何度も言われ続けると・・・ -ラベリング・テクニックの誤用 

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問題です

以下のAさんの問題は何か。

Aさんはある企業の管理職。部下に対して以下のようなコミュニケーションをする癖がある。

「B君、君は典型的な『でもしか』タイプだな。他にアイデアがないから、とりあえずこれでもやっておくか、という感じで仕事を進めているね。まあ、君のようなバックグラウンドだとそういうタイプが多いんだよね。そういう習慣ってなかなかかわらないものだから、まあ仕方ないかな」

「Cさんは、いまどきの『草食系男子』ならぬ『草食系女子』だね。チャンスがあるのに積極的にそれを狙いに行くということをしないな。アグレッシブさがちょっと不足気味かなあ。まあ、アグレッシブじゃなくても結果さえ出してくれれば別にいいんだけどね」

「D君は典型的な頭より先に足が動いちゃうタイプだね。昔の営業マンのスタイルだな。いつまでそのスタイルが続くかぜひ挑戦してみてくれ。そういうタイプが一定いることも悪くはないだろう」

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解答です

今回の落とし穴は、「ラベリング・テクニック」を誤って(マイナスの方向に)用いてしまっていることです。ラベリング・テクニックとは、相手に対して「特徴」や「信念」、「規範」、「態度」などに関して「ラベル」を貼り、それを繰り返し伝えて、相手がまさにそのように振る舞うことを促すテクニックです。プラスの方向に用いれば大きな効果を発揮しますが、マイナスの方向に用いると、人々のモチベーションを削いだり、好ましくない方向に誘導したりしかねません。

今回のケースでは、Aさんは「でもしかタイプ」、「草食系女子」、「頭より先に足が動いちゃうタイプ」などと部下にラベルを貼ってしまっています。Aさんとしては、ひょっとしたら部下の奮発を促すために、あえて相手の耳に痛い、きつい言葉を使ったのかもしれません。

しかし、もしそうであるならば、その後に「そんなことじゃダメだよ。もっと変わらなきゃ」のようなフォローが必要です。ラベルを貼ったあとに、「まあ仕方ないか」あるいはそれに類することを言ってしまっては、(伝え方のトーンによりますが)相手は「自分はやっぱりそんな人間なんだな」と態度・行動の変容に至らない可能性が高くなってしまいます。

「ラベリング・テクニック」の効果性は、さまざまな実験で確認されています。たとえば、「あなたはしっかり投票に行く意識の高い市民」というラベルを伝え続けると、それを言われなかった人に比べ、実際に投票所に向かうようになる、といったことが知られています。まさに、相手に期待する「規範」や「態度」を伝え続けることで、人間の行動が変わるのです。

このテクニックを積極的に活用したリーダーに、ダイエーCEOなどを歴任した林文子・横浜市長(2011年現在)がいます。林氏は、たとえばビー・エム・ダブリュー東京の営業所長時代に、「あなたはもっとできるはずなのに、それができないのは悔しい」、「あなたは素晴らしい人なのに、なんでこんなルール違反をするの」などと言って部下のモチベーション向上を図ったと言われています。

ポイントは、「あなたはこのくらいできる素晴らしい人」という、相手のプライドをくすぐりながら動機づけるラベルを貼り、しかも相手が「そうあろう」と考えるようなトーンでそれを伝えたことです。ちなみに、ビー・エム・ダブリュー東京時代の林氏は、赴任する先々の営業所で素晴らしい業績を上げ、最終的に社長を務められました。

今回のケースであれば、たとえばCさん相手であれば、以下のようなコミュニケーションが考えられるでしょう。

「Cさんは、もっと良い意味で『肉食系女子』になってみたらどうかな。遠慮しがちな性格だと自分では思っているかもしれないけど、実は『肉食系女子』の素質はあると思うよ。どんどんチャレンジしてみて」(あくまで一例です。「肉食系」という言葉に対するネガティブイメージがあるようなら、別の言葉を選ぶ必要があります)

人間は、他人から貼られたラベル、特に上司からのラベルに極めて強く影響を受けるものです。ぜひ本人のためにもなるラベルを見つけ、良い方向に向かわせたいものです。

 

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