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行動理論: リーダーに生まれるのではなく、リーダーになる

投稿日:2015/10/31更新日:2019/04/09

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『グロービスMBAリーダーシップ』の第1章から「行動理論」を紹介します。

数千年前から、リーダーには共通の資質があると人々は考えてきました。20世紀に入ってからのリーダーシップ研究も、リーダーに共通する特性(家系、外見、知能等)を探し出そうという研究からスタートしました。しかし、研究の結果、個人の特性だけではリーダーシップを十分に説明できないという結論に至ります。そこで登場したのが、リーダーの行動に注目する行動理論でした。行動こそが、リーダーか否かを決めるという逆転の発想です。この理論は、一般の人間でも、意識して適切な行動をとることでリーダーたりうることを実証的に示したことで、当時としては画期的な理論でした。「リーダーに生まれるのではなく、リーダーになるのだ」という考え方とも言えます。行動理論にも限界はありますが、わかりやすく汎用性も高く、また能力開発にも結び付けやすいことから、今でもよく用いられています。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

リーダー行動の2つの軸

なかでも非常に包括的な研究が進められたのは、アメリカのオハイオ州立大学であった。リーダーの行動を正確に測定するための150項目のリストが開発され、後にリーダーシップ研究で最も広範に使われる尺度、リーダー行動記述質問票(Leader Behavior Description Questionnaire: LBDQ)の作成へとつながっていった。

そして1957年、さらにこの質問票を因子分析した結果、リーダー行動のほとんどが2つの因子に寄与していることがわかった。1つは「配慮」(フォロワー、つまりリーダーについていく者への思いやりやコミュニケーション。信頼や尊敬をつくるもの)であり、もう1つは「構造づくり」(フォロワーを成果達成に導くために組織を系統立て、構造化するなど)である。

ほぼ同時期にハーバード大学やミシガン大学でも、リーダーの行動に関する研究が異なる手法で行われていた。そしてやはり、リーダーの行動は大きく2種類に分けられるという結論に達したのである。ハーバード大学の研究では、「社会・感情スペシャリスト」(対人関係の緊張を緩和し、モラールを上げる)と、「課題スペシャリスト」(組織化、要約、指導的行動に従事する)の2つのタイプが見出された。そしてミシガン大学の研究からは、「従業員志向型」(人間関係を重視する行動)、および「生産志向型」(仕事の技術面、あるいはタスク面を重視する行動)の2つの行動側面が発見された。

PM理論

日本においても、1950年代から九州大学を中心に リーダー行動に関する研究が精力的に行われた。そして60年代に入ると、三隅二不二らにより、リーダーの行動を科学的に測定する尺度として、集団の目的達成や課題解決に関する機能にかかわるP(Performance)行動と、集団の維持を目的とする機能にかかわるM (Maintenance)行動という、2因子が見出されたのである。これらは、アメリカでの研究成果の主張とほぼ同じといえよう。これ以降、日本では、組織を率いるリーダーがとる行動に着目する考え方は、PM理論として広く知られるようになっていった。

リーダーの行動について調査し、その結果を類型化すると、図表のように分類される。タスクや成果に関心を寄せたP行動を強くとっている場合はPm型、社員の状態や内面に関心を寄せるM行動を強くとっている場合はpM型、両方の行動を強くとっている場合はPM型、両方ともほとんどとっていない場合はpm型となる。その後の多くの実証研究により、成果と関係性の両方に強く働きかけるPM型のリーダー行動が、集団の生産性の面から、また部下の職務満足の面からも、最も有効とされた。部下への影響力という側面からは、それに続いてpM型、そしてPm型が好ましく、当然のことながらpm型は最も影響力を持たないことが明らかになっている。

Pm new

ケースの小杉(※)に当てはめると。タスクや成果に関しては強い関心があるが、部下の内面に対する関心は薄く、行動にもほとんど表れていないので、Pm型ということになる。

マネジリアル・グリッド

この頃、動態的な組織をつくる手法を研究していたテキサス大学教授で経営コンサルタントのロバート・ブレイクとジェーン・ムートンは、こうしたリーダーの特徴的な2つの行動スタイルに着目し、1962年にマネジリアル・グリッドというツールを考案した。

リーダーが何らかの行動をとる際、その動機となる発想の要因を「人への関心」と「生産への関心」の2軸に置き、縦横9つ、合計81のマスをつくる。そして、リーダーが行動を起こすときに「何にどの程度関心を寄せていたか」を調べ、その結果をこのマネジリアル・グリッドにプロットしていったのである。そしてブレイクとムートンは、リーダーが最も優れた機能を果たすときは、(9,9)のチーム・マネジメント型のスタイルをとることが多いという結論に達した。

小杉に当てはめるならば、PM理論からの結果と同様にタスク志向ながら人への関心が薄いため、マネジリアル・グリッドの右下に位置づけられ、もっと人に対しても関心を払うべきだ(つまり、グリッドの右上を目指すべきだ)とのアドバイスを反町から受けているのである。

※「小杉」は本文に先立つケース中の主人公。反町はその先輩

(本項担当執筆者: グロービス経営大学院 林恭子)
次回は、『新版グロービスMBAリーダーシップ』から「パス・ゴール理論」を紹介します。

◆グロービス出版

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