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MBA経営辞書「瀬戸際戦術」

投稿日:2012/02/13更新日:2019/04/09

瀬戸際戦術(Brinkmanship)

交渉戦術の一種。自分のBATNA(BestAlternativetoNegotiatedAgreement:最善の代替案)を明らかに損失の大きいものにする一方で、相手にも大きな損失を及ぼすぞと脅すことで、妥結を促すもの。

瀬戸際戦術は、わがままを認めてくれないと悪事に走るぞと親や教師を脅す子供、その癖をやめないと離婚だというカップルなど、身近でもさまざまな場面でみることができる。ビジネス上の瀬戸際戦術には、以下の例がある。

・労働組合と経営者の交渉で、労働組合側が交渉決裂時のストライキを宣言するケース。ストライキの期間中は、組合は賃金を失い経営者はコストがかかるという、失うものの大きい悲惨な状況となる。
・敵対的買収で、買収対象企業が買収成立前に社内の価値ある資産を売却したり社員を解雇したりする意向を表明するケース。自社の魅力をあえて落とすことで相手の買収意欲を削ぐというもので、「焦土作戦」と呼ばれる。2005年、ライブドア社のTOBに対して、ニッポン放送経営陣が、当時同社が保有していたポニーキャニオン株をフジテレビジョンへ売却しようと検討した件が有名である。

なお、瀬戸際戦術は、相手の期待を変えることで相手の行動に影響を与えることが目的であって、本当に瀬戸際から落ちてしまっては、すなわち交渉が決裂して自分が設定した損失可能性が実現してしまっては失敗である。こうした構造を持つことから、ただ単に自虐的な状況をつくって相手を脅せばいいというものではなく、首尾よく成功するためにはいくつかの条件を満たす必要がある。

1つは、相手から見て脅しに真実味が感じられること。2つめは、どこかにコントロール不可能な部分を残すことである。なぜなら、第一の点と一見矛盾するようであるが、「絶対にやるぞ」と言い切るのは、実は相手から見て真実味が減じる要素となりうるからだ。相手から「どうせ最後の最後には思いとどまるはず」と見透かされないように「自分が止めたところで現場は暴走するかもしれない」などと実現性を匂わすのである。

3つめは、決裂の場合に相手が被る損失が、妥協する場合の損失よりも「痛み」を感じるほど大きいこと。4つめは、瀬戸際から脱出できる道筋をしっかり見せることである。脅された側は、条件をのむことで危険を十分に下げられると確信できなければ、相手の言う事を聞いても聞かなくても馬鹿を見ることになり、相手に従う意味はなくなってしまう。

▼「MBA経営辞書」とは
グロービスの講師ならびにMBA卒業生など、幅広い分野から知を結集して執筆された、約700語の経営用語を擁する辞書サイト。意味の解説にとどまらず概念図や具体例も提示し、マーケティング、ファイナンスなどの分野別に索引できる。今後、検索機能ほかサイト機能の追加を行う一方、掲載用語を1000語程度まで拡充した上でサイト上でのご意見の収集ならびに監修の実施を通じた更なる精緻化を図り、グロービス編著のベストセラー書籍『MBAシリーズ』と併読いただける書籍として出版を予定している。

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