ナレッジ経営と競争優位: 蓄積が難しいチエこそITの活用を 

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このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、重要パートを厳選して、抜粋掲載していく、ワンポイント学びコーナーです。

今回は、『グロービスMBAマネジメント・ブック』の「IT」章から「ナレッジ経営と競争優位」をピックアップしました。ITによって比較的簡単に蓄積・再活用できる知がある一方で、人々の対話など、工夫しないと蓄積しない知もあります。属人化しやすい後者の知を再利用しやすい形にすることこそ、企業の競争力を左右する重要ポイントです。

技術進化のとらえ方

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【POINT】
近年の企業に求められているのは、ITを活用して知識を管理する枠組みを構築し、個人の知識や組織の知識と企業戦略を融合させたナレッジ経営を目指すことである。

◆IT時代の競争優位

企業が競争優位を築くためには、過去のように売上規模をはじめとする量的な拡大を追求するだけでは難しくなり、知的資本など質的な経営資源の活用がより重要になってきた。つまり、企業が持つ独自の知識の創造と活用のための仕組みを提供する「ナレッジ経営」が求められるようになった。

ナレッジ経営を推進するには、コンピューターネットワークなどのインフラを築いたうえで、従業員の創造性や行動能力、知恵、データベース上に蓄積された知識や情報データを、ばらばらなものとしてではなく「結合した経営資源」として活用する必要がある。また、顧客の知恵やクレームなどを生かすことで、不連続な環境変化に素早く適応できるようになる。また、知識に基づく競争優位を確立するためには、企業全般にわたって知識やノウハウを管理し活用する戦略に対して責任を持つCKO(Chief Knowledge Officer:最高知識責任者)の役割も重要である。

◆SECIモデル

ナレッジ経営では、知識やノウハウ(ナレッジ)を創造したり共有するためのマネジメントが不可欠だ。このうち、知識創造活動に注目したナレッジ・マネジメントの枠組みとして、一橋大学大学院の野中郁次郎教授が提唱したSECIモデルがある。個人が持つ暗黙的な知識は、「共同化」(Socialization)、「表出化」(Externalization)、「連結化」(Combination)、「内面化」(Internalization)という4つの変換プロセスを経ることで、集団や組織の共有の知識となる。「共同化」とは経験の共有によって、人から人へ暗黙知を移転すること。

「表出化」とは、暗黙知を言葉に表現して参加メンバーで共有化すること。「連結化」とは、言葉に置き換えられた知を組み合わせたり再配置したりして新しい知を創造すること。「内面化」とは、表出化された知や連結化した知を自らのノウハウあるいはスキルとして体得することだ。ナレッジ・マネジメントとは、SECIのプロセスを管理すると同時に、このプロセスが行われる「場」を創造することでもある。

◆ナレッジ・マネジメントの類型

コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーのT.ティアニーらによると、ナレッジ・マネジメントは「コード化戦略」と「個人化戦略」に大別できる。

コード化戦略とは、日常活動から発生する情報を文字などで表し、それを蓄積することで「知の貯蔵庫」を構築し、知識の再生産を行うことだ。営業活動から得た市場情報や顧客からの質問や苦情などを蓄積し、顧客対応や商品開発など将来の活動に役立てることで、情報の「再利用の経済」(情報の使い回しによるコストダウン)を追求する。知識の表出化や再利用を促すために、ITを活用してコード化のプロセスを効率化したり、簡単に情報を検索できるようにすることが大切だ。

個人化戦略は、個人が保有する知識と対話を重視し、人のネットワークやコミュニケーションによって、コード化できない知の継承や創造を行う戦略だ。コードされない知は、大と大との対話やブレーンストーミングによって引き継がれたり、創造される。顔を突き合わせた会話や電話だけではなく、電子メール、テレビ会議なども活用する。個人化戦略では「専門性の経済」(専門知識の掘り起こしとその有効活用)を追求していくので、専門家が保有する知識が重視される。

知識変換の活動

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出典:野中郁次郎「組織的知識創造の新展開」ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス、1999年9月号

次回は、ゲーム理論・交渉術のパートから「情報非対称ゲームの考え方」を紹介します。

ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載しています)

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