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青山フラワーマーケット井上英明代表×Soup Stock Tokyo遠山正道代表「マーケティングじゃ心はときめかない」

投稿日:2009/08/04更新日:2019/04/09

戦略のような難しいことは考えたことがない(井上)

田村:それでは、まず自己紹介と企業、店舗について簡単なご説明をお願いします。

井上:パーク・コーポレーションの井上と申します。「Aoyama Flower Market(青山フラワーマーケット)」という花屋を東京、札幌、大阪、福岡などで約70店舗展開しています。日本に2万4千軒花屋があると言われていますが、僕らの特徴を一言で言うと、「Living With Flowers Everyday」。花や緑が身近にある生活を目指しています。

誕生日や記念日の時だけ利用される贅沢品としての花や緑ではなく、「日常的に自然に囲まれた心豊かな生活」をコンセプトにしています。100本のバラを1人に売るより、1本を100人に売りたい。客単価は低くてもいい、どこよりもたくさんのお客様に買ってもらいたいと思っています。350円から買える手ごろなブーケなど値段は手ごろで、駅中やデパートの食料品のフロアなど、通りすがりに、手軽に買える場所に出店しています。

原始時代の人間は、自然の中で生活していました。現代の都会で視野に入ってくるものは、“直線”ばかりですよね。だからストレスが溜まる。自然の潤いで生活や街の中を満たして、ストレスの少ない社会にしていきたい、ということを考えています。

最近は趣味のトライアスロンが高じて、トライアスロンの会社を創りました。僕はMBAを持っているわけでもなく、この場にふさわしくない気もします。徹底的な右脳寄りの人間で、感じて動くタイプ。あまり戦略のような難しいことは考えたことがない。頭に脳みそが入ってないんじゃないかな(会場笑)。やってみて、良いと思えば、そっちに行くタイプです。

遠山:「Soup Stock Tokyo(スープストック東京)」という無添加の食べるスープのチェーン店を、東京、名古屋を中心に54店舗経営しています。今年で10年目になります。立ち上げの企画書は「物語」仕立てで書きました。未来から過去を振り返るという内容だったんです。その物語の中で、「10年でスタンダードになり、50店で打ち止めになった」と過去形で書きました。10年目で54店舗なので、今のところ、ほぼ予定通りです。

JALとのコラボレーションで、機内食を昨年6月から提供しています。これもやはり10年前の企画書の物語の中で、「JALと一緒に『On The Ship』というブランドをつくった」と書いてあり、その通り実現しました。

「giraffe(ジラフ)」というネクタイのブランドも持っています。ジラフはキリンですね。「一人ひとりがキリンのように目線を高くして頑張れば世の中全体も良くなる」というコンセプトのブランドです。もう一つ、「PASS THE BATON(パス・ザ・バトン)」というリサイクル店を9月にオープンします。

最高のものを創ったという実感があった(遠山)

田村:まずはブランド作りに成功している理由をお尋ねしたい。井上さんは会計事務所、遠山さんは商社マンからキャリアをスタートしていますよね。そんな中で、魅力的なものを発想し、起業し、一つのブランドに育ててきた。何が発想のきっかけだったのか、また成功の要因はどこにあったのでしょうか。また、それぞれ企業名が「スマイルズ」「パーク・コーポレーション」と、消費者から見えるブランド名とは違います。社名に込めた想いのようなものはあるのでしょうか。

遠山:総合商社の三菱商事に1985年、入社しました。転機は10年程経ったころです。当時の上司が非常に優秀な方だったので、「自分も何でもできる」という勘違いをしていた。偉くなったように錯覚していました。でも自分の中にある違和感は隠し切れなかったんです。「上司がいなくなったら、自分は大丈夫だろうか。三菱商事の名刺で仕事をしているのではないか」と考えたらギョッとして、「このままサラリーマンを続けていても自分は満足しない」と感じていることに気づいたんです。

絵が得意だったので、とりあえず絵を描いて個展を開こうと考えました。ごめんなさい。全く皆さんの参考にならないですよね(会場笑)。でも実はこれが大きな転機になりました。32歳の時に、プロデューサーをやっている知り合いに、「35歳は四捨五入したら40代でおじさんが暴れているみたいだから、34歳までに実現したい」と相談したら、「三捨四入」だと言われて、早急に実行することになったんです。

イラストを描いたことはありましたが、1年で70点仕上げるのは大変です。仕事をしながら、週に1枚以上描きました。そして、個展の開催に向けて、本当にたくさんの知人、友人が力を貸してくれました。オープニングの前日、最終チェックに来たスタイリストの友人に、「スポットの位置がちょっとずれている」と言われ、絵の位置を入れ替えることになりました。ヤグラを組み直して、30分かけて2センチだけ移したり、作品につけたタグもすべて動かしたりと、夜中の2時までかかってしまいました。「最高の個展にしたい」。その一心だったんですね。

翌朝、出勤して同僚に、「最高だから見に来て」とふれまわりました。「私の絵を見てくれ」というよりも、これだけたくさんの人が助けてくれ、夜を徹して最高のものを創ったという実感があったからです。なるべく大勢の人に見てもらいたかった。

結果的に絵は70枚すべて完売しました。自分自身をさらけ出し、世の中に問うたこと。皆で協力して最高のものを作り上げたこと。そこには、商社の仕事では味わえない充実感がありました。そして、創る喜び、人を呼ぶ喜びという個人の情熱とか高ぶりと、商社のような企業が持つ信用力、ネットワークを結びつけると、きっと自分の立ち位置が出来るという直感みたいなものが、スープストックにつながっていったんです。

将来に興味はあるが、終わったことには興味がない(井上)

井上:僕は縁あって大学卒業と同時にニューヨークの会計事務所に勤め始めましたが、仕事をしているうちに、「将来には興味あるが、終わったことには興味がないタイプ」だと分かったんです。例えば1ドル合わないだけで帰れなかったりするわけですが、「もうオレが出すから帰って早く飲みに行こうよ」と(会場笑)。結局人生の無駄遣いのような感じがして、1年ほどで帰国してしまいました。

自分で会社を興そうとしたわけですが、会社名を考えた時、セントラルパークの情景を思い出したんです。よく走っていたんですね。会社にいる人たちは何か難しそうな顔をしているけれど、公園に来ている人たちは、みんな笑顔だった。楽しい会社にしたい、いつかニューヨークのパークアベニューに会社を持ちたいという想いで、「パーク」を社名につけました。

まず、「プライベートセクレタリー」というコンセプトで、会員制の社会人向けサークルを立ち上げ、イベント企画を始めました。「日銭商売が必要だ」と本で読み、日本経済新聞のスクラップから、「花の時代」という記事を見つけました。「そういえば実家にもよく花があったなあ」と気になったんです。

早速知り合いに頼んで、花市場に連れて行ってもらいました。花屋なら高額な花でも、市場ではたった100円程度。驚きました。こんなに安いのかと。そこで買った花100本を持って、お世話になった政治家の先生に会いに議員会館に行きました。一週間後に電話がかかってきて、「評判がいいからまた持ってきて欲しい」と言われて、また持っていって、「あ、これいい商売だ」と。そのまま花屋になりました(会場笑)。戦略を練るということをせずに今日に至っています。経営を学んでいる皆さんには本当に申し訳ない(会場笑)。

田村:そうですね。学生の皆さんは、マーケットを分析し、市場は、競合はどうなっていると、客観的に眺める部分を学んでいる。やりたいという「想い」から入るのは、また世界が違うのかもしれません。そのあたりのバランスをどのように保っていますか。

マーケティング、はっきり言って嫌いです(遠山)

遠山:「数字」と「想い」ということでは、120%後者です。マーケティング、はっきり言って嫌いです。例えばワイドショーが「黒ゴマは体にいい」と言えば、ヒットするから「黒ゴマプリン」を作る。売れなくなると、「なぜ作ったのか」と犯人探しが始まり、「テレビが言ったからだろ」と(会場笑)。マーケティングは同じようなこと。お客様のニーズに、声に耳を傾けるといっても、もしそれで作ってみて、「やっぱり要らない」と言われたらどうするのと。

そういうアプローチの有効性も承知ですが、何せ絵の個展から入った私としては、自分から球を投げるのが「礼儀」だと思っています。マーケティングで絵を描く人はいないですよね。ソフトバンクの「ホワイト家族」が流行っているからと言って、犬は描かないでしょう(会場笑)。

仕事は辛いことの方が多い。だからこそ、意義とか、やりたいことがないと全然踏ん張れない。あると頑張れる。想いも、考えてできるものではないと思っています。自分にとっての必然性や世の中にとっての意義がかみ合わないと、ときめかない。だから海外のブランドを日本に持ってきて展開するようなビジネスでは、私は盛り上がれないんですね。「オレってこうだけどどうよ」と自分の想いを世の中に提示して、「いいじゃん」と共感してもらえることがうれしい。スープ、ネクタイ、リサイクルと、ばらばらに見えるけど、根っこはつながっているんです。

腹の底から沸いてきた強い想いがあれば、何かが出来る(井上)

井上:遠山さんと通じる部分が多いです。会社を興したころ、若い経営者同士で集まって、夜な夜な、「誰が一番大きい会社を作れるか」という話をしていたことがあります。「花を300円で売っても大きいビジネスはできない」と、ちょっと迷っていた時期でもありました。確信が持てないでいたちょうどそのころ、バリ島のアマンリゾートに行く機会がありました。そこには、故郷の佐賀と同じ、田園風景が広がっていたんです。「大きいビジネスとか数字を追うのもいいけれど花や緑に囲まれた生活ってやっぱり素晴らしいよな」と感じました。

そして帰国して銀座の街を見たときに、「なんじゃこりゃ!」と思ったんです。バリとは大違いで直線だらけ。すごい違和感があった。このときに、「やっぱりでいく」と心が定まりました。「自分がこんなに良いと思うのだから、きっと他の人も良いと思うに違いない」とギアが入ったんですね。肌身で感じて、腹の底から沸いてきた強い想いがあれば、何かが出来る。考えてビジネスとかブランドを創るというのは、僕には難しい。

例えばお中元でビジネスを始めようと思った時、「何かを売ろう」と思っても何もアイデアが出てこなかった。でも「誰かに何かを贈ろう」と思って市場を見たとき、色々なものが見えてきました。身をもって感じるのが、アイデアの源泉ではないでしょうか。

田村:自分にとっての必然性がなければ、心から本当にいいと思うものでなければ、成功しても失敗しても納得できない。そこが続けられるかどうかの分かれ道であるというお話だったと思います。お客様の声を聞くことは必要でも、自分の想いを先行させることがもっと大事と。一方で、会社が成長して社員が増えてくると、自分の想いを社に浸透させ、社員を成長させていくのは難しいことだと思いますが、いかがですか。

欧米の人みたいにうまく笑えない。でもそれが東京のリアルな笑顔じゃないか(遠山)

遠山:二つのことをお話したい。先ほどご紹介した立ち上げ時に作成した企画書の物語。もう一つは企業理念を社員に伝えるために作成したDVDです。

企画書の「スープのある一日」ですが、物語仕立てにしたので、パワーポイントで箇条書きにするのと違って、店の名前、お客さんの年格好、店内の装飾、カップの色やロゴなど、本当に細部まで決めました。初めにしっかり作り込んだので、この10年間ほとんど軸がブレずに来た。目指すところを共有するという意味では、物語はすごくいい。

例えば物語には、「秋野つゆさん」という女性が登場します。彼女がスープを作るという設定にしたんです。つゆさんには、「フォアグラよりレバ焼きを好む」「装飾より機能を好む」「プ—ルに行ったらいきなりクロールから始める」などなど、細かいキャラクター設定があります。だからドアの取っ手一つでも、「つゆさんだったらこっちを選ぶかな」と考えることができる。イメージが固まってくるのが物語の良さです。

次に映像なんですが、創業5年目頃に、「生活価値の拡充」という企業理念を作りました。

そしてそれを支える「スマイルズの五感」も合わせて定めました。ちょっと話はわき道にそれますが、ファストフードの研修で何が嫌かって、笑顔の練習が一番嫌だと思っていたんです。もっと個性を出せばいいと。でもあるとき写真を見たら、笑顔が一枚もないんです。真剣な表情の写真はあるんだけど、笑顔が一枚もない。「あれ」と思って、鏡を持って、忌み嫌っていた笑顔の練習を取り入れたんです。ところが引きつった作り笑顔しかできない。でも「それでいいじゃん」と。欧米の人みたいにうまく笑えない。でもそれが東京のリアルな笑顔じゃないか、そこから始めようと思ったんです。そんなころに創ったDVDなので、私自身観るとすごく泣けてきます。

(以下、映像をみながらメッセージを読み上げる)

■「生活価値の拡充」

日々の生活そのものを立ち止まって見つめ、生活自身に価値を見出し、それを少しでも拡げて、充たしていけることのお手伝いをしたいと思います。

■Smiles:5感

低投資・高感度:

100人のレビューと一人芝居どちらが好きですか。

古着とテーラードどちらが好きですか。

誠実:

自分を必要以上に大きく見せようと思っていませんか。

「このくらいでいいんじゃない」そんな気持ちで人に接していませんか。

親孝行、できていますか。

作品性:

思わず小躍りしたくなるような想いがありますか。

「最高なので、ぜひ見てください」逃げ隠れせず堂々と言える仕事をしていますか。

ひらめきにときめいていますか。

主体性:

会社の看板でなく、自分の足で立っていますか。

マーケットの動向や、新聞に書いてあることだけにただ流されていませんか。

自分のアンテナを立てていますか。

誰にも頼まれていない仕事を、最近やりましたか。

賞賛:

心から褒めたい人がいますか。心から褒めてくれる人がいますか。

自分のことが好きですか。

会社説明会や社内研修では、こんなことばかりやっています。「何で働いているんだっけ」とか。スープの話がぜんぜん出てこないんです。これがすごく効くんですね。「五感」は社内で3カ月ぐらいインタビューやアンケートして、社内から出てきた言葉なんですね。誰かの受け売りや本の引用ではありません。これらを共有することによって、社員の“体温”が上がっていくんです。

結局価値観は自分の中にあった(井上)

井上:私の場合、思いつきで始めてしまったような会社なので、「仕事をする意味」が分からなくなった時期がありました。突き詰めて考えると、「なぜ仕事をするのか」を考える前に、「何のために生きているのか」を考えなければいけないことに気づきました。

中村天風氏や安岡正篤氏の著作などを読みあさり、天風の著作の中にあった、「エレベーション」という言葉が心に響きました。人生は自己研鑽だということです。人生の中でどこまで自己を高めていけるのか。一人ひとりが高まるからこそ、社会にも貢献もできる。人生を磨くための砥石はたくさんあって、イチロー選手はバットだろうし、僕らにとってはハサミと花だったりします。失敗しても何してもいいから、僕らの会社にいる限りは、他の同業他社よりも、自分が磨かれる。そういう会社にしたいということを軸にしました。

伊勢神宮の「水行」にも行きました。そのときに、ろうそくを一本渡されて、「火をつけたら最後、短くなる。これが人生だ」と言われたとき、目が覚めました。以来、私が会社説明会で話す時は、ろうそくを見せる。感激して泣く大学生もいます。何のために生きているのかの答えは、「チャレンジし続ける、成長し続ける、貢献し続ける」。色々な会社の理念を見て何がかっこいいかなと探した時期もあったけど、結局価値観は自分の中にあった。この三つの言葉を捜すのに4カ月かかりましたが、無駄ではありませんでした。

そこで会社の判断の軸みたいなものが出来たんです。社長がああ言ったとか店長がこう言ったとかどうでもいいと。僕らのもらっているお金は、全部お客様の気持ち。だからお客様のことだけを考えて、チャレンジし、成長し、貢献しようと。一本筋が通ったんです。

「お客様の立場に立つ」というのは口でいうのは簡単でも、実際には非常に難しい。花を地方に郵送する箱を作ったとき、失敗したことがありました。「かっこよくしよう」と、デザイン性を重視したため、とても使い難かった。(花を)入れて運ぶことだけを考えて、出す時のことを全く考えていなかった。母親が他界したときに、全国の店舗から故郷の佐賀に花を贈ってくれて、自分自身で初めて箱から花を出したんです。とても出しづらかった。「とんでもない箱だな」と思いました。花は繊細ですから、手をふれただけで、花びら散ってしまうものもある。全くお客様の立場にたっていなかったわけです。

テープの貼り方一つにしても、どうすれば「剥がしやすいか」まで考えて、はじっこを少し折っておくとか、本当に細かいことまで意識を向けられるか。大きいことじゃなくていい。100をやるとか、50をやるという話じゃないんです。ブランド作りというのは、1の改善をどれだけ積み重ねられるか。細かいことを徹底的にやる。それを一番たくさんやったところが、最終的には勝てる。そのためには、頭で考えるのではなく、自分が好きで、見て触って、お客様の身になって、実際に使うフィールドでないと、続けられないでしょう。

田村:ありがとうございました。では時間の許す限り、質疑応答を。

センスというのは判断するということ(遠山)

会場:毎週「青山フラワーマーケット」でお花を買っています。お話を伺いながら、「なぜここで買うのだろう」と考えていたら、「値段が安い、珍しい花がある、長持ちする、薬をくれる」ということがポイントでした。こうしたポイントはある程度規模があるから出来ることだと思います。一方で、お店のアルバイトのスタッフの方が、「この茎はくさりやすいから水やりは少なめに」とか細かいことまで教えてくれます。行き届いたサービスをすることと、規模を拡大することのバランスをどう考えていますか。

井上:他店にマネされる速さはすごい。それでもマネはあくまでもマネなんですね。同じように飾って、同じような札をつけていても、お客様は「何かが違う」と言ってくれるんですね。

一言で言うと、僕らは「お客様はモノとしての花を買うのではなく、花のある時間や空間を買っている」ということ徹底的に意識しています。それがいつからいつまでかというと、お店に来て、花を選んで、買って、家に持って帰って、飾って、枯れるまでなんです。だから店舗の音響から照明、包装、アドバイスまで細かいことに気を使います。モノとしての花ではなく、トータルとして花をとらえる。それが差別化になった。それはお客様の立場から徹底して考えるからできることで、スタッフは「疲れているので気分をリフレッシュしたい」とか「来客があるから部屋をパッと明るくしたい」など、お客様が花を買う背景までしっかりと意識しています。確かに規模を拡大してスタッフが増えるとサービスの質を保つのが難しくなってきます。そこで、人事や教育の制度をこの数年で作りました。アルバイトや社員の教育でも、産地や品種、手入れの方法などお客様の意識が向くところ、お客様が知りたいポイントを理解しているか、しっかりテストし、その結果で給与が上がります。

会場:あえて「捨てて」きたこと、やらなかったことがあれば教えてください。

井上:胡蝶蘭は一般的には良く売れる花ですが、当店のコンセプトに合わないので置いていません。それから化粧品会社から、花と一緒に化粧品サンプルを配布してほしいという依頼がありますが、店と関係がないので引き受けません。

遠山:デザインでいうと、スープに彩りがあるので、それ以外には色を使いません。ロゴは白黒、店内はウッドで統一しています。「ジラフ」は前向きなメッセージを打ち出しているので、血とかどくろなどのネガティブデザインは禁止しています。センスというのは判断するということであって、センスがないというのは、判断できないこと。だから何かをあえて「やらないこと」は決めることは、とても大切だし、気持ちのいいことです。例えば私は金色が嫌いなので使いません。

田村:最後にお二人に、今後に向けてどんなことをしていきたいとお考えになっているのか、一言ずつお願いします。

井上:パーク・コーポレーションも今年で創業20周年。1店舗から多店舗にしてきたように、複数のブランドを生み出していく「ブランド・ブリーディング・カンパニー」を目指したい。これからは感性の時代と感じていますが、マネジメントも必要です。右脳と左脳の掛け合わせから、魅力的なブランドが生まれる。感性の高いクリエイティブな人たち、特に若者をサポートして、人生を楽しくするような事業を創りだしていきたいと考えています。トライアスロンの会社はその手始めです。本当にトライアスロンは楽しいんです。是非皆さん一緒にやりましょう。

遠山:9月に丸の内とウェブで「パス・ザ・バトン」というリサイクルショップを始めます。「シャレた雑貨屋を」という依頼を頂いて、「何かいいアイデアがないかな」と考えていた時に、「パーソナル・カルチャー」という言葉がピンと来ました。

簡単に言うと、国や地域、企業ごとの違いが個性であり、それが戦争を引き起こしたり、地球に負担をかけてきた。企業や国ではなく、もっと個人にスポットをあてて、一人ひとりのセンス、カルチャーを反映させて、手渡していったらいいんじゃないかと思っています。「パス・ザ・バトン」が普通にある世の中にしたい。大変な時代なのでうまくいくか分かりませんが、今非常に盛り上がっています。個人の想いみたいなものが、もっともっと表に出ていく社会にしていければと思います。

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