日本たばこ、楽天の事例に学ぶ成長戦略としてのM&A 

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和 西村あさひ法律事務所 パートナー弁護士 一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授 「JTのM&Aの目的はブランド、インフラ、時間、人材。大事なのはそれ自体を目的化しないこと」(新貝)

岩倉:(国内市場の縮小や新興国市場の拡大といった)競争環境の変化、また円高などを背景に、日本企業による海外企業買収が増加している。本日は、日本たばこ産業、楽天という先行企業の事例、そしてアドバイザリーとして各社のM&Aをサポートしている岡氏からのアドバイスに学ぶ形で、成功の方程式を探りたい。
まず日本たばこの新貝氏から。日本たばこは1999年、(米タバコ業界2位のRJRナビスコの海外タバコ部門であった)RJRインターナショナル(以下RJR)を買収し、日本における海外M&Aの金字塔を打ち立てられた。新貝氏は当時から、同社の海外事業戦略の中枢におられ、2007年、2兆2000億円での英ギャラハー社の買収・統合時にはCFOとして陣頭指揮をとり、世間の耳目を引かれた。
順に伺いたいが、RJRはJTインターナショル(以下、JTI)として日本たばこの全海外事業を束ねる存在となったが、この買収はどのような経緯で進められたのか。RJRナビスコからは1988年にも売却のオファーがあり、しかしその際には断ったと聞いているが?(01:40)

新貝:1988年当時、私はまだ33歳だったが、当該件の検討には加わっていた。若気の至りもあり、「買収すべきだ」ということを幹部にもずいぶんと働きかけたが、結果的にはNoの決断が下された。今振り返ってみるとデューデリジェンスや交渉を行う人材もいなかったし、財務のフレキシビリティ、あるいは資金調達する能力もなかった。海外へ打って出ていこうという機運はあったがリソースやスキルが足りなかったというのが正直なところだ。(9:19)
買収検討のきっかけは、たばこ産業への逆風。(タバコの健康や環境への影響などが指摘され)広告宣伝がやりづらくなっており、自社ブランド、たとえば「マイルドセブン」を担いで海外へ出て行って、そこでゼロからブランド・エクイティを作るというようなことがどんどん難しくなり始めた時期だった。それで既に知名度を持つブランドを買収したいという思いが強くなっていた。もう一つは、その翌年の1989年に行った「国内たばこ市場が今後どうなっていくか」という多面調査で、「98年前後にはピークアウトするだろう」という衝撃的な結果を得たこと。結果として、「とにかく海外へ出る準備をしなければ」という腹固めが経営陣やミドルの間に共有されていった。要は危機意識に後押しされた。(10:21)
それまでは輸出モデルのみで、海外でバリューチェーンを一気通貫に持つということは経験してきていなかったため、まず1992年に英国のマンチェスター・タバコを買収し、日本からかなりの人間を送った。そこで、後のRJR買収で活躍できる人材を育てていったという経緯だ。RJRを88年に買収出来なかった無念さは、私を含めた当時のミドル、そして99年の買収で中心的役割を果たす木村(宏)前社長は、ずっと持っていた。従い、実は89年にRJRナビスコ全体が米国の資産運用会社KKRにLBO(Leveraged Buy-Out)された際、我々はチャンスが来ると考え、その後も狙いを定めていた。LBOということは、いずれアセットの切り売りが始まるのは自明だからだ。結局そこまで10年かかったわけだが。(12:08)

岩倉: 10年間、人材育成を含めて周到に準備していた、と。新貝氏は過去の記事で「M&Aには時間を買うだけでなく、人を買う意味もある」という趣旨のことを応えられている。実際、JTインターナショナルの現CEOピエール・ ドゥ ・ ラボシエール氏もこのとき加わった方だ。(14:13)

新貝:そこにお応えするために、まずグループの全体像から概説したい。JTインターナショナルはJTグループの海外たばこ事業を統括しており、本社はジュネーブにある。日本で見ているのは国内と中国のみだ。売上構成比は国内と海外で半々。利益は海外のほうが多い。なぜそうしているかというと、人材が少ないということがある。我々は商社のように営々と人材を育ててきた訳ではなかったので、人材的にいわば“貧者の戦略”を採ったことになる。買収という手段で究極の経験者採用をしてきたわけだ。それともう一点。私としては、そもそも日本人が世界中の多様なマーケットのすべてを経営できると思うのは驕りだと考えている。理由は色々あるが、ひとつには日本人のリベラルアーツ教育、要は教養が非常に貧しいという思いがあるためだ。日本で教育を受けた人間が国際人としてグローバル経営をしていくのは難しいのではないかという危機意識があった。いずれにせよ、多様なマーケットに多様な人材で対処していくことが不可欠になると当時から考えていた。(16:22)
RJR買収の目的は、ブランド、インフラ、時間、そして究極の経験者採用という意味での人材、この4つにあった。結果として現在はジュネーブに17名いる役員の国籍も12カ国にわたり、日本人は私ともう1人の2名だけだ。社員も900名中、日本人は50名程度しかいない。買収後は、「どうすれば適切なガバナンスのもとで事業を任せられるか」、あるいは「どうすれば最適なバランスを見出せるか」といったことを、試行錯誤しながら考えていった。日本企業はオペレーションに長けていると言われるが、それは日本という特殊な環境で育まれたベストプラクティスに過ぎず、そのまま海外へ持っていったからといって成功するとは限らない。だから日本のやり方を押しつけるのは一旦止めて、多様な人材が集まる環境のなかで何がベストなのかを可能なかぎりゼロベースで考えていった。それによって海外で買収したRJRと、それまで細々と展開していたJTの海外事業とを統合していった感じだ。(17:43)

岩倉:グローバル展開の大きな方向性に合致し、またそれまでの経験が結実したのがギャラハー買収だったと思う。当時のプレスリリースには、「規模拡大によるスケールメリットの享受」、「両社の相互補完性」、「技術・流通インフラの強化」、その他「売上増」と「事業効率化」といったあたりでシナジーを図るということが明確に書いてある。こうした戦略上の目的をはっきりさせたうえでの買収だったという理解でよろしいか?(21:01)

新貝:そのキャッチフレーズを書いたのは私なのでその通りだ(会場笑)。買収発表は2006年12月だが、検討をはじめたのは03年12月に遡る。ギャラハー以外にも数社見ていたが、06年の早い段階でギャラハーにしようと決めた。
目的を明確にしておくことは極めて重要だと思う。デューデリジェンスや事業統合のなかで常にセットバックは起こるものだが、そのとき「なぜこの買収をしたかったのか?」という地点に立ち返ることが不可欠だからだ。(22:15)
03年12月からの3年間、特に最終的に「ギャラハーでいこう」と決めた数カ月に集中的に行ったのは、買収後の経営の青写真を描くことだ。国内M&Aにおいても買収後に「どんなブランド配置にするか」「人員配置にするか」「本社はどこに置くか」など考えなければいけないことは多い。旧JTインターナショナルと旧ギャラハーは、世界各地で事業が競合しており、市場ごとに何をどうしていくかという青写真を作らない限り、全体としての売り上げ、コストの増減、シナジーの具体的な算出ができなかった。語弊を恐れずに言うなら、バンカーさんには決して出来ないような、そんなバリュエーションが大規模買収においては実は不可欠だと思う。例えば、独禁法などに抵触し、後日、事業の一部を手放さなければならなくなった場合はどうなるか、といった定量的なインパクトも可視化できない。また、買収前に青写真を描いておくことは、統合管理にも大きな役割を果たす。買収後、どこに落とし穴がありそうか、リスクを事前に心積もりしておけるからだ。無論、2割程度は“開けてびっくり玉手箱”みたいなことも起こるが、基本的には“段取り8分”だと思う。(23:32)

岩倉:JTインターナショナルの場合、買収担当者が、そのまま統合管理にも参加すると聞いている。これはなぜか、また、統合管理ではどのような部分に苦労するものなのか?(26:01)

新貝:統合後の経営こそ買収の目的なので、統合自体はとにかく早く進めなければいけない。組織統合と言えばGEの“100日プラン”が有名だが、これは基本的に同じ国のなかで買収する際の話だったと思う。我々はRJRの買収時、計画策定に8カ月かけており、しかし、「GEさんは100日と言うけれど、これだけグローバルな統合なら8カ月でも上出来じゃないか」と自惚れていた。けれど、これはとんでもない話で、8カ月の間に両社の役員、社員の間に「自分は生き残れるのか」という不安が蔓延し、結果、日常業務に支障を来すところまでいってしまったのだ。(27:22)
この際の反省を受け、ギャラハーの買収完了後は何がなんでも100日で統合計画をつくろうと、さまざまな工夫を施した。その一つがご指摘の件だ。つまり、買収担当者(我々はBD(ビジネスデベロップメント)と呼んでいるが)に、統合計画の策定と実際の統合作業にも参加してもらうこととした。ギャラハーのことを最も分かっていたのはデューデリジェンスを行ったBDだからだ。ただ、彼らはディールには長けているがビジネスプランなどの計画立案には慣れていない。そこで、買収発表と同時にBDと、中期経営計画を毎年つくっている人たちとを束ねて、統合事務局をつくり、彼らに任せる体制とした。
(28:47)
もう一つの工夫は、意思決定の迅速化だ。買収とその後の統合過程では予期しないことが次々と起きる。買収とは自ら有事をつくり出すことだからだ。私の理解では、有事は集中、平時は分散。そこで統合管理においては、平時と異なるトップダウンの意思決定ルートで、即断即決できる体制を敷いた。イシューがあろうがなかろうが毎週月曜日は必ず主要メンバー全員が集まれるよう時間をブロックしておき、仮にイシューがあればその場で決める。例えば、ギャラハーを買収した後に分かったのはERPもHRの規定も4つずつある“分断統治”が行われていたこと。同社自体が過去に3社を買収し4社の複合体だったという経緯から、実は1社買収したつもりが4社分のインフラがあった。これを踏まえ、どう統合計画を修正するか・・・そういうことを即時にやっていった。
そういった文脈で「統合の10原則」というものをつくったのだが、特に重要なこととして、双方の社員に「日々の仕事を絶対に疎かにしないでほしい」と伝えるというものがあった。「あなたたちの将来は日々の仕事の、そのパフォーマンスの先にある」というメッセージを明確に出した。これを怠ると先ほどお話しした不安のモメンタムが大きくなり、我々の事業が他社の草刈場になってしまうためだ。(30:30)
それともう一つ。不安を払拭するためにも人的公平性の確保を重視した。CEOのピエール・ラボシエールと私とで1週間をかけ、ギャラハーの執行取締役および役員、そして上級管理職の推薦を受けた50名と面談し、そのうえで誰に残って貰うかを決めた。ピエールからは欧米企業も普通はそこまでやらないと言われたが、「我々がいかに公平性を考えながらこの統合を進めているかというメッセージになる。だからぜひやって欲しい」と言って進めた。大変な労力を使ったが、結果として「JTグループは大変フェアな会社だ」と、上級管理職よりも下位の人たちが特に安心してくれる効果を得られた。(32:23)

「キーワードはガバナンス、上場企業だから大丈夫というが、できているようでできていない」(岡)

岩倉:ここまでのお話について、岡氏よりコメントいただきたい。(34:19)

岡:買収目的をはっきりとさせておくことで、「なぜこの買収をしたかったのか?という目的に立ち戻る」というのは、当たり前と思われるかもしれないが、いつのまにか買収自体が目的化してしまう会社が意外に多いものだ。またデューデリジェンスというと、昔は、評価額を叩くための粗探しのようなイメージがあったが、今は違う。買収後に、どのようにシナジー効果を得るか、どんな経営体制やガバナンスを敷くか、あるいはKPIをどうするか等、統合後の事業計画を併行して描いていく。それをあの時代からやっていたという意味でも、JTは本当に素晴らしいと思う。(34:42)
バリュエーションに関しても同じようなことが言える。M&Aのバリュエーションには報告目的と分析目的があり、投資銀行などの方々はあくまで報告目的で行う。しかし企業にとって大切なのは分析目的のほうだ。例えば、どれほどのシナジー効果が得られるか、どれほどトップラインが出るのか。これが単価×数量というレベルで見ていく。それで、ある国で十分な数量が出ないと分かったとき、どうするか・・・そこまで精緻で綿密なシミュレーションは社内の人間、あるいは私たちのようなアドバイザーが会社側の立場で行うほかないが、できているところは稀有であり、そこにも感銘を受けた。(35:55)
そのうえで、私としてキーワードになると思ったのは、「ガバナンス」。日本企業の多くの方が、「うちは上場企業だし、ガバナンスぐらい取れているよ」とおっしゃるが、私たちが担当する案件でも、海外でインアウトのM&Aを行って初めてガバナンスの重要性に気付いたという会社は多い。大体の会社が国内には子会社を持っていて、親会社が株主の立場としてガバナンスを効かせていると言うが、実際には昔の上司が子会社社長に就いていて誰も何も言えないという状況が起きていたりする。通用するのは年次、声の大きさ、派閥(会場笑)。それはガバナンスではない。そういう会社が、例えば海外進出をする。例えば工場を作るぐらいなら「そちらで製造したものは引き取らない」と言うだけでいい。商流でコントロール出来てしまう。大事なのはその先。バリューチェーンが完結している会社を買収すると、どんな意地悪も効かなくなる。そこで初めて「ガバナンスでなんとかしなければ」と気付く。「じゃあ取締役はどうしよう」という話になり、「そういえばうちの子会社はどうなんだ?」と。そうやってようやくグループ経営に立ち戻る日本企業は多いと思う。そこをギャラハー買収のときに、一足飛びにJT、JTインターナショナルというふうに持って行ったのが素晴らしい。(36:50)

「デューデリジェンスは一方的な値踏みではなく“お見合い”と考えている」(東林)

岩倉:続けて楽天のM&Aに関して基本方針から伺いたい。(42:11)

東林:楽天のM&Aも基本的には「自分たちは何をやりたいんだっけ?」という目的意識を基点にしている。そこで年次の事業目標を達成するために優先順位をつけながら「次はここでこういうことをやろう」と。その際の実行手段として、ゼロから構築するグリーンフィールド、どなたかとのパートナーシップ、そしてM&Aという潜在的な選択肢3つぐらいから峻別していく。この際、他社と少し異なる文化が楽天にあるとするれば、M&Aを必要以上に恐れない蛮勇というか、M&Aを怯まず普通の戦略メニューとして扱う点かもしれない。目的達成のためほかのやり方よりも買収のほうが良いと判断すれば、それを考えていく。で、その際の基本方針を敢えて挙げるとすれば、両社の文化的親和性といった判断軸があると思う。財務的に云々でなく、一緒にやっていけるのか否か。特に海外企業を買収する際はそこを重要視している。(43:19)
併せてそもそもなぜ楽天が海外へ出ていくのかという話もしたいのだが、大きな枠組みで言えば日本たばこのモチベーションと似ていると思う。1990年代には世界GDPの十数%を占めていた日本のGDPが、次世紀中頃にはおよそ3%になるという展望もある。だから我々としても、GDP成長と密接にリンクしている業種でもあるし、「日本でだけ戦っていて良いのか。GDP成長がほぼ見込めないのであれば海外へ出て行くしか次のステージはないよね」と。(46:40)
我々としては急成長のなかで常に人材不足を感じていたこともあり、特に人材やマネジメントチームを買うということがM&Aにおける一つの大きな意義になっている。また時間を買う側面も大きい。インターネット関連は比較的、新しい業種ということもあり、勝負がついた後に参入するのと、勝負がはじまったばかり、あるいはまだ勝敗が決まっていない段階で参入するのとでは大きな差異を生じる。そんなこともあって海外進出ではM&Aというソリューションが結果的に多くなっている。(48:17)
実際の買収にあたっては当然デューデリジェンスを行うが、買う側が買われる側を一方的に見定める調査ではなく、相互にお見合いをするというような基本姿勢でやっている。先に述べたように文化的親和性を重視しているためだ。従って、対象会社に出向いて色々と見たり聞いたりするのと同時に、必ず相手方にも楽天に来てもらい、我々の戦略を説明している。現場ではどういった人間がどんなオペレーションをしているか。そういったことまで見てもらったうえで、一緒にやっていけそうか、または「やっていきたい」と思えるかという相手方の感触も判断材料としている。(49:23)
またPMI(Post Merger Integration)も重要だと思っている。買収手続きにかかる労力と買ってから発生する労力の比率は、ざっくり言うと1対9、あるいはそれ以上の差がある。従って買収プロセスの段階からPMIは始まっているし、そのためのデューデリジェンスでもあるという認識だ。買収の段階でどこにどのようなシナジーがありそうかまで読み込んだうえで、想定事業計画を作っていく。そのためには、環境が許す限り我々の手の内を対象企業のマネジメントに見せて、「貴方たちはここが素晴らしいけれど、ここは楽天のほうが良いかもしれないね」という具合に擦り合わせていく。(51:06)
これはピュアに買収交渉のことだけを考えると(安値での価額交渉はしづらくなるなど)得策ではない。ただ、買収後に「あのとき“こういう方向で頑張ろう”と話したよね」と言い合える状況にしておく意味は存外に大きい。それによって案件がクローズしたあと、速やかに実行ステージに移れると信じている。従ってほとんどの場合、買収完了時には想定事業計画が完成している。粗探しをしない訳ではないが、まずは「何を一緒に作ることが出来るか」といったことを大切にしながら準備を進めるという形だ。(52:31)

岩倉:至近だけでも、米国、フランス、カナダ、台湾、ノルウェーなど、各地の企業を買収されている。最近ではカナダのkobo社の買収が注目された。過去の具体事例からの学びとして何か共有いただけそうなことがあれば伺いたい。(53:50)

東林:実は多くのケースについてオンゴーイングで事業計画を走らせているので、「過去」と言えるものは殆どない。今、何もしていないと言えるのは、TBSの件ぐらいだ(会場笑)。koboについては、我々の業態から考え、書籍という商材を扱わないという選択肢はあり得ない。だから、書籍の電子化が進んでいる状態であれば、何らかの形で参入するという考えは元々あった。で、「やるのなら早いほうが良いよね」と。実はグリーンフィールドでやってみようと動いた時期もあるが、チームの立ち上げ自体から苦労した経緯もあり、「やはりM&Aのほうが良いね」と。それで色々なプレイヤー(と言っても有力なプレイヤーは世界でも限られてくるのでそれほど大きな調査でもなかったが)を見て、実現可能性や自分たちの体力を踏まえつつターゲットを絞っていった。(56:15)
その後、やったことはいつもと同じだ。まずは“お見合い”をし、「koboのマネジメントは起業家精神を持っていて機敏に動くことが出来るな」と感じた。そして彼らも「楽天傘下でグローバル化を加速出来る」と考えてくれた。そんな相性の良さをデューデリジェンスのなかで確信していった。当然、ビジネスを日本からローンチする計画は買収完了前に下絵として出来ていた。結果的にローンチの段階で皆さまにご迷惑をお掛けしてしまった部分もあったが、現在はとにかく買収過程で作った青写真に手直しを加えながら前進させている段階だ。(57:56)

「リスクは減らすものでなくマネージするもの。過度におそれずプロも上手く活用して」(岡)

岩倉:ここで改めて岡さんに総括コメントを、可能であれば特に新興国市場へ入っていく際のリスク管理にも触れていただきたい。(59:37)

岡:成長戦略としてのM&Aを考えるうえで3点、お話をしたい。まずリスク管理についてだが、そもそもM&Aではあちこちにリスクが転がっている。従ってリスクがあることを前提に、具体的に何がリスクなのかをきちんと理解することが大切だ。理解すると「リスクが多いから止めようか」という話になりがちだが、それは違う。そこでどのように対処するかを考えつつ、「皆もやっているし出来るはず」という強い心で進めて欲しい。アジアや新興国に関して言えばコンプライアンス…、たとえば賄賂だとか、我々としてどうにもし難い部分はある。ただ、だからこそ社内でも大いに議論して判断基準づくりをしてほしい。そうした、リスクは減らすものでなくマネージするものという話がまず一つ。(1:00:28)
二つ目は…、これは我々のクライアント企業もやっているが、特に新興国でのリスクを回避するために投資ファンドがオーナーとなっている海外企業を買収するという手があることをお伝えしたい。投資ファンドが入る段階でガバナンス体制やコンプライアンスもかなり精査されるためだ。自分たちで直に経営するのが難しい国があれば、その国にオペレーションを持つ欧米企業を買収するというのもひとつの手だと思う。欧州の現状が良くないこともあり、かつて日本にいた大型再生ファンドは現在、皆、欧州へ行っている。今、彼らはまさに仕込み中で、数年のあいだにイグジットをする。それを皆さまが買収機会としていくのも大きなチャンスになると思う。(1:01:47)
そして三つ目。本会場にいらっしゃる皆さまのほとんどは買い手になると思うが、実際の買収ではフィナンシャル・アドバイザー(FA)つけると思う。当然、売り手にもつく。ところが買収する対象会社にはついていないことが多い。しかし買収後に価値を上げるのは対象会社のはずだ。従って彼らにアドバイザーをつけるということも今後はひとつの手になると思う。対象会社は売り手のFAに自分たちの利益や利害を調整して貰うことが多いが、買収がほぼ確実になってくると彼らは買い手のほうに目を向けはじめる。「自分たちはどうなるのか」と。そこで彼らのなかでも大きな利益相反が生まれる。そのときに誰かが代理をしてあげるというのはひとつの考え方かと思う。(1:03:10)

質疑応答

・JTとJTインターナショナルの間でガバナンスの相違点として大きなものがあれば教えてほしい。(1:06:30)
・過去のM&Aについて振り返りをしているか。下手なやり方をすると犯人探しになりかねないが必要と思うので。(1:06:30)

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