自分と似ているなあ -類似者選好 

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問題です

以下のAさんの問題は何か。

Aさんはある企業の管理職。事務スタッフの採用の最終意思決定をすることになった。

「最終候補は3人か。どの候補も似たりよったりね。年齢もほとんど同じだし、面接した感触もそれほど大差なかった。今回必要とされるスキルもほぼ同レベルという感じだし、甲乙つけがたいわね。さて、どうしたものかしら。あら、このBさんって女性、よくレジュメ見たら私の高校の後輩だわ。○○高校、懐かしいな。私情を入れるのも何だけど、皆大差ないことだし、今回はBさんで行こう」

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解答です

今回の落とし穴は、「類似者選好」です。明確に定まった呼び方はないようなので、本コラムではこのように呼ぶことにします。これは、自分と類似点が多い人や組織などを好ましく感じる傾向を指します。程度の差はありますが、プライベートでもビジネスでも非常によく観察される傾向です。

類似していることを好ましく感じるポイントや程度、順位は人それぞれですが、一般に、性別や人種、宗教、国籍、出身地、出身校、出身学部などは、自分と同じ人に特に親近感を持つ項目と言えます。その他には、趣味や応援しているスポーツチームなども、親近感を持つ要素と言えるでしょう。「あなたもタイガースファン?僕もだよ」といった話で盛り上がった経験はどなたもお持ちでしょう。

この傾向は、その類似点を持つ人間の数が少ないほど強くなりがちです。たとえば、東京で働く人間にとって、「東京都出身」と「鳥取県出身」であれば、後者の方が圧倒的に少人数ですから、より強い親近感を持つでしょう。同様に、「元サッカー選手」「元野球選手」よりも、「元ラクロス選手」あるいは「元水球選手」同士の方が、お互いに強い親近感を抱くはずです。

こうした傾向はよくビジネスに応用されます。たとえば、顧客のDMU(DecisionMakingUnitの略、購買意思決定者)と類似点の多い人間を、その顧客の営業担当者にあてるケースは少なくありません。「人は、もし商品や価格に大差がないなら、他人からではなく友達から買う」という言い慣わしもあります。友達とは言わないまでも、好意を抱いてもらえる可能性が高い人間を営業や交渉にあたらせるのは、心理学的にも理に適っているのです。

さて、今回のケースでは、Aさんは、他の要素では差を見出しにくい3人の中から、同じ高校出身者ということでBさんを採用することにしました。こうしたケースは実際によくありますし、ほとんどのケースはそれで問題ないことが多いものです。しかし仮に、たとえばBさんがこの職場のカルチャーに溶け込みにくいということがわかったとしたら、Aさんの意思決定は安易だったということになってしまいます。

ビジネスパーソンの意思決定は、本来、中長期で見た企業の価値を高めるものであるべきです。本来なすべき検討を怠ってしまい、安易に親近感を覚えたことを理由に意思決定していないかは、常に自問すべきと言えるでしょう。

「類似者選好」に絡んでもう1つコメントしておくと、類似点の捏造は避ける方が長期的視点からは賢明と言えるでしょう。人はさまざまな理由から、「私もそうなんですよ」と、事実とは違う類似点を作り上げてしまいます。たとえば顧客が大のサッカーファンである時に、それほどサッカーに詳しくないにもかかわらず、「私もサッカー大好きなんですよ」と言ってしまうようなケースです。

類似点を強調することで相手に親近感を感じてもらおうとしているわけですが、下手をすると、何度も話をする中で「なんだ、サッカー好きと言っていたけど、全然嘘じゃないか」ということがばれてしまうかもしれません。そうなってしまっては親近感どころか、むしろネガティブな感情を持たれてしまうでしょう。昨今はFacebookに代表されるソーシャルメディアも発達していますから、「作り上げた」類似点は化けの皮が剥がれやすいとも言えます。

類似点が多いことは、ビジネスにおいても大きな武器となるわけですが、使う際には、過剰にも控えめにもなりすぎないよう注意したいものです。

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