組織を動かすメカニズム 

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本連載では、これまでイントロダクションとして、経営的視点からの「人と組織のマネジメントの論点」を挙げてきた。今回から、これからの時代に求められる人事のチャレンジと、そこで必要となる考え方を紹介していく。

「当たり前」を再考する

朝、電車に乗り職場にたどり着くと、パソコンのスイッチを入れスケジューラーで1日の予定をチェックする。その後、メールを読み、返信する。続いて、午前中の会議のための資料を準備し、会議室に向かう。業種や業界に関わりなく、よく見られる光景ではないだろうか。

企業組織が順調に動いているとき、あらためて企業組織のありさまを考えることはまずない。しかし、存続が危ぶまれるようになると、考えざるを得ない状況に陥る。普段当たり前と思っていたことが機能しなくなるからである。日常的に行ってきたこと自体が潜在的な問題を抱えていたにもかかわらず、それまで気づかなかったのかもしれない。このような状況を避けるためには、当たり前と思っていることをあらためて見直す必要がある。もちろん、危機的な状況でなくても“そもそも組織とは何か” を理解しておくことは、日常的な業務を効果的に進める上で役立つであろう。

今回は、組織構造のメカニズムと、その中での意思決定の在り方に焦点を当て考える。

組織を動かすメカニズム

組織は人の集まりであり、特定の目的を達成するために協働する場である。しかし、目的をメンバー間で共有することはそれほど簡単なことではない。まず、言葉や概念の解釈の違いが個人間で生じるし、時間の経過とともに、解釈のズレが徐々に生じることもある。時には、解釈の変更を迫られることもある。

(1) 人から人への働き掛けによるコントロール
組織がある規模以下であれば、リーダーシップを発揮する創業者や創業メンバーによって、上記のような齟齬を埋め、目的を再解釈し、組織としてのまとまりが維持されることになる。いわゆるフェース・トゥ・フェースのコミュニケーションを通じて、組織内のメンバーの行動を一定の方向に向けることができる。

しかし、組織がある規模を超えると、リーダーシップだけでは難しくなる。フェース・トゥ・フェースのコミュニケーションとは、別の表現をすれば“人から人への働き掛け”である。働き掛ける対象つまり組織メンバーの数が増えると、効果は減衰する。時間的にも物理的にも働き掛けることができる人数は限定されるからである。

(2) 制度によるコントロール
そこで、制度が必要となる。制度とは行動のルールの束であり、組織メンバーであれば誰もが守るべきものと認知しているものである。制度に基づいて組織メンバーが行動するようになると、コミュニケーション・コストは低下することになる。組織メンバーが相互に行動のありさまについていちいち個別に確認する必要がなくなるからだ。そのため、一度制度ができると、多数の人間の行動を一挙に、しかも継続的に方向付けることが可能となる。

(3) 組織を動かす2つのパターン
組織を動かすに当たって、どういう働き掛けによりどんな効果があるかを下記のようにまとめた。

組織を動かす2つのパターン

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即時的にメンバーに影響を与えることができるが、その対象は限定される。さらに、両者の信頼関係がなければ成立しない。いわゆるリーダーシップはその典型例である。他方、Bパターン[制度による人への働き掛け]では多数の人間に長期的に影響を与えることができるが、的確に制度設計されていることが前提となる。これらの特徴から、2つのパターンは補完的な関係にあるといえる。

なお、Aパターンのマネジメントだけで可能な組織規模は150人ぐらいが限界といわれる。これは英国の進化心理学者、ロビン・ダンバーが提唱した「ダンバー数」として知られる定式だ。脳の前頭葉前野の面積と群れの大きさの関係をプロットすると比例関係にあるという理論であり、それによると人間がメンバーのそれぞれと安定した関係を維持できる上限は平均150人と算出される。

次回は、組織の目的を達成するために誰に何を担当させるかを決める「組織構造デザイン」についてです。

労政時報に掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

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