私はこんな人? -印象管理の誘惑 

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問題です

以下のAさんの問題は何か。

A: 「この会社に来てからもう3週間。私が人からのちょっとした頼まれごとにはしっかり協力するということは、もう皆が意識するようになったみたいね。新参者が信頼を勝ち取るにはやはり良い方法だわ」
B: 「Aさん、ちょっとお願いがあるんだけど、この仕事手伝ってもらえるかな。こういう時にAさんは頼りになるから」
A: 「もちろん。喜んで」
B: 「ほんとうにAさんはチームワークのいい人だよね」

C: 「Aさん、忙しいと思うけど、これ、お願いしてもいいかしら」
A: 「(正直、かなり仕事がたまってきたから、断りたいんだけど、ここで断ると印象悪くなるしな。仕方ないか)ええ、いいですよ」
C: 「本当にAさんはいつも助かるわ」

D: 「Aさん、この仕事だけど、ちょっと手伝ってもらっていいかな。何とか今日中に仕上げたいんだけど」
A: 「(困ったなあ。さすがにこの仕事まで受けちゃったら、他の仕事もまわらなくなっちゃうわ。いままで、ここまで頼まれごとが集中することはなかったのに、困ったなあ)」

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解答です

今回の落とし穴は、「印象管理の誘惑」です。「印象管理の罠」などという場合もあります。人に好印象を与えようとする発言や行動がかえって良くない結果をもたらしたり、そうした印象を与え続けようとして身動きが取れなくなったりしかねないことをいいます。

ビジネスパーソンにとって、人に好印象を持ってもらうことそのものは重要ですし、否定されるべきものではありません。「嘘をつかない」、「人に優しく、怒らない」、「意思決定が早い」などは、通常は好ましい印象といえるでしょう。

しかし、こうした印象も、行きすぎると、「馬鹿正直で気のきいたお世辞も言えない」、「(業務委託先のいい加減な仕事などに対して)怒ってほしい時に怒ってくれない」、「重要な案件でも拙速で決めてしまう」などということになりかねません。

印象管理は、「一貫性のある人間」として見られたいという、「一貫性の法則」と重なり合って、なかなか止められないという側面もあります(一貫性の法則は、交渉術でおなじみの「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」にも応用されます)。

一般に人は、行動の方針をあちこち変える朝令暮改の指導者より、一貫した態度を示す指導者を好む傾向があります。それゆえ人は、周囲の関係者に首尾一貫した人物であると見られたいという欲求を持ち、あらかじめ決めた事柄や、外からの見え方に固執するモチベーションを持つのです。これがしばしば、望ましくない意思決定をもたらすことがあります。

その時点ではもはや合理性を欠いていると自分自身で認識していても、いったん決めた方針を変更すると、最初の方針の誤りに対して非難されるのではないかという恐怖や、印象が悪くなるという忌避感から、当初方針を継続しつづけたいという意識が働いてしまうような場合です。たとえば、不良債権処理の問題で、融資先の経営状態が厳しくなっているのに、銀行が彼らの事業に建て直すきっかけを与えようとして、さらに資金を貸し付けることがよくあります。

このとき、問題となる融資を始めたときの担当者は、後になって担当を引き継いだ者よりも、追加支援のための融資や返済条件の猶予、緩和といった選択をしがちになります。そして、いったんそうした追加支援の方針が定まると、その後さらに経済環境が悪化しても、方針の撤回はしにくくなり、貸し倒れ損失の規模は拡大してしまいがちなのです。

印象は、目的的な側面もありますが、基本はビジネス(あるいは生活)をうまく運ぶための手段といえます。それにもかかわらず、好印象が最終目的化してしまい、本来のビジネスの効果や効率を削いでしまっては本末転倒です。

自分の印象を客観的に見て管理することは重要ですが、やはり基本に立ち返り、最終的な目的は何なのかを意識することが必要なのです。

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