なんだかそういう気分 -誘導的暗示 

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問題です

以下のAさんの問題は何か。

Aさんはあるファッション雑誌を読んでいた。そのクイズコーナーに以下のような問題があった。

「頭の体操です。各問題について、提示された単語を用いて簡単な文を作ってください。

問1. 秋体脂肪食欲
問2. 金の斧と銀の斧藤原紀香米倉涼子
問3. 身長足の大きさ顔の長さ
問4. 平安時代江戸時代美人うりざね顔
問5. ハイヒール視線男性
問6. たんぱく質糖分蓄積3cm
問7. 網タイツ階段目立つ
問8. 納豆豆腐リンゴ
問9. 活性酸素肌化粧のノリ
問10. 学生時代つまみ食い夜」

Aさんはこの問題をやったあと、次のページの美容広告に目をとめた。「自分も何か美容にいいこと始めてみようかな・・・」

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解答です

今回の落とし穴は、「誘導的暗示」です。これは人の意識の潜在的な部分に働きかけ、相手が気づいていない間に特定の意識付けを行うことで、自分の有利な方向に向かわせる可能性を高めようというものです。

今回のケースでは、問題そのものは一見他愛のない、作文力を問う問題に見えます。しかし、よく見るとこれは、詰将棋やナンプレ(数独)といった、中立的なパズルとは大きく異なっています。ポイントは、「言葉」の選択です。

今回の10個の問題に示されている言葉の多くは、「美容」や「体型」といったテーマに連想付けられるよう選択されています。たとえば問8の3つの食べ物は、どれもダイエットの定番食品です。あるいは、問2に出てくる藤原紀香さんや米倉涼子さんは、いずれも「理想の体型」アンケートなどで名前が挙げられる常連タレントです。問5の「ハイヒール」「視線」「男性」という言葉も、「すらっとした脚」を強く連想させます。

こうした暗示をかけられた人間は、往々にして、それに関連した行動をとりやすくなります。たとえば「学習」に関して暗示をかけられた人間は、他の人より、ちょっとしたきっかけで「何か勉強しよう」と思うものです。ある実験では、老後や加齢といったことについて暗示をかけられた人間は、直後の動きがスローモー(スローモーションの略)になったといいます。

今回のケースでは、10題の作文にかかる時間は10分程度でしょう。しかし、10分という長さは、潜在的な意識に働きかけるには十分な時間です。クイズを真面目に考えれば考えるほど、その強さは強くなります(実は、「美容」や「体型」に直接関係する言葉だけを多くぶつけるよりも、適度にそれを交えて「考える」という行為をさせる方が、効果があります。「すらっとした脚」とダイレクトに書くよりも、「ハイヒール」「視線」「男性」といった言葉から考えた上で連想させることが有効なのです)。

「美容」や「体型」に関して暗示をかけられた読者は、そこにさらにきっかけが与えられると、Aさんのように、自分も何か美容にいいことしようかな、などと考えてしまう可能性は高くなります。おそらく、このクイズは、編集部が適当に考えたものではなく、広告を出したメーカーと相談して作った可能性が高そうです。

このケースでは、ややトリッキーな形で暗示を用いましたが、もちろん、よりポジティブな方向に用いることも可能です。部下の指導などはその典型でしょう。たとえば、自信を失っている営業担当者がいたとして、彼/彼女にうまく誘導的暗示をかけることができれば、「自分も頑張ればできる」と思ってくれます。

その際、ダイレクトに「君はできる人間のはずだから」と伝えるのも1つの方法ですが、「また失注するんじゃないか」「何をやってもうまくいきっこない」とすぐに考えてしまうのが人間の性向です。したがって、うまく硬軟織り交ぜる方が有効です。たとえば、自分の失敗例を語ったりしながら、そこから考えさせ、「やり方によってはうまくいくのかな」「誰でも失敗する時期はあるんだな」「自分でもできそうだな」といったポジティブな暗示をかけるのです。

もちろん、すべての事柄が暗示でうまく解決するわけではないですが、リーダーとしては、相手のポジティブな連想を喚起させるようにコミュニケーションすることで、職場の生産性を高めていきたいものです。また、自分がどのような暗示をかけられている可能性があるかも、折に触れ確認しておきたいものです。

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