グローバル化戦略立案の要諦: 会社のヘリテージに立ち返れ 

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このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、重要パートを厳選して、抜粋掲載していく、ワンポイント学びコーナーです。

『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』からのピックアップ第7回目となる今回は、「グローバル経営」章から「グローバル化戦略立案の要諦」を選びました。多くの日本企業にとってグローバル化は必須ですが、そのための戦略立案にあたっては、事業経済性や効率化、現地適応など様々な要素を勘案する必要があります。ただし、形だけ作っても世界では勝てませんし、求心力も高まりません。戦略の魂とも言える企業特性・文化(Heritage)にあらゆる要素を整合させつつ、戦略を進化させる必要があります。

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【POINT】

企業のグローバル化戦略立案においては、段階ごとに戦略を成功させる主要な要素を押さえておくことが重要である。そのモデルとして、グローバル化戦略の要諦(4 + 1モデル)を紹介する。

◆グローバル化戦略の要諦(4 + 1モデル)

グローバル化戦略を考える際のモデルとして、筆者らは、グローバル化戦略の要諦(4 + 1モデル)を提唱する。これは、バートレット&ゴシャールおよびゲマワットの理論を土台にしながら、クロービスの事業における知見などを加えてモデル化したもので、グローバル化戦略を立案する際に押さえるべき5つの主要な要素で構成されている。

グローバルでの規模を追求しつつ、一方で地域ごとのニーズに対応していくためには、製造・開発等に関するナレッジをグローバルに展開すること、およびバリューチェーン全体をグローバルな観点から最適なかたちで配置する必要があると考える。さらに、それらの構築においては、企業文化や企業の根幹にあるもの、つまり企業特性(Heritage)との整合を重視しなくてはならない。

(1)規模一規模と範囲の経済の追求
グローバルで競争優位性を確立するためには、規模の経済、範囲の経済の追求が重要な選択肢の1つだ。そのためには先進国のみならす、広く世界の汎用的ニーズを探り、標準化を進めることが重要となる。

(2)現地適応一地域・セグメントごとの顧客ニーズへの適応
一方、進出国のローカルでの優位性を得るためには、経済合理性の追求と同時に個々の細分化されたニーズに柔軟かつスピーディーに対応することも重要となる。そのためには進出国の背景要素を押さえ、現地ニーズにカスタマイズした製品・サービスの開発が必要となる。

(3)ナレッジ――知恵や情報のグローバル展開
(1)(2)を実現するには、進出国に駐在するメンバーだけで戦略を試行錯誤したり、逆に現地事情を理解していない本社が一方的に意思決定を押しつけたりするのではなく、各現場で得られた情報や知恵を的確・タイムリ一に共有し、横展開していく必要がある。組織間の物理的距離が生まれるグローバル展開では、この能力が必須となる。

(4)差異の活用(資源やバリューチェーンの最適配置)――コスト差等の市場間差異を活用した価値創造
(1)(2)を実現するには、バリューチェーンの範囲をグローバルに広げて考える必要がある。たとえば、人件費の安い国に製造機能を置く、ハイスベック人材を採用しやすい国に研究開発機能を置くというように、資源やバリューチェーンをグローバルに配置し、市場間格差を活用して優位性を構築することが必要だ。

(5)企業特性・文化(Heritage)との整合性
自社の企業特性や母国の文化、海外展開の歴史などを踏まえ、それらと整合のとれたグローバル化戦略を立案する必要がある。 Heritageは人材・設備・技術・ブランドといった資源、従業員の連携や意思決定パターン等のプロセス、仕事上の判断基準や自社の制約条件などの価値基準、といった多くの要素が絡み合ったものであり、自社のHeritageに合ったグローバル化戦略こそが真の優位性を生み出すものとなる。

◆グローバル化戦略の立案方法
グローバル化戦略の要諦の考え方を、前項で紹介したグローバル化の3段階の考え方と統合することで、新たな示唆が得られる。つまり、グローバル化戦略において押さえる5つの主要要素のうち何を実現していくべきかは、グローバル化の段階に応じて変わっていくのである。たとえば、輸出展開モデルでは、5つの要素のうち規模を徹底して追求すれば良いが、現地適応モデルでは規模に加え、ニーズ対応、ナレッジの3要素を構築する必要がある。そしてバリューチェーン分解モデルでは、市場間の差異を捉え、それを活用するかたちで資源やバリューチェーンの再構築を図れるかが、成功への試金石となるのである。

(本項担当執筆者:グロービス・コーポレイト・エデュケーション ディレクター 野田史恵)

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次回は、『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』の「グローバル経営」から「グローバル経営人材の要件と育成プログラム」を紹介します。

ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載しています)


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