただ、そこに呼ばれたアジア専門家10人のうち、8人は中国の専門家だった。あとの二人は朝鮮半島の専門家と日本関係の専門家である私だ。実際、上院の質問も8割前後が中国関係に集中して、日本については「安倍政権で日中や日韓の関係が悪化するのでは?」といったネガティブなものだった。そこで私は…、弁護するつもりは無かったのだが(笑)、「彼は前回総理大臣になった際、初の外遊先として中国を訪れ、戦略的互恵関係を築くために努力した。イデオロギーに左右されない現実的対応も期待出来るのでは?」と申しあげている。(05:56)

では3点目は何か。尖閣問題はアメリカのマスコミもかなり取りあげているが、彼らが得る情報の8割前後は中国側のものだと感じる。それを聞いたアメリカ人が中国の見方に同意するという意味ではないが、たとえばCAPにも中国からの代表団が2回訪れ、中国側の立場を説明している。研究所の同僚と話をしていても、大使館に加えて北京や上海の学者あるいは政府関係者等の色々な人が訪れて中国側の姿勢や立場を説明しているという。しかし日本はというと、少なくとも最近までは「領土問題はなく、議論の余地はない」との立場だった訳だ。最近になって日本大使館の方が私のところへ来て色々と説明してくださったが、とにかく中国の宣伝や広報活動が行き渡っていると感じた。(07:53)

そんな状況もあり、あまりにも日本が注目されていないと感じた私は12月21日に『ワシントン・ポスト』へ寄稿を行った。そこで「日本は世界第3位の経済大国でアメリカの同盟国だ。‘cornerstone’(礎石)という言葉をアメリカは繰り返し使っているが、やはり日本と協力することでオバマ政権が重要としている‘Asia Pivot’や‘Rebalance in Asia’も成功するのでは?」という主張を行なった。第一次安倍政権のときはブッシュ政権、お父様である安倍晋太郎さんが外務大臣のときはレーガン政権、そして(お祖父様の)岸政権のときはアイゼンハワー政権ということで、共和党との関係は大変強い。ただ、民主党との関係はそれほど強くないのではないかと思っていたこともあり、寄稿では特に米民主党政権と安倍政権の協力を主張している。(09:34)

日本でも読売新聞に寄稿した。こちらは安倍総理が訪米する2週間前ということで、ひとつの提案というか、私の考えを書いた。「日本がアジアでの地位と重要度を高めれば高めるほど、アメリカとしても日本が大事になる」と。ワシントンは安倍政権に二つの期待と二つの懸念を持っている。期待は日本経済再生と日米関係の修復。そして懸念はアジア各国との関係が悪化する可能性、そして参院選後の政権運営だ。参院選までは経済に専念するだろう。ただ、そのあとはもしかしたら…、たとえば従軍慰安婦問題や河野談話等、経済の再生ではない別のマターを向いてしまう可能性があるという懸念になる。(11:11)

「増大した格差への社会不満をナショナリズムの動員により発散させる可能性も」(川島)

川島真氏(以下、敬称略):私は中国の専門家だが中国が好きでのめり込んでいる、という体でもないので、最初にお断りしておきたい(会場笑)。中国を代弁するつもりもないと。さて、中国では習近平体制がスタートした。3月に全人代(全国人民代表大会)が開かれ、国務院は李克強体制で動き出す。そこで政権の移行期も終わって新体制になる。従って最近は静かだ。移行期に危ないことは一切しない。自らの地盤を崩すような火遊びはしたくないからだ。ただ、新政権は胡錦濤体制から、ある種、負の遺産をほぼ引き継いで政権運営をはじめることになる。(12:46)

最大の問題は社会における格差だ。共産党自身もその統治は緩みまくっているし、経済成長を維持出来るかどうかも分からない。豊かさの保障が出来ず、どんなに頑張って北京大学や清華大学に入っても就職先がない。そんな状態で募っている社会への不満を、どのように抑えながら統治するか。習近平には今後10年間、そういった共産党体制の維持に関わる問題がつきまとう。(13:54)

また、長期的には労働人口減少と超高齢化社会も待っている。日本では出生率1.2〜1.3で大騒ぎしているが、中国でも都市部では大変下がっている。そういったエイジングにも向き合う必要があるし、社会保障も中国では制度化されていない。従って本来であれば軍事費を増大させている場合でもないのだが、中国の場合は経済成長率に応じて軍事費を増やしてきた。(14:31)

ただ、現在は中国社会も大きく変化している。多元化は顕著だ。言論の自由とまでは言えないが、タブーは随分減ってきた。政府への反発は社会的に相当強まっている。また、政権運営という点で見ると利益集団と言われる団体も多数現れてきた。中国の社会主義市場経済について「政治は社会主義、経済は資本主義」と理解している方は多いと思うが、それは違う。エネルギー、鉄道、道路といった部門は事実上、依然として政府が握っている。そうしたインフラ部門に大量のお金が落ち、そこで政治家や官僚がグループをつくっていく。それが利益集団だ。そうした個々の集団が政策を立案する形になるので、昔のようにトップが何か言えばすべて収まるような体制ではすでにない。尖閣の件でも同様だった。中国で一部のリーダーが日本側の国有化あるいは国家による購入は問題ないと言っていたはずが、いつの間にかすべてひっくり返った。そういうことが今後はいくらでも起きる。外交も内政もやりづらくなるだろう。(15:10)

そんな状態にあって、中国内では今、大きな政策の対立が起きている。「今後も経済発展を重視し、国全体で富のパイをまず増やすべきだ」というグループと、「各種社会問題にも配慮をして分配を優先すべきだ」という派に分かれてきた。過日の反日デモで毛沢東のプラカードを掲げていたのは後者だ。実はこの対立が外交にも関わってくる可能性もある。発展重視のグループは外交面において韜光養晦(とうこうようかい)と言われるような?小平以来の慎重外交を続け、「対外的に協調路線で行くべき」という論調になる。しかし「発展はしつつも社会の安定に向かうべき」というグループはやや保守化する。従って外交も基本的に強硬路線だ。この対立が政策にも大きく表れている。(16:33)

とりわけ胡錦濤体制は初期目標より早く経済成長を達成したこともあり、2006年頃から対外政策を転換してきている。発展一辺倒でなく主権や安全の問題を重視すべしという流れになった。恐らく内部は7〜8年揺れ動いており、そのなかで温家宝さんがかなり頑張ったと思う。しかし、結局負けていく。それが恐らく2008年後半だ。日本が東シナ海での協力で合意をとりつけたあとあたりから発展重視派が後退していった。そのあとに来たのが主権・安全派だ。(17:44)

小泉政権時代には「政冷経熱」という言葉があった。今考えると羨ましい。政治が冷えても経済に影響しなかった。今は違う。経済が安全保障・主権にも絡む。経済を武器に外交を展開する可能性がある訳だ。もちろん経済発展も不十分である以上、経済で周辺国に改めて接近してくる可能性もある。この辺のせめぎ合いで日本はどうするか。いずれにせよ2008〜2010年にかけて中国外交は相当アグレッシブな方向へ転換してきた。習近平もその体制を受け継ぐ。ましてや格差があればナショナリズムを動員する可能性も高い。10月の共産党大会前に反日デモを行い、3月の全人代前に今回の騒ぎを起こすと。このあたりは連関があるかもしれないと、中国研究者のなかでは思われている。(18:21)

G1の精神に則って提案をすると、ひとつはアジア諸国との連携。日中関係は大変厳しい局面を迎えており、経済面ではある程度依存しつつも、国内には反中感情が高まっている。ただ、韓国、台湾、ベトナム、そしてフィリピンも、実は日本と似た状況だ。それらの国々で横方向に連携しながら世界に発信していくと良いのではないか。ワシントンで日本のプレゼンスは低いとのお話だったが、日本の境遇は日本だけのものではないと言える。(19:32)

また、中国と向き合う際に共産党だけを見ないことも重要だ。共産党の統治が弛緩してきたことで社会には色々なNGO等の集団が現れている。欧米はそういう集団にも接触するし、きちんと支援もするのだが、日本はそれをしない。会場には企業の方々も多いのでぜひ申しあげたいが、中国の利益集団にも触れるべきではないか。日本の財界人は北京へ行っても中南海で政治家に頭を下げるばかりだ。そうでなく、中国の同業者とどのようにネットワークをつくっていくか。これからは多元的な外交が大事になると思う。(20:15)

また、米中関係も極めてストラテジックになっているし、主戦場は東南アジアなのだろうと思う。このあたり、日本としてどのようにキャッチアップしていくのか。米中関係はとにかく多様だ。いくらアメリカが中国を警戒していると言っても、米中では各界にわたって非常に多様かつ分厚いダイアログがつくられている。そのあたりでも日本が学ぶべき部分はあると思う。(20:59)

「中国はプロセスとして決めればファクトは無視しても前進させる。その意味からも日米関係は重要」(前原)

前原誠司氏(以下、敬称略):まず尖閣の国有化についてお話ししたい。漁船の衝突事件以降、緊張していた日中関係ではあったが、ある時期までは落ち着いていた。尖閣周辺に現れる公船の数も落ち着いていた時期が長らくあった。そうした状況下で出てきたのが、石原慎太郎前都知事の東京都による購入という話だった。石原さんが目指したのは実効支配の強化であり、「上陸調査あるいは港などの構造物建設を行う」というようなことを仰っていた訳だ。(21:29)

それに関しては色々なスタンスがあると思う。ただ、我々が考えなければならないのは、この30年間で中国の防衛費が24倍になった点だ。当然、防衛省は自衛隊単独で人民開放軍と戦うケースも、日米で中国と戦うケースもシミュレートしている。そこで彼我の軍事力をしっかりと把握しながら、どんな結果になり得るかというシミュレーションを、防衛省と自衛隊はすべて行なっている。で、中身については申しあげられないが、この30年でその結果は相当大きく変化した。その意味でも、日本が第一義的に重要に考えなければならないのがアメリカとの関係強化であることは間違いない。(22:41)

もし尖閣に繰り返し上陸を行う、あるいは工作物をつくるということになった場合、果たして事態をマネジメント出来るのか。そうした状況下で中国の出方も併せてさまざまなシミュレーションを重ねていった結果、「軍事衝突の可能性が極めて高くなる」という結論があった。東京都はいち自治体だ。外交や安全保障に責任を持てないいち自治体という立場で、しかも外交および軍事面で衝突が発生する可能性が高まるという状況で購入するという、そういう事態を避けるために我々は国有化という決断をした。(23:51)

こうした経緯や判断については外交ルートや投函ルート等、さまざまなルートで中国側に説明をしていた。で、結論を申しあげると、中国側はそれを極めて冷静に聞いていた。その意味では、ある一時期まで、国有化について中国がこれほど“跳ねた”反応をするということは、少なくともさまざまなルートで接触を重ねていた段階では予想が出来なかった。(24:39)

もちろんそのタイミングに関して、たとえば「中国側で人事の時期が過ぎるのをからやるべきだった」といったご意見はあるかもしれない。ただ、これは売り手とのタイミングもあった。あれほど離れた小島ならば通常それほどの売値はつかないが、尖閣というだけで20億の売値がついた訳で、当初は東京都に売るとも言っていた。また、さまざまな…、具体的には申しあげられないが、あいだに介在する色々な団体の存在もあった。色々ご批判はあるかもしれないが、そうした複数の状況もあり購入タイミングとしてあの時期になった。(25:09)

私としては、そこにはやはり中国内の激しい権力闘争がひとつ大きな背景としてあるのではないか感じる。そこで考えなければいけない点がある。中国側の文献を含め尖閣諸島に関するさまざまな歴史を徹底的に調べてみると、彼らが1970年ぐらいまでは尖閣にまったく関心が持っていなかったことが分かる。中国側の文献でも「琉球の尖閣」と。釣魚島ではなく尖閣というような言葉が出てくる。で、彼らはあの地域に海洋資源があると分かった段階で、第一列島線から第二列島線へと軍事活動を繋げていくという意味で死活的に重要なポイントであると。戦略・戦術上の変化とともに考え方を変えてきた。(26:08)

考え方を変えても、彼らは簡単だ。変えたそのあとに法律を決めればそれが絶対になる。過去のことを言ってみても絶対に聞く耳を持たない。漁船衝突問題に関しても外交ルートで色々とやりとりをしていた訳だが、彼らは当初、そもそもビデオを見ようとしなかった。ビデオを客観的に見ればどちらがぶつかってきたかは明らかだ。そのなかで圧力を加えてくるということだ。そういうことまで考えると、彼らが一旦決めたことについては…、これは甘く見ることは出来ないという風に思う。(27:25)

問題は尖閣に留まらない。過日もクリントン前国務長官が、米中対話のなかで中国が「ハワイも中国の権益として考えられる」ということを、冗談半分本気半分で言ってきたということを明らかになさっていた。過去の経緯を通して色々と理由をつけながら、「沖縄は実は中国のものであった」、「ハワイは実は中国のものであった」ということになればどうなるか。もしプロセスとして決めたのならば、彼らはそれを本気で進める可能性もある。我々はそういう部分を踏まえて対応していかなくてはいけないと思う。(28:08)

先ほど「一番大事なのは日米関係」と申しあげたのには、そのような側面もある。日本単独では、島嶼防衛だけでなくインテリジェンスの問題まで含めた日本の安全保障全般で、難しい部分が出てくる。やはりアメリカに依る部分は大きい。ミサイル防衛システム、イージス艦、そして今回のF35等々、自衛隊の装備もアメリカから購入をしているものが多数を占めている。(28:48)

そこでアメリカと協力しながらどのように日本の主権を守っていくか。中国の軍事費は年々増大しているし、今後10〜20年先あるいは30年先のGDPがどうなっていくかも考える必要があるだろう。さらには日本の借金や財政の状況も踏まえながら、そこから防衛費のポーションを考えながら、どのように主権を守り続けていくのか。そういったことを考えても、やはりアメリカとの関係強化は必須だ。さまざまな観点からバランスのとれた外交政策をとっていかなければいけないと思う。(29:32)

また、日本は人口減社会に突入し、借金も膨れあがり、国内では格差も広がってきた。そのなかで今は中国が、言ってみれば高圧的な態度に出てきているという状況だ。日本人の気持ちとしては相当に鬱屈したものがあると思う。そうしたなか、今回の選挙で私は日本の右傾化という側面も感じている。右傾化が悪いと言っているのではない。ただ、今は…、日本の置かれた立場をトータルに考えたうえで、かつ戦術・戦略論も踏まえたうえでの右傾化なら良いのだが、非常に感情的な右傾化が進んできているように感じる。(30:22)

先日の予算委員会でも安倍さんと議論したが、やはり歴史問題という点で、最も協力関係を強化しなくてはいけないアメリカ側が危惧を抱いている。たとえば靖国の問題や従軍慰安婦の問題を上手くマネジメント出来るのか。そういう部分で同盟国のアメリカは日本を試している面がある。アメリカのなかでも大変親日的なグループの中核メンバーと私はよく議論をしているが、彼らが最も気にしているのもそこだ。それが、日本が持つソフトパワーとしての価値を貶めているし、日中関係に関して「日本をサポートしたい」というアメリカの人々をディスカレッジしている。その辺を本当に理解したうえで右傾化の議論になっているのかなと。やはりトータルで考える必要があると思う。(31:13)

村田:私は右傾化という論点についてひとつ興味深いと思う点がある。日本の右傾化と言ったとき、政治家の右傾化と世論の右傾化の二つがある。で、私は恐らく世論よりも政治家のほうが右傾化しており、実は世論のほうがモデレートではないかと。その辺はいかがだろう。そしてそのことが日米関係にどんな影響を与えるのか。日本がこれからアジアでマルチな枠組みを目指すのであれば、韓国あるいは東南アジアとの関係で、日本のいわゆる右傾化がどう影響するのか。その辺も考えてなければならないと思う。(32:56)

「TPPに日本が入ることで安全保障上の日米の同盟関係も強化される」(前原)

村田:さて、喫緊の問題についてさらに伺っていこう。今月末に総理が訪米する訳だが、今回は何を期待すべきか。また、そののちに続く日米関係の具体的強化についてどのように考えれば良いのか。改めて御三方にお聞きしたい。(33:33)

Fukushima:3年以上続いた民主党政権にあって、その後半というか、野田政権では、特に安全保障関係も元に戻ったという自信をアメリカとしてはつけたと思う。恐らく1〜2年目は危惧もあっただろう。(34:09)

で、安倍総理の訪米に関して言えば、ひとつには日米関係の重要性を再確認することが最大のテーマだ。で、その次の二つの大きな課題としてTPPと沖縄問題が挙げられると思う。普天間問題を今回の会談ですぐに解決すると期待している人はいない。しかしTPPは別だ。アメリカは、安倍総理を含めて自民党の幹部の皆さまのなかにも「日本も参加すべきと考える人がいるようだ」と。ただし選挙公約もあるし、抵抗勢力は非常に強い。参院選のことも考えると、現時点で日本が参加すると言うのは難しいだろう。しかし今は言葉の遊びのような話になって、「聖域なき完全撤廃が条件ならば参加しない」という話になっている。アメリカ側も最初から公に例外事項を認めることは出来ないが、交渉した結果として例外が出ることは想定していると思う。(34:54)

そのあたり、どこまで言葉を使い、互いに現時点での妥協点を見出すことが出来るか。「TPPに参加すれば日本にもベネフィットがある」とアメリカは考えている。日米の経済関係も強化される訳で、その意味で、日米関係を包括的に強化するひとつの手段として重要だと考えている人がいるのは事実だ。従って姿勢としては「TPP交渉参加、普天間問題の解決、そして日本経済の再生に関して積極的であって欲しい」と、そういう期待をしていると思う。(36:42)

川島:「北京から見て困ること」という視点で申しあげると、まず安全保障の面で集団的自衛権の話が進むことだ。また‘Asia Pivot’または‘Rebalance in Asia’に関連して、自分たちが包囲されるようなシグナルが日米あるいはオーストラリアなどから発せられると、これも中国は嫌がると思う。それとTPPに関して最近の中国はタカをくくっており、「日本がやるのは無理だ」と思っている。従って話し合いへの参加、あるいはもう少しポジティブに交渉が前進するような話が出てくれば、これも刺激になるだろう。(37:47)

三つ目はやはり歴史問題だ。アメリカ政府や日本に親しみを感じている方々へ、総理が歴史問題に関して何か安心するような話をなさることも大きなメッセージになるだろう。中国はその辺を嫌がる一方、安堵する面もあると思う。何故かというと、最近の中国は日米を離間させようと、心理戦を含めて色々なことをやっている。その辺の問題に関してもアメリカ側の懸念やわだかまりを、ある意味でくすぐるようなことをかなりやっている。だからそこを収める。ただ、たとえば安倍総理が靖国参拝をしないというのは、中国とすればそれはそれでひとつの安心材料になる。(38:28)

前原:政権交代が再び起きてからまだ時間も経っていないことであるし、あまり話すと言い訳にもなるので若干申しあげにくいが、たしかに一年目の日米関係は最悪だった。普天間問題で極めて厳しい状況に置かれ、鳩山さんとオバマ大統領との会談もセット出来ないような状態だった。しかしながら菅政権以降は「日米関係は大事だ。両国の関係を再構築しなくてはいけない」という流れのなか、関係は急速に改善されたと思っている。この点については特に自民党から「民主党政権で日米関係が駄目になった」と、言われ過ぎているのではないか。アメリカでもその辺について意見を口にする人がいる。(38:18)

震災でも「トモダチ作戦」ということであれだけの人間を動員し、ご遺体の捜索や原発事故での協力等、NRC(米原子力規制委員会)を含めてアメリカ側は目一杯の協力をしてくれた。何故それほど協力してくれるのかと言えば、「同盟国じゃないか」と、彼らは言い続けた訳だ。もちろん普天間は未だ難しい問題だが、これについては時間が経ったのち、あの時代の日米関係がどうだったのかを冷静に見られるようになってからご判断いただければと思う。いずれにせよ内側から日米関係を見ていた私としては、菅政権以降はそれほど悪くなかったと思っている。「戦略的視点で日米関係を強化させないと、喜ぶのは誰だ?」ということで互いに取り組んできたことだけは申しあげておきたい。(40:19)

そのなかで私が感じるのは、オバマ政権は極めて実務的であるという点だ。オバマ大統領は顔合わせをしたうえで…、たとえばブッシュさんと小泉さんのように何かパフォーマンスをしながら関係を盛りあげるようなタイプではまったくない。従って外務省も今は頭を悩ませていると思う。「日米首脳会談で何をするのか」と。安倍さんとすれば「日米関係は大事だから」という話になる訳であるし、実際に大事だ。会うこと自体が大事だと私も思う。ただ、オバマ政権は「会って具体的に何が進展するのか」と考えている。(41:27)

Fukushimaさんが仰っていた通り、そこでTPPが自由貿易協定を超えた大きな戦略的意味を持つ。中国は…、政権にいたときの話なので中身は申しあげられないが、日米離間政策のひとつとして日本がTPPに入らないよう色々と工作活動を行っていた。裏を返せばTPPに日本が入ることで安全保障上の同盟関係も強固になるということだ。「中国が嫌がるから入りましょう」という意味ではない。しかし今後は「ボゴール目標」ということで、APECの 20カ国・地域で経済連携協定を結び、一体化していこうと決めている。その中核でアメリカともに日本が経済の面でルールメイクしていくような、そんな戦略的判断でTPPに入ることが大事だと私は考えている。(42:24)

TPPに関しては事前審査というものをやっている。で、そこで牛肉についてはある程度片付いたのだが、特に自動車についてアメリカは相当にえげつない要求をしてきている。いわゆるスイング・ステートが自動車産業の強い地域だったこともあり、大統領選で両候補とも自動車に関して、まあ、言ってみれば言質を与えてしまっている。それで事前交渉の中身も相当ひどいというか、“高い球”を投げてきている面がある。(43:40)

ただ、そこを超えて早くルールメイキングの交渉に入り、日本も例外品目を含めた結果をしっかり勝ち取るという意思でTPPに臨む。そのことが日米関係の強化にも繋がっていくのではないか。それがひいては農作物で「やられる」「やられない」という話を超えた、日本の基盤強化に繋がると私は思う。(44:33)

一方で集団的自衛権についてだが、現時点では、私が見る限りアメリカがそれほど関心を持っているようには見受けられない。それと村田先生のご指摘について改めて申しあげると、右傾化というのは自信のなさの裏返しだ。歴史を振り返ってみても度々起こってきた。政治家のなかで「それを口にすればうける」という面が出てきているのも事実だろう。ただ、私としては今回の選挙戦で全国を周った印象としても、ネットでそうした右傾化の活動が今回の選挙ほど見受けられたのは初めてではないかと思う。ただ、実力を伴わない強い言葉や右傾化は結果的に破滅へ向かう。それは歴史が証明しているし、その辺でどのようにバランスをとっていくかが重要だと思う。(45:15)

「東アジア太平洋地域における平和は維持できるのか」(村田)

村田:続いて東アジア太平洋地域における戦略を議論していきたい。東アジアの国家間で戦争が行われた最後の事例は1979年の中越紛争だが、それ以降、この地域で国と国とが武力紛争に至ったことはない。今後もそれは維持出来るだろうか。アメリカはアジアに軸足を移すと言っているが、1兆ドルに近い財政赤字を抱えており、大規模な予算削減には軍事予算も含まれる。また、昨年11月の選挙で共和党は下院過半数を維持し、アメリカでもいわばねじれ国会の状況が続く。オバマ政権は今後も苦しい内政運営を強いられるだろう。(46:42)

また、日本側でも安倍内閣が、民主党政権下で作成された防衛計画の大綱、あるいは日米防衛協力の指針いわゆるガイドラインを見直す可能性があるといった話が出てきた。次年度予算では12年ぶりに防衛予算を増やすことにもなった。そういった話を含め、東アジアにおけるアメリカの軍事的プレゼンスを我々は確保出来るのか。また、そのために日本や近隣諸国はどのように対応していくべきなのか。そして中国はそれをどのように見ているのだろう。(48:19)

Fukushima:たしかに‘Asia Pivot’と言ってはいるが、財政および人的資源の制約はある。第二期大統領就任演説でもやはり国内、特に経済の再生に力を入れていくという意思が強く感じられた。さらに、アメリカは東アジア以外の地域でも、イラン、アフガン、シリア、そしてエジプト等々…、特に中東問題をはじめとした他の外交案件を数多く抱えている。その意味で新たに就任したジョン・ケリー国務長官、そして国防長官に就任すると見られるチャック・ヘーゲルがどれだけアジアに重点を置くか。また、カート・キャンベル東アジア・太平洋担当国務次官補の後任は誰になるか。色々と懸念はある。(49:13)

しかし大統領自身は、一方では前原さんが言われた通り極めて実務的かもしれないが、一方でアジアの重要性を確信していると思う。私自身は4〜5回しかお会いしていないが、彼はハワイで生まれ育ち、少年時代はインドネシアでも過ごした。また、大学1〜2年時はロサンゼルスのオクシデンタル大学におり、20歳になってから初めてコロンビア大学に編入している。その意味でもなんというか…、フィーリングとしてアジアの重要性を真剣に感じているのではないか。従って人事が少々変わっても彼のアジア重視は揺るがないと思う。(50:36)

重要なのは日本からアメリカに働きかけることだ。安全保障や経済面でどのように、特にアジアで協力出来るか。大半のアメリカ人は日本経済が縮小しており、政治の安定にも少し時間がかかるだろうと見ている。だからこそ、日本から「アジアは重要である」と言うべきだ。能動的に、色々な提案や議員交流を含めた色々な形で、アメリカをエンゲージする必要がある。中国、韓国、インド、あるいはシンガポールやミャンマーといった他の国々は最近、アメリカへの働きかけを大変積極的に行なっている。政府・民間・学者・ジャーナリズムレベルでアメリカの行政府や議会あるいはNGO/NPOと手を繋いでいる。(51:42)

前原:日本が努力しなければ日米関係は上手くマネジメント出来ないと私も思う。そのために色々な“かすがい”をつくっていくことが大事で、そのひとつがTPPだ。当然、沖縄問題についても我々が責任を持ってやっていかなければいけない。普天間の閉鎖と代替施設の設置、そして沖縄の包括的負担軽減とともに、沖縄を含めた在日米軍基地の規模は小さくなるかもしれない。しかし機能の強化はしっかり図っていけるような環境をつくることが重要だ。(53:17)

その意味で言えば、別セッションで北岡(伸一・国際大学学長)先生が仰っていた通り、「民主党政権がつくったものだから」という理由で防衛大綱を見直すのは間違いだ。「北方重視から動的防衛力へ」という変化を考えたうえで、その実効性がどれだけあるかという点を判断をしていただき、良いものはしっかり受け継いで貰いたい。(54:25)

また、民主党政権では武器輸出三原則の見直しを行った。これは地味に見えるが非常に重要だ。それで防衛産業の基盤を維持・拡大出来るだけでなく、今後は一番の同盟国であるアメリカと防衛装備面でも協業出来る。変な言い方だが、要は“抜き差しならない関係”をつくっていくということだ。(55:06)

私は国会ヘ送っていただいて20年になるが、その経験から言うと一番えげつない国はやはりアメリカだと思う。「良い意味で」というか、学ばなければならないという意味だが。たとえばイージス艦。当然アメリカから購入しているが、イージス艦にはブラックボックスがある。当初は一隻1200億で今は1400億ほどすると思うが、それほど高額であるにも関わらずブラックボックスはしっかりつくる。そこにはアメリカだけがアクセス出来るようにする訳だ。(55:38)

今後はそういう部分も乗り越えていきたい。私はキャンベルさんと20年近くお付き合いをしているが、彼とは「第六世代の戦闘機は日米共同でつくりたいね」という話をしている。そんな風に、さまざまな形で日米が離れられないような仕組みをつくっていきたい。その意味でも、武器輸出三原則の見直しによって防衛装備共同開発への道が開けたのは大きかったのではないか。安倍さんがやろうとなさっている集団的自衛権に関しても同様だ。そこで国民の意識も含めて見直すなか、何かが起きたときにはしっかりと一緒に行動出来るような仕組みをつくる。その意味で言うとガイドラインの見直しは着実に進んでいる。つまり色々な場面を想定した具体的な作戦計画の策定だ。ガイドラインは指針であり、大事なのはその指針を自衛隊と米軍による具体的な共同作戦に落とし込んでいくことだと思う。(56:38)

川島:中国としてはそれが‘Pivot’であれ‘Rebalancing’であれ、とにかく従来のハブ&スポークがネットワーク化することを恐れている。アメリカだけが東アジア各国にアクセス出来る状態から、横の連絡が生まれてネットワーク化してしまうと中国としてはやりにくいだろう。そういった横の連携をどう防ぐかが今は中国の大きな方針でもある。習近平は尖閣問題後すぐに南寧へ行き、ASEANサミットで東南アジアに大変な太陽政策を行った。日本がベトナムやフィリピンと組まないようにするためだ。そういうことを必ずやる。従って、安全保障を考えるうえではアメリカだけでなく、オーストラリアやインドを含めたアジア各国と連携していくことが鍵になると思う。(58:13)

東アジアと言っても広い。で、中国としては北東アジアよりも東南アジアが主戦場というか、何かをやった場合に点数を稼ぎやすい空間だという風に思っているようだ。それで昨年はASEANの議長国であったカンボジアに相当なテコ入れを行った。中国が困るようなアジェンダを設定しないようにするためだ。また、ミャンマーとの関係でインドによる東南アジア接近にも相当な布石を打っている。カンボジア、ラオス、ミャンマー、そしてベトナムへの関与は特に経済面で相当強化してきた。それによって中国に加えてASEANという形での経済的統合がより一層進んでいく訳だ。だからこそ、そこで日本がTPPによって楔を打ち込んでいくことが大事になると思う。(58:24)

「22年間で総理が15回替わる日本。日米中の三国間連携を中国やアメリカは求めるか」(Fukushima)

Fukushima:日米の安全保障政策について言えば、共和党も民主党もさほど大きな違いはないと思う。ただ、ニュアンスは少し違うのではないか。共和党には日本に対して「集団的自衛権の解釈を変えて欲しい」「憲法第九条を改正して欲しい」と、公には言わなくとも期待している安全保障関係の専門家がかなりいる。一方で民主党はどうかというと、私の知る限り、「安全保障関係を強化したい」「ガイドラインをもっと良いものにしたい」と思っている人はいる。しかし、やはり一方では日本の右傾化を懸念している。また「中国や他のアジア諸国を挑発するようなことはしたくない」と。非常に微妙なところだ。その辺のバランスを強く意識いるのではないかと思う。(01:00:32)

その辺については日本のマスコミにもお願いしたいのだが、彼らはよくワシントンのアメリカ人に取材を行って、「これがワシントンの意見だ」と言う。そこで民主党と共和党をもう少し区別して欲しい。現在政権で働いている人、あるいは最近まで働いていた民主党の方々と、共和党の方がの意見は…、共和党は民主党が選挙に勝ったことが気に入らない状態であるし、今は一生懸命民主党を非難している。その辺は少し区別して見て欲しいと思う。(01:02:24)

村田:マイケル・マンスフィールド(元駐日大使)さんはかつて「日米関係は世界で最も重要な二国間関係だ」と言ってくれていたが、今やそんなことを言う人間はいない。米中関係こそ世界で最も重要な二国間関係だろう。ただ、日米中関係は世界で最も重要な三カ国関係だと思う。シンガポールのキショール・マブバニという、かつて国連大使を務めたアジアの知性とも言うべき外交官はこう言っていた。「100年後、アメリカがアジアにいるかどうかは誰も分からない。ただ、間違いないのは1000年後も中国がアジアにいることだ。だから我々は必死にアメリカのプレゼンスを維持しなければならない」。日本がそのために他国と協力し、何が出来るのか、今問われていると思う。(01:04:38)

会場(田口義隆・セイノーホールディングス代表取締役社長):外交戦略について頭のなかで将棋が浮かんでいた。将棋で言うと尖閣のゴールはどこなのだろう。そして尖閣を歩で考えているのか、玉で考えているのか。仮に歩であるならばそれを取らせた代わりに何を取るのか。あるいは玉ならば守るためにどうするのか。それに至る手法も併せて伺いしたい。(01:05:57)

会場(ロバート・アラン・フェルドマン・モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社 経済調査部長兼マネージング・ディレクター):現在、日本の防衛費はGDPの1%にあたる5兆円前後だが、国家全体の歳出を見ると年金60兆、医療40兆、介護等10兆、その他生活保護等10兆と、計120兆ほど社会保障に使っている。つまり日本の安全保障における最大の脅威は、中国ではない。医師会、農協、等々ではないか(会場拍手)。これはどうやって直すのか。(01:06:43)

もうひとつ。今日は三角形といった話も出たが、参加国で共通アジェンダを設けるべきではないか。たとえば中国に対し「3カ国でエネルギー問題に取り組もうよ」という風に、誰もが得をするアジェンダでアプローチしていく。それとともに二国関係や防衛問題に取り組むべきではないかと思う。(01:07:36)

前原:将棋に明るくないので歩や玉の話はよく分からないが(会場笑)、尖閣は絶対に死守しなければいけない。譲ってしまったら日本の主権はおかしくなる。国民の芯に関わる根本的な問題だ。譲ることはあり得ない。それを守るためにどうしていくかという話だ。大きく見ると、日本が今まで安全保障と防衛でアメリカに依存し過ぎていたため、今は大きな副作用が出てのではないかと思う。(01:08:16)

社会保障が膨らんでいくなか、では防衛費にどれほどのお金が使えるのか…、借金を抱えた現状ではなかなか難しい話だと思うが、それでも自立への歩みを進めていく必要がある。今はイージス艦やF35といった装備をアメリカから買わなければならない。インテリジェンスに関しても同様だ。CIA、MI6、あるいはモサドのような組織もなく、対外情報も海外からもたらされている。仮に北朝鮮からミサイルが発射されると日本には7分で届く訳だが、今はその第一報もアメリカの高高度静止衛星から入ってくる状態だ。(01:09:02)

そして何より、やられたらやり返す能力が日本にはない。やられたらやられっぱなしだ。専守防衛で、そこもアメリカに頼らなければならない。しかし今後は一定の自立能力を持つということを考え、少しずつではあっても着実に改善していく必要がある。武器輸出三原則の見直しは日米関係の“かすがい”であると同時に日本の基盤強化でもある。そのなかで日米関係を上手くマネジメントし、日本の主権を守り抜いていくことが大事だと思う。(01:10:03)

Fukushima:三カ国共通の課題で一緒に取り組んでいくというのは大変良いと思う。アメリカも尖閣問題を巡っては日中へ非公式に担当を送って事態の沈静化を測っていたほどであるし、その提案にも否定的にはならないだろう。ただ、私が想像するに中国はアメリカとの二国間で物事を進めたいのではないだろうか。日本に参加して欲しいとは考えないように思う。(01:10:54)

それともうひとつ。私が日本にいた22年間で総理大臣は15人替わった。クリントン政権の8年間でも7人替わっている。従って安定的かつ長期的に日本と対話をするのが難しいと考えるアメリカ人は多いと思う。だから私は日本の政権にもっと長続きして欲しいと考えている。少なくとも二カ国で共通する課題はたくさんあるし、三カ国でも当然あるだろう。努力をする余地はあると思うが、中国は提案しないと思うし、アメリカもそこまで考えていないだろう。だからこそ日本側からそういうことを提案して欲しいと思う。(01:11:54)

川島:尖閣について少しだけ補足したい。日本はあそこが沖縄県の一部と言っているが、中国の主張は「あそこは台湾の一部だ」というものだ。従って、下関条約で日本が得た台湾という領土のなかに、尖閣諸島が含まれているという主張をしている。ただ、そうは言っているのだが、日本が言っている通り、彼らは1970年まで領土の主張をしたことはない。(01:13:06)

ただ、少し誤解があるなと思うのだが、実は1947年、南京の中華民国が尖閣を取り戻すか否かを検討している。で、これは外交部の役人レベルで止まっていて政策には反映されていない。1950年には北京の中華人民共和国も検討したが、こちらも同じく政策に反映はしていない。そして1970年の8月頃、蒋介石のほうで尖閣が自分たちの領土であるということを決め、その瞬間、釣魚島という名前に変えている。そうしたこともきちんと調べたうえで、日本としては反論すべきはきちんと反論することが大事だと個人的には思う。(01:13:37)

それと三カ国共通アジェンダの話だが、Fukushimaさんがおっしゃる通り、中国側は恐らく嫌がる。中国は日本が色々な面でアメリカの下にいる存在という風に思っている面があるので、「何故日本を入れるのだ」と思う北京の人間も多いだろう。ただ、それが実現不可能かというと、可能性はあり得る。たとえばアメリカ国債の問題。これは日中双方が抱える大きな問題だ。そこにアメリカを入れていく。人民元を巡る協力でも北京は大歓迎だろう。そんな風にして北京が喜ぶ話を選んだら、あるいはあり得るかもしれない。(01:14:14)

村田:今日は日米中関係だけをとってもいかに複雑かということがありありと見えたように思う。実に複雑な連立方程式を、さらには内政との関係見ながら我々は解決していかなければならない。我々の成熟度が問われるところであると思う。今日は貴重なお話をしてくださった御三方に心から感謝の拍手を送りたい。本日はありがとうございました(会場拍手)。(01:14:51)

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