出た!1000円カットQBハウスの必殺アプリ!その効果を分析する 

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「10分の身だしなみ」がキャッチフレーズ、1000円カットの「QBハウス」が顧客向けに専用アプリをリリースした。それは、同社のビジネスモデルをさらに加速させる新兵器なのだ!

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サービス業の平均単価は10分1000円

「QBハウス」にどんなイメージを持っているだろうか。もしそれが、「激安理髪店」だとしたら間違いだ。理容室に限らず、美容室、もっと広げれば、ネイルサロンやマッサージ、スポーツトレーナーの指導まで、マンツーマンで行われるサービスの提供は10分間に換算すれば10分1000円前後になるのが相場である。理美容のサービスに限定して考えても、一部の原宿・表参道・代官山などの一等地のサロンや、カリスマ美容師(死語?)の手によるサービスでなければ、一般にはカットはおよそ60分程度の時間で仕上げ、6000円のサービス料が請求されるというのが相場だろう。

QBハウスの提供価値

QBハウスの非利用者からすると、「それにしても10分って短くないか?」と思うだろう。それは、同社の提供しているサービスの価値が一般の理美容業と異なるからだ。一般には「髪をカッコよく(美しく)仕上げること」を中核価値として、そのためにカットだけでなく、似合うスタイルのカウンセリングから始まり、シャンプーやトリートメント、セットなど各工程を経て仕上げていく。それが、中核価値を実現する実体価値だ。また、オシャレな店内やスタッフの洒脱な会話で気分が良くなったり、最新のファッション雑誌で情報を仕入れたりできるという付随機能もある。

それに対して、QBハウスの中核価値は「髪を切ること」に徹していることが特徴である。実体価値については、「伸びた分だけをカットすることにより、髪型を極端に変えることなく個性あるベストスタイルを維持するためのカットを提案しております」とWebサイトで述べている。つまり、おしゃれにするのではなく、「切って維持すること」が提供される実体価値なのだ。それ以外には特に価値提供は行っていない。洗髪はせずに、エアウォッシャーと呼ぶ吸引器で毛クズを吸い取って仕上げるのは有名だ。当然、付随機能もない。つまり、「切る」ことに特化して10分間という時間に納め、1000円でサービス提供しているというのが同社のビジネスのキモなのだ。

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新兵器:スマホアプリ「カットカルテ」

さて、QBハウスがリリースした新兵器であるアプリだが、「カットカルテ」と名付けられている。
(参考リンク:http://www.qbhouse.co.jp/appli/

中心的な機能はアプリ名と同じ「カットカルテ」である。それは「お客さまがヘアスタイルのご要望をスタイリストに伝えるためのコミュニケーションアプリ」であるとしている。(同アプリダウンロード用Google playの説明文より)。具体的な使い方は、アプリに登録されているカットモデルの写真を使うか、ユーザーが自分の顔(頭部)の画像を取り込んで、前髪・トップ・サイド・後ろ髪の長さをスライダーバーで丁度良い長さに設定する。出来上がったその画像を見せさえすれば、スタッフに口頭で指示する必要もなく仕上げてもらえる。

さらに、同アプリには、過去の店別データから、自分が髪を切りに行こうとしている日の最寄り店舗の待ち人数予想を表示する「QB予報」、現在の近隣のQBハウス店舗の混雑状況を表示する「QBマップ」などが装備されている。顧客としては自分が髪を切りたいときに、最も短時間で仕上げてもらえる店舗を選べるわけだ。

QBハウスの「売上最大化策」とは?

売上を分解すれば、客数×客単価である。しかし、QBハウスは客単価が1000円で固定されている。また、店舗にある席数も限られている。その上で、売上をさらに上げようと思うなら、「回転率」を上げることが一つの方法だ。そこで、効果を発揮するのが「カットカルテ」機能である。サイトにも「理想の髪型は、なかなか言葉だけでは伝えづらいもの」と書いてある。言葉を裏返せば、サービス提供側としては顧客にそこでもたもた説明されて、あーでもない、こーでもないとなったら、あっという間に10分をオーバーしてしまう。それを、顧客がひと言も発さずに写真(顧客自らが作成したカットの設計図でもある)を提示するなら、従来の10分間という時間がさらに短縮されるかもしれない。その意味で、「カットカルテ」は、同社のビジネスの根幹である、回転率向上の必殺兵器となり得る可能性を秘めているのである。

売上を伸ばすもう一つの方法は、空席率の低減である。いくら時間短縮をして回転率を上げようにも、そこに顧客がいなければ全く意味がない。QBハウスだけに限らず、理美容業、いや、サービス業と物販業の大きな違いは、「サービス業は在庫が持てない」ということだ。物販なら、客が店に来なくて品物が動かなくても、別の日に売れることもある。在庫コストは別途回収の機会があるのだ。しかし、サービス業は客が来ずにスタッフが手透きになってしまった瞬間、そのスタッフのコストはもはや回収不可能なのだ。だとすれば、適度に(顧客が待ちくたびれて帰ってしまったり、待たされすぎて怒って離反してしまったりしない程度に)待ち行列ができていることが最も望ましい。それを実現するのが、「QB予報」と「QBマップ」である。前者で顧客が店にとっては空きができそうな日(顧客にとっては空いてそうな日)に来店予定を入れてくれ、後者で今、切りたいと思っている顧客が、まさに手透きの危機に瀕している店舗に足を運んでくれる。全店的に見れば、かなり空席率が低下して稼働率が向上するだろう。

前述のようにQBハウスは「カットカルテ」によって、ビジネスの要としている顧客の回転率を上げ、空席率低減(稼働率向上)を図ることを強化している。それは、サービス提供側にとって都合のよい話であるが、同時に顧客にとってもより満足度が向上している。「カットカルテ」のダウンロードサイトにはユーザーのレビューが書き込まれているが、「これは便利」「使いやすい」「店員にうまく伝えられなかったのが解消した」などの声が寄せられている。

自社の提供価値を絞り込み、顧客も絞り込む。その上で、KSF(Key Success Factor=成功のカギ)となる提供プロセスを徹底して強化すること。言葉にすれば、「絞り込んで磨き上げること」と簡単そうだが、行うのは難しい。QBハウスの徹底ぶりから学ぶところは大きいだろう。

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