それだけで決めちゃう? -単一理由決定 

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問題です

以下のAさんの問題は何か。

A: 「友人のBから紹介されたC生命保険のセールスレディに生命保険の営業をされちゃったよ。どうしようかな。でも、俺も結婚して、30歳も過ぎて、そろそろかなと思っていたから、良いタイミングと言えば良いタイミングなんだけど。C生命保険か・・・。まあ、絶対にC生命保険じゃなくては、という感じでもないけど、まあいいかな。知人の顔をつぶすわけにもいかないしな。うん、いい機会だ。C生命保険に加入しちゃおう」

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解答です

今回の落とし穴は、「単一理由決定」です。英語では“onereasondecisionmaking”と言います。ある意思決定をする際に、一つの理由だけから意思決定を下してしまうというものです。通常、それは強く印象に残っている事象とつながっていることが少なくありません。

人間、何かしら大きな意思決定するには、それなりの理由があります。たとえば住宅やマンションを買う際に、全く理由もなく、「ここに決めた!」と考える人はまずいません。さまざまな事柄を検討しながら、明確に理由づけをした上で購入する人が多いはずです。

住宅の例で具体的に言えば、価格や広さ、駅からの距離、近隣の環境、教育機関などの項目を熟考した上で、多くの物件を比較検討し、慎重に選ぶ人が多いでしょう。そこまで慎重に検討するのは、住宅やマンションが、多くの人にとって人生で最高額の買い物であり、その後の生活に大きく影響する重要な意思決定だからです。

グロービスの「クリティカル・シンキング」のクラスなどでは、何かを意思決定する時に、どのようなことについて考えれば、しっかりと理由づけされた結論が出るか、ということをしつこくコミュニケーションします。これを、「枠組みを決める」などと呼んだりします。住宅のケースであれば、大きく、「経済的インパクト」「家自体の使い勝手」「周囲の環境」などの大枠を決めた上で、それぞれについてさらに細かく情報収集し、比較検討すれば、それほど大きな判断ミスはしないはずです。

その点、冒頭のケースはどうでしょうか。Aさんの拙い点は、生命保険という人生で2番目に高い買い物(人によっては2番目が車や宝飾品というケースもありますが)をするという重要な意思決定の場面であるにもかかわらず、「知人のBのメンツをつぶすわけにはいかない」という、ただ一つの単純な理由から意思決定してしまっていることです。

本来であれば、「そもそもの保険の費用と保障内容」「保険会社自体の健全性」「人間関係に与える影響」などの大枠を意識した上で、細かい情報を集めるのが筋と言えます。ところがAさんは、肝心の「そもそもの保険の費用と保障内容」と「保険会社自体の健全性」という重要なポイントを全く考慮せず、どちらかと言えば本来重要度が低いはずの、紹介者のメンツという一つの理由のみで重大な意思決定をしてしまったわけです。

とはいえ、一つの理由から意思決定をしてしまうことが、いつも悪いというわけでは決してありません。たとえば、夕食のメニューを決める際に、「昼に鰻の美味しそうな香りが気になったから、夜は鰻重にしよう」ということであれば、全く問題はないでしょう。

回避すべきは、本来、極めて重要な意思決定であるにもかかわらず、単一理由決定に近い、バランスを欠いた理由づけで意思決定をしてしまうことです。たとえば、就職先を選ぶというのは、人生を左右する大きな意思決定です。その際に、「先輩が楽しそうに働いていたから」という理由だけで選んでしまっては禍根を残しかねません。その先輩にはフィットする会社であっても、自分にとってはやりがいある仕事を見つけにくい職場かもしれませんし、会社の将来性なども本来しっかり見極めないと、自分のキャリアにとって大きなマイナスになりかねないからです。

冒頭にも書きましたが、単一理由決定は、往々にして、印象的な事象に引っ張られて起きがちです。最近起きた事件、インパクトの強い発言や行動などがその典型です。上記の就職の例では、その先輩と親しく、彼/彼女の顔がイキイキとしていればしているほど、意思決定に与える影響は大きくなりがちです。

何かをバランスよく考え抜いたうえで、それらが最終的な意思決定のきっかけになったというのであれば、それほど問題はありません。しかし、重要な案件であるにもかかわらず、大して考え抜いてもいないことを、一つの印象的事象だけから意思決定することのリスクは強く認識しておきたいものです。

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