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顧客提供価値 -経営の全体像を捉える(4)

投稿日:2015/01/21更新日:2019/08/15

顧客提供価値(「どのような価値を」「どのように」提供するのか?)

市場を選択し、顧客のニーズ、購買決定要因を具体的にイメージできたら、「どのような価値を提供することで顧客を獲得・創造し、他社との競争に勝つのか」を考える

顧客提供価値

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競争のポイントを明確にし、どのような価値をどのように提供するのか、製品・サービスそのもの、価格、流通、コミュニケーション等、いわゆるマーケティングミックスを具体化していく。

競争のポイントは選択した顧客のニーズと購買決定要因から決まる。製品・サービスの機能と品質、価格が一義的な競争のポイントだが、他にも重要なポイントが隠れていることも多い。例えば、供給のスピードや安定性、手に入れやすさ、顧客にとって有利な取引条件などの「取引の利便性」、顧客に対する理解の深さ、顧客にとってのスイッチングコストなどの「関係性の利益」、そして取引実績や社会的評判などから生まれる「ブランド・信頼性」などだ。

製品・サービスの差別化がすぐに模倣され、急速に優位性を失うようになってきている中では、こうした種類の優位性をいかに高めるかが、ますます重要になっている。

プロダクト・ライフサイクルのどのあたりにあるのか?

さらに、顧客の製品・サービスと自社が提供する価値の「相互依存性」は提供価値の在り方に大きな影響を与える。自社が提供する製品は、それぞれの顧客に合わせた価値を提供する「カスタマイズ製品」なのか、それとも均質な価値を多くの顧客に提供する「コモディティ製品」なのかを認識しておくことだ。前者のカスタマイズ製品であれば、個別顧客に対する理解・対応力の高さ、顧客の製品開発や製造プロセスに対する「合わせ込み・統合(インテグラル)」が重要だ。一方で後者のコモディティ製品であれば、価格の安さや安定性、他社での採用実績も含めた信頼性、安定した品質、どこからでも、いつでも調達できることなどが重要になる。

こうした競争のポイントとして、たとえ同じ製品であっても、その提供価値の在り方は常に一定ではなく、変化することに注意が必要だ。特に製品・サービスが、その「プロダクト・ライフサイクルのどのあたりにあるのか」という視点から見るとよい。

例えば、製品・サービスの「導入期」においては、製品・サービスの中核的な、新しい機能・品質を一定レベルの価格で実現し、顧客の需要を創出できるかが競争のポイントになる。「成長期」に入ると、製品・サービスの適用範囲、市場・顧客を増やしながら、機能・品質の向上と価格の引き下げを同時に進め、顧客の数と購買量を拡大していく競争になる。

さらに製品・サービスの基本的機能・品質レベルがある程度固まり、顧客の要望や需要の大きさに変化・革新があまり起きない段階に入ると、価格の安さ、手に入れやすさ(言い換えればチャネルの支配度など)、知名度の高さやブランドイメージの良さなどの勝負に、もしくはそれぞれの顧客が求める微細なニーズにいかに細やかに対応できるかといった、製品の付随的機能や製品以外のマーケティングミックスの在り方に競争のポイントが移ってくる。この段階で機能・品質向上に多大な投資を行って実現しても、顧客が感じるメリットの増加度合いはそれほど高くないため、開発投資やコストを価格に転嫁しづらくなる。そうなると、むしろ価格を下げることで「(便益/価格) 比」を高めるか、それまでとは異なる価値軸でメリットを生み出すことを考えるべきだ。

しかし、単に価格を下げるだけの競争に陥り業界もろとも低収益に沈んでいく、もしくは成長期と変わらない機能・品質の向上競争に明け暮れ、高コスト高価格になった結果、顧客が限定されてしまい販売量が減少、ますます低収益に陥っていくといった例は枚挙にいとまがない。こうしたことを避けるためにも、製品のライフサイクルに応じた提供価値の把握は重要な論点といえる。

顧客提供価値をめぐる競争のポイントは、極めて多くの関数が複雑に絡み、常に変化していく。それを的確に捉えるには、「競争のポイントになり得る要因を幅広く理解・認識する」「変化の背景にあるライフサイクル等の原理を理解し、徹底的に具体的に考える」、そして何よりも「顧客について深く理解する」ことが重要だ。われわれは顧客についてどれくらい深く理解できているだろうか、ぜひ一度問い掛けて考えてみていただきたい。

さて、ここまで「経営の全体像」の論点のうち、「(1)目的・理念・期待成果」から、「(4)顧客提供価値」までの流れを見てきた。人事の立場からすると一見縁遠い話が多かったかもしれない。しかし、これらの論点を踏まえることで、自業界のこれからの競争のポイント、それを踏まえた自社が目指すべき戦略の方向性が具体的に見えてくるはずだ。そこが掴めてこそ、企業内部の活動の在り方、そして活動を動かす人・組織の在り方が見えてくる。

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次回は、(5)価値を生み出す活動の仕組みについて

労政時報に掲載された内容をGLOBIS.JPの読者向けに再掲載したものです。

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