交渉術入門(4/4) −交渉は情報戦、必要な姿勢とは 

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さて、いよいよ交渉術入門も今回が最終回となります。これまで、「BATNAとRV」「論点を増やすこと」「戦術」について見てきましたが、最後は、「交渉に臨む姿勢」についてお伝えしたいと思います。ではまずは事例から見ていきましょう。

八百屋さんでの交渉

あなたは、八百屋の店主です。事前に予約が入っていたので50人分(10万円分)の食材を仕入れていたのですが、買い手が突然キャンセルをしてきました。このままでは売れ残ってしまうので、50人分を8万円まで値下げして売ってもよいと考えています。

そこへあるレストランのオーナーシェフから電話が入りました。実はこのオーナーシェフ、急に団体のお客さんの予約が入り、50人分の食材がすぐに必要となり用意してくれるのであれば、12万円(通常は10万円)まで出してもよいと言ってきました。

さて、あなたならどう答えますか。

A:「なんとか用意しますので、12万円でお願いします」
→まさに渡りに船。8万円に下げてもいいと考えていたところに、12万円の提示です。とびつかない手はありません。

B:「いつもの10万円でいいですよ。でもこの恩は返してくださいね」
→これも自然な発想です。せっかくの機会なので利用しない手はありません。次への貸しを作っておくことも当然です。

C:「実はうちもキャンセルがあって困っていたのですよ。いつもの10万でいいですよ」
→これはどうでしょうか。素直に実情を話し、正規の価格にする。これはこれであるかもしれませんね。

交渉は情報戦

A,B,Cのいずれかが正解という訳ではありませんが、あなたが先に、「実はちょっと困っていまして、50人分の食材を買っていただけませんか?8万円に値引きしますよ」と話していたら、全く逆のことが起こっていた可能性が高いですよね。

交渉は情報戦と言われますが、このように、相手の意向を知った側が有利に交渉を運ぶことができます。従って、交渉に必要な基本姿勢は、「言うよりも問う」ことです。相手の関心、相手の意向をできる限り、先に引き出すことを心掛けましょう。そのためには、「相手がどんなことに関心を持っていそうか、どんな意向を持っていそうか」ということを事前に考えておくことが重要になります。また、準備段階だけではなく交渉の最中においても、問うこと意識して注意深く相手の話を聞きましょう。交渉を有利に進めるにはこちらが話し続けなければと考えがちですが、極力「聞き出す」ことを心掛けてください。

交渉に臨むスタンス

さて、再び八百屋さんでの事例に。今後もレストランとの取引が続くという前提を置いた場合は、どの対応がよいでしょうか。オーナーシェフの立場になってみると、どの対応が最も気持ちがよいでしょうか。どのように答える相手となら、今後も付き合いを続けていきたいと思うでしょうか。

Aの場合は、今回の交渉だけを考えればメリットがあるのですが、なぜすぐに50人分も用意できたのか、こちらの状況が相手に分かってしまった場合は、信頼関係に悪影響を与えるリスクがあります。また、Bの場合も、常に「貸し」「借り」を考える相手だと認識されてしまう可能性があり、決してよい印象を与えることにはつながりません。

実際のビジネスでは、1回の取引で終了することはあまり多くはありません。長期的に取引を続けることを前提とすると、気持ちよく仕事を進められるパートナーと思ってもらえることが重要になってきます。時には今回とは逆の立場になることもあり、その場合は相手に助けてもらう必要も出てくるでしょう。そう考えるとCの対応が、誠実さが伝わり、信頼関係の構築という意味では威力を発揮しますね。率直に話をしてくれる相手に対しては、安心感や信頼感を抱くのではないでしょうか。逆説的ですが、交渉をうまく進めたいと思うのであれば、勝とうとしないことです。

<今日のまとめ>
交渉は情報戦。情報を相手より多く持てた側が有利になる。ただし、自分が利することばかり考えないこと。
長期的な取引を前提とする場合は、信頼関係を築くためには、どのような対応がよいのかを常に考えよう。

■最後に交渉を単なる勝ち負けで考えるのではなく、自分だけでは生み出せない価値を両者で創出できる可能性がある場、そのように考えてみてください。そう捉えることで、LOSE-LOSE=単なる妥協ではないWIN-WINの交渉につながっていくはずです。

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