グローバル化には人事部の進化が必要 -グローバル化と人事システム(1) 

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今日では経営環境が複雑化しており、それに適応するために、組織もまた複雑な構造を持たなければならなくなった。グローバル展開を行い、世界各地に拠点を持つ企業であればなおさらである。それは人事部という組織も例外ではない。海外の拠点において、どのように社員が働いているのか、その拠点の経営トップは何を悩んでいるのか、足を運んで理解している必要がある。そして、事業部が迅速で柔軟に運営できるためのアドバイスを行うための仕組みを作るべきだ。

一つの例として、ドイツに本社がある国際物流企業のDHL社では、「タレントパネル」という会議を事業部単位で年1回開催している。この中で能力開発、人材マップ、後継者育成について議論され、人事部はそのサポートを行う。このように、現状の人材の能力を的確に把握し、新しい事業にどのような人材が必要か考えるのが「人材マップ」である。そして、最終的には後継者育成をどのように進めるかが議論される。人事は人事部の仕事だけを進めればよいわけではない。このような連携ができていれば、グローバルな人事案件が発生する前に、人事部としていろいろな手を打つことができる。

事業部の戦略を把握できていれば、本社から派遣する人材についても、一時的駐在要員なのか、それとも現地で根を下ろして仕事をする要員なのか確定できる。どちらの要員であれ、人材ポートフォリオから要件に会う人材を選出し教育研修すればよいことになる。さらに、後で述べる「『点』から『面』へのグローバル化」を考えたとき、人事部が事業部同士を調整する役割も期待されるようになろう。

いずれにしろ、事業部と人事部が一緒になって、戦略を考え、人事を考えることでより的確で柔軟
なグローバル対応ができるようになる。

複雑化する企業組織の中で、そのサブシステムとしての人事部が適応力を高めるために人事部自体がより多様性を高める必要がある。それは人事部の存在意義を高めるだけでなく、企業組織が生き残っていくために必要不可欠なことである。進化する過程で、国内外を問わず経営手腕を発揮できる人材を育成することができた企業組織が複雑で不確実性の高い環境の中で、生き残っていくのではないだろうか。

今回から、「グローバル化と人事システム」の解説として、グローバル化を進める上で前提条件となる「異文化理解」と「多様性の受容」から始め、グローバル人材を育成するためのトータルシステムの在り方、そしてグローバル化が進む企業における人事部に期待される役割を考えていく。

文化と言葉 ~当たり前が当たり前でなくなる理由

しかし、正しい発音と文法だけでは相互に理解することはできない。言葉の背景にある価値観・文化を共有していない場合があるからだ。

「文化」についてはいろいろな定義ができるが、本稿では「社会、共同体における共有の価値観に基づく行動規範」としておく。文化にそぐわない行動を取るとき、ある種の罰が与えられるという意味で、「規範」という言葉を使う。例えば、相手の目を見て話すべきという文化もあれば、そのような目線は失礼とする文化もある。日本の伝統芸能である能では、登場人物が互いに目と目を合わせることは諍いを表現する。

さらに、集団や組織にも文化が存在する。企業組織であれば、社風や組織風土などと呼ばれることもある。このような文化にも人は大きく影響を受ける。したがって、グローバル化では、自国の文化、進出先の文化、さらに自組織の文化が相互に交錯することになる。

次回は、グローバル化のための前提条件を4つご紹介します。

労政時報に掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

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