もはや眼鏡屋なのか?メガネスーパーの新業態店の価値提供に学ぶ 

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メガネスーパーといえば、1973年創業のメガネ販売業界最大チェーンである。しかし、昨今、Zoff・JINSなどの低価格新興勢力に圧され大きく業績が低下し、投資ファンドによる再生を受けるなど苦境が続いている。そんな同社が、ターゲットを絞って明確な価値を打ち出す一手に出た。

メガネスーパーの新業態店展開

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メガネスーパーは東京都港区に目のケアを重視した新業態店舗である「DOC白銀台本店」を開いた。日経MJ10月21日号の記事によれば、同店では通常の視力・色覚検査前に目の疲れを取るサービスなどを提供するという。店内には専用のマッサージ室が設けられており、検眼前に顔や肩を中心として目の緊張や疲れをほぐす10分間の無料コースを提供する。加えてアイスパックや美顔器を使用した40分間・3500円(税別)のコースまでが用意されているという。もはやただの眼鏡店のレベルを超えたサービス提供だが、メガネ購入の検眼と関係なく、有料のマッサージサービスだけを利用しに来るリピーターもいるというから驚きである。

同店の顧客は6割以上が45才の中高年で、「目の健康に関心が高い」ということと、「対価を払ってでも良いものを購入したい」という特性があると同社は語っている。その狙いは見事的中し、同社の通常店と比べ客単価は1.7倍だという。恐らく、この展開なら業績低迷の元凶となった低価格チェーンとは棲み分けができるため、今後のターゲット戦略・店舗戦略を考える上でも貴重なケースとなっているのだろう。今後は百貨店やシニア層の多い土地を中心に出店し、目のケアサービスをテコに事業拡大を図るとのことだ。

価値構造は時代に合わせて変化する

上記のメガネスーパーの展開を、当連載ではお馴染みの「製品特性分析」で読み解いてみよう。製品特性分析とは、顧客が製品(サービス)に対して対価を払ってくれている理由を階層化して明らかにしていくものだ。

「中核」…顧客がその製品に対価を払って実現したい中核的な便益
「実体」…中核的便益を実現するために欠かせない要素
「付随機能」…中核的便益の実現に直接関わらないが、その存在で魅力が増す要素

フレームワークの使い方として、製品特性についてはある製品(及び製品カテゴリー)の分析を一度行うだけで済ませてしまう人が多いのだが、それは間違いだ。製品特性は時代の変遷と共に変化することを忘れてはならない。

メガネ及び眼鏡店の価値構造を下記に示す。

<メガネ=視力補正が主な価値であるという時代の考え方>

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上記は時代的にいえば、メガネスーパーが創業した高度成長期的な、ものがまだ満ちあふれていなかった時代の提供価値であるといえる。しかし、多くの街の眼鏡店や、それに対して規模化して価格を多少低廉化したり、品揃えを増やしたりしただけの従来型眼鏡チェーンも、その提供価値に大きな違いは見られないといえるだろう。

それに対し、Zoff・JINSなどの低価格新興勢力は新たな価値構造を持ち込んで殴り込みを掛けてきた。

<今日:メガネがファッションの一部になった時代>

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中核・実体に「オシャレ」の要素が入ってきており、かつ、付随価値にそれが短時間で簡単に手に入れられ、コスト的にも気軽に買うことが可能になっているのがわかる。当然、この価値を支えるためにバリューチェーンが工夫され、コスト構造が変わっているのだが、顧客にとってそんな舞台裏は関係ない。だが、その結果がオシャレを気にする若年層やデフレ経済が長引きコストに敏感になった消費者を中心に支持が高まり、従来型のチェーンを圧迫する要素になったのは確かだ。

時代の変化と価値構造の関係が、メガネ・眼鏡店の場合だけだとわかりにくいかもしれないので「自動車」で例示しよう。高度成長期に初めて自家用車が家庭に入ってきた時代と、今日の比較だ。時代変化によって、大量生産時代から、「自分により合った選択肢」が提供されることが価値になり、また、環境変化でいくつかの価値が加わっていることが分かるだろう。

中核: 移動・輸送→移動・輸送+自分らしさの表現
実体: 走行性能・居住性→走行性能・居住性・燃費(エコ意識の高まり)・自分らしい(内外装の)デザイン・安全装置(法制の変化対応)
付随機能: 特になし→低金利/残価設定ローン(手に入れやすさの整備)

ターゲットによっても価値構造は変化する

メガネスーパーの今回の施策が秀逸なのは、ターゲットを明確にして、その求める価値をキッチリとミートさせていることだ。価値構造は時代による変化だけでなく、ターゲットによっても変化する。わかりやすい例として、第7回「とにかく美味しいご飯が食べたい!高級炊飯器ブームのワケを考える」で登山靴について紹介した。山ガールブームなどで女性登山客が増加したことで、一般男性登山客にとってデザイン性は「あればうれしい」程度の付随だったのが、女性登山客には欠かせない実体価値に格上げされ、「デザインがいいのなら、色も選びたい」ということで、付随機能にカラーバリエーションが新たに登場している。このように、ターゲットとそのニーズ、求める価値をしっかり見ることが重要なのだ。

さて、上記のようにターゲットによって価値構造が異なるとしたら、メガネスーパー「DOC白銀台本店」は「目の健康に関心が高い・対価を払ってでも良いものを購入したい」というターゲットにどのような価値を提供して成功しているのだろうか。

<メガネスーパー新業態店の価値構造>

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上記のように、価値構造から見ても、旧態依然とした通常のチェーン店ともZoff・JINSなどの低価格新興勢力チェーンとも全く異なった価値構造がうまく設計できていることが分かる。

環境の変化に敏感になる。顧客をよく見る。それは、マーケティングの基本中の基本それに対応して、しっかりと自社の提供価値を設計しなおすことが欠かせないのが、今回のいくつかの例示でご理解いただけたと思う。

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