力強い経営理念が強いチームを作る!楽天を優勝させた「三位一体」の理念 

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※2013/10/24にNumberWebに掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

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2013年最後の本コラムは、働くスタッフをささえる「組織文化」のあり方について考えてみたい。

このコラムでも、度々、日本ハムや楽天、ロッテなどがどのような球団経営をしているのか、それを支えるスタッフの姿勢などを紹介してきた。観客の体験の質は、サービス提供を担う人材に大きく依存する。したがって、スタッフがモチベーション高く内発的に活動を行う状態であることは非常に重要になる。

今までのコラムの中では、筆者が感動した体験として前述したチームのスタッフのフレンドリーさや明るさにも触れてきた。このようなモチベーションの高さは一体どこからくるのであろうか。

実は、スタッフの動機づけや方向付けを行い、モチベーションを高める組織文化の醸成に大きな役割を果たすものの1つに「経営理念」がある。

パ・リーグ6球団が掲げる「経営理念」

プロ野球チームのHPを覗いてみると、パ・リーグではなんと全球団に「理念」が明記されていた(ここで示す理念とは、毎年各チームが掲げるチームスローガンとは区別しており、社会やステークホルダーに対する普遍的な使命[Mission]・信念・誓約を指している)。

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観客動員数の落ち込みに悩んできたパ・リーグ各球団が多くのファンを惹きつけようと改革を行った際、そこで働くスタッフの心を1つにし、モチベーションを高めることにおいて、経営理念の果たした役割は小さくなかったであろう。

スタッフ全員の共感を呼ぶ理念とは何か?

パ・リーグ各球団の経営理念の中でも、今年日本一になった楽天は、一見すると表現が短く、当たり前のようなことを書いているが、ひと際ユニークな理念を掲げているとも言える。楽天の理念には強いチームになること、それが地域貢献と結びついていること、そして、球団の経営自体が健全であることが、明確に打ち出されている。

ただ、理念というのは、存在することが大事なのではない。理念は、スタッフに共感されるものでなければならない。つまり、スタッフの内発的な取り組みにつながる動機づけになっていることが重要である。

ではどのような理念がスタッフの共感を呼ぶのであろうか。

もちろん、1つにはその球団を率いる創設者、マネジメント層(時にスタッフの)の強い想いや実現したい世界観が表現されていることである。これはいうまでもなく非常に重要である。ただそれだけではスタッフ全員の強い「共感」を生むまでには到達しないことがある。

ファンとチームの好循環で健全な経営を

ここで再び、楽天の理念を見てみる。

楽天の場合には、他球団も掲げる「地域密着型の実現」に付け加え「強いチームの創造」と「健全な経営」を理念に盛り込んでいる点が非常に面白い。

楽天が目指す「野球を通じて感動を創り、夢を与える集団」となるためには何が必要なのか。
楽天は、プロスポーツのマネジメント改革に注目が集まった時期に設立された球団だからなのか、スポーツビジネスの要諦をしっかり理解し、それを理念の中に盛り込んでいる。

つまり、

(1) 「地域密着型」を進め、地元のファンに支えられることで「健全な経営」が成り立つ。
(2) 「健全な経営」が基盤にあれば、選手の補強なども含め「強いチーム」を創ることができる。
(3) より「強いチーム」を創ることができれば、「地元のファン」にさらに喜んでもらえ、ロイヤリティの高いファンになってもらえる。
(4) ロイヤリティの高い「地元のファン」が増えれば、「経営はさらに健全」になる。

このサイクルを回すという考え方が、「野球を通じて感動を創り、夢を与える集団」になるためには欠かせないことを、理念に明確に示しているのである。

理念の力強さが球団の成長に直結する

この「三位一体」が理念に盛り込まれたことで、楽天の理念が「こういう社会が実現できたらいいよね」という願望から、スタッフ全員の心の中で「こういう社会を確実に創るんだ」という信念・確信に変化をしているように見える。つまり、描いた世界を描きっぱなしで終わるのではなく、実現するための考え方を伝えている。理念に描かれている内容を真の意味で理解し、理念に則ってやるべきことを考えられるスタッフは、自分の想いを想いに留まらせることなく、行動へと変えることができる。つまり球団の成長にしっかり貢献することができる。そこに楽天の理念の強さがあるように感じる。

楽天の例でみたように、共感を生む理念には、想いや理想だけではなく、その世界を実現すべく存在価値を発揮するために必要な企業の在り方、考え方などが含まれている。このような理念は、スタッフの間に、企業理念の必然性に対する高い「納得感」を醸成し、その企業の存在意義に対する深い理解こそ強い共感を生み出す。

昨今のパ・リーグのスタジアム改革の様子を見るにつけ、プロ野球をはじめとするスポーツマネジメントにおいても、経営理念の重要性を感じる毎日である。

<今回のポイント>
◆スタッフと顧客の接点が多いビジネスの場合には、スタッフの内発的な取り組み姿勢が顧客の満足度に大きく影響するため、いかにスタッフの動機づけを行うかが重要である。
◆スタッフの動機づけ・活動の方向付けに大きな役割を果たすものとして経営理念がある。
◆経営理念は、創業者の想いだけではなく、その理念の「必然性」も語る必要がある。それによりスタッフの納得感や共感度を上げることができる。

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