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組織構造は、メンバーの行動をコントロールするという意味で、制度の一種である。そして「組織構造をデザインする」とは、組織の目的を達成するために誰に何を担当させるか決めることである。その際に基本原則となるのは「戦略」である。

企業組織として何をしたいのかを表現したものが戦略であり、組織構造は戦略を実行するための道具だ。そのため、両者は整合していなければならない。これを最初に主張したのが「組織は戦略に従う」と指摘した米国の企業史研究家、アルフレッド・D・チャンドラーJrである。

(1) 戦略的視点からの組織構造の設計

組織構造を設計するには、まず戦略を実行するために必要な業務が定義される。その上で誰が、どの分野を分担するかを決めることになる。

したがって、トップダウンで設計を行うことが原則である。しかし、必要な業務が定義できても、それを担当できる人材がいなければ、業務を再定義して、既存の人材が担当できるようにする必要が出てくるだろう。あるいは、定義した業務を遂行できるような人材を組織外に求めることもある。

日本の企業は伝統的にまず「人ありき」で発想し、戦略を構築する傾向が見られる。経営トップが戦略を構築し、その後に分業担当者を決めるという流れではなく、“今いるメンバーに何ができるかを考慮しながら戦略を考え、分担させる”という方法である。確かに、既存人材は育つことになるが、環境変化への適応力は低くなるであろう。

(2) 分業するメリット

他方、業務を担当する側から見ると、組織構造は以下のような特徴、効果を持つ。

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(1)の「認知負荷」とは、手順や作業プロセスを覚えるための記憶、あるいは判断などの知的活動に関わる負担のことだ。分業すれば個別の領域のことだけについて記憶し判断すればよいことになるため、各人の負荷は軽減されることとなる。

また、分業システムにおいて長期にわたり特定の業務を担当すれば、習熟、効率化も期待できる。そして、各自が適切な判断、意思決定をすることができれば、組織全体の目的も達成しやすくなるであろう。米国の組織論学者、ハーバート・A・サイモンが指摘したように、組織は意思決定のシステムであり、個別の意思決定の連鎖が組織全体の方向性を左右するからである。

(3) 分業する上での注意点

戦略に基づき職務を定義し、その職務を適任者に担当させる計画を立てることは、論理的にはさほど難しくない。しかし、現実には職務を担当する人の能力や経験によって目的が達成されるかどうかが決まる。論理的整合性だけを追求して、組織内の人材の特性を考慮しないと、結果として組織は絵に描いた餅に終わる危険性がある。

例えば、特定の部署での経験が長くなると、自部署に対してのロイヤリティー(忠誠心)が高まり、自己犠牲を払っても所属部署のために貢献しようとするケースが見られる。このこと自体、部署にとっては望ましいものだ。ただし、自部署に対しての高いロイヤリティーが、他部署に対する対立関係を生むこともある。「集団間葛藤」と呼ばれるもので、組織全体の最適性から見ると問題が生じることになる。協力関係を築けず、組織内が混乱し、本来達成すべき組織全体の目的がないがしろにされるからである。

ここで留意しなければいけないことは、こうした集団的葛藤は、感情を露わにした対立という形態をあまり取らないことだ。ある種の理論武装がなされているため、その理論を看破し、部署間の対立を解消することは簡単なことではない。

そこで、クロスファンクショナルチーム(多様な経験・スキルを持つメンバーを部門横断的に集めて構成するプロジェクト型チーム)を組成して、このような状況を回避することがある。異なる部署の出身者が一緒に仕事をすることで、自部署以外の視点や価値観を理解することができるからである。ただし、クロスファンクショナルチームも、巧みにマネジメントできなければ、結局のところ部署間の対立構造をチーム内に持ち込んでしまいかねない。

次回は、組織を精緻に設計しても回避できない「意思決定の問題」についてです。

労政時報に掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

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