まあ数字は良いことだし -対応バイアス 

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問題です

以下のAさんの問題は何か。

Aさんはある会社の企画室長。B君とC君のどちらを係長として昇進させるか検討している。企画室は営業などとは違って数字での評価がしづらいことから、人事考課については、業績の評価よりも、能力や態度に関する評価を重視していた。

「この360度評価(部下や同僚、上司など、様々な関係者の視点を取り入れ、多面的に行う人事評価)を見ると、B君の方がC君よりもかなり評価が高いな。自分から見ると2人に遜色はつけにくいけど、いつも近くで見ている人間の意見だからな。やはりB君の方を係長にしようか。でも、B君のいるDチームはいつも相互評価が甘い傾向がある気がする。それに対して、C君のいるEチームはやや厳しめだ。額面通りに受け取っていいものか・・・。それにしても、5点満点で0.8点の差がある。0.8点か・・・。やはりこの差は大きいな。やはりB君の方を係長にするか」

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解答です

今回の落とし穴は、「対応バイアス」です。これは他者のつけた評価がその人の実力や能力をかなりの程度正しく表しているものと考えてしまうバイアスを指します。学校の入学審査や、企業の人事考課などにおいてよく見られる現象です。

対応バイアスの難しさは、「ある集団の評価の方が厳しいことが分かっていたとしても、それをうまく調整することができない」という点にあります。今回のケースでも、B君のいるDチームの方が相互評価が甘いことはAさんも十分認識しています。しかし、それでもなお、最終的には数字に引っ張られて、細かな調整をする労力を放棄し、B君を昇進させようとしています。

もしDチームとEチームの360度評価の平均が0.5点程度の差であれば、Bさん昇進でもあまり問題はないでしょう。しかし、これがもし、Eチームの方が1.3点ほど厳しいとしたら、本来はCさんの方が優れていると考えられるわけで、Cさんにとっては非常に気の毒な結果となってしまいます。

そうした調整を避けてしまう理由としては、(1)傾向は日々変わるので、それをその都度チェックしようとすると大変な労力がかかってしまう、(2)集団の数が増えると、ますます複雑性が増して調整コストがかさんでしまう、(3)調整しなくても、結局、マクロで見れば結果はあまり変わらないだろうと推定してしまう、などがあります。

(3)について筆者の経験を書きましょう。筆者が大学入試を受けた際、理科のIIは物理ではなく化学を選択しました(当時のやり方)。ふたを開けてみると、物理IIの問題は化学IIに比べるとかなり難しく、「ラッキー」と感じたのを覚えています。その後、「ひょっとして平均点に大きな差があったら調整するのかな」などとも思いましたが、後に筆者が聞いた話では、そうした調整は一切なく、素点がそのまま用いられて合否の判断が行われたようです。

大学としては、手間暇かけて面倒な調整をするより、マクロで見た時にそれなりの人材が確保できれば十分、言いかえれば、ミクロな誤差に拘泥する必要性は低いと考えたのでしょう。しかし、考えてみると、大学から見たらミクロな話とは言え、入試の合否は受験生にとっては重大な話です。個人的には有利な話ではあったものの、不合理だな、と感じたのを覚えています。

対応バイアスを避ける方法としては、その存在をしっかり認識した上で、しっかり調整を行う、あるいは、ある特定の評価だけで判断するのではなく、複数の評価を多様に取り入れる、などがあります。もちろん、企業として取り組む際には、費用対効果を十分に勘案することは必要不可欠です。

ビジネスパーソンにとって、「評価」は非常に重要な事柄です。しかし、特に数字で示された評価は怖さを伴います。最初は但し書き(参考情報)がついていたとしても、気がつくとそれらは抜け落ちてしまい、数字が独り歩きすることも珍しくありません。企業としてそして個人として、いかにそうした評価数字と付き合っていくかは、常に注意を払いたいものです。

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