これからのコンプライアンス経営 

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SILC 2007 autumnの初日2番目のセッションでは、「これからのコンプライアンス経営」と題し、GABA、ブックオフコーポレーション、星野リゾートという3社の経営陣が熱い議論を展開した。企業はグレーゾーンの多い法制度の上を日々、薄氷を踏むようにして渡っており、時に度を超え、自らを経営破たんの危機に追いやることもある。コンプライアンスの遵守と業績の向上をいかにして両立すべきか。パネルディスカッションの内容を採録した(文中敬称略)。

「一人のお客の不快な体験が企業を危機に追いやることもある」(秦氏)

秦:私が以前、勤務していた米General Electric社(以下、GE)は、世界で最もコンプライアンス(法令遵守)を徹底しているといわれる企業です。CEOのJ.R.イメルトは「上司の直接の命令に背く結果になったとしても、インテグリティ(Integrity)に対するあなたの約束を何よりも優先させてください」「優れた業績と、高水準のガバナンスおよびコンプライアンスは対立しません。それどころか両者は相互に補強し合う関係です」と言い続けていました。
GEでは、具体的には以下のような取り組みがされていました。(1)コンプライアンスの重要性を再認識させるため、全社員に年に一度、誓約書へのサインを求める。(2)“恐怖”の植え付けをするため、自動車教習所における事故ビデオのような映像教材を見せる。(3)興味を喚起し、また理解を促すため、Web上のクイズ教材を活用する。(4)内部から「これは違反?」と思われる事象を、罰せられる心配をせずに報告できる対象としてCCO(Chief Compliance Officer)などオンブズマンの役割を設置する。(5)定期的な監査と摘発をする社内の“おまわりさん”として、CA(Corporate Auditor)を設置する。
“おまわりさん”役はちなみに、優秀なバリバリの若手社員が担っていました。子供に拳銃を与えるような配置とも言えますが、うまく機能していたことが印象に残っています。若手自身が社内におけるDNAを取り入れ、また体現してみせるという意味でもよかったと思います。
さて、サービス業におけるコンプライアンス違反というと、どのようなものが想定されるでしょう(下図参照)。サプライチェーンの段階ごとに、「サプライヤー」への不条理なリベートの要求、「本部」におけるセクハラやインサイダー取引、「店舗」での現金管理や在庫管理の問題、「顧客」情報の漏洩など様々なものが挙げられますが、今日は特に、店舗や顧客との接点で起こり得ることに注視しながら、議論を進めたいと思います。サービス業においては、一人のお客様の不快な経験が会社にとって命取りになることも少なくないからです。

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須原:英会話学校NOVAの不祥事が紙上を賑わせていますが、私がCOOを務めるGABAは、同じ業界に在ります。
GABAのコンプライアンスの変遷を振り返ると(下図参照)、4年程前に私たちが創業者から経営を引き継いだ頃は営業主体の組織で、今以上にインセンティブ(奨励金)が効いていました。インセンティブというのは麻薬みたいなもので、与えれば、すぐに売り上げが立ちます。結果に対して即効性がある一方で、ルールやプロセスが軽視される感は否めません。
私はただ、当時の体制を批判するつもりはなく、むしろ、会社の成長フェーズによって(コンプライアンス重視と売り上げ重視のバランス配分は)異なってしかるべきと考えています。

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GABAは2006年12月に東証マザーズに上場したのですが、IPO(新規株式公開)プロセスに入ると一転、コンプライアンスやリスクマネジメントなど、煩雑なことに忙殺されるようになりました。監査法人も証券取引所も極端な話、会社の成長性など見てはいません。彼らが最も大切にするのは、ルールを守っているか否かなのです。
このときは、ルールを守ろうとするほど、売り上げがどんどん落ちていき、「肝心の成長が担保できなくて、何のための上場か」と憤りをおぼえることもありました。しかし今にして思えば、このとき(IPOプロセスにおける監査法人も証券取引所の要求という)“外圧”を受け、コンプライアンス重視に舵を切らざるを得ない状況に置かれたことで、きちんとした体制を作ることができた。だから今、他社の事件を対岸の火事として見ていられるのだと思っています。
現在は、その当時ほど型に縛られた感じではなく、コンプライアンスと売り上げ重視のバランス配分が最適化されてきている感じです。ルール軽視を食い止める“外圧”は二つあり、その一つは他社の事件であり、もう一つが監査役の存在です。厳しい批判に晒される他社の現実を突き付け、「あんなふうになりたいのか」と言うほど社内に説得力を持つものはありません。またGABAには幸い、嫌われ者に徹することを厭わない監査役がおり、NOVAの事件が発覚してすぐに、社内委員会を立ち上げ、1週間以内に取締役会で(自社に問題がないかを)詳細に報告させる立ち回りも見せてくれました。

不正を誘引する原因は会社にある。悩みを相談できる横の連携が抑止力に(佐藤氏)

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佐藤:(ブックオフコーポレーションでは)今年5月に不祥事が発覚し、6月に創業者が退任。私が社長に就任しました。合計2200万円ほどの架空の売り上げが計上されたことが内部告発されたのですが、問題発覚後、私たちはすぐに社内調査委員会を組織し、関係者全員に話を聞いてまわりました。話を基に、事実関係を時系列にまとめた大きな表を作り、真因を究明していったのですが、不正を誘発したのは、社員の個人的な営利とは何ら関係なく、「売上高対前年比100%を連続で超え続けること」という命題でした。2004年12月24日、クリスマスイブの日に、このままでは昨対100%には達しないという状況が明らかになり、直営事業の責任者と物流の責任者が2人で密談をした結果、年も押し迫った30日、やむにやまれず600万円を架空に計上してしまったのです。
「数字を作らなければ」という社業に対する熱意・使命感、架空売上計上に対する
罪の意識の希薄さが2人を悪事に駆り立て、実行に走らせました。この時、ほかの経営幹部に相談などしていれば、誰かしらがブレーキをかけられたはずです。しかし当時は、創業者と幹部が個別に議論する場面が多く、幹部全員が集まって話し合う場というのは少なかった。そのため横の連携が希薄で、個々が孤独になり、追い詰められてしまったのです。
再発防止に向けて、今後は内部統制とモニタリングの仕組みを定着させる必要があると認識しています。経営幹部が今回のような不祥事を起こす場合には、不正に走る前に必ず「悩み」の段階があります。その段階で誰かには相談できるよう、今は経営幹部十数人が集まって週1回朝食会を開くなど、コミュニケーションの回数を増やしています。
一方、現場(店舗)において例えば従業員が売上金を横領するといった事件は、商品の現金売買をしている以上、完全な防止は難しいと考えています。こうした事件は、家庭に借金のある従業員が出来心で起こしてしまうケースが多いのですが、会社として彼ら全ての生活の悩みにまで添い、実行を事前に予測するのは不可能です。従って、これについてはモニタリングの仕組みを整え、事後の早期発見に努めるほかないと思っています。

星野:今回、コンプライアンスをテーマにした議論をしたいと、私から提案しました。それというのも、私自身がコンプライアンスの意義を、いつも自問自答しているからです。
社員の個人的な判断による不正に歯止めをかけるのは比較的、容易です。難しいのは、組織全体として行っている違反を改めることではないでしょうか。組織的なコンプライアンス違反は、明るみに出れば会社の存続を揺るがすリスクにもなりうる一方で、世間一般にバレない限りにおいては、業績の拡大を牽引するのもまた事実です。「NOVA」も「赤福」も「白い恋人」も、不正と営利が表裏一体に結びついてしまっていた。だから歯止めをかけられなかったのではないか。そこに経営者としての迷いが常にあるように思います。
振り返り、星野リゾートにおけるコンプライアンス強化の歴史をお話します。
1段階目は(違法行為から)経営者としての身の安全を守ることから始まりました。1991年に私が実家の温泉旅館を継承するべく軽井沢に戻ったとき目にしたのは、そこで働くハウスキーパーの大半が外国人の不法滞在者という衝撃的な現実でした。当時はバブル経済のさなかで、労働条件の悪い旅館で働く人材は容易に確保できず、逮捕の恐怖に晒されながらも日々の営業を続けるため、違反を続けるしかなかったのです。
2段階目は食中毒の問題でした。幾つもの施設をチェーン展開をしているわけではないですから、営業停止になればキャッシュが回らなくなるし、その後の営業にも響きます。「検食」という制度があって、私たち業者は何かあったときに時間を遡って調査できるよう、お客様に出した食事を1週間、冷凍保存するよう保健所から求められています。これをかつては生菌が出ないような“工夫”をしていると聞いたこともありました。全く褒められたことではありませんが、業績悪化の危険から会社や社員を守るためにという、必死の思いがそこにはあったと理解しています。
3段階目はサービス残業の撤廃です。会社側からすれば、サービス残業は利益に直結していますから、これを敢えて減らそうという意欲はなかなか湧きません。しかし、長時間労働を嫌って旅館で働く人がいない時代に、社員の信頼を得て、長く所属してもらうためには、どこかで打たなければいけない施策でもあります。サービス残業を減らし、しかし、業績を維持するにはどうすればいいか。それが3段階目の挑戦でした。
4段階目は温泉の排水規制への対応です。昨今、環境配慮の意識が高まってきていますが、実は排水施設がきちんとしている温泉というのは少ないのです。企業の社会的責任を果たすためには、検討せざるを得ませんが、業績が悪くなっては元も子もありません。
好んで法を犯す会社、経営者などいないのです。ただ、昔ながらの不正に依存した収益体質からの脱却は大変革を余儀なくされる大きな問題であり、「悪いと分かっていることは、すぐに止めればいい」というような単純な話、きれいごとでは済まされません。収益を堅持して社員の生活を確保する、という経営者としての最低限の責任を考えると、それと法の遵守が時に相反することに経営者はいつも頭を悩ませているのではないでしょうか。

短期的なキャッシュフローは守りながら、中長期でコンプライアンスを強化する(星野氏)

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秦:先ほど、須原さんからコンプライアンス実現の度合いについて言及がありました。業績とコンプライアンスのバランスは0か1かというようなものではなく、常に連続した軸のうえにあって、経営者はどこに身を置くのかという判断を迫られています。法遵守の意識が過敏に働き過ぎているのか、不足しているのか。皆さんの会社は、この軸のどのあたりに今、ありますか。

須原:重要だが、非常に答えづらい質問ですね(笑)。あくまで感覚の域を出ないことを前置きのうえ申し上げますが、今は(厳しすぎもルーズすぎもしない)比較的、良いところにいる気がします。ただ、組織というのは日々、変容するものです。健常に進化することもあれば、緩みが生じて易きに流れてしまうこともあります。
NOVAへのバッシングに触発され、今は少し、厳しくする方向に行きつつある、という感じでしょうか。社内理解を得やすくなっているこの機に乗じて、人事評価に若干のテコ入れをしようとは考えています。これまでは「売り上げ」が人事評価やインセンティブと直結していたのですが、そこに「(お客様が実際に受講した)レッスン数とレッスンの質」といい指標を加え、店舗や店長の評価に用いようとしているのです。
お客様からは(NOVAほか一般的な英会話学校と同じく)前金で(何回分かのレッスン料をまとめて)支払ってもらう仕組みのため、「売り上げ」を基準にすると、支払いが生じた瞬間、担当者の気が抜けてしまったとしても責められません。しかし、「レッスン数とレッスンの質」を評価に加えれば、お客様との二人三脚は売り上げの立った時点から始まる。これにより、満足のいく受講をしていただくよう、より強い配慮が行えるようになると考えています。

佐藤:法の遵守で難しいのは、“セーフ”なのか“アウト”なのかが不明瞭なグレーゾーンが存在することです。例えば当社の上半期の業績が悪い一因は、「使えない在庫」を廃棄したためなのですが、これなどはその最たる例です。中古業者というのは、買い付けた商品をどんどん売り、売れ残りを在庫として貯めていけば、見かけ上の業績は好調となります。しかし、そこに売れる可能性のない在庫が多数あり、それらを資産として計上すれば粉飾となります。では、売れる可能性のある在庫と、ない在庫は、どう区別するのか。例えば『金田一少年の事件簿』は、流行り過ぎて市場に溢れているので、ある売り場担当は「もう絶対に売れない」と言っているとします。しかし、別な売り場担当は「『スラムダンク』みたいにリバイバルすることもあるから、保管しておこう」と言う。それを不良在庫と判断するか否かは、経営者に委ねられているのです。
しかも、法やそれを取り巻く環境は時代ごとに、どんどん変わっていきます。星野さんがされたカキの話もそうだし、施行当初に中古の家電店がドンドンつぶれる結果を招いたPSE(電気用品安全法)もその一つです。PSEは短い期間に方針が転換されて混乱しましたが、新しい法や世論が出てきたときに、それらをどう捉え、企業の戦略や体制につなげるかという難しい判断が、我々経営者には求められているのです。

星野:星野リゾートは、株式公開をしていないので業績を実態以上に良く見せようというような不正は起きないのですが、先ほどお話しした不法労働者を採用しなくてもいい状態にするまでには3年を要しました。また、(食中毒に対する不安から検食を滅菌するような不正を起こさずに済むよう)HACCP(衛生管理システム)を導入したのですが、それも7年をかけました。HACCPを導入した1998年以降は、事前にリスクを把握できるようになりましたので、万一の場合には自らレストランを休業し、被害を未然に食い止めることができます。
私にとってコンプライアンスは、社会的な責任を果たすためというよりは、自らの企業の競争力のためにあります。ですから、本当に正直なところを吐露すれば、心情的に守らなくてはならないと思う法律と守らなくてもいいのではないかと思う法律があります。例えば、従業員にサービス残業はさせたくないので、直営施設だけではなく、経営再生を頼まれて入った施設でも、すぐに撤廃します。しかし例えば、着手することで業績悪化につながるようなものは、遵守できる体制にするまでに何年かかるかを考え、短期的利益、つまりキャッシュフローを守りながら、中長期的にはそういう状態から脱却していく方法を探ります。何もかも情報公開をして、清廉潔白であることのみを追求することが、経営者の本当の責任とは私にはどうしても思えないからです。

内部監査で全体をコントロール。違反する社員の合理的理由を理解する(須原氏)

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秦:私はGEに勤めていたとき、ジャック・ウェルチの直属部隊にいたことがあるのですが、「もっと性善説に立って、ヒトを信用してもいいんじゃないか?」と進言したところ、ジャックから「Trust is good, but control is better」という答えが返ってきました。事故が起こらない・起こせない環境(プロセス)を作るのが一番とのことでした。でも、実際のところどうなんでしょうね?
また、日本人は上司や周囲に気を使うので、自分から進んで告発する人が少ないと思うのですが、どうやって有事には内部告発ができるよう社員の心を開いているのですか。

佐藤:人に誇れる体制があるわけではないのですが、どうすれば良かったかは、ずっと考えています。先に挙げた朝食会もそうですが、まずは、なるべくコミュニケーションの機会を増やして、社員が互いの任務や何に困っているかということを共有することから、と思っています。それが糸口となって、問題発見や抑止につながることを期待しています。

星野:今、難しい問題として捉えているのは、「赤福」や「白い恋人」で見られた賞味期限切れの食材使用の可能性です。飲食部門において、フードコストは重要な経営指標であり、これをいかにして下げるかが各レストランのマネジャーの力量の見せ所にもなっています。需要予測がうまくいけば、コストは膨らまずに済みますが、失敗すれば、利益を直接に圧迫します。そんなときマネジャーは、「この余った食材を明日の宴会で使えばいいのではないか」と考えてしまうかもしれません。「赤福」にしても、「白い恋人」にしても、不正はそんな小さなところから始まったのではないかと思うのです。NYのブロークンウインドウ現象(街中に壊れた窓が多いと、その街では犯罪が多発する)のように、“ちょっとしたこと”が上手くいったために、だんだん大胆な不正を働くようになり、会社全体として引き返せないところまでいってしまったのではないか、と。
こういうとき、経営理念や、あるべき姿を浸透させれば、社員の心にブレーキをかけられるはずだ、という意見が必ず出ますが、私は「それは本当か?」と思う時があります。かたやフードコストの削減を迫り、その実績でマネジャーを評価しておきながら、かつ「清廉潔白でありなさい」と社員に難しい正反合一を委ねるのは経営者としてあまりに無責任ではないかと思うのです。
先ほど、「Control is better」というジャック・ウェルチのコメントが引用されましたが、私も賛成です。星野リゾートでは3年前から、4人1組のチームを組成し、年に3-4回、衛生管理システムと冷蔵庫の中身を抜き打ちでチェックし、結果を社内で公開するようにしました。社員を信用していないということではなく、社員を追い詰めて不正を働かせないよう、その抑止力となる客観的なチェックシステムを構築することが経営者の務めと私は考えています。

「理念浸透によるコントロールすることも重要」(秦氏)

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秦:店舗数の多いチェーン等では、本部の直接のコントロールが効きにくいので、むしろ「理念浸透」により、コントロールする以外にないのでは?と思うところもあるのですが、いかがでしょうか。

須原:これも1か0かの話ではなく、両方大切ということなんだと思います。
GABAは現在、全国に32校を展開しており、社員は約500人、インストラクターは1000人超います。この規模だとコントロールは不可欠なので、内部監査を大切にしています。
若くてコミュニケーション能力の高い社員を起用して、現場の社員の本音をヒアリングし、レポートを上げてもらうのですが、読むと冷や汗が出てくるような事例も時には書かれています。また私自身、週にスクールを最低2校は回り、現場の社員と直接対話するようにもしています。
仕組みは大切ですが、それだけでは回りません。コンプライアンス違反には、本人にとっては合理的な理由がある。それを併せて理解する必要があると考えます。
違反の理由は往々にして会社が作っているのです。「ルールは守りましょう」と言いながら、「前年比30%アップ」は無理。それを言うなら、会社が(目標達成のための)支援をしなければいけません。
先ほど星野さんが、コンプライアンスは組織を縛るものではなく、中長期的な成長を確保するためのツールだと言われましたが、私もそう思います。英会話学校は無茶をするところが多いので、ちゃんとやると褒められるような業界です。そんななかにあって重要なのは、コンプライアンスを高めれば事業の中長期的な成長をドライブすると経営陣がまず、本気で信じることではないでしょうか。
仕組みを理解してまわせる人づくり、人を教育できる仕組みづくり。そうした基盤があってこそのコンプライアンスと思います。GABAが全て実現できているということではなく、理想を語りました。

佐藤:私も理念と仕組みの両輪でまわす必要があると思います。ルールの大切さを心で納得させて、それでも歯止めが効かない場合に備えて、もし不正を働けば「社内的にバレるんだぞ」という仕組みを整え、抑止する・・・。前段の、どうやって納得させるかは会社によって差異があると思います。ブックオフの場合は、社会貢献と従業員の幸福を企業理念として掲げており、これが浸透しています。人を育てることができる人間を評価する社風があり、「これは社会に対してまずいですよね」というより、「このやりかたをすると、その人を不幸にするよね」という話をすると、ストンと心に落ちるようです。

会場:事業における目標達成とルールの遵守は往々にして二律背反となるという話が出ました。しかし、そこを直視せず、「ルールを守り、目標も達成しろ」と社員に丸投げにしてしまう企業も多いと思います。

須原:仰るとおりと思います。「大丈夫だ、サポートするから」などと言っておきながら、実際に相談にくると「そんなのお前の考えることだ」と突き放すのが経営者の常套手段ですよね(笑)。現場の実態について情報量の多い担当者のほうが、経営者などより、よほど現実的な解を引き出せるという側面もあります。ただ、年齢を重ねている分、問題解決をしてきた回数は多いという自負があるので、私の場合は質問のバリエーションを多く持つことで、現場に転がっている解を引き出す手助けをするよう留意しています。そして「これ」と思ったときには、会社がきちんと予算をつけてやる。私がしていることは、そのサイクルをまわすことでしょうか。

星野:社員から「目標達成とルールのどちらを重視する?」と問われたら、ルールだと答えるしかありません。二律背反がより大きな問題となりかねないのは(社員ではなく)経営者のレベルにあるときではないかと思っています。

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