リーダーシップ開発に有効な「Off-JT」とは? 

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先の記事で述べたように、時代が求めるリーダーシップの流れが、本質的な「在り方」の追求ができる高い精神性にあることも考え合わせると、マインド面での意識覚醒が、日本企業におけるリーダーシップ開発の重要なチャレンジであることが腑に落ちる。では、どんなアプローチが有効なのだろうか。「経験の機会を与え、そこからの学びを促す」という観点から、Off-JTとOJTのそれぞれについて見てみよう。

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Off-JTでのチャレンジ~自己再発見を促す体験型アプローチ

リーダーシップは先天的な資質だけで規定されるのではなく、後天的な環境や教育にも大きく影響される。方法次第で、企業に入ってから眠っていた意識を覚醒させることも可能なはずだ。そうした発想でさまざまな試みがなされているのが、体験型アプローチだ。

前述したように、リーダーシップの特性は経験の中から獲得することができる。Off-JTでも、疑似体験によって学びの契機となる刺激を与えることが可能だ。具体的には、現実の店舗や工場に足を運んで、実際の販売や製造の様子を直接見るサイトビジットもあれば、野外でメンバー同士が助け合いながら高い壁を乗り越えるといった身体的なチャレンジを伴う冒険教育のようなアプローチもある。ケース討議やロールプレイでも、リアリティーを感じられるような設定があれば、疑似体験になり得る。起業家や研究者等、各分野の第一線で活躍している人をゲストスピーカーとして招き、本人の強い想
いに直接触れるのも刺激的な体験だ。これらはどれも海外のビジネススクールのエグゼクティブ・プログラムでも導入されているポピュラーなアプローチだ。

自社のビジネスのルーツを再認識する体験もある。事業発祥の地である鉱山に毎年登っている非鉄金属系の会社や、創業者の生家を訪ね、当時の生活と起業の動機に想いをはせることを恒例にしている会社もある。ある自動車会社では、世界中から幹部を集め、プロのドライバーの運転する車に同乗させ、極限状態のドライブの興奮を含めた「車」の可能性を共有している。

ビジネスの主戦場が、新興国、さらにはBOP(Base of the Pyramid:世界の所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指す)と呼ばれる市場にシフトする中で、そうした国を実際に訪問し、そこでの人々の暮らしぶりを見て、貧困問題の解決やインフラ整備等の社会ニーズを直接的に感じようというアプローチも盛んになってきている。現地の生活に「どっぷり浸かる」という意味で「グローバル・イマージョン・プログラム」と称し、グロービスが提供している事例もある。途上国の現実の中に身を置き、経済発展する前の過去の日本でも同じような光景があったであろうと想像し、そうした社会問題克服のために尽力してきた先人たちの挑戦をイメージすることは、自社の創業時の起業家精神に立ち返る姿勢にも通じる。

体験型アプローチは、体験そのものの刺激の強さに目がいきがちだが、それだけではない。体験したことをいかに引き寄せ、各自の深い内省に繋げることが肝要だ。さもなくば、どんなに刺激的な体験であっても一過性のイベントで終わってしまう。リーダーとしての自覚の覚醒、精神的成長の契機になるかどうかは、いかなる文脈の中に体験を位置づけ、どんな問いによって内省を促すか次第であり、そこがプログラム設計者の腕の見せ所となる。ハーバード・ビジネス・スクールが近年カリキュラムの大改定をする中で導入した「フィールド」という体験型プログラムでも、この要素が重視されている。

優れた体験型アプローチの期待効果の一つは、自己認識の深化、自己の再発見に繋がることにある。普段の日々では活用することのない感覚が、非日常の環境の中での刺激によって敏感に働くようになり、自分の心の声への感度も高まる。自社は何のために存在しているのか、その中で自分は何がしたいのかといった望ましい「在り方」を見いだすヒントが得られる。何かを大事にすることで、自分だけでなく周囲をも幸せにできると分かると、人は迷いがなくなり、持てる力を最大に発揮できる状態に近づける。リーダーシップ開発の真髄は“Be Authentic (本物であれ)” と言われるように、自身の心の底からの純粋な願望に気づくことが、非日常のOff-JT体験を通じた意識覚醒の最大の狙いといってもよいだろう。

労政時報に掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

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